ロシアNIS調査月報
2026年4月号
特集◆ユーラシアのエネルギー
最新トレンド
 
特集◆ユーラシアのエネルギー最新トレンド
調査レポート
米政権交代で転換点を迎えた対露制裁
―「真の禁輸」への変化、新たな手法「二次関税」の効果と背後で加速する中露エネルギー協力―
調査レポート
コーカサス・中央アジア直近4年の石油ガス情勢
ビジネス最前線
中央アジアのエネルギー供給に改善策を提案
調査レポート
脱炭素分野における中東産油国・中央アジアの協力
エネルギー産業の話題
インドの動向とロシアの石油分野
ロシア極東羅針盤
ロシア石炭輸出の大転換
コーカサス情報フォーカス
アゼルバイジャンの石油ガス最新動向

調査レポート
追い風に乗るロシア採金分野
調査レポート
韓国の対中央アジア貿易・投資動向
データリテラシー
増大を続けるロシア駐在員維持コストとリスク
INSIDE RUSSIA
ロシア鉱工業生産の異変
―外需・民需の崩壊と軍需の限界―
ロシアメディア最新事情
モスクワの劇場で知る戦争のリアル
ウクライナ情報交差点
2025年のウクライナ貿易統計
―食料輸出減と戦時輸入増で赤字拡大
中央アジア情報バザール
中央アジアの中東情勢への反応
シネマで見るユーラシア
『戦艦ポチョムキン』
ロシア音楽の世界
リムスキー=コルサコフ「ロシアの復活祭」
ドーム・クニーギ
青木健太/笠井亮平編『中東ユーラシアから世界を読む』
業界トピックス
2026年2月の動き
通関統計
2026年1月のロシア・NIS輸出入通関実績
おいしい生活
バラブリカのから揚げ
記者の「取写選択」
秋田杉の教会


調査レポート
米政権交代で転換点を迎えた対露制裁

独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)
調査部長(併)企画調査部担当審議官 原田大輔

 本稿では2022年のウクライナ侵攻後、欧米制裁が大きな転換を迎えた2025年の制裁動向を振り返りながら、発動の流れをレビューする。さらにG7諸国の制裁当局を始めとする国々の関心ごとである効果の是非を検証し、欧米制裁をの今後の見通しについて分析することを目的とする。


調査レポート
コーカサス・中央アジア直近4年の石油ガス情勢

独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)調査部
四津啓

 ウクライナ侵攻開始以降、西側諸国からの制裁を受けてロシアの石油・天然ガス分野の特に輸出先の変化は著しい。その一部に連動する形で、ロシアと同じく旧ソ連を構成したコーカサス・中央アジアの産油・ガス国でも変化が起きている。本稿は特に過去4年間で起きているコーカサス・中央アジアの石油・ガス分野を中心として動きを振り返る。


ビジネス最前線
中央アジアのエネルギー供給に改善策を提案

I・T・O株式会社 常務取締役/海外事業部部長
内田由輝子さん

 今回は、カザフスタン・ウズベキスタンを中心に中央アジアにおけるガス供給技術事業に取り組んでいらっしゃるI・T・O株式会社の内海由輝子さんにお話を伺いました。同社は、2024年8月にカ ザフスタンのアティラウ州、10月には、ウズベキスタンのガス公社とMoUを締結されまして、中央アジアで積極的に事業を展開しようとされています。今回のインタビューでは、同社が現地で従事されている事業の概要に加え、中央アジアの特徴や今後の展望などについてお話を伺いました。(中馬瑞貴)


調査レポート
脱炭素分野における中東産油国・中央アジアの協力

公益財団法人中東調査会 主任研究員
高橋雅英

 米国のトランプ大統領は2025年1月の就任直後、地球温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」から離脱する旨の大統領令に署名した。米国は温室効果ガスの主要排出国であることから、米国の離脱によって、世界的な気候変動対策が後退することが懸念される。一方、サウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)などの中東産油国は、脱炭素政策の推進を維持し、発電部門を中心にクリーンエネルギーの導入を進めている。こうした動きの中で、中東産油国は中央アジアやコーカサス地域における再生可能エネルギー事業の発展にも大きく寄与している。本稿では、まず中東産油国が脱炭素政策を推し進める背景について考察し、次に中東産油国が中央アジアの太陽光・風力発電事業に積極的に関与する理由を分析する。。


エネルギー産業の話題
インドの動向とロシアの石油

 ウクライナ戦争開始後にロシア産石油のEU諸国への海路での輸出が困難になりましたが、その窮地からロシアを救ったのがインドでした。インドはウクライナ戦争開始後に、ロシア産石油の輸入量を急増させ、EU市場の代替としての役割を果たすようになったのです。ところが、2025年末頃から、EUの対ロ制裁の強化に加えてトランプ大統領からの圧力もあり、インドがロシア産石油の購入を自粛し始めています。今回は、インドによるロシア産石油の購入をめぐる動きをご紹介します。(坂口泉)


ロシア極東羅針盤
ロシア石炭輸出の大転換

 2022年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻、それに伴う西側諸国の制裁、さらにロシアの対抗措置は、ロシアと西側諸国との対立を決定的なものとした。この対立は、ロシアの「脱欧米化」と西側の「脱ロシア化」を加速させ、両者の経済関係に大きな変化をもたらしている。なかでも、ロシア経済の中核をなすエネルギー輸出、とりわけ石炭は、こうした地政学的分断の象徴的な存在である。ロシア産石炭の輸出先は過去4年間で劇的に変化し、侵攻以降は制裁に参加しないアジア諸国やグローバルサウス諸国への輸出が急増した。(齋藤大輔)


コーカサス情報フォーカス
アゼルバイジャンの石油ガス最新動向

 アゼルバイジャン政府が同国経済の屋台骨である石油ガス分野について、2025年の実績を発表したので本稿で紹介する。(中馬瑞貴)


調査レポート
追い風に乗るロシア採金分野

(一社)ROTOBO ロシアNIS経済研究所 名誉研究員
坂口泉

 ロシアは世界有数の金の生産国で輸出量も多くなっているが、ウクライナ戦争開始後に他のロシアの主要輸出品目同様に金も制裁の対象となり、2022年3月にロシア産の金地金はLBMA(ロンドン貴金属市場協会)の基準を満たしていることを証明するグッドデリバリー(受渡適合品)の認定を取り消された。これは、世界最大の金の取引所であるLBMA経由でロシア産の金地金を販売することが事実上不可能になったことを意味し、2022年以降、金の輸出量が大幅に減少した(生産量は2022年以降もほとんど変化していない)。その影響もあって、ウクライナ戦争開始後、同分野では大手企業の業績不振、資本関係の変化、M&A、社名変更などに象徴される不安定さが目立っていたが、金の国際価格の上昇という追い風を受け、最近になって状況が落ち着きを見せ始めている。本稿では、金の国際価格の推移や、ウクライナ戦争開始後のロシアの大手採金企業の資本関係の変化などに注目しながら、ロシアの採金分野の現状をご紹介する。


調査レポート
韓国の対中央アジア貿易・投資動向

(一社)ROTOBO ロシアNIS経済研究所 嘱託研究員
大内悠

 2026年2月12日、趙顕韓国外交部長官は、第1回韓国・中央アジア首脳会合を本年9月ソウルにて開催予定であると発表した。同会合は当初2025年に開催されるはずであったが、尹錫悦前大統領時代の非常戒厳令に端を発する韓国内政不安を受けて延期になったという経緯がある。外交部プレスリリースでは「中央アジアの地政学的ポテンシャルを活用したサプライチェーン多角化」に対する期待感が示されているが、韓国・中央アジアの経済的紐帯は現状どのような様相だろうか。この一端を確認すべく、本稿では韓国側発表の対中央アジア貿易および直接投資(FDI)の統計データを整理し概観する。貿易データは韓国税関庁、直接投資データは韓国輸出入銀行の統計を用いる。


データリテラシー
増大を続けるロシア駐在員維持コストとリスク

 2024年から2026年にかけて、ロシアでの外国人労働者・駐在員の管理環境は歴史的な転換期を迎えています。この点を踏まえ、今回は最近の法改正、また現在審議中の各種法案内容を考慮し、ロシアに残る日本企業が今後取るべきシナリオについて検討します。本稿では、関連法の内容を「施行済」「審議中(法案段階)」「予定」の3種に明示し分析し、企業が取るべき対応を継続、縮小、撤退、現状維持(先送り)の4シナリオに整理しました。(長谷直哉)


INSIDE RUSSIA
ロシア鉱工業生産の異変
―外需・民需の崩壊と軍需の限界―

 本コーナーでは、ロシア統計局が発表する鉱工業生産統計を、四半期に一度紹介するのが、恒例化している。2025年通年の鉱工業生産統計が発表されたので、今回はそれを図表にまとめて紹介する。なお、すでに2026年1月の統計も発表されており、それも併せるとトレンドがより一層鮮明になるので、1月の数字も図表に加えることにする。(服部倫卓)


ロシアメディア最新事情
モスクワの劇場で知る戦争のリアル

 ロシアが言うところの「特別軍事作戦」開始から丸4年以上が過ぎました。鹵獲した西側兵器を展示し、ロシア兵の功績を讃える博物館はロシア中の至るところにあります。さらに、ロシアを代表する文化施設である劇場でも戦争に関連した演目が上映されるようになりました。私は先日、フランスのテレビ局の記者に誘われて、初めて見に行きました。その内容は良い意味で、私の期待を裏切るものでした。(徳山あすか)


ウクライナ情報交差点
2025年のウクライナ貿易統計

 ウクライナがロシアによる軍事侵攻にさらされて以降も、ウクライナ当局から貿易統計の発表は続いている。本コーナーでは毎年4月号で前年の貿易統計を取り上げるのが恒例となっており、今回も2025年のウクライナ貿易統計を紹介する。(服部倫卓)


中央アジア情報バザール
中央アジアの中東情勢への反応

 2026年2月28日、米国とイスラエルの合同軍事作戦によってイランが空爆を受けた。イランの最高指導者ハメネイ師を含む政府・軍高官が殺害され、米国とイスラエルは大きな成果を上げたと発表した。一方でイランも報復攻撃を開始。イスラエルや中東に駐留する米軍基地を攻撃し、域外のアゼルバイジャンもドローン攻撃を受けた。さらに、石油を中心とする国際物流の要衝であるホルムズ海峡が事実上、閉鎖されるなど、その影響は国際社会全体に及んでいる。こうした中で、イランに隣接する中央アジア(トルクメニスタンとウズベキスタンが国境を接する)はどのような反応を示しているのだろうか。(中馬瑞貴)


シネマで見るユーラシア
『戦艦ポチョムキン』

 セルゲイ・エイゼンシュテインの映画『戦艦ポチョムキン』が描く時代は1905年。ロシア海軍の水兵が戦艦ポチョムキンで上官の横暴に対して反旗を翻すという物語だ。ウジのわいている肉を「海水で 洗い落とせば大丈夫」というような上官に水兵たちの堪忍袋の緒が切れた。水兵は不服従の姿勢を貫き、それを見た上官は下士官に水兵を銃殺するよう命じるのだが、下士官はそれを拒否。ポチョムキンでのヒエラルキーが逆転する。(芳地隆之)


ロシア音楽の世界
リムスキー=コルサコフ「ロシアの復活祭」

 クリスマスほどは日本では認識されていないものの、復活祭(イースター)はキリスト教の最も重要な祝祭の1つである。その日程は毎年移動するもので、春分の日の後の最初の満月の日の次にくる日曜日ということになっている。カトリック、プロテスタントでは3月22日から4月25日の間、ギリシャ、ウクライナ、セルビア、ブルガリア、ジョージア、ロシアなどの東方正教会では、4月4日から5月8日の間のいずれかの日曜日になる。(ヒロ・ミヒャエル小倉)


記者の「取写選択」
秋田杉の正教会

 JR秋田駅から列車とバスを乗り継いで2時間半。青森や岩手との県境に近い、秋田県大館市の山あいに静かに佇む「北鹿ハリストス正教会生神女福音会堂」を昨年夏に訪ねた。1892年に建てられた日本最古の木造ビザンチン様式の教会堂である。(小熊宏尚)