ロシアNIS調査月報
2021年12月号
特集◆ロシア経済の
新トレンドを読み解く
 
特集◆ロシア経済の新トレンドを読み解く
調査レポート
2021年のロシア経済と金融政策
―加速する足もとのインフレ―
調査レポート
ロシアのスーパー業界の「今」
―強まる二極化傾向―
調査レポート 
中ロ協力を考える:「現実」は複雑だ
調査レポート
ロシア地域の最新情勢
―安定する政治と不安定な経済―
イベント・レポート
モスクワ州貿易投資セミナー
キーパーソンに訊く
日欧間の輸送増大で勢いづくシベリア鉄道
INSIDE RUSSIA
にわかに政治性を帯びるロシア肥料産業
ロシア極東羅針盤
開通しない中ロ国境橋
地域クローズアップ
重鎮知事交代で再起期すウリヤノフスク州
シベリア・北極圏便り
脱炭素化の潮流とクズバス地域
シリーズ 工業団地探訪
ロシアにおける工場立地先の選択
―間違えない探し方・選び方―
ロシアの二国間関係
ロシアビジネスに積極的なフィンランド
データリテラシー
中国公的機関によるロシア向け融資
産業・技術トレンド
MC-21主翼材料の国産化
エネルギー産業の話題
アレクペロフ社長が語るルクオイル
自動車産業時評
2021年上半期のロシア商用車市場
ロジスティクス・ナビ
ユーラシア・ランドブリッジの動き
―急成長と新たな課題―
データバンク
2021年1〜9月の日ロ貿易
データバンク
ロシア乗用車市場のセグメント別男女比

ウクライナ情報交差点
史上最高の豊作に沸くウクライナ
中央アジア情報バザール
中央アジアとアフガニスタンの経済関係
デジタルITラボ
ベラルーシのスタートアップエコシステム
ロシアメディア最新事情
ロシアでのモラル違反と法律違反の受け止め方
ロシア音楽の世界
ボロディン:交響詩「中央アジアの草原にて」
ドーム・クニーギ
北海道新聞社編
『消えた四島返還 ?安倍政権 日ロ交渉2800日を追う』
業界トピックス
2021年10月の動き
通関統計
2021年1〜9月の輸出入通関実績
おいしい生活
輸出量世界第2位のウクライナ産はちみつ
記者の「取写選択」
クレムリンとノーベル平和賞


調査レポート
2021年のロシア経済と金融政策
―加速する足もとのインフレ―

公立小松大学 国際文化交流学部 准教授
一ノ渡忠之

 世界的な新型コロナウイルスの感染拡大による危機(以下、コロナ危機)と主要輸出品である原油価格の急落、経済活動を含む各種制限措置(以下、制限措置)の影響を受け、2020年のロシアの実質GDP成長率(前年比)は前年の2.0%のプラスから−3.0%のマイナスへと転じた。しかし、2021年に入り状況は改善に向かっており、第2四半期のロシア経済は危機以前の水準に回復し、通年で4.0%を上回る成長率を実現する見通しである。本稿では、2021年のロシア経済の動向と各機関の成長率見通しを概観するとともに、2020年のコロナ危機以降のロシア中央銀行の金融政策を振り返る。また、加速するインフレの複数の要因についても触れてみたい。


調査レポート
ロシアのスーパー業界の「今」
―強まる二極化傾向―

ロシアNIS経済研究所 名誉研究員
坂口泉

 ロシアに本格的な食品スーパーマーケット・チェーンが登場してからかれこれ30年近くになるが、業界自体は順調に成長し続けている。ただ、市場規模の拡大に伴い企業間の競争が激化しており、消費動向の変化への対応が遅れた企業は市場からの撤退もしくは事業規模の縮小を余儀なくされている。たとえば、フランスのオーシャン・グループが展開するハイパーマーケット・チェーン「アシャン」などは一時の勢いを完全に失っている。
 その一方で、新しいトレンドを素早く読み取りそれに即したビジネスモデルを構築することに成功した企業は急激にそのプレゼンスを強化している。フクス・ビルなどがその典型例だといえよう。もっとも、そのようないわば時代の先端を行く企業がプレゼンスを強めるなか、最近になり、過去の遺物と目されていたハードディスカウントショップ・チェーンが復活の兆しを見せるという興味深い現象も観察されている。同タイプのチェーンは内装などにかかるコストを極力カットしひたすら安い価格で商品を売ることに主眼を置いた店舗を展開しており、まだロシアの一般市民が全般的に貧しかった1990年代後半から2000年代前半にかけて高い人気を誇っていた。しかし、ロシアの人々が裕福になるにつれ次第にその存在感を低下させ、2010年代に入ってからは地方部でのみ通用する業態という位置づけになっていた。ところが、数年前から復活の兆しを見せ始めており、複数の大手チェーンが現在ハードディスカウントショップの本格的な展開を検討している。ロシアの食品スーパー市場は最新のトレンドに敏感に反応する傾向が強いが、時として、時代に逆行するような動きも見せるようである。本稿ではそのような特性にも着目しながら、ロシアの当該市場の「今」をご紹介する。


調査レポート
中ロ協力を考える:「現実」は複雑だ

高知大学人文社会科学部
塩原俊彦

 2021年6月28日、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は中国の習近平国家主席とビデオ会談し、「善隣友好協力条約」に再署名した。同条約が締結された2001年以降、両国間の相互貿易取引高は14倍に増加している。2014年春のロシアによるクリミア半島併合に対する欧米中心の対ロ制裁で、中ロの協力関係はなお一層深まったようにみえる。だが、本当にそうなのか。おりしも、82歳の旅行作家、コリン・サブロンは2021年、『アムール川』を上梓した。2018年夏から2019年春まで、川の源流から太平洋まで2,800kmを徒歩、馬、ヒッチハイク、船で旅した記録である。中ロ国境の「現実」を教えてくれるこの本を読むと、表面上、深まっているかにみえる中ロ関係がもっとずっと複雑であることを教えてくれる。そこでここでは、中ロ協力の現状について、エコノミストが表面だけを分析するのとは違う、もう少し「僻目」でみた分析を示したい。


調査レポート
ロシア地域の最新情勢
―安定する政治と不安定な経済―

ロシアNIS経済研究所 研究員
中馬瑞貴

 2021年9月17〜19日にかけて、ロシアでは連邦下院選挙と同時に統一地方選挙が実施され、各地で首長、構成主体議会、地方自治体議会などの選挙が行われた。9地域で行われた首長選挙では現職が当選を果たし、39地域の構成主体議会で「統一ロシア」が第1党を占めた。野党候補が現職首長に勝利したり、野党が構成主体議会の第1党を占めたりといった数年前のような波乱の展開は見られず、ロシア地域の政治的安定が示される結果となった。
 広大な面積と多様性に富んだロシアにとって、地域の安定は国家の安定のための重要な要因の1つであるが、政治的安定についてはここ数年、確保されつつある。一方で、地域の厳しい経済状況が国の発展を揺るがしかねないという状況にある。
 本稿では大統領教書で関心が向けられたロシアの地域財政の現状や課題と2021年9月の統一地方選挙の結果を紹介する。


イベント・レポート
モスクワ州貿易投資セミナー

 9月22日(水)、ロシアNIS貿易会はモスクワ州行政府の協力のもと「ロシア・モスクワ州貿易投資セミナー」を実施した。
 当会とモスクワ州行政府は過去に2度ビジネスセミナーを日本で共催し、1回目の2017年にはヴォロビヨフ知事、2回目の2019年にはフロモフ副首相を団長とするモスクワ州代表団が来日している。3回目となる今回はコロナ禍の影響を考慮しオンライン形式での実施となり、ガンツォフ・モスクワ州投資・産業・科学省次官が州の投資環境およびビジネス支援制度に関する説明を行ったほか、日系アークレイ社を含む外資3社が域内で展開する事業について発表した。
 以下、セミナーの報告概要をお届けする(『ロシアNIS経済速報』2021年10月5日号、No.1871より再録)。(大内悠)


キーパーソンに訊く
日欧間の輸送増大で勢いづくシベリア鉄道

ロシア鉄道株式会社 日本代表部総代表
O.リャボフ

 2021年2月にロシア鉄道株式会社の日本代表部が東京に開設され、初代総代表に元在大阪ロシア連邦総領事のオレグ・リャボフさんが就任されました。現在、海上運賃の高騰などを背景として、日欧間の代替輸送ルートとしてシベリア鉄道が注目を浴びています。今回、リャボフ総代表には、日本企業によるシベリア鉄道の利用状況や日露予防医療診断センターの建設プロジェクトをはじめロシア鉄道と日本企業の協力案件などについてお話をお聞きしました。(中居孝文)


INSIDE RUSSIA
にわかに政治性を帯びるロシア肥料産業

 今日のロシアで成長産業をいくつか挙げるとしたら、化学肥料産業は間違いなくその代表格となるだろう。旺盛な需要に支えられ、生産は拡大を続けている。
 基本的に肥料は平凡なコモディティであり、軍需や天然ガス産業のような国家戦略的な性格は希薄である。しかし、2020年の夏頃から続いている世界的なコモディ価格の高騰を背景に、ロシアの肥料産業は、対外的にも、国内的にも、にわかに政治性を帯びることとなった。(服部倫卓)


ロシア極東羅針盤
開通しない中ロ国境橋

 10月、アムール州のブラゴヴェシチェンスクと黒竜江省の黒河との間を結ぶ自動車橋を視察した。ロシアと中国の同盟のシンボルとして、本誌でも度々紹介してきた。橋は新型コロナウイルスの感染拡大で開通できないまま、2年を迎える。
 赤と白を基調とした橋は完成している。車線も引かれ、いますぐにでも車が通れるようにみえる。しかし、なかなか開通しない。新型コロナウイルスの流入を防ぐため、中国が国境閉鎖を継続しているためだ。(齋藤大輔)


地域クローズアップ
重鎮知事交代で再起期すウリヤノフスク州

 2021年3月、地域首長としては近年まれにみる長期政権を築いてきたセルゲイ・モロゾフ・ウリヤノフスク州知事が辞任した。ロシアでは2005〜2011年に「大統領による首長任命制」が導入されていたが、モロゾフはその導入以前に行われていた公選制で選出された最後の知事として、在任期間は17年に及んだ。親日家としても知られるモロゾフ知事は何度も訪日しており、彼の在任期間中に、日本とウリヤノフスク州の関係は大きく発展したことも忘れてはならない。(中馬瑞貴)


シベリア・北極圏便り
脱炭素化の潮流とクズバス地域

 「カーボン・ポリゴン」という取組みをご存じでしょうか。これはロシア政府、ロシア科学・高等教育省が推進している気候変動政策の一つです。ロシアの各地域に温暖化ガスや大気状況に係るデータを収集・分析するための広大な敷地を確保し、またモニタリングスポット兼データセンターを設立しようとの試みです。この事業にはロシアのデータ分析最大手である「Ctrl2GO」社がプラットフォーム形成に大きく貢献しています。
 この取組みには、ロシア最大の産炭地域であるクズバス炭田を抱えるケメロヴォ州も遅ればせながら対応を始め、本年10月には、ケメロヴォ国立工科大学が中心となり、同州の研究機関、石炭企業や環境団体が参加するコンソーシアムを形成し、「カーボン・ポリゴン」開設を進めることを決定しました。(長谷直哉)


シリーズ 工業団地探訪
ロシアにおける工場立地先の選択
―間違えない探し方・選び方―

 本欄ではこれまでロシアにおける工業団地をいくつか探訪し、その概要や特徴を紹介してきた。いずれの工業団地も地域における企業誘致、新技術導入、雇用機会創出を目的とした近代的な生産インフラとして、国が定めた標準や産業政策に応じて整備されている。また、探訪先として筆者が選ぶ工業団地は、原則としてロシア工業団地協会の会員である法人が開発や経営に携わっているところで、日ごろから協会の活動を通じて懇意にしており、記事を書くごとに取材協力にも応じてもらっている。 しかし実際には、個々の工業団地の経営方針、管理の実態などには様々な違いがあり、特に外国企業の誘致については実績もあって柔軟に対応できるところ、経験不足のため硬直的な対応に陥ってしまうところなど開きがある。また、本欄において、協会の仲間でもある工業団地の短所や問題点をあからさまに指摘するのは心情的に難しいところもある。
 そこで今回の本欄においては視点を変えて、工業団地を開発・整備する立場からではなく、ロシアへの工場進出を検討する日本企業の立場から、ロシアにおける工場立地先の探し方、選び方の要領について考えてみたい。さらに次回には、工業団地の整備のあり方、外国企業から見たロシアの工業団地の立地魅力度について、批判的に展望してみることとしよう。(大橋巌)


ロシアの二国間関係
ロシアビジネスに積極的なフィンランド

 広大な面積の結果、長い国境線をたくさんの国と接しているロシア。そんな隣国の1つが、ロシア北西部で約1,300kmの国境を共有するフィンランドだ。苦い過去を持つ一方で、ロシアとフィンランドの関係は決して悪くない。むしろロシアにとってはEUの中で最も良好な関係を築いている国の1つであり、フィンランドは「欧州からロシアへの窓口」として積極的に投資・ビジネスを進めている。ロシアのビジネス紙『エクスペルト』は在ロシア・フィンランドビジネスに注目して特集を組んだ(2021年3月23〜28日号、No.13)。本稿では同誌の情報などを紹介しながら、積極的にロシアビジネスに取り組んでいるフィンランドとの関係を見ていくことにしたい。(中馬瑞貴)


データリテラシー
中国公的機関によるロシア向け融資

 ロシア、ベネズエラ、アンゴラ、ブラジルおよびカザフスタン。2000年〜2017年にかけて中国のOOF(その他公的資金。輸出金融や投資、プロジェクトファイナンスとして提供)の受取額が多かった国のトップ5となります。特にロシアは受取額が多く、該当期間中の累計が1,250億ドルと、2位であるベネズエラの855億ドル、そしてそれ以下(アンゴラが406億ドル、ブラジルとカザフスタンが390億ドル)を大きく引き離しています。(長谷直哉)


産業・技術トレンド
MC-21主翼材料の国産化

 ロシアの航空産業は、スホーイスーパージェットに続く旅客機として、MC-21の開発を進めてきた。ライバル機種にない炭素繊維複合材製の主翼は、MC-21の長所の一つとして宣伝されていた。しかし、2018年に制裁により、主翼と尾翼の材料の輸入ができなくなった。MC-21の量産が危ぶまれる事態になった。もともとロシアではMC-21の主翼に使用できるレベルの炭素繊維の量産がなされていなかった上、使用される中間素材は特殊なものであったため、国産化の困難が予想されていた。ところが、制裁開始から2年半ほどで、ロシア製材料を使用した主翼が完成した。(渡邊光太郎)


エネルギー産業の話題
アレクペロフ社長が語るルクオイル

 2021年9月7日付けの『コメルサント』紙にルクオイルのアレクペロフ社長のインタビュー記事が掲載されました。同社長はその中で興味深いことを数多く述べていますが、今回はそれらの中から特に注目すべきものを取り上げ、その周辺の事情につき解説したいと思います。(坂口泉)


自動車産業時評
2021年上半期のロシア商用車市場

 本稿では、2021年上半期のロシアの商用車(トラック、バス、LCV)の生産と販売に関するデータをご紹介します。その他、2021年初頭時点での商用車の登録台数もご紹介します(生産の数字はASMホールディング発表のもので、販売・登録台数はAutostat発表のもの)。(坂口泉)


ロジスティクス・ナビ
ユーラシア・ランドブリッジの動き
―急成長と新たな課題―

 海上コンテナ輸送の混乱を追い風に、ユーラシア大陸横断鉄道が目覚ましい発展を続けています。反面、急増貨物への対応に新たな問題が生じています。2021年前半までの輸送実績値も併せて紹介します。(辻久子)


データバンク
ロシア乗用車市場のセグメント別男女比

 ロシアの自動車情報機関「Autostat」のサイトに、興味深いデータが掲載されたので、グラフにまとめて紹介しよう。これは、2018〜2020年にロシアの乗用車市場で新車を購入した顧客の男女比率を、車のセグメント別に見たものである。


ウクライナ情報交差点
史上最高の豊作に沸くウクライナ

 2021年2月号の本コーナーでお伝えしたとおり、農業立国ウクライナに一時期、暗雲が垂れ込めた。2020年に天候不順から凶作に見舞われ、それに伴い農産物輸出も落ち込んだものである。ところが、2021年には一転して天候に恵まれ、ウクライナは史上最高の豊作に恵まれている。以下で最新の状況をレポートする。(服部倫卓)


中央アジア情報バザール
中央アジアとアフガニスタンの経済関係

 2021年8月、アフガニスタンでイスラム過激派勢力タリバンが主導する新政権が発足した。情勢の先行きが不透明な中、アフガニスタンと国境を接する(トルクメニスタン、ウズベキスタン、タジキスタン)中央アジアへの注目が高まっている。ただし、日本や西側のメディアは、もっぱらユーラシア地域の安全保障やイスラム過激派といった文脈で中央アジアに関心を向ける傾向にある。一方で本連載では中央アジアとアフガニスタンの関係について、特に経済的な面に焦点を当ててみることにしたい。(中馬瑞貴)


デジタルITラボ
ベラルーシのスタートアップエコシステム

 先日、筆者は、Pulsar Venture Capitalがカザンで主催した戦略会議に出席してきた。Pulsar Venture Capitalは、ロシア・旧ソ連地域のシード・アーリーステージに投資を行うベンチャーキャピタルである。米国シリコンバレー、欧州(アイルランド)、日本、旧ソ連地域(ベラルーシ、ウクライナ、カザフスタン)に拠点ないしパートナー組織を有し、ロシア・旧ソ連地域のスタートアップがこれらの地域に海外展開するのをサポートしている。同会議内では、これら海外拠点からベンチャー投資のトレンドやスタートアップエコシステムについて、それぞれ報告が行われた。今回は、同会議内で行われたベラルーシのスタートアップに関する報告をもとに、同国のスタートアップエコシステムについて概観したいと思う。(牧野寛)


ロシアメディア最新事情
ロシアでのモラル違反と法律違反の受け止め方

 なんだか今回はお堅いタイトルになってしまいましたが、最近連続した2件のニュースを見聞きして、ロシア人にとっての法律とは、そしてモラルとは一体何だろう?と考えさせられました。どちらのニュースもロシア社会で大きな話題になり誰もが知っているものです。皆さんもぜひ一緒に考えてみてください。(徳山あすか)


ロシア音楽の世界
ボロディン:交響詩「中央アジアの草原にて」

 ロシア5人組とは、ピアノの名手で作曲家のミリイ・バラキレフを中心とした19世紀後半のロシア民族楽派の作曲家5人組。バラキレフ、キュイ、ムソルグスキー、ボロディン、リムスキー=コルサコフの5人。作曲家5人組と書いたが、当初集まった時には、このグループで音楽家だったのは、驚くべきことにバラキレフ1人だけ。キュイは要塞建築を専門とする軍人、ムソルグスキーは陸軍士官、リムスキー・コルサコフは海軍士官、ボロディンは化学・薬学の大学教員だった。今回は、この最年長者ながら5番目に加わった幾つもの顔を持つ凄い男、ボロディンを取り上げる。(ヒロ・ミヒャエル小倉)


おいしい生活
輸出量世界第2位のウクライナ産はちみつ

 ウクライナのはちみつ輸出が好調だ。2020年にウクライナは数量ベースで世界第2位のはちみつ輸出国へと躍進したそうだ(ちなみに第1位は中国)。そして、最近になってウクライナ産はちみつは日本市場にも浸透しているようだ。(服部倫卓)


記者の「取写選択」
クレムリンとノーベル平和賞

 「あなたを祝福します」。プーチン大統領はロシア紙「ノーヴァヤ・ガゼータ」編集長ドミトリー・ムラトフ編集長のノーベル平和賞受賞決定から間もない2021年10月21日、ソチでの内外有識者会合「ヴァルダイ会議」の席上、ムラトフにこう話しかけた。プーチンは反政権的な新聞人に祝意を示す大人の態度≠装いつつ、ゴルバチョフ元ソ連大統領やオバマ米大統領ら、ロシアで不人気な面々も受賞者だと指摘。ムラトフは彼らの「良い仲間」だと嫌みをぶつけた。(小熊宏尚)