ロシアNIS調査月報
2025年4月号
特集◆ロシア・NISの石油ガスと
脱炭素の展望
 
特集◆ロシア・NISの石油ガスと脱炭素の展望
調査レポート
対ロシア制裁の最新状況とその効果
―ディスカウント戦略から真の禁輸へ―
調査レポート
ロシアの再生可能エネルギー:現状と展望
調査レポート
脱酸素に向けたロシアの森林資源のポテンシャル
調査レポート
独裁が長期化するベラルーシの経済・産業模様
ビジネス最前線
日本製風車をロシアや中央アジア・コーカサスへ
ビジネス最前線
インフラ整備で中央アジア域内展開を目指す
エネルギー産業の話題
2024年のロシアの石油ガス分野
中央アジア情報バザール
注目を集めるトルクメニスタンの天然ガス
コーカサス情報フォーカス
COP29議長国を務めたアゼルバイジャンの脱炭素政策

講演録
対ロシア制裁の実績と将来の展望
ロシア極東羅針盤
ズヴェスダ造船所譲渡問題
―ロスネフチとVTBバンク―
データリテラシー
インフレ要因としての民間債務残高の増加
INSIDE RUSSIA
国交75周年の中の2024年ロ中経済協力
ロシア政財界人物録
ショーヒンRSPP会長によるロシア経済の見方
ロシアメディア最新事情
クルスク侵攻から半年で深まる住民の苦悩
ウクライナ情報交差点
2024年のウクライナ貿易は完全復調とは行かず
ロシア音楽の世界
ショスタコーヴィチ交響曲第8番
シネマで見るユーラシア
『犬と戦争 ウクライナで私が見たこと』―戦場に残されるのは弱い者たちです―
業界トピックス
2025年2月の動き
ロシアを測るバロメーター
2025年2月までの動き
通関統計
2024年の対ロシア・NIS諸国出入通関実績
おいしい生活
騎馬民族の伝統スポーツをイメージしたチョコ
記者の「取写選択」
マルタからヤルタへ


調査レポート
対ロシア再生の最新状況とその効果
―ディスカウント戦略から真の禁輸へ―

エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)
企画調整部企画課長(併)調査部担当調査役 原田大輔

 ウクライナ侵攻に伴う対露制裁発動から丸3年、ロシア財政のコアである石油収入を断つ石油禁輸及び石油価格上限設定措置発動から2年が経過した。制裁の効果は果たして上がっているのかどうか。G7各国の制裁当局の関心事でもあるこの問題については、定点ではなく一定期間を比較しなければ、正確な回答は出ない。1年前も本誌にて「ロシア産石油禁輸及び価格上限設定措置の実効性―対露制裁の現状と効果―」(『ロシアNIS調査月報』2024年4月号)を執筆し、侵攻直後からどのような対露制裁が課されてきたのか、そしてどのような効果があるのかを分析した。本稿では2024年という通年の実績をベースにその効果の検証をアップデートしていく。


調査レポート
ロシアの再生可能エネルギー:現状と展望

関西大学商学部 教授
徳永昌弘

 本稿ではロシアにおけるグリーン・トランジションの歩みを確認した上で、2022年2月以降に順次発動中のロシア向け経済制裁がどのような影響を再エネ事業に及ぼしているかを検証したい。


調査レポート
脱炭素に向けたロシアの森林資源のポテンシャル

北海道大学スラブ・ユーラシア研究センター 客員准教授
山脇大

 世界有数のエネルギー資源および森林資源保有国であるロシアにおける森林資源の利活用は、同国の2060年ネットゼロ目標の達成可能性を左右する鍵として、また国際的な気候変動枠組みの進展および履行の趨勢を担う重要な論点として注目されている。そこで本稿では、まずロシアにおける森林保有の状況について鳥瞰した上で、同国の気候変動・エネルギー戦略における森林資源の位置づけを確認しよう。そして、昨今の経済制裁下にあるロシアにおける森林資源のポテンシャルについて、脱炭素の観点から検討してゆく。


調査レポート
独裁が長期化するベラルーシの経済・産業模様

北海道大学スラブ・ユーラシア研究センター 教授
服部倫卓

 本稿では、2025年ベラルーシ大統領選を簡単に振り返った上で、独裁が長期化する中でのベラルーシ経済・産業の実情を論じる。


ビジネス最前線
日本製風車をロシアや中央アジア・コーカサスへ

株式会社駒井ハルテック常務取締役兼常務執行役員
環境インフラ本部長 駒井えみ

 広大な面積をもつロシア、とくに極東や北極圏では、ディーゼル発電をベースとした分散型電源に依存している独立系統地域(マイクログリッド)が少なくありません。株式会社駒井ハルテックは、カムチャツカやサハ共和国においてディーゼル発電に組み合わせる形で風車を設置し、当該地域の電力供給に貢献してきました。現在、同社はロシアでの経験を活かし、中央アジア・コーカサス地域で風力発電事業を展開しようとしています。今回は株式会社駒井ハルテックの駒井えみ常務取締役兼常務執行役員・環境インフラ本部長にお話をお聞きしました。(中居孝文)


ビジネス最前線
インフラ整備で中央アジア域内展開を目指す

株式会社ムロオシステムズ 社長室長(海外事業担当)/海外事業部長
沓野龍夫

 今回は2019年よりキルギスに進出しているIT企業「ムロオシステムズ」(東京都中央区)の沓野龍夫様にお話を伺いました。同社は数少ない日系企業のキルギスへの進出事例であり、防災関連事業や水力発電事業に従事しております。2022年12月にはジャララバード州の水力発電所建設事業に関する基本合意を、2024年9月にはイスィク・クリ州のチョン・ケミン小水力発電所開発事業に関する投資契約を、キルギス政府と結ばれています。今回のインタビューでは、同社が現地で従事されている事業の現状に加え、今後の展望や現地が抱える課題などについてお話を伺いました。(中馬瑞貴)


エネルギー産業の話題
2024年のロシアの石油ガス分野

 ロシアのノヴァク副首相が、「エネルギー政策」というロシアの雑誌の2025年1月号に、2024年の同国のエネルギー分野(石油、ガス、石炭、電力)の動きを総括した論文を寄稿しました。今回はその論文で紹介されている石油ガス分野に関連する数字を軸に2024年の当該分野の状況について解説します。(坂口泉)


中央アジア情報バザール
注目を集めるトルクメニスタンの天然ガス

 2024年後半から2025年にかけて、トルクメニスタンの天然ガスに関する報道が相次いだので、本稿ではそれらをまとめて紹介する。(中馬瑞貴)


コーカサス情報フォーカス
COP29議長国を務めたアゼルバイジャンの脱炭素政策

  COP29の議長国を務めながらも、アリエフ大統領が首脳級会合での演説で石油とガスを「神からの贈り物」と表現し、産油国批判に苦言を呈したアゼルバイジャンだが、脱炭素政策は着実に進んでいる。そこで今回は、アゼルバイジャンの脱炭素政策について最新の動向を踏まえて解説する。(中馬瑞貴)


講演録
対ロシア制裁の実績と将来の展望

米国ウェズリアン大学 教授
ピーター・ラトランド

 2025年2月14日(金)、ROTOBOはロシア情報提供セミナー「対ロシア制裁の実績と将来の展望」をオンラインで開催した。米国における著名なロシア政治・経済研究者である米国コネチカット州・ウェズリアン大学のピーター・ラトランド教授を講師としてお招きし、欧米による対ロシア制裁の実績や将来の展望などについて解説をしていただいた。また、ロシア経済をご専門とされている上智大学・安達祐子教授にコメント・ご質問もいただいた。当日は関係者を含め134人が聴講した。本号では、今回のセミナーの報告要旨をご紹介する。(中馬瑞貴)


ロシア極東羅針盤
ズヴェズダ造船所譲渡問題
―ロスネフチとVTBバンク―

 ロシア最大手の石油会社・ロスネフチが取り組んできた「ズヴェズダ造船所再建プロジェクト」(沿海地方ボリショイカーメニ市)が、国営の統一造船コーポレーションに譲渡されることが決まった。マントゥロフ第一副首相によると、2025年3月までの合意を目指すという。(齋藤大輔)


データリテラシー
インフレ要因としての民間債務残高の増加

 2024年の年間インフレ率は9.52%となり、2023年の7.42%を大きく上回る結果となりました。2024年のロシアの政策金利は16?21%と非常に高い水準に設定され続け、ロシア中央銀行はインフレ抑制のために尽力し続けてきましたが、未だ物価が落ち着く機運は見えてこない状態にあります。(長谷直哉)


INSIDE RUSSIA
国交75周年の中の2024年ロ中経済協力

 中華人民共和国が初めて外交関係を結んだ相手国は、今日のロシアの前身に当たるソ連である。1949年10月1日に毛沢東が中華人民共和国の建国を宣言すると、ソ連は世界にさきがけてそれを承認し、早くも翌2日に新生中国と外交関係を樹立している。2024年10月2日、外交関係樹立75周年を祝して、習近平中国国家主席とプーチン・ロシア大統領は祝辞を交換し合った。それでは、国交75周年となる2024年は、経済関係の面ではどんな1年だっただろうか?(服部倫卓)


ロシア政財界人物録
ショーヒンRSPP会長によるロシア経済の見方

 本稿では、2024年12月28日にRIAノーヴォスチが公開したショーヒン・ロシア産業家企業家同盟(以下、RSPP)会長のインタビューより、現在のロシア経済の課題や2025年の見通しについて語った部分を抜粋し整理しました。同会長は、高金利の環境下での企業の苦悩や、労働力不足と経済の過熱の関係性、またそれらが投資活動に及ぼす影響などについて慎重な語り口で自らの見解を示しています。(長谷直哉)


ロシアメディア最新事情
クルスク侵攻から半年で深まる住民の苦悩

 ウクライナ軍がクルスク州に越境攻撃を開始してから半年以上が経ちました。ロシア軍は2月末時点で、当初占領されていた地域のうち64%を奪還したと表明しています。その間、クルスク州の国境に住んでいた人々はどうなったのでしょうか。本稿では、ルポルタージュを配信しているロシアメディア「コンテクスト」の報道と、自身のクルスクでの取材経験を交えて、現地住民が抱える様々な問題について掘り下げます。(徳山あすか)


ウクライナ情報交差点
2024年のウクライナ貿易は完全復調とはいかず

 2022年2月以降、ウクライナがロシアによる軍事侵攻にさらされても、ウクライナ統計局による貿易統計の発表は続いている。2024年の貿易実績も今般無事に発表されたので、今回は恒例によりこのデータを紹介する。。(服部倫卓)


ロシア音楽の世界
ショスタコーヴィチ交響曲第8番

 ベートーヴェンが第九交響曲「合唱付き」という交響曲の金字塔を世に出して以来、全ての作曲家が交響楽でベートーヴェンを越えられるのか?との苦悩を味わいながら交響曲を作曲して来た。楽聖ベートーヴェンへの畏敬の念から、ブラームスが第1交響曲を書くのに21年もの時間をかけたのは有名な逸話。以降、ブルックナー、マーラーと、べ―トーヴェンの規模を超える大きな交響曲を書いた大作曲家は出たが、2人とも第10交響曲を完成させることなく世を去っている。しかし、20世紀になって、ついに第九で終わることなく、15曲もの交響曲を世に出した大作曲家が現れる。ソ連の天才作曲家ドミトリー・ドミトリエヴィチ・ショスタコーヴィチ(1906〜1975)である。(ヒロ・ミヒャエル小倉)


シネマで見るユーラシア
『犬と戦争 ウクライナで私が見たこと』―戦場に残されるのは弱い者たちです―

 山田あかね監督は東日本大震災後、福島第一原発事故20km圏内に入り、置き去りにされた犬や猫の取材をしたことがある。飼い主は一時的な避難だからと彼らを連れて行かなかった。犬たちは倒壊した建物の並ぶ商店街を歩き回り、猫たちは家主のいない家のなかに集まっていた。(芳地隆之)


記者の「取写選択」
マルタからヤルタへ

 「冷戦の終結」と彫られたモニュメントが、海辺にぽつりと立っていた。1989年12月、地中海の島国マルタでブッシュ(父)米大統領とソ連のゴルバチョフ書記長が行った会談が冷戦終結の節目となったことを記念し、首脳会談の会場となったソ連客船マクシム・ゴーリキー号が停泊した港の近くに設置されたものだ。(小熊宏尚)