ロシアNIS調査月報
2025年3月号
特集◆ロシア・NISビジネスと
ROTOBOの活動
 
特集◆ロシア・NISビジネスとROTOBOの活動
イベントレポート
第17回日本ウズベキスタン経済合同会議
イベントレポート
第15回日本トルクメニスタン経済合同会議
講演録
ロシアの反制裁措置と外国企業のリブランディング
ビジネス最前線
現地日本人起業家が語るアルメニアの魅力
ミニレポート
中央アジア建築技術・建材ミッション
―成果および現地事情報告―
ミニレポート
中央アジア・コーカサス受入型ビジネスマッチング
ミニレポート
中央アジアからコーカサスへと広がる投資環境整備
ミニレポート
ウクライナ侵攻後のロシア関連の情報提供活動
ミニレポート
モスクワ事務所での情報提供事業
おいしい生活
特有のブドウ品種が豊富なアルメニア・ワイン

調査レポート
資本関係の変化が目立つロシアの採金分野
ミニレポート
ロシアSIMの所持・取得規制強化と運用の現状
INSIDE RUSSIA
軍需以外は停滞感が出てきたロシアの鉱工業生産
データリテラシー
トランプ政権を縛るバイデン前大統領の「置き土産」
エネルギー産業の話題
ロシア石油ガス分野に対する米国の制裁
シベリア・北極圏便り
グリーンランド領有に係る米発言と露側の反応
ロシア極東羅針盤
消えゆく極東最大中古車市場
―グリーンコーナーの移転―
ロシアメディア最新事情
ロシアの遺体安置所をめぐる報道と実態
中央アジア情報バザール
過去最高を記録した中国の対中央アジア貿易
ウクライナ情報交差点
独自航路で活路を開いたウクライナの海運
コーカサス情報フォーカス
アゼルバイジャンの石油産業最新統計
ロシア音楽の世界
チャイコフスキー交響曲第4番ヘ短調
シネマで見るユーラシア
『蝶の渡り』:時と場所を越えて引き継がれるもの
業界トピックス
2025年1月の動き
ロシアを測るバロメーター
2025年1月までの動き
通関統計
2024年1〜11月の対ロシア・NIS諸国出入通関実績
記者の「取写選択」
戦争がある日常


イベントレポート
第17回日本ウズベキスタン経済合同会議

2024年10月31日(木)、東京のグランドプリンスホテル高輪において日本ウズベキスタン経済委員会およびウズベキスタン日本経済委員会主催のもと、「第17回日本ウズベキスタン経済合同会議(以下、合同会議)」が開催された。日本ウズベキスタン経済委員会は1994年1月の設立以来、両国間の貿易・投資振興と協力関係の発展を目的に日本あるいはウズベキスタンにおいて交互に合同会議を開催。今回の合同会議は前回2022年10月のウズベキスタン・タシケント開催以来、約2年ぶりの開催となった。
 以下、合同会議の概要について報告する。


イベントレポート
第15回日本トルクメニスタン経済合同会議

 2024年12月16日、トルクメニスタンのアシガバードにおいて、日本トルクメニスタン経済委員会およびトルクメニスタン日本経済委員会主催のもと、「第15回日本トルクメニスタン経済合同会議(以下、合同会議)」が開催された。日本トルクメニスタン経済委員会は1994年1月の設立以来、両国間の貿易・投資振興と協力関係の発展を目的に日本あるいはトルクメニスタンにおいて交互に合同会議を開催。今回の合同会議は、前回の合同会議が2022年12月に東京で開催されて以来、約2年ぶりの開催となった。
 以下、合同会議の概要についてご報告する。


講演録
ロシアの反制裁措置と外国企業のリブランディング

SEAMLESS Legal
ゲオルギー・ダネリア、レオニード・ズバレフ

 2024年12月3日(金)、ROTOBOはロシア情報提供セミナー「ロシアの制裁対抗措置の新動向と外国企業のリブランディングの展開」を東京都内で開催した。SEAMLESS Legal法律事務所(モスクワ)より2人の専門家を講師としてお招きし、ロシアの制裁対抗措置の新動向や、外国企業のリブランディングの展開などについて解説を行った。当日は関係者を含め27人が来場した。本号では、今回のセミナーの報告要旨をご紹介する。


ビジネス最前線
現地日本人起業家が語るアルメニアの魅力

在アルメニア日本人起業家 建入弘樹

 近年、ROTOBOではこれまで手薄だったコーカサスを対象とする事業に力を入れ始めています。その一環として、2024年9月にアルメニアの首都エレバンで現地調査を行いました。その際、アルメニア在住の数少ない日本人で、現地で様々なビジネスに携わる建入弘樹さんにお話を伺うことができました。アルメニアの投資環境の特徴やアルメニア人のメンタリティなど、現地に入り込んだ方ならではのお話をご紹介します。(長谷直哉)


ミニレポート
中央アジア建築技術・建材ミッション
―成果および現地事情報告―

 当会は2024年9月1〜7日にかけて、日本と中央アジア地域の建築分野での協力とビジネス振興を図ることを目的として、中央アジア建築技術・建材ミッションを、ウズベキスタン(タシケント)およびカザフスタン(アスタナおよびアルマトイ)に派遣した。今回訪問したカザフスタンおよびウズベキスタンでは、建設投資の拡大や経済政策の転換などを背景として、建設需要が拡大している。経済特区を設置するなどして、外資の誘致にも積極的に取り組んでいる。(齋藤竜太)


ミニレポート
中央アジア・コーカサス受入型ビジネスマッチング

 ROTOBOでは、経済産業省の助成を受けて中央アジア・コーカサス諸国から様々な業種の企業関係者を招聘し、日本企業との面談や展示会への参加を組織し、日本でのパートナーや資機材の調達先の発掘を支援している。以下では、中央アジア・コーカサス諸国からの受入型ビジネスマッチング事業を紹介することにしたい。(中居孝文)


ミニレポート
中央アジアからコーカサスへと広がる投資環境整備

 ROTOBOでは、経済産業省の助成を受けて、中央アジア諸国とのあいだで「投資環境整備ネットワーク」を設立し、各国ごとの情報ポータルサイトを運営している。2008年に開設したウズベキスタンを皮切りに、2021年のタジキスタンまで全5カ国とのあいだでネットワークを立ち上げた。  そして、2025年2月には、カスピ海を挟んで中央アジアと隣接するコーカサスの第1号としてアルメニアとのあいだでネットワークが開設された。以下では、中央アジアからコーカサスへと広がりつつある、投資環境整備ネットワーク事業について紹介することにしたい。(中馬瑞貴)


ミニレポート
ウクライナ侵攻後のロシア関連の情報提供活動

 2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻ともにROTOBOのロシア関連業務の内容も大きく変わった。それ以前は東方経済フォーラムやサンクトペテルブルグ国際経済フォーラムにおける日ロビジネス対話の組織やイノプロムをはじめとするロシアの産業展示会への参加など大型イベントが数多くあったが、ウクライナ侵攻後はそうした行事が軒並みストップした。他方、2022年2月末以降、日本を含む西側諸国による対ロ制裁やロシアの制裁対抗措置が続々と打ち出されるなか、ロシアに進出している日本企業の業務環境が激変した。当会としてもそうした状況に対応するため、ロシア関連業務を現状に即した形で見直しを行い、現在に至っている。本稿では、見直し後のロシア関連業務の概要を紹介する。(中居孝文)


ミニレポート
モスクワ事務所での情報提供事業

 当会は海外事務所としてモスクワ事務所を有しており(1991年9月開設)、ロシア現地に進出した日本企業に対する各種支援を実施しています。2022年2月24日からのロシアによるウクライナへの全面侵攻、そしてその後にG7諸国が中心となってロシアに科した経済制裁、またそれに対するロシアによる対抗措置の導入といった地政学的、また法務や貿易面での大きな情勢変化を受け、日本企業のロシア市場における各種事業活動は非常に困難な状況に陥りました。
 ただし、このような状況でありながらも、2025年現在も多数の日本企業がロシアに残り(あるいは残らざるを得ず)、制裁対象外の事業継続、拠点維持のためのコーポレート事業、事業縮小やそれに伴う各種清算業務、契約履行義務が残っている事業に対応し、苦労しながらも奮闘しています。(長谷直哉)


調査レポート
資本関係の変化が目立つロシアの採金分野

(一社)ROTOBOロシアNIS経済研究所
名誉研究員 坂口泉

 ロシアは世界有数の金の生産国で輸出量も多くなっているが、ウクライナ戦争開始後に他のロシアの主要輸出品目同様に金も制裁の対象となり、2022年3月にロシア産の金地金はLBMA(ロンドン貴金属市場協会)の基準を満たしていることを証明するグッドデリバリー(受渡適合品)の認定を取り消された。その結果、世界最大の金の取引所であるLBMA経由でロシア産の金地金を販売することが困難となった。それまでロシア産の金地金の大半がLBMA経由で販売されていたので、グッドデリバリーの認定取り消しはロシアの採金分野に壊滅的な打撃を与えるのではないかとみられていたが、ロシアの採金企業は代替の販売ルートを開拓することに成功し、一定のダメージは受けたものの致命傷を回避することには成功した。
 本稿では、金の国際価格の推移やウクライナ戦争開始後のロシアの大手採金企業の資本関係の変化などにも着目しながら、ロシアの採金分野の現状をご紹介する。


ミニレポート
ロシアSIMの所持・取得規制強化と運用の現状

 ロシアでは、2025年1月1日から外国籍市民および無国籍者(以下ではまとめて、外国人と表記)によるロシアSIMカードの所持および取得規制が強化され、関連手続きが複雑化した。新規にSIM契約を行う外国人だけでなく、すでにロシアSIMを所持しロシアにて携帯電話通信網を利用する外国人にも適用される。このため、新規契約者だけでなく、既存のSIM契約者も新規制にしたがい、従来の契約を同7月1日までに更新(再登録)しなければならない。
 したがって、今回の措置は新しくロシアに赴任する企業や団体の駐在員、すでにロシアで働いている駐在員、また頻繁にロシアへ出張するためロシアSIMを所持している企業や団体関の係者、その他何らかの目的で個人としてロシアに入国している外国人や外国人居住者に広く影響を及ぼし得る措置である。ロシアの携帯電話番号は様々な公共サービス、金融・消費者向けサービスにて本人認証用途で使用されていることから、ロシアで生活する上でSIM契約が問題なく行えるかどうかは重要である。本稿では現時点(2025年1月24日時点)で把握できているSIM個人契約をめぐる今回措置の内容と対処方法について整理しておく。(長谷直哉)


INSIDE RUSSIA
軍需以外は停滞感が出てきたロシアの鉱工業生産

  ロシア統計局は2月5日、2024年のロシア鉱工業生産統計を発表した。今回は、主な指標をグラフで示しつつ、ロシアの鉱工業生産が軍需以外は停滞感が出てきたことを報告したい。(服部倫卓)


データリテラシー
トランプ政権を縛るバイデン前大統領の「置き土産」

 今回は、2025年1月10日および15日付で公表された米国による対ロ追加制裁についての整理と分析となります。ただし、このうち、タンカー制裁(184隻が対象。うち96隻がロシア企業保有分。残りは外国企業保有の13隻と、いわゆる「影の船団」とされる船舶75隻)やその他二次制裁ついては本稿で詳しく論じません。
 本稿で焦点を当てるのは、ロシア企業や団体に対する今次制裁指定と再指定(SDN指定)の対象と仕組み、そして、これらがトランプ政権の対ロ政策を縛る可能性についてです。今次制裁にはこれまでの措置と異なり、米政権移行を念頭に置いた巧妙な仕掛けが盛り込まれています。また、第1次トランプ政権時の対ロ制裁解除の事例とその過程の検証を併せて行い、バイデン前政権による最後の対ロ制裁がいかに重いものであったか示します。(長谷直哉)


エネルギー産業の話題
ロシア石油ガス分野に対する米国の制裁

 2024年12月中旬にバイデン政権が「置き土産」としてロシアのエネルギー分野を主要な対象とする大規模な制裁の準備を行っているとのマスコミ報道が出ました。このマスコミ報道は現実のものとなり、2025年1月10日に米国は、ロシアの石油分野、いわゆる「影の船団」、ロシアのLNG部門などを対象とする制裁を発動しました。本稿では、今回制裁の対象になった石油会社やLNGプラントなどの概要と、制裁が及ぼす影響について言及します。(坂口泉)


シベリア・北極圏便り
グリーンランド領有に係る米発言と露側の反応

 トランプ米大統領が今期就任前の2024年12月22日に「グリーンランドの領有は米国の国家安全保障と世界の自由のために絶対に必要だ」と述べたことがロシアにも波紋を及ぼしています。(長谷直哉)


ロシア極東羅針盤
消えゆく極東最大中古車市場
―グリーンコーナーの移転―

 2024年12月、ウラジオストクの中古車青空市場「グリーンコーナー(緑の角)」を1年ぶりに訪ねた。(齋藤大輔)


ロシアメディア最新事情
ロシアの遺体安置所をめぐる報道と実態

 ウクライナ戦争では双方が多くの死者を出していますが、ニュースでは、死者数の真偽にばかり焦点が当たっているように思います。では実際のところ、遺体はどのように扱われ、どんなプロセスを経て遺族のもとへ返るのでしょうか。ロストフ州のメディア報道と筆者自身の取材から、ロシア側の実態について考えてみます。(徳山あすか)


中央アジア情報バザール
過去最高を記録した中国の対中央アジア貿易

 2025年1月24日、中央アジア各国のメディアが、中国の関税当局である海関総署による発表として、2024年の中国による対中央アジア貿易が対前年比54億ドル増の総額948億ドルで過去最高に達したことを一斉に報道した。
 年々、拡大する中国と中央アジアの貿易については、2022年にキルギス、2023年にはカザフスタンとウズベキスタンでそれぞれ、ロシアを抜いて中国が貿易相手国第1位となっている。(中馬瑞貴)


ウクライナ情報交差点
独自航路で活路を開いたウクライナの海運

 ウクライナは、産業の面ではもともと、穀物および植物油を中心とする農産物・食料品、鉄鉱石、鉄鋼を輸出することを中心的な生業としていた。これらの輸出品は、ほぼ全面的に、黒海・アゾフ海の港で船積みされ、海路で運ばれていた。したがって、2022年2月に始まるロシアの全面軍事侵攻で、ウクライナが一部の港湾を失った上に、ロシア軍により黒海の海路を塞がれたことは、経済面での大打撃となった。(服部倫卓)


コーカサス情報フォーカス
アゼルバイジャンの石油最新統計

 2025年1月24日、中央アジア各国のメディアが、中国の関税当局である海関総署による発表として、2024年の中国による対中央アジア貿易が対前年比54億ドル増の総額948億ドルで過去最高に達したことを一斉に報道した。
 年々、拡大する中国と中央アジアの貿易については、2022年にキルギス、2023年にはカザフスタンとウズベキスタンでそれぞれ、ロシアを抜いて中国が貿易相手国第1位となっている。(中馬瑞貴)


ロシア音楽の世界
チャイコフスキー交響曲第4番ヘ短調

 チャイコフスキーのパトロン、ナデージタ・フォン・メック夫人については、昨年12月号のこのコラム「懐かしい土地の思い出」でも触れた。彼の生涯の中で不思議な存在で、彼と一度も会うことがなかったメック夫人。決して直接は会わないとの条件での不思議な文通を1876年から始めた彼女は、ロシアの鉄道王、大富豪の未亡人だった。1890年までの14年もの間、チャイコフスキーは同夫人から経済支援を受けていて、彼と夫人の間には頻繁に恋文のような熱烈な手紙が交わされた。今回取り上げる傑作、交響曲第4番(通称:チャイ4)は、フォン・メック夫人に捧げられ、彼女はこの曲を「私たちの交響曲」と誇らしげに呼んだ。メック夫人に捧げられたものの、夫人からの匿名希望を受けて、献辞は「最良の男友達に」とされた。(ヒロ・ミヒャエル小倉)


シネマで見るユーラシア
『蝶の渡り』:時と場所を越えて引き継がれるもの

 冒頭での「ジョージアはソ連崩壊後、独立を宣言したが、ロシアとの戦争で国土の20%を喪失、アブハジアと南オセチアは今もロシアの占領下にある」というテロップの後、ジョージア国内にあったレーニン像が引きずり倒されるモノクロ映像がこれでもかと流される。(芳地隆之)


記者の「取写選択」
戦争がある日常

 ロシアによるウクライナ全面侵攻は、今年2月24日で丸3年となる。この間、各国の報道機関はおびただしい量の報道をウクライナから発信。共同通信社はキーウ支局を開設し、常駐支局長、複数の応援出張者、そして現地スタッフとともに現場から報じ続けている。しかし、報道によって見えなくなるものがあると、ウクライナ国営通信社ウクルインフォルムの日本語版編集者、平野高志氏は懸念する。それは「戦争がある日常」だという。(小熊宏尚)