ロシアNIS調査月報2007年2月号特集◆ロシアビジネスと銀行 |
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特集◆ロシアビジネスと銀行 |
調査レポート |
ロシアの金融サービス業をめぐる現状分析 |
調査レポート |
ロシア極東における地方銀行の役割 |
調査レポート |
邦銀のロシア進出とその背景 |
調査レポート |
ロシアの消費者クレジットと質屋ビジネス |
ビジネス最前線 |
政策金融で日ロ経済関係を支えるJBIC |
調査レポート |
ロシアの主要自動車ディーラー |
調査レポート |
2006年新しいロシア銀行券の発行をめぐって |
ユーラシア巡見 |
ウズベキスタン経済の産業組織 ―制度的慣性と変化の予兆 |
データバンク |
2006年1〜9月のロシア経済 |
データバンク |
2006年1〜9月のロシアの乗用車市場 |
データバンク |
2006年1〜9月の日本の対CIS主要国貿易統計 |
ビジネストレンド |
2006年11月分 |
ロシア産業の迷宮 |
Media Market進出がもたらした思わぬ余波 |
クレムリン・ウォッチ |
プーチンの防勢的強気外交 |
ロシア文化へのいざない |
芸術の国ロシア |
日ソ・日ロ経済関係の 舞台裏 |
サハリン・プロジェクトの始動 ―初代駐在の記録 |
日本センター所長 リレーエッセイ |
極東ロシアとのかかわり ―極東からモスクワへの物流構築を |
商流を読む |
ロシア国民の食生活の変化 |
エネルギー産業の話題 |
何やら慌しいガスプロムの周辺 |
自動車産業時評 |
ロシアにおける外国部品メーカーの動き |
月刊エレクトロニクスNews |
ロシアでノートPC販売が年間100万台突破 |
ノーヴォスチ・レビュー |
モスクワ〜サンクトペテルブルグ道路建設プロジェクト |
ドーム・クニーギ |
R.ライン・S.タルボット・渡邊幸治著 『プーチンのロシア』 |
通関実績 |
2006年1〜10月の日本の対ロシア・NIS諸国 輸出入通関実績 |
ロシアの金融サービス業をめぐる現状分析
高知大学 助教授
塩原俊彦
1.はじめに
2.ロシアの金融環境
3.銀行支配型グループ
4.大銀行と非銀行金融機関の統合型グループ
5.金融統合型グループ
6.銀行非有金融統合型グループ
7.結びに代えて
はじめに
ロシア経済は原油や天然ガスの価格が高水準な状況にあることから、依然として好調を持続している。こうしたなかで、ロシアの金融サービス業の現状はどうなっているのか。それを探ることが本稿の目的である。その際、筆者が意図的にとったアプローチは、長年継続している企業集団分析の一環として、この問題に迫るというものだ1)。このため、銀行だけに絞った研究をするのではなく、銀行、保険、年金基金、投信などにも関心を向けることにする。その必要性は金融サービスの多様化や普及にも関連している。もはや銀行業だけを分析してみても、ロシア経済を金融面から考察したことにはならないのである。
もうひとつ重要なことは、一部の金融機関が海外進出を積極化している点だ。とくに、NIS諸国への進出が目立つ。逆に、NIS諸国を本拠地とする金融機関の一部がロシアに進出する動きをみせている。ロシアについては、先進国からの外資の進出も目立つ。こうした状況を考慮しながら、より広範な視角からロシアの金融サービス業を考察することが必要になる。
本稿では、まず、ロシアの金融環境について概観したうえで、金融サービス業にかかわる企業集団を、@銀行支配型グループ、A大銀行と非銀行金融機関の統合型グループ、B金融統合型グループ、C銀行非有金融統合型グループ ――に分けて分析する。
ロシア極東における地方銀行の役割
ロシア科学アカデミー極東支部経済研究所
はじめに
1.域内銀行と域外銀行の力関係
2.ロシア極東の地方銀行の実態
3.域内銀行と域外銀行の役割分担
はじめに
当会では、提携関係にあるロシア科学アカデミー極東支部経済研究所に依頼をして、ロシア極東管区における銀行事情についてレポートを寄せてもらったので、これを邦訳して紹介する。
本稿では、極東管区の地方銀行は資金力ではモスクワ等の他地域の銀行に圧倒されているものの、地元の特性を熟知しているがゆえに特有のニッチを見出し、地域経済に重要な貢献をなしていることが分析されている。
邦銀のロシア進出とその背景
ロシアNIS経済研究所 調査役
服部倫卓
はじめに
1.ユーラシア三菱東京UFJ銀行の設立
2.みちのく銀行からみずほコーポレートへ
3.三井住友銀行の選択
おわりに
はじめに
ロシア経済が好景気に沸き、日系企業のロシア進出が拡大するにつれて、邦銀もまたロシアへのアプローチを強化している。日本のいわゆる3大メガバンクは、いずれもここ1〜2年で、ロシアでの足場を構築する動きを見せている。そこで本稿では、邦銀のロシア進出に関する事実関係を整理して示すとともに、若干のコメントを述べることとしたい。
なお、本誌2006年5月号に掲載された「ロシアの金融市場開放と日本のメガバンク」「ロシアでも『家庭の銀行』を実践」の2つの記事も併せて参照していただければ幸いである。
ロシアの消費者クレジットと質屋ビジネス
高崎経済大学経済学部 教授
今井雅和
1.はじめに
2.消費者クレジット
3.質屋ビジネス
4.今後の調査・研究課題
はじめに
年末(2006年12月)に、ロシアNIS貿易会の「ロシアの金融制度と日本のビジネスチャンス」に関する現地調査(モスクワ市)に参加した。筆者は、国際ビジネスを専門としており、エコノミストでもなければ、金融論を専攻しているわけでもない。ロシアにおける国際ビジネスの進展を研究テーマとし、ロシアのビジネス環境の進化とロシア市場に参入する多国籍企業・ロシア発の多国籍企業の活動を追っている。そして、リーテルバンキングを含む、サービス産業を通して、この課題に接近することを当面の課題としている。
今回の調査事業でも、個人の金融ニーズに関わるテーマについて、できればさらに調査を進め、調査結果と分析内容を、年度末に発行される報告書に盛り込みたいと考えている。それに先立ち、本稿では、今回の現地調査で学んだことを中心に、出張報告の形でお伝えしたい。
3日半の調査で、比較的短時間の面談も含めると、14の相手先にインタビューすることができたが、筆者の関心に直結する相手先としては、ロシア銀行協会、ロシア最大の銀行ズベルバンク、ロシア中央銀行、地域間質屋協会などを挙げることができる。質屋協会は、その1ヶ月前のロシア出張の際に、たまたま手にした新聞記事1)を頼りに、同会モスクワ事務所がアポイントメントを取ってくれた。第2節では、手許の資料と今回の調査に基づき、ロシアにおける消費者クレジットの概要をスケッチする。第3節では、これまでほとんど取り上げられることのなかった、ロシアの質屋事情を中心に、消費者向けローンについて考えてみたい。最後に、今後の調査・研究課題に言及したい。
ビジネス最前線
政策金融で日ロ経済関係を支えるJBIC
国際協力銀行
国際金融第2部第1班 調査役 茂垣克也さん
総務部広報室報道班 調査役 西崎隆太郎さん
はじめに
振り返ってみると、1990年代の冬の時代に、日ロ経済関係がどうにか命脈を保つことができたのは、当時の日本輸出入銀行(現在の国際協力銀行(JBIC))が打ち出した12億ドルの対ロシア輸出信用の賜物だったと言っても過言ではないかもしれません。その後、ロシア経済は成長に転じ、いまや邦銀がロシアに現地法人を設立する時代ですが、依然としてビジネス上のリスクやコストの高いロシアでは、金融の面でも官民が補い合っていくことが必要と思われます。その意味で、JBICの役割は、より一層高まっていると言えるでしょう。
JBICは、2005年11月のプーチン大統領来日時に、ロシア銀行向け与信枠を30億ドルまで拡大することを発表しました。また、最近では、ロシア企業の信用リスクを直接取るバイヤーズクレジットにも積極的に取り組んでいます。
そこで、編集部では、JBICの本部にお邪魔して、同行のロシア市場への取り組みについて、お話をうかがってまいりました。
ロシアの主要自動車ディーラー
ロシアNIS経済研究所 調査部次長
坂口泉
はじめに
1.ロシア資本のディーラーの特性
2.主要ディーラーのプロフィール
まとめ
はじめに
最近、ロシアでは外国新車市場の規模が急激に拡大しており、外国新車を取り扱う大手自動車ディーラーの存在感がさらに強まりつつある。ロシアの自動車市場の全体像を把握する上で無視できない存在になりつつあるといえる。ただ、ロシアの自動車ディーラーの中には情報開示に消極的なところも少なくなく、業界の状況を網羅的に紹介した資料はほとんど存在しない。
そこで、本稿ではロシアの様々な新聞・雑誌に紹介された主要ディーラーの幹部のインタビュー記事などをベースに、ロシアの自動車ディーラー業界の特性および主要なディーラーの概要を紹介することとする。本稿が、ロシアの自動車市場の全体像を把握する上で、何らかのお役に立てば幸いである。
2006年新しいロシア銀行券の発行をめぐって
在ウラジオストク日本国総領事館 専門調査員
安木新一郎
はじめに
1.修正の理由
2.新券のプロフィール ―偽造防止技術を中心に
3.銀行券をめぐる諸問題
おわりに
はじめに
ロシア連邦中央銀行(ロシア銀行)は、ロシアで唯一の発券銀行として、現金通貨(ロシア銀行券(お札)および硬貨)の発行や流通、管理に関する業務を行なっている。
2004年1月6日にロシア銀行は、デザインは変わらないものの、新しい偽造防止技術を付加したロシア銀行券(10ルーブル、50ルーブル、100ルーブル、500ルーブル、1,000ルーブルの5種類)を発行する予定である旨を発表し、2004年8月16日からこれらの発行と流通が開始された。本稿では、ロシア銀行券の修正に至った背景や目的、新券の概要を紹介する。また、2006年7月31日から開始された新5,000ルーブル券発行の狙いについても述べる。
ユーラシア巡見
ウズベキスタン経済の産業組織
―制度的慣性と変化の予兆―
一橋大学経済研究所助教授
岩ア一郎
はじめに
2006年11月1〜3日、私は、日本経済産業省とウズベキスタン対外経済・投資・貿易省が共同開催した「ウズベキスタン日本ビジネス・フォーラム」、ならびに同会議に付随した企業訪問調査に同行する機会を得た。ビジネス・フォーラムは、同年8月に実現した小泉純一郎総理(当時)のウズベキスタン公式訪問時になされたイスラム・カリーモフ大統領との首脳会談の合意内容を引き継ぐものであり、両国の経済関係を、実務者レベルでより一層深化させるために企画されたものである。日本側は、経済産業省欧州中東アフリカ課が、ウズベキスタン側は、対外経済・投資・貿易省と共に、カリーモフ大統領の長女カリモヴァ女史が理事長を務める「ウズベキスタン文化芸術フォーラム基金」が、同フォーラムの組織と運営を担った。胡麻をする積もりは毛頭ないが、ロシアNIS貿易会から同行されたスタッフの方々も、大変機動的に日本代表団の側面支援をされていた。旧ソ連諸国の中でも官僚機構の優秀さでは飛び切り定評のあるウズベキスタン政府のおかげなのか、3日間の滞在中、プログラム運営に係るロジスティックはなかなかのものだった。
ウズベキスタン側のフォーラム参加者には、関係省庁や国家委員会の高級官僚や大手企業の経営トップらに、アジモフ副首相兼財務相、ガニエフ対外経済・投資・貿易相、コジャエフ経済相ら主要経済閣僚が加わり、まことに錚々たるものであった。私がそうであるように、日本側代表団メンバーの多くは、正直これほどの面々がビジネス・フォーラムに勢揃いするとは思ってもみなかったであろう。ウズベキスタン側の並々ならぬ意気込みが感じられた。しかし私は、「実務者レベル」であるはずのこうした会合の席が、これほどハイクラスの人々で埋め尽くされるところに、否、埋め尽くされなければ物事が進まないところに、ウズベキスタンという国家の意思決定システムが、中央アジアにおける1990年代の体制転換プロセスに関する私の比較研究(岩崎2004a)から得た結論に違わず、依然として大いに中央集権的であることも同時に強く感じた。
フォーラムの模様は、やはり日本側代表団の一員であった財団法人金属資源情報センターの澤田賢治審議役が、同センターのホームページ上で詳しい報告をされているから、私は、今次訪問で得られた幾つかの事実発見を踏まえて、ウズベキスタン経済の産業組織の実情に関する所感をここに述べておきたい。
ロシア産業の迷宮
Media Markt進出がもたらした思わぬ余波
2006年に入ってから、テフノシーラやエルドラドといったロシアの家電量販チェーン大手が、攻撃的ともいえる非常に積極的な経営戦略を打ち出し、これまであった業界の「棲み分け」が崩れてきている。たとえば、テフノシーラは2006年に入り、積極的な広告戦略を展開すると同時に、エルドラドを彷彿とさせるような安売りキャンペーンも行なうようになった。これに対し、これまでは「安かろう悪かろう」のイメージが強かったのがエルドラドである。しかし、市場が成熟し始め消費者の要求も高くなりつつある状況下では、これまでの戦略を見直さないと成長を維持できないという判断があるようで、最近同社は大幅なイメージチェンジを図る方針を打ち出した。
テフノシーラやエルドラドがアグレッシブな動きを急に見せ始めたのはなぜなのだろうか。その謎を解く鍵のひとつがドイツの家電量販店「Media Markt」のロシア進出である。(坂口泉)
クレムリン・ウォッチ
プーチンの防勢的強気外交
2006年はG8議長国ということもあって、クレムリンは外交にとりわけ熱心でした。年末の記者会見でラブロフ外相が、2006年はロシア外交にとって成功の年だったと自讃したように、それなりの成功があったことは認められます。ウクライナのロシア離れをとりあえず押さえ込み、じゃじゃ馬サアカシビリ(グルジア大統領)の無謀な挑戦も退けました(やりすぎの感じもしましたが)。エネルギー価格高騰を背景にして、旧ソ連圏諸国以外の国々対しても強気な態度を示しはじめました。サハリン・プロジェクトを巡る強硬姿勢は衝撃的でした。EUに対しては、ガス下流事業への進出や欧州航空機産業への参加打診など、かなり踏み込んだ動きをしました。これまでのところ具体的な成果を上げるには至っていませんが、オイルマネーに溢れかえるロシアの資本進出は国際ビジネス界にとって無視できない要素にまで立ち至りました。 (月出皎司)
ロシア文化へのいざない
芸術の国ロシア
はじめに ―劇場の季節
ロシアの冬といえば、本格的な劇場の季節だ。最近は、モスクワのような大都市では、夏場でもその日の芝居のチケットを何かしら入手することが可能だが、専属の劇団やバレエ団を持つ従来型の劇場では、9月にシーズンが開幕し、5〜6月に閉幕する。夏になると都市住民は休暇を取り、劇団員も休暇や外国公演に出てしまう。そんなわけで、寒くなると演目の選択肢も豊富になり、つい劇場に足を運びたくなるのである。
昨年は「ロシア文化フェスティバル2006 IN JAPAN」が開催され、日本各地でロシア映画祭、美術展、講演会、演劇、音楽、バレエ、サーカスなどの公演が実施された。12月23日、その最終盤を締めくくった国立ボルコフ記念劇場の東京芸術劇場での公演を観る機会があり、久々にロシア演劇を堪能した。ボルコフ記念劇場は、1750年に古都ヤロスラヴリに建てられたロシア最古の劇場である。この日の演目はゴーゴリの喜劇『検察官』。原作に忠実かつエネルギッシュな舞台は、さすがに歴史ある正統派の劇場という印象で、今さらながら、芸術大国ロシアを改めて実感した年の瀬であった。(山本靖子)
商流を読む
ロシア国民の食生活の変化
GfKルーシ・マーケティング研究所という調査機関が、2001年と2005年にロシア国民の消費行動に関する調査を実施し、4年間でどのような変化が生じたかを分析したレポートを発表した。以下では、『マーケティング・ニュース』誌HPに掲載されたレポートのなかから、食生活に関連した部分を抜粋して紹介する。
この調査は、2001年8月と2005年8月に、まったく同じ条件で行われた。全国の17歳以上の国民2,200人を対象としたアンケート調査と、5,000世帯を対象とした家計調査とから成っている。
エネルギー産業の話題
何やら慌しいガスプロムの周辺
2006年秋以降、ガスプロムの周辺がにわかに慌しくなっています。10月にはシュトクマン鉱床開発プロジェクトの方針が大幅に見直され、ロシア北西部におけるLNGプラント建設計画が大きく後退する結果となりました。また、ガスの国内価格の今後の上昇テンポについても政府内で激しい議論がなされ、最近になりようやく一応の決着を見るという状況。さらに、12月に入ってからは、サハリン1やサハリン2をめぐるガスプロムの動きが毎日のようにロシアの主要新聞の紙面を賑わしています。今回は、それらの注目すべき動きのうち、シュトクマン、サハリン2、および、ガスの国内価格の今後の動向についてご紹介いたします。
自動車産業時評
ロシアにおける外国部品メーカーの動き現在
すでにフォード、ルノー等がロシアで現地生産を行っていますが、日本のトヨタ、日産の他、VW、GM等も今後現地生産を開始することを決定しています。そのような各外国完成車メーカーの積極的な姿勢と比較すると、外国部品メーカーの動きはやや緩慢との印象があったものの、2006年後半から、一部の外国部品メーカーの積極的な動きが目立つようになりました。今回は、その中でも最も積極性が目立つマグナ・インターナショナルとシーメンス等の動きをご紹介いたします。
月刊エレクトロニクスNews
ロシアでノートPC販売が年間100万台突破
これまで、ロシアのパソコン市場では、価格の安いデスクトップ型が主流となってきました。ノートパソコンは、デスクトップとは異質の特別な商品として見られる傾向がありました。しかし、ノート型の値下がりなどもあり、ようやくここに来て、デスクトップに取って代わりうる普通の商品として消費者に受け入れられ始めたようです。2006年には、ノート型の販売台数がついに100万台を突破した模様。そこで以下では、ノートPCの販売につき、現地の情報を取りまとめてお伝えします。