日本自転車振興会補助事業(平成16年度)
2005年6月
平成16年度ロシア・東欧諸国との貿易経済交流補助事業
1.補助事業の概要
(1)事業の目的
当該補助事業においては、特別報告書等の媒体を通じた情報提供活動を政府関係者および企業関係者に行うとともに、セミナー開催あるいはミッション派遣などを行うことにより、日本とロシア・東欧諸国との貿易経済交流活発化に資する活動を行うことを目的とする。特に、平成16年度においては、ロシア・東欧諸国の政治経済の安定化および世界経済への統合化の過程が進み、日本からの貿易・投資の機会が増していることを踏まえ、機械産業を中心とする具体的な日本企業のビジネスチャンスの拡大を見越した情報の収集および提供、ビジネスチャンスの機会拡大を行うことを最も重要な課題のひとつとしている。
本事業は、貿易関係者は言うに及ばず、政府諸官庁および調査機関、大学等に非常に高く評価されており、更に事業の継続と一層の発展を期待されている。事業対象国の経済ビジネス情報の総合的な提供元としては日本で唯一の組織であり、とくにロシアとの関係では、2003年末に日露貿易投資促進機構の設立が決定されたこともあり、また、一部中東欧諸国がEU加盟を果たし、投資が加速する条件が出てきており、事業の存在意義は大きい。
(2)実施内容等
ア.CIS諸国の外国投資環境調査事業
報告書「ロシア石油分野の現実 上流の開発状況を中心に」および報告書「ロシア以外のCIS諸国の油田開発投資状況調査」の作成
旧ソ連域内の産油国、ロシア、カザフスタン等では原油生産が増加傾向にあり、石油産業分野を基盤とした経済復興、経済発展が続いている。日本企業でも石油産業を当て込んだ機械関連輸出など、ビジネスチャンスも拡大している。ロシアでは、サハリンの石油ガスプロジェクト、太平洋向けパイプラインの建設プロジェクトなど、実際にあるいは将来、日本企業が関係する大規模プロジェクトがあるほか、カザフスタン、アゼルバイジャンでも石油部門で、日本企業が関係している。
そこでCIS諸国における石油産業の現状について調査し、平成17年1 月に調査員をカザフスタン、トルクメニスタンに派遣し、ロシアをはじめとするCIS諸国の石油産業の現状に関する情報およびデータ入手、ヒアリングを実施した。それらの成果をとりまとめ、日本とCIS諸国との経済関係の進展に資するような報告書「ロシア石油分野の現実 上流の開発状況を中心に」および報告書「ロシア以外のCIS諸国の油田開発投資状況調査」を作成し、石油産業に関心のあるビジネス関係者の貿易投資への関心に応えた。
本事業実施により、石油生産量の増加から生じる石油産業分野の将来性と急激な増産及び設備投資額の少なさから生じる不安定要因を日本企業へ紹介し、これらの多面的な情報は日本企業のロシア石油分野への投資及び製品輸出の発展・普及に資することができた。
イ.対ロシア・CIS情報収集・交流促進事業
財政、金融、物価、為替、企業、貿易等についてのデータ収集を行い、ロシア経済の動向等をとりまとめた。また、「Rotobo Moscow News」(Eメール配信)を14回発行し、ロ東貿会員、関係機関等にロシアの産業、経済、科学技術等に関する情報を提供した。さらに、現地で開催されるフォーラム、会議に出席して、ロシア、CIS諸国との人的交流を行い、企業訪問、関係地域への訪問調査等を実施することにより、通常では入手困難な情報を収集した。
なお、平成16年度に発行した「Rotobo Moscow News」の概要は以下の通り。
「Rotobo Moscow News」(Eメール配信)
No.32 クルマのページ《2004年1〜3月の外国車販売台数 トヨタ トップを堅持》他
No.33 クルマのページ WTO加盟で乗用車の関税は20%に、部品は3%に!他
No.34 研究・技術・開発・環境のページ《ロシアのロボット開発最前線》他
N0.35 ロシア経済<EUと合意し、ロシアWTO加盟に向けて大きく前進>他
No.36 研究・技術・開発・環境のページ《原子レーザーが21世紀の技術を変える》他
No.37 ロシアの2003年の外国貿易 主要相手国との商品別輸出入構成他
No.38 数字は語る ここ6年のテロ件数他
No.39 ロシア経済【5年間で中産階級が倍増】他
No.40 【インタビュー】イルクーツク・ゴヴォーリン州知事他
No.41 研究・技術・開発・環境のページ《ミクロン以下の粉末をつくる遊星グラインダー》他
No.42 数字は語る《滞在登録罰金2500ルーブル》他
No.43 クルマのページ【2004年の外国車販売 トヨタ4万台突破、日産3倍の躍進】他
No.44 ロシア経済 〜2004年のロシアの工業生産〜他
No.45 クルマのページ【2004年のロシア車種別外国ブランド乗用車販売トップ50】他
これらの活動を通じ、ロシアに進出する日本企業に対して現地事情に基づく情報を提供し、より正確な情報の普及に努め、ロシア・CIS諸国との新たなビジネスチャンスの拡大に寄与することができた。
ウ.ロシア・東欧産業経済動向調査事業
(ア)ロシア関係
報告書「ロシア自動車産業の現況と今後について 2004年の市場の動きを中心に」の作成
日本からロシアへの自動車輸出が急増し、日本の対ロシア輸出の重要商品となっている。また、いくつかの日本の自動車会社の製造部門での進出が検討され、本格的な対ロシア製造部門の直接投資案件として初めてのものとなりそうである。このような、日本国内でのロシアでの自動車産業への関心の高まりを踏まえ、ロシアの自動車産業についての報告書をまとめ、関係者に配布した。
本事業実施によって得た情報は、日本の自動車会社がロシアの自動車市場でプレゼンスを行う際の基礎資料となり、これまでロシアに進出していなかった日本の自動車会社に正確な情報を普及させ、ロシアでの工場建設等、日本企業のロシアへの進出に貢献できた。
(イ)中東欧関係
報告書「EUの拡大と中欧諸国における機械産業・外資の進出動向」の作成
中欧諸国(ポーランド、チェコ、ハンガリー、スロバキア、スロベニア)は2004年EUに加盟した。中欧諸国は1990年代の苦難に満ちた体制転換過程を乗り切り、欧州への回帰を達成した。このところの中欧諸国の経済は中期的な成長過程に入ったようである。
本報告書では、欧米日等の企業進出により大きな変革を遂げつつある中欧諸国の機械産業について、中欧諸国と太い繋がりを有するドイツとの関係、自動車産業の再編の大きな枠組みの観点と同時に、中欧各国の機械産業の動向、外資の進出動向を調査し、まとめたものである。
中欧諸国には、2005年末現在、日本から自動車・自動車部品工業、電機・電子工業の機械産業を中心に製造業分野で160件を超える投資が実現している。また、日本からの投資拡大を受けて、日本と中欧諸国との貿易も60億ドルを超える見込みである。中欧諸国はまさに日本の機械産業の生産拠点としての地位を確立しつつある。
本事業の実施により、中欧諸国の機械産業の現状と外国投資の動向が紹介され、中欧諸国の機械産業に関しての情報が乏しい日本企業に情報を提供することができたとともに、日本企業による対中欧諸国投資拡大に大いに寄与した。
エ.対ロシア産業貿易投資促進事業
報告書「日ロ貿易投資促進事業−2004年度事業活動報告書−」の作成
日ロの経済関係発展の機運が高まるなか、これまで、ロシアになじみのない日本の企業もロシアへの関心を高めつつある。しかしながら、そのような日本企業は、ロシア企業との接点もなく、貿易投資のファーストコンタクトをどこに求めてよいのか、戸惑うことが多い。対ロシア産業貿易投資促進事業は、このような日本企業とロシア企業の貿易投資の促進を目的に実施された事業である。2004年9月26日から10月1日まで、ロシア極東家電ミッションを組織し、日本企業とロシア極東の家電企業のビジネスミーティングを実施した。2004年12月3日には、「ロシアビジネス環境セミナー―ロシア極東と機械産業のビジネスチャンス―」を組織した。2005年3月17日には、セミナー「拡大するロシアのセキュリティ機器市場」を実施し、これら2つのセミナーを通じて、日本企業のロシアにおける機械産業分野への貿易投資促進活動を行った。
これらの事業を通じて、日本の関連企業が貿易投資を行う契機となる情報を提供、普及させ、ロシア進出の手助けを行うことに寄与した。