ロシアNIS調査月報
2007年5月号
特集◆「大国」化するロシアと
日ロ経済関係
特集◆「大国」化するロシアと日ロ経済関係
直言
ロシアの大国度を分析する
(クレムリン・ウォッチ 特別編)
調査レポート
フラトコフ首相来日と第2回日露投資フォーラム
調査レポート
ロシアのマクロ経済と財政状況
―「凍結」されるオイルダラーによる財政黒字
調査レポート
2006年の日ロ貿易
―自動車の輸出増で出超に転じる
調査レポート
2006年のロシアの乗用車市場
―「大きさ」への志向を手がかりに市場を解剖する
自動車産業時評
活発化する外資系の部品およびタイヤメーカー
ビジネス最前線
レアメタルを確保せよ
―日本の資源外交を支える切り込み隊長
エネルギー産業の話題
石油大国で存在感を増す中堅石油会社
月刊エレクトロニクスNews
IT大国への道は険しく
商流を読む
国産品愛用運動は効果を挙げるか?
データバンク
2006年のロシア経済
データバンク
ロシアの鉱工業・農林水産業の品目別生産高
(1990〜2006年)
データバンク
2006年のロシアの石油産業
データバンク
2006年のCIS諸国の鉄鋼・アルミ生産

調査レポート
中国とロシアの長期的経済発展比較(下)
ユーラシア巡見
グルジアのサーカシヴィリ大統領来日
日ソ・日ロ経済関係の
舞台裏
3つ目の職場 ―新生ロシアとの真剣勝負
日本センター所長
リレーエッセイ
ニジニ・ノブゴロド編
「ライフワークとなったロシア、忘れられない人たち」
ノーヴォスチ・レビュー
アルタイの魅力
ドーム・クニーギ
加賀美雅弘・木村汎編
『朝倉世界地理講座 10 東ヨーロッパ・ロシア』
業界トピックス
2007年2月の動き
2006年1〜12月の通関統計


クレムリン・ウォッチ 特別編
ロシアの大国度を分析する

「現代ロシア情報分析会」幹事
月出皎司

 ロシアの大国的な振る舞いがますます気になっていますが、実のところロシアは大国なのでしょうか、大国の条件・資格を備えているのでしょうか?政治学にも大国の明確な定義はないようですから、ここではロシアは大国であるらしいと仮定し、他方では、経済大国の日本、石油資源世界一のサウジアラビア、世界有数の軍事能力と抜群の総合外交力を誇るイスラエルなどはやはり限定詞なしでは大国とは言われない、というあたりを前提として、大国の条件を考えてみます。


フラトコフ首相来日と第2回日露投資フォーラム

はじめに
1.フラトコフ・ロシア首相一行の訪日
(経済産業省欧州中東アフリカ課長兼ロシア室長 増山壽一)
2.第2回日露投資フォーラムの開催
(ロシアNIS経済研究所 調査役 中居孝文)
3.投資フォーラムにおけるフラトコフ首相の講演

はじめに
 ロシアのフラトコフ首相が2月27日から28にかけて来日し、この機会をとらえて28日に東京の経団連会館において「第2回日露投資フォーラム」が開催されました。
 以下では、まず第1節において、経済産業省の増山課長に、フラトコフ首相一行の訪日の成果について、とりまとめていただきました。
 第2節では、第2回日露投資フォーラムの主催者の一員で、事務局を担当した(社)ロシアNIS貿易会より、今回のフォーラムの開催概要についてご報告申し上げます(執筆:中居孝文)。
 最後に、第3節では、第2回日露投資フォーラムの冒頭でフラトコフ・ロシア首相が行った特別講演の模様をお届けいたします(『ロシアNIS経済速報』3月15日号から再録、なおこれは講演原稿ではなく当日の実際の発言を記録したもの)。(編集部)


ロシアのマクロ経済と財政状況
―「凍結」されるオイルダラーによる財政黒字―

北海道大学スラブ研究センター 教授
田畑伸一郎

はじめに
1.2006年のロシア経済概況
2.予算実績
3.安定化基金

はじめに
 ロシアでは、原油高の恩恵で年率6%を超える経済成長が続き、財政もオイルダラーによって潤っている。GDPの8%を超えるような財政黒字が形成され、外貨準備も世界3位となり、マクロ経済にも財政にも何ら問題がないように見える。しかし、実は国内需要の多くは輸入に向かっていて、国内製造業はそれほど目覚しい発展を遂げておらず、年率10%程度のインフレが続くなどの問題を抱えている。巨額の財政黒字をどのように処分したらよいのかについて、財政当局は頭を痛めているのである。本稿はこうした問題を解き明かす試みである。


2006年の日ロ貿易
―自動車の輸出増で出超に転じる―

ロシアNIS経済研究所 調査役
服部倫卓

はじめに
 例年どおり、日本財務省発表の貿易統計にもとづいて、2006年の日本とロシアの貿易に関し、データをとりまとめて紹介する。なお、本稿は当会『ロシアNIS経済速報』(2007年3月25日号、No.1392)に加筆をしたものだが、速報発行後、為替レートがごくわずかながら修正された関係で、ドルの輸出入額が若干リバイスされている。


2006年のロシアの乗用車市場
―「大きさ」への志向を手がかりに市場を解剖する―

ロシアNIS経済研究所 調査部次長
坂口泉

はじめに
1.生産動向
2.販売動向
3.外国車の現地生産の動き
まとめ

はじめに
 ロシアは広大な領土を保有する国家であり、資源大国でもある。また、冷戦時代には共産陣営のリーダーとして米国と比肩する立場にあった。そのような地理的・歴史的な事実を背景とする大国意識が、たとえば、ロシアの最近のエネルギー外交において具現化されているのは周知の通りである。しかも、プーチン政権に対する国民の支持率の高さから判断して、一般市民もそのような政権サイドの強気の姿勢を歓迎している可能性が高い。一般市民の意識の中にも、ロシアは大国であるという思いが遺伝子として刷り込まれているのではなかろうか。
 ロシアの乗用車市場には、「ともかく大きな車が好まれる」という、他のエマージングマーケットではあまり観察されない不可思議な現象が存在する。安くても、サイズが小さい車はあまり売れないのだ。その背景にある理由はよくわからないが、一般市民の意識の中に根付いている大国主義、平たくいえば「ともかく、大きいことは良いことだ」的な発想が、何らかの影響を及ぼしているのではないかと個人的には考えている。
 以下このレポートでは、本誌の恒例により2006年のロシア乗用車市場を回顧するが、その際に上述のような関心から、車のサイズという点にとくに着目してみることにしたい。


自動車産業時評
活発化する外資系の部品およびタイヤメーカー

 本編記事の方で2006年のロシアの乗用車市場の概況を解説しましたので、本コーナーではその補足として、ロシアにおける外資系の部品メーカーの最新の動きをご紹介いたします。
 以下に見るように、欧米系の部品メーカーはロシア市場への進出に動き出していますが、「系列」に縛られてか、日本勢の動きが鈍いのがやや気になるところです。


ビジネス最前線
レアメタルを確保せよ
―日本の資源外交を支える切り込み隊長―

アドバンスト マテリアル ジャパン株式会社
代表取締役社長 中村繁夫さん

はじめに
 レアメタル(希少金属)はエレクトロニクス材料や航空機材料等、あらゆる新素材分野に必要不可欠なマテリアルですが、2004年以降、ほぼすべてのレアメタルの需給に問題が発生し、国際市況が暴騰しています。中村さんがアドバンテスト マテリアルジャパン(AMJ)を立ち上げたのは同年のこと。「レアメタル・パニック」(中村社長の造語)をビジネスチャンスと捉えたのです。
 レアメタルの調達は年々厳しくなっており、最大の供給国である中国は輸出規制を始めました。同国からの輸入に大きく依存してきたわが国の産業界に大きな打撃を与えそうですが、中村社長はこの危機を乗り越えるべく、従来の対中比率を抑える戦略を立てました。総合商社勤務時代に築いた豊富なロシア、中央アジア人脈によって、調達先をこれらの国々にシフトしていこう――。
 日本が今後も資源を安定的に確保していけるように、AMJのトレーダーの皆さんは今日も中央アジアに広がる土漠やシベリアの果てを駆け巡っています。


エネルギー産業の話題
石油大国で存在感を増す中堅石油会社

 石油大国ロシアでは、ルクオイルやロスネフチに代表される大手の他に、100以上の中小の石油会社が活動しています。ただ、これらの石油会社は、最も規模の大きな会社でも年間生産量が100万t程度と、2006年の生産量が約4億8,000万tに達するロシアの石油分野の尺度から見ればとるに足らない存在なので、これまで少なくとも日本ではほとんど話題になることはありませんでした。
 しかし、最近、ロシアの中小の石油会社が外国の証券市場でIPO(新規株式公開)を行うケースが増えてきており、外国の証券・金融関係者の間で注目を集めつつあります。また、大手の石油会社に対する国家管理が強化されている関係で、ロシアの石油鉱床の開発権を獲得するための足掛かりとしての中小の石油会社の存在価値が、外国の石油ガス関係者の間で見直され始めているようです。
 以上のような状況を踏まえ、本誌では今後、ロシアの主要な中小石油会社についても、そのプロフィールを適宜紹介してまいります。今回は、中小のなかでは比較的規模が大きい会社で、証券市場での注目度も高い「West Siberian Resources」社のプロフィールをご紹介いたします。


月刊エレクトロニクスNews
IT大国への道は険しく

 2007年2月に発行されたロシア『ヴェードモスチ』紙の別冊『ヴェードモスチ・フォーラム』において、「IT・ハイテク市場の投資ポテンシャル」という大きな特集が組まれていますので、以下でその内容を抜粋してご紹介します。
 ロシアでは、エネルギー以外の産業育成の必要が叫ばれて久しく、そのなかでもITは有望視されている分野の一つです。日ロ間でも、IT分野での技術取引・交流を探る動きが出始めています。しかし、以下に見るように、ロシアが「IT大国」の地位にたどり着くまでに通らなければならない道程は、長く険しいようです。


中国とロシアの長期的経済発展比較(下)

ロシア新経済大学 教授
V.ポポフ

はじめに(前号)
要約(前号)
1.移行期の明暗(前号)
2.北京コンセンサスVSワシントン・コンセンサス(前号)
3.長期的展望:アジア的価値と西洋的価値
結論

 前号に引き続き、ポポフ教授の論文の後半をお届けします。引用文献リストは前号をご参照ください。(編集部)


ユーラシア巡見
グルジアのサーカシヴィリ大統領来日

(社)ロシアNIS貿易会経済交流部

はじめに
 サーカシヴィリ・グルジア大統領が2007年3月7日から11日まで実務訪問賓客として来日され、日本グルジア経済委員会(事務局:(社)ロシアNIS貿易会 経済交流部)では3月9日に大統領一行をお迎えして歓迎夕食会を開催いたしました。以下、夕食会でのご挨拶ならびにご発言を記します。