ロシアNIS調査月報
2006年11月号
特集◆加速するロシアの
自動車市場
特集◆加速するロシアの自動車市場
調査レポート
ロシアのモータリゼーションと
ビジネスチャンスの行方
調査レポート
モスクワ国際自動車見本市視察報告
調査レポート
ロシアの自動車周辺産業
―タイヤ・ベアリング・バッテリー
調査レポート
極東中古車ビジネス最前線
調査レポート
ロシアの外国投資誘致政策
―自動車部門を中心に
ビジネス最前線
ロシアに浸透したブリヂストン・ブランド
データバンク
2006年上半期のロシアの乗用車市場
データバンク
数字でみる中古車輸出ビジネス
ロシア文化へのいざない
ロシアの女性ドライバー
月刊エレクトロニクスNews
曲がり角に来たロシアのカーオーディオ市場
商流を読む
普及が遅れるロシアのレンタカー業

報告
当会の名称変更と新体制について
ビジネストレンド
2006年7-8月分
データバンク
2006年上半期のロシア経済
データバンク
2006年上半期の日本の対CIS主要国貿易統計
ユーラシア巡見
欧州最貧国モルドバを行く
ロシア産業の迷宮
WTO加盟とロシアの農業問題
クレムリン・ウォッチ
コラプションとビジネス
日ソ・日ロ経済関係の
舞台裏
ロシアのエネルギーとの出逢い
―ソ連東欧貿易会調査部の思い出
エネルギー産業の話題
アレクペロフ・ルクオイル社長 大いに語る
ノーヴォスチ・レビュー
小売チェーンは百万都市に飽き足らなくなった
ドーム・クニーギ
岩下明裕編著『国境・誰がこの線を引いたのか
―日本とユーラシア』


ロシアのモータリゼーションとビジネスチャンスの行方

『A・M NETWORK』 編集長
貴堂郁

はじめに
 8月末から9月頭にかけてモスクワ、サンクトペテルブルグを訪問した。
 街中には海外ブランドの高級車からリーズナブルな国産車まで、実に様々な国籍、年式の車を見ることが出来た。
 バスの窓から無意識で追いかけていたのは、決してきれいではないが、しっかりと生活の足として使われている古い国産車たちだった。
 突然モータリゼーションと騒ぎ立てている中国に比べるとロシアのそれはなんとなくおっとりとしており、醸し出す歴史の片鱗を感じることが出来る。また一般ドライバーの交通マナーひとつとってみても、秩序のない中国に比べ、ロシアのモータリゼーションははるかに大人だなと感じた。


モスクワ国際自動車見本市視察報告

ロシアNIS経済研究所 調査役
服部倫卓

はじめに
8月30日から9月10日にかけて、モスクワの展示会場「クロックス・エクスポ」において、「モスクワ国際自動車サロン(オートサロン-2006)」が開催された。急激な成長が続くロシアの自動車分野において、1年で最大の祭典とも言える盛大な見本市である。9月上旬、折り良くモスクワに滞在していた筆者は、この見本市をじっくりと視察することができた。以下では、この見本市の概要と、視察した印象について報告してみたい。


ロシアの自動車周辺産業
―タイヤ・ベアリング・バッテリー ―

ロシアNIS経済研究所 調査部次長
坂口泉

はじめに
1.タイヤ部門
2.ベアリング生産部門の状況
3.自動車用バッテリー生産部門
まとめ

はじめに
 トヨタ、日産、および、その他多数の外国自動車メーカーが次々とロシアでの現地生産の意向を表明した結果、ロシアの自動車周辺産業への関心も最近、急激に高まっている。そこで、本稿では、とくに日本企業にとって関心が高いと思われるタイヤ、ベアリング、バッテリーの3つの自動車関連部門をとりあげ、その概況を紹介する。


極東中古車ビジネス最前線

ロシアNIS経済研究所 研究員
齋藤大輔

はじめに
1.中古車ビジネスの現状
2.今後の展望と課題

はじめに
 ロシア向け中古車輸出が急増している。ロシア極東地域で走る車の90%以上は日本製中古車だ。その波は西へと広がる。極東の港には、中古車を満載した貨物船が頻繁に出入りする。極東ロシア人の日本製中古車への人気は信仰に近いものがある。日本とロシア極東との間の最大の貿易商品は、以前は水産物であったが、今は中古車関連がその地位を占める。日本製中古車の浸透を快く思わない当局とロシア国内メーカーは、どうにかして規制しようと模索するが、上手くいっていない。中国に「上に政策あれば、下に対策あり」という言葉があるように、業者はあの手この手を使って生き残りを図る。中古車取引には、マフィアの介在、違法通関、脱税などダーティなイメージがつきまとう。そこで、「極東中古車ビジネス最前線」と題して、極東中古車ビジネスの現状と課題について報告する。筆者は2003年4月〜2006年4月にかけて在ウラジオストク日本国総領事館に経済専門調査員として赴任し、現地でロシア極東の中古車市場の動向をフォローしてきた。本報告は極東税関や中古車業者へのヒアリング、新聞報道、現場調査をもとにまとめたものである。最初にお断りしておくが、内容については、できるだけ実態を把握するよう努めてきたつもりであるが、事実と異なるという指摘もあるかもしれない。ただ、そうしたものも含め、ロシア極東の熱い中古車ビジネスを感じてもらえたら幸いである。


ロシアの外国投資誘致政策
―自動車部門を中心に―

ロシア科学アカデミー東洋学研究所 主任研究員
V.シュヴィトコ

はじめに
1.産業政策の登場と最近の動き
2.産業政策の構想と外資導入政策
3.自動車部門「発展戦略」と外資参加問題
4.政府の見解の変化
5.自動車部門への外資導入を図る諸制度

はじめに
 ロシアの財政がここ数年、いわゆる「オイル・マネー」に溢れれている状況下で、産業政策の望ましい姿についての議論がロシアで活発化した。国家財政をはじめ公的部門において、ある程度の余裕が現れてきた中で、ロシアの主要産業の今後の動向やその方向性にかかわる当局の受け身のスタンスは理解できないとの主張が広がってきた。連邦財政収支の黒字を形成する「余分な」税収などを部分的にでも活用して、産業構造の再編と最適化、設備投資の増大などをもたらすはずの産業政策を実施する要求が高まっている。
 このムードが社会に広がっていることの影響を受けて、プーチン大統領も、関係する官庁や閣僚から、より積極的で世論にわかりやすく紹介できるような政策を(少なくとも公のところで)求めるようになった。このような雰囲気の中で、今まで事実上ネグレクトされていたロシアの製造業の主要産業にかかわる政府の文書、行動プログラムなどが発表されるようになり、外資を含む民間資本をこれらの産業に誘致する措置も実験的にでも利用するようになっている。
 なかでも、自動車部門にかかわるロシア政府の最近の動きは、上述の政策見直しの代表的な例である。1990年代の無関心から現在の政策的配慮までの道はとても長いものではあったが、民間資本、とりわけ外国投資の役割をロシア当局がどう評価しており、その誘致のためにどのような措置をとるのを可能と考えているかは、上述の観点からみて検討するに値する。
 以下、これに関する事実関係を整理するとともに、筆者の主観的なコメントを読者の皆様方にご紹介する。


ビジネス最前線
ロシアに浸透したブリヂストン・ブランド

潟uリヂストン 中近東・アフリカ・ロシア事業本部
本部長 金原雄次郎さん
部長 佐久間章一さん
ロシアユニットリーダー 松本和己さん

はじめに
 今回はブリヂストンのロシアビジネスの中核を担う3人の方々にご登場いただき、ロシアのタイヤ市場に対する見方、同社のロシア現地法人である販売会社(ブリヂストンCIS)のご活動、また、現地駐在時代の印象等についてお話いただきしました。ブリヂストンがモスクワに駐在員事務所を開設したのは1995年、現地法人を設立したのはロシア経済危機後の1998年末と、ロシアに進出する日系企業がまだ珍しかったころです。その後はロシア経済が好調を継続し、モスクワにある日本商工会(ロシア進出日系企業が中心)の会員数も130社以上になるなか、ブリヂストンは現地に浸透し、更に販売を伸ばしていく可能性を見据えながら、ロシアビジネスを展開しています。


ロシア文化へのいざない
ロシアの女性ドライバー

はじめに
 今号はロシアの自動車特集なので、少々無理はあるが、このコーナーでも車のことを取りあげてみたい。
 日本や欧米でも、運転好きは女性よりも男性の方が多いし、職業ドライバーは圧倒的に男性の方が多い。だから車といえば男性的なイメージがあることは確かだが、ロシアでは、その傾向がより強いように思われる。
 しかし近年では、ロシアでも車を運転する女性が増えてきている。そこで以下では、ロシアの女性ドライバーと社会の変化について考えてみたいと思う。(山本靖子)


月刊エレクトロニクスNews
曲がり角に来たロシアのカーオーディオ市場

 今月から始まる新コーナー「月刊エレクトロニクスNews」。毎回、ロシアの家電・エレクトロニクス分野における最新の話題や情報を一つ取り上げて、ご紹介してまいります。第1回の今回は、自動車特集に合わせて、カーオーディオの情報をお届けすることにいたします。


商流を読む
普及が遅れるロシアのレンタカー業

 米国や西欧諸国に旅行・出張に行けば、空港でレンタカーを借りてそのまま車で行動するということは珍しくもなんともない。しかし、ことロシアとなると、レンタカー会社の存在感は希薄である。ロシアのレンタカー事情は、どうなっているのだろうか? ロシアの自動車専門誌『QUATTRORUOTE』2006年8月号に、このテーマに関する記事が載っているので、その要旨を紹介しよう。


当会の名称変更と新体制について

はじめに
 このほど当会は、会の名称を「社団法人ロシア東欧貿易会」から「社団法人ロシアNIS貿易会」へと変更いたしました。これは、いわゆる「東欧諸国」を定款上の事業対象から外したことに伴うものです。そして、「東欧」に代わり、「NIS」(ロシア以外の旧ソ連の新興独立諸国)を、会の新名称に冠することとなりました。これを契機に、私どもは日本とロシアNIS諸国間の経済・貿易関係の促進という使命を全うすべく、より一層努力して参る所存です。
 以下では、会の名称変更とそれに伴ういくつかの変更点につき、会員および関係各位の皆様にご案内申し上げます(『ロシアNIS経済速報』2006年9月5日号(No.1373)より再録)。


ユーラシア巡見
欧州最貧国モルドバを行く

ロシアNIS経済研究所 調査役
服部倫卓

はじめに
 9月10日から14日にかけて、モルドバに出張して現地調査を実施してきた。モルドバは、日本からはるか離れた旧ソ連の南西部に位置する。人口359万の小国であり、欧州CIS諸国のなかでは最も経済発展水準が低いということもあって、我が国で話題になることは稀である。私どもロシアNIS貿易会の事業対象国ではあっても、近年当会から同国に出向いた者は皆無であり、私自身初めてのモルドバ出張である。
 しかし、このモルドバという国は、本格的なビジネスの対象にはなりにくいにしても、知的好奇心を大いにかき立ててくれる、すこぶる面白い国なのだ。今回のモルドバ出張で、そのことを改めて実感するとともに、認識を新たにさせられた点も多々あった。以下、この小文では、現地調査の結果見えてきた最新のモルドバの国情について報告する。


ロシア産業の迷宮
WTO加盟とロシアの農業分野

はじめに
 ロシアのWTO加盟問題は、米国との二国間交渉が難航していることもあり、先行きが不透明となっている。ロシアのWTO加盟交渉を難航させている要因として、金融市場開放の問題、知的財産権保護の問題、航空機の輸入関税の問題等とならび、農業問題が挙げられることが多い。米国との二国間交渉では、食肉の輸入割当制度が問題視されたといわれているし、やはりまだ二国間交渉が妥結していないコスタリカは粗糖の輸入関税障壁を問題にしているようである。
 本稿では、ロシアのWTO加盟問題を考える上で無視することができない、食肉の輸入割当制度と粗糖の輸入関税障壁について説明する。 (坂口泉)


クレムリン・ウォッチ
コラプションとビジネス

 ロシアの政界では、よく秋は内政の季節ということを言います。今年は大統領の選手交代に向かって内部調整が盛んに行われているところです。このあたりの話は近いうちに取り上げるとして、今回は、ロシア最大の泣き所である汚職体質について考えてみます。他国のあら探しはよい趣味ではありませんが、ロシアが汚職大国であることは、エネルギー大国であることと同じくらいに世界公認の事実のようですし、プーチン大統領もことあるごとに汚職の蔓延を指摘しているわけですから、誹謗にはならないでしょう。また、この問題は、9月に起きた、ロシアの投資環境への評価に大きな傷をつけかねない2つの事件とも関連しています。
 2つの事件というのは、サハリン2プロジェクト工事差し止めの可能性と、ロシア中央銀行第一副総裁の暗殺です。両方とも、それぞれの意味で、ユーコス事件よりも外国企業界への衝撃はむしろ大きかったのではないかと思います。(月出皎司)


エネルギー産業の話題
アレクペロフ・ルクオイル社長大いに語る

 このコーナーでは、ロシアの新聞・雑誌に掲載されたエネルギー関連記事をベースに、ロシア・NIS諸国のエネルギー分野のトピックスをご紹介してまいります。第1回目は、2006年8月31日付のロシア経済紙『ヴェードモスチ』に掲載されたロシア最大の石油会社「ルクオイル」のアレクペロフ社長のインタビュー記事の中から、興味深い発言部分を取り上げ、その発言の背景等について解説いたします。