ロシアNIS調査月報2007年1月号特集◆ロシア・NIS諸国の電力部門 |
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特集◆ロシア・NIS諸国の電力部門 |
調査レポート |
危機に瀕するロシア電力分野とビジネスチャンス |
Interview |
技術的観点から見た電力設備更新問題 技術評論家(元(社)海外電力調査会)藤井晴雄さんに聞く |
エネルギー産業の話題 |
ロシア電力業界の注目企業 |
月刊エレクトロニクスNews |
当世ロシア・エアコン事情 |
ノーヴォスチ・レビュー |
欧州の原子力発電所市場に復帰したロシア |
ノーヴォスチ・レビュー |
構造改革が進むロシアの原子力部門 |
ノーヴォスチ・レビュー |
ロシアと中央アジアのエネルギー協力 |
データバンク |
CIS諸国の電力需給統計 |
調査レポート |
ロシアの化粧品市場の動向 |
ビジネス最前線 |
バージンダイヤモンドという新しいブランド |
ユーラシア巡見 |
大統領選挙後のタジキスタン |
データバンク |
ロシアの小売チェーン・ベスト200 |
データバンク |
CIS諸国における重要物資の需給関係 |
ビジネストレンド |
2006年10月分 |
ロシア産業の迷宮 |
風雲児オレグ・ミトヴォリ |
クレムリン・ウォッチ |
プーチン政権の決算予想(1) 第二次チェチェン戦争 |
ロシア文化へのいざない |
ロシアのお正月 |
日ソ・日ロ経済関係の 舞台裏 |
調査研究から実践 ―ソ連東欧貿易会からの旅立ち |
日本センター所長 リレーエッセイ |
暗くて寒いペテルブルグと地味で暗い住民 |
商流を読む |
危機をバネに再編を遂げるロシアのワイン業界 |
自動車産業時評 |
日本からの自動車・同部品の輸送 |
ドーム・クニーギ |
みずほ総合研究所著 『BRICs ―持続的成長の可能性と課題』 |
通関実績 |
2006年1〜9月の日本の対ロシア・NIS諸国 輸出入通関実績 |
危機に瀕するロシア電力分野とビジネスチャンス
ロシアNIS経済研究所 調査部次長
坂口泉
はじめに
1.電力危機の背景にある諸問題
2.電力危機の具体例
3.危機対策
4.自家発電設備建設の動き
5.電力設備・機器納入をめぐる動き
まとめ
はじめに
最近、ロシアの電力分野をめぐる状況は厳しさを増している。経済の好調さを背景とした電力需要の急激な伸びに電力供給が追いつかないという状況が生じつつあるのだ。たとえば、2005年末から2006年にかけての冬には、モスクワ(モスクワ市およびモスクワ州)、サンクトペテルブルグ(およびレニングラード州)、ロシア最大の石油ガス産地であるチュメニ州(ハンティ・マンシースク自治管区およびヤマロ・ネネツ自治管区を含む)で部分的ではあるが給電制限が行われた。また、2006年5〜6月にも、モスクワなどではエアコンの使用量の増加を主因とする電力不足が生じた。もし2006年末から2007年にかけての冬にも、前年並みの厳しい寒波が到来するようだと、給電制限が行われる地域はさらに増加し、その数は最大で16地域に達すると見込まれている。
そのような状況の中、ロシア最大の電力会社「統一電力システム(UES)」およびロシア政府は、停滞していた電力分野の改革の促進や、老朽化した設備の刷新および設備の新規建設を可能とする具体的資金調達方法の立案等の現実的な危機打開策に、ようやく取り組み始めた。このことが、電力危機の解消に具体的にどの程度貢献するかは未知数であるが(少なくとも、即効薬とはなりえない)、今後、UESや独立系の電力事業者の設備投資が活発化するのはほぼ確実である。日本の重電メーカーにとって大きなビジネスチャンスが生じる可能性が出てきたといえる。
一方、仮に今後、設備刷新が急激に進んだとしても、新しい発電所の建設期間を考慮すると、当面は電力不足の状況が続く可能性が高い。ロシアで現地生産を実施中もしくは計画している日本企業にとって大きな不安要因のひとつであるといえる。
上記のような状況を踏まえ、本稿ではロシアの電力分野における今後の設備投資の展望、ならびに、日本企業の進出事例が急増傾向にあるサンクトペテルブルグの電力事情等に焦点を当てながら、危機に瀕するロシア電力分野の現状と今後についての考察を試みる。
エネルギー産業の話題
ロシア電力業界の注目企業
ロシアの電力関連企業といえばすぐにチュバイスが社長を務める統一電力システム(UES)および同社の系列会社の名前が浮かびますが、ロシアにはUESとは直接的な関係を持っていない電力関連企業が多数存在します。今回は、それらの企業の中からロスエネルゴアトム、総合エネルギーシステム(KES)、インテルテフエレクロの3社を選び、各社の概要や最新の動きなどを紹介します。その他、ガスプロムの電力分野への進出状況についても若干論及することといたします。
月刊エレクトロニクスNews
当世ロシア・エアコン事情
ロシアは寒冷地ですので、日本とは逆で、電力消費のピークは冬に来ます。しかし、最近では都市部を中心にエアコンが普及し、夏場にも電力消費が高まる現象が生じています。どうやらロシアでもエアコンは、電力需給の重要な要因の一つに浮上してきたと言えそうです。そこで今号の月刊エレクトロニクスNewsでは、やや季節外れですが、ロシアの最新のエアコン事情について、情報をとりまとめてお伝えします。
データバンク
CIS諸国の電力需給
はじめに
CIS統計委員会がこのほど刊行した『2005年のCIS諸国外国貿易(暫定版)』(2006年)に、2000年から2005年までの同諸国の電力需給に関するデータが掲載されているので、これを紹介する。
下表における消費量は、生産−輸出+輸入の計算によって単純に得られた値であり、ロス等を考慮していない「見かけ消費量」である。
なお、CIS12カ国のうちウズベキスタンとトルクメニスタンはCIS統計委員会にしかるべくデータを提供していないため、本資料においてもウズベキスタンの数字はまったく出ておらず、トルクメニスタンも不完全な形での掲載となっている。当会では先日、ウズベキスタン統計国家委員会の統計集を入手したので、下表においてはウズベキスタンの生産量のみ同国の統計集から拾って補足している。
ロシアの化粧品市場の動向
ロシアNIS経済研究所 研究員
山本靖子
はじめに
1.化粧品市場の概況
2.輸入・卸売部門
3.小売部門
4.製造部門(メーカー)
まとめ
はじめに
ロシアでは、近年の消費市場全体の拡大とともに、化粧品市場も好調な伸びが続いている。市場規模は、2004年にはドイツ、フランス、英国、イタリア、スペインに次いで欧州で第6位となった(MMC “Moskva”、2006.01.27)。これらの国々に比べてロシアは格段に高い成長率を維持していることから、今後も引き続き有望な市場といえる。ロシアの女性が化粧品に費やす金額は、2000年には年間平均60ドルであったが、2005年には120ドルに倍増したとのデータもある(『トレード・ニュース』誌No.9、2006.09)。
2005年のロシアの化粧品市場の成長率は12.9%で、2003〜2004年の急激な成長に比べると、やや減速傾向がみられた。日本メーカーを含む新規参入の可能性はまだ十分にあるものの、2〜3年前に比べると、飽和状態に近づきつつある面も否めない。消費者の意識や志向の変化も指摘されている。
本誌では、2004年3月号でもロシアの化粧品市場における主要プレーヤーについて紹介している。これを踏まえ、本稿では最近の化粧品市場の動向を中心にご紹介する。
ビジネス最前線
バージンダイヤモンドという新しいブランド
株式会社 サハダイヤモンド
代表取締役社長 今野康裕さん
はじめに
潟Tハダイヤモンドの歴史は1956年のサンゴ製品の卸売業から始まります。1977年にはダイヤモンドの卸売業を開始。その後、国内の販売網を広げていきますが、ロシア産ダイヤモンドを扱うようになったのは偶然が重なった結果とのこと。
今野さんのサハ共和国とのお付き合いが始まったのは、ソ連解体直後です。この間、交流が広がっていく中、ダイヤモンド原石の国際市場を管理するデビアス社の一極支配が終焉し、サハ共和国は連邦政府から、採取したダイヤモンドの20%を売却する権利を取得します。そこでサハ共和国から日本へのダイヤモンド輸出について相談を持ちかけられた今野さんが、紆余曲折を経て、自分で扱うことになったのです。
それから約3年。「サハダイヤモンド」の銘柄は確実に市場へ浸透しています。
ユーラシア巡見
大統領選挙後のタジキスタン
前アジア開発銀行タジキスタン駐在事務所長
(カントリーディレクター)
本村和子
はじめに
2006年11月6日の憲法記念日、秋晴れに恵まれたタジキスタンでは大統領選挙が行われた。首都ドゥシャンベは仙台とほぼ同じ緯度。メインストリートでは4階建てのビルが隠れるほど大きな街路樹がすっかり色づき、日の出前に掃き集められた落ち葉を清掃車が集めて回る季節である。人々はパスポートを手に、きちんとした身なりで投票所へ向かっていた。投票所は街の地区ごとの徒歩圏に設置され、場所を知らない私でも外に出ると、そこから聞こえてくるにぎやかな民族音楽と人の流れですぐにわかった。直接選挙で、大統領候補5人は事前に新聞やテレビで政見を発表していた。
投票は朝6時から夜8時まで、街はなんとも晴れやかでまじめな雰囲気に満ちていた。「憲法記念日」の大きな看板が立てられたドゥシャンベの中心広場や目抜き通りは、暖かい日射しに誘われて繰り出した多くの市民でにぎわっていた。公園を通りかかると、野外の舞台で祭日を祝う民族音楽と踊りが催され、100席ほど置かれた椅子に座って市民が楽しんでいたので、その後ろで立ち止まって見ていると一人の男性が私に腰掛けを運んできてくれた。花屋の前を通ると「お祝いの日だから」と一輪の大輪の菊が差し出されたので喜んで受け取った。ドゥシャンベには半年ぶり、10日間の訪問であったが、街ではトルコやインドなどの投資による4つのホテル建設が本格化し、また相変わらず新しい民家やアパートがあちこちで建てられていた。こうして、3時間ほどの散歩を楽しんで戻り、遅い昼食をとりながらテレビを見ていると、選挙の進行状況、各地の投票所の様子、立候補者達の投票風景が報道されていた。現職のラフモノフ大統領は一番小さい娘と息子の手を引いて投票を済ませたあと、明るい日差しの中で詰めかけた記者団に、「私は平和と安定、そして国民の繁栄のために投票した」と語り、また経済改革、対外関係、とくにロシア、中国、ウズベキスタンとの関係などについての質問に答えていた。その様子はその後しばらく、街のあちこちや家庭の団欒でくり返し話題になるほど、見る人に信頼感と良い印象を与えるものであった。不在者投票や、ロシアなどへ出稼ぎに出ている人々のための在外投票も実施され、また自力で外出できないお年寄りや病人で投票が可能な人のところへは、地区の選挙管理委員が何人かで投票箱を持って回るなど、さまざまな便宜がはかられる様子や、外国人700人が選挙監視にあたったことなどもテレビで紹介されていた。選挙の大勢は翌日の3時過ぎには選挙管理委員長によって発表された。投票率は91%、ラフモノフ氏は79.3%の得票率で、第2位ボボーエフ候補(経済改革党)の6.2%を大きく引き離して圧勝した。
データバンク
ロシアの小売チェーン・ベスト200
はじめに
ロシアの『トレード・ニュース』誌2006年10月号に、2005年のロシアの小売チェーン販売高ベスト200が掲載されている。本誌2006年7月号でも『コメルサント』紙に掲載された2005年の小売チェーン販売高ベスト50を紹介したが、今回のランキングは各チェーン店が公表している販売高をもとに上位200位までをまとめたものであり、各チェーンの社長の氏名も掲載されていることから、改めて紹介することとした。ただし、残念ながら、本資料には販売高の具体的な数字が示されていないという難点もあるので、7月号の記事と合わせてご利用いただければ幸いである。
なお『トレード・ニュース』誌では、各チェーンの業種を主に「食品」または「食品以外」と分類しているが、それではあまりに不親切なので、本誌では「食品以外」の内容についても調査したうえで記載した。
データバンク
CIS諸国における重要物資の需給関係
はじめに
CIS統計委員会がこのほど刊行した『2005年のCIS諸国外国貿易(暫定版)』(2006年)に、2000年から2005年までの同諸国の重要物資の需給関係に関するデータが掲載されているので、これを抜粋して紹介する。扱われている品目はエネルギー関連が中心で、それ以外では鉄鋼と穀類が取り上げられている。なお、電力の需給については、電力特集の一環として36〜37頁でより詳しい形で紹介しているので、そちらをご覧いただきたい(本コーナーでは原典に示されているCIS域内取引のデータを割愛しているが、36〜37頁の電力についてはそれも盛り込んだ)。電力のところでも触れたとおり、ウズベキスタンの数字は原典には掲載されていないので、同国統計委員会の統計集から可能な範囲で補った。また、下表における消費量は、生産−輸出+輸入の計算によって得た「見かけ消費量」である。
(1)原油 (2)自動車用ガソリン (3)ディーゼル燃料 (4)重油 (5)天然ガス (6)石炭 (7)鉄鋼 (8)穀類
ロシア産業の迷宮
風雲児オレグ・ミトヴォリ
はじめに
ロシア天然資源利用監督局は、環境保護問題を担当する天然資源省の下部組織で、どちらかといえば地味なお役所であるが、本稿の主人公オレグ・ミトヴォリ氏はそのお役所の副長官というポストに就いている。副長官といえば聞こえは良いが、天然資源省の下部組織の副長官であるから、役人としてのステイタスはそれほど高くない。専用の公用車は与えられないし、月給も2005年夏時点で諸手当を入れて3万ルーブル程度だったといわれている。普通であれば、地味なお役所の地味なお役人ということで片付けられ、マスコミで華々しく取り上げられることなどありえないはずだ。
ただ、ミトヴォリの強烈な個性がその常識を覆してしまった。彼は、あたかもロシア政権の代表者でのあるかのような言動を繰り返し、しかも、マスコミがその言動を逐一報道する。その結果、同氏の発言が、大臣クラスの人物と同じ程度か、あるいはそれ以上の重みを持つことも珍しくない。
本稿では、このような不可思議な事象を引き起こしているミトヴォリという人物の個性を、エピソードを交えながら紹介する。(坂口泉)
クレムリン・ウォッチ
プーチン政権の決算予想
(1) 第二次チェチェン戦争
チェチェン戦争は1994年に、2週間で終わるという触れ込み始められましたが、実際には際限なく長びきました。多くの犠牲者を出したあげく96年8月に、いわゆるハサブユルト協定で停戦が成立し、2001年に共和国の地位が最終決定されることになりました。しかしそのちょうど2年前の1999年に事態は急展開し、第二次チェチェン戦争が始まりました。
当時連邦保安庁(FSB)長官だったプーチンが首相になった直後にモスクワその他で一連の衝撃的なアパート爆破事件が起こりました。これをチェチェン勢力のテロ事件と断定し、9.11事件後の米国によく似た国民感情の中で第二次戦争を始めたプーチン首相への支持が一気に高まって、当初は「使い捨て」と思われていたこの人物がその後8年にわたって大統領ポストにつくための後押しになりました。だから、プーチン政権にとって、この戦争は格別の意味をもっています。(月出皎司)
ロシア文化へのいざない
ロシアのお正月
はじめに
日本では、2007年から国民の祝日が1日増えて年間15日となるが、ロシアにも、以下のとおり1年に12日の祝日がある。新年(1月1〜5日)、正教のクリスマス(1月7日)、祖国防衛の日(2月23日)、国際婦人デー(3月8日)、春と勤労の祝日(5月1日)、戦勝記念日(5月9日)、ロシアの日(6月12日)、国民統一の日(11月4日)。
この中でも、ロシア人にとって最も重要な日は、何といっても新年だろう。全ロシア世論調査センターが今年4月に行ったアンケート調査でも、最も好きな祝日(複数回答可)として新年を挙げた人は82%に上り、戦勝記念日(41%)、国際婦人デー(31%)やクリスマス(26%)を大きく上回った。しかし、ロシアの正月休みが長くなったのはつい最近のことだ。2004年末の労働法改正により、2005年から1月1〜5日が祝日と定められた。1
月7日もクリスマスで祝日なので、土日や振替休日を含めると、10日間の休暇になる。
それでは、ロシア人はどのように新年を迎えるのだろうか。(山本靖子)
商流を読む
危機をバネに再編を遂げるロシアのワイン業界
ロシアのワイン消費は過去数年、年率20%以上という急成長を続けてきました。しかし、2006年には政府による管理強化の試みが大混乱を招き、業界は正念場を迎えています。本件は、ロシア・ビジネスに付いて回るリスクを考えるうえで、一つの教訓として記憶にとどめておくべきでしょう。他方、一連の事件を契機に、ロシアのワイン・アルコール業界ではここに来て、再編の動きが活発化しているようです。ロシアの『トレード・ニュース』 誌の2006年No.11に掲載された記事をもとに、その模様についてお伝えします。
自動車産業時評
日本からの自動車・同部品の輸送
日本からモスクワ方面に自動車もしくは自動車部品を輸送する場合、想定しうる主なルートは3つ存在します。すなわち、@シベリア鉄道を利用するルート、A船でフィンランドの港まで運びそこから陸送というルート、B船でサンクトペテルブルグ付近の港まで運びそこから陸送というルート、の3つ。現時点ではAが主流となっているようですが、今後はBのプレゼンスが強まるのではないかといわれています。今回は、これら3つの輸送ルートの特徴や問題点について述べることにいたします。