ロシアNIS調査月報
2007年6月号
特集◆NIS経済の成長とジレンマ
特集◆NIS経済の成長とジレンマ
調査レポート
2006年のCIS諸国の経済トレンド
調査レポート
カザフスタンの石油分野におけるロシアのプレゼンス
調査レポート
トルクメニスタン新政権の誕生
―強権体制の踏襲か、雪どけの始まりか
ビジネス最前線
ウクライナの最新ビジネス事情
ビジネス最前線
五感で探るカザフのビジネスチャンス
ユーラシア巡見
ウズベキスタンとの鉱物資源協力に関する
公開討論会
ドーム・クニーギ
木村・鈴木・篠野・早坂(編)
『カフカース ―二つの文明が交差する境界』
データバンク
CIS諸国の最新基礎データ(2007年版)
データバンク
2006年のCIS諸国の経済統計
データバンク
2006年の日本の対NIS諸国貿易統計

クレムリン・ウォッチ
後継レースで優位に立ったイワノフ第一副首相
日ソ・日ロ経済関係の
舞台裏
日ロ経済関係の事実検証:私だけ?が知っている
日本センター所長
リレーエッセイ
ウラジオストク編
「ウラジオストクを通過した人達」
商流を読む
住宅・自動車ローンに力を入れる銀行はどこか
エネルギー産業の話題
中堅石油会社シリーズ(2) ウラルズエナジー
自動車産業時評
回復するロシアのトラック生産
月刊エレクトロニクスNews
ロシアでも旋風を巻き起こす iPod
ノーヴォスチ・レビュー
プーチン教書、市民の具体的ニーズを重視
業界トピックス
2007年3月の動き
2007年1〜2月の通関統計


2006年のCIS諸国の経済トレンド

ロシアNIS経済研究所

はじめに
 CIS諸国の2006年の経済データが出揃った。CIS統計委員会の発表によれば、2006年のCIS全体の経済成長率は、7.5%だった。詳しい統計数字は、今号の「データバンク」のコーナーを参照していただきたい。ここでは、例年どおり、2006年の経済実績を踏まえながら、各国の最新の経済情勢について解説することにする(『ロシアNIS経済速報』2007年4月15日および4月25日号より再録)。
執筆は当会ロシアNIS経済研究所のスタッフによるものであるが、ロシアについては北海道大学スラブ研究センターの田畑伸一郎教授にとくにご寄稿いただいた。


カザフスタンの石油分野におけるロシアのプレゼンス

ロシアNIS経済研究所 調査部次長
坂口泉

はじめに
1.石油輸出から見たカザフ・ロシア関係
2.上流部門でのロシア企業のプレゼンス
まとめ

はじめに
 カザフスタンは、年間生産量6,500万tを誇る産油国である。また、生産量の約9割を輸出に供している石油の輸出大国でもある。
 現在、同国の石油の大半はロシアの領土を経由して輸出されているが、カザフスタン政府は輸出ルートの多様化(換言すれば、ロシア離れ)を明確に志向しており、将来的には、石油輸出におけるロシアへの依存度がかなり低下する可能性も排除できない。一方、上流に目を転じれば、むしろロシアの石油会社のプレゼンスが高まりつつあるとの印象も受ける。一見矛盾した事象のようにも見えるが、そこには、下流部門においても上流部門においても、特定の1カ国に大きく依存するという事態は避けたいというカザフスタン側の一貫した方針が存在するように思える。
 本稿では、そのようなカザフスタン側の方針にも注目しつつ、同国の石油分野におけるロシアのプレゼンスの実態を紹介する。


トルクメニスタン新政権の誕生
―強権体制の踏襲か、雪どけの始まりか―

ロシアNIS経済研究所 調査役
中居孝文

はじめに
1.デカブリストの「宮廷革命」
2.新大統領の就任と新政府の発足
3.「雪どけ」のシグナル?
4.「雪どけ説」への疑問
おわりに

はじめに
 2006年12月21日、トルクメニスタンで独裁的支配を続けてきたニヤゾフ大統領が、急性心不全のため急逝した。1985年末にトルクメン共産党第一書記に就任以来、21年間にわたって文字通りトルクメニスタンに君臨した独裁者の突然の死であった。
 ニヤゾフ大統領の死を受けて、2007年2月には大統領選挙を経て、ベルディムハメドフ新政権が誕生した。就任後、ベルディムハメドフ新大統領は、教育・医療・年金改革、情報統制の緩和などの新機軸を矢継ぎ早に打ち出しており、またニヤゾフ時代に失脚した官僚の復権や政治犯恩赦の噂も流れていることから、新政権に「雪どけ」の気配を読みとる外国のメディアもある。
 本稿では、ベルディムハメドフ政権の成立経緯とその政策を概観し、現時点での新政権の特徴と性格を評価する。


ビジネス最前線
ウクライナの最新ビジネス事情

三井物産潟Lエフ駐在員事務所
所長 前田肇さん

はじめに
 本コーナーでは、2005年4月号において、当時キエフ日本商工会の会長を務めておられた三菱商事の足立純一所長にご登場願い、ウクライナのビジネス事情について語っていただきました。それから2年あまりが経ち、ウクライナ経済の成長はますます加速しているようですが、政治的には一向に安定する気配が見られません。
 そこで、この4月に新たにキエフ日本商工会の会長に就任された三井物産キエフ事務所の前田所長に、最新のウクライナ・ビジネス事情についてお話をうかがいました。なお、今回はメールでのインタビューです。


ビジネス最前線
五感で探るカザフのビジネスチャンス

有限会社 ジェー ターク
代表取締役社長 平方努さん

はじめに
 大手商社マンだった平方さんは1980年代末期に、ウズベキスタンの首都、タシケントに駐在員として赴任されました。西側企業の進出がほとんどなかったころです。その後、ソ連解体、各共和国の独立、経済混乱という変革期を現地で経験した平方さんは、2000年に個人会社ジェー タークを設立。現在は日本企業とカザフスタン企業の橋渡し役など、日本と中央アジアを往復する生活を続けられています。そこで今回は、中央アジアでも経済成長の速さでは群を抜いているカザフスタンの現状について、アルマトィにおられる平方さんにeメールでインタビューしました。


ユーラシア巡見
ウズベキスタンとの鉱物資源協力に関する公開討論会

(社)ロシアNIS貿易会 経済交流部

はじめに
 2006年11月にウズベキスタン共和国タシケントにおいて日本の経済産業省とウズベキスタン対外経済関係・投資・貿易省他の主催により開催された「日本ウズベキスタン・ビジネスフォーラム」(2007年2月号の本コーナー参照)では、エネルギー資源ならびに地下資源開発分野での日本とウズベキスタンとの協力を促進するための情報交換の必要性が確認され、そのフォローアップのために本年3月2日から7日にかけてウズベキスタンよりマヴリャノフ地質・鉱物資源国家委員会議長一行が来日され、3月6日に経済産業省内会議室において公開討論会が開催されました。以下、ウズベキスタン側プレゼンテーションの要点を記します。なお、プレゼンテーション資料は当会ウェブサイトに掲載されていますので、ご覧ください。


商流を読む
住宅・自動車ローンに力を入れる銀行はどこか

 このほど当会では、ロシアの調査機関「エクスペルト」社から、同国の銀行部門の動向に関する詳しい資料を入手した。このなかに、住宅ローンと自動車ローンについて、それぞれ供与している額の大きい銀行のベスト10のデータが掲載されている。興味深い情報なので、以下、レポートの当該部分を抜粋して紹介する。


エネルギー産業の話題
中堅石油会社シリーズ(2) ウラルズエナジー

 前回のWest Siberian Resourcesに引き続き、ロシアの中堅石油会社を紹介いたします。
 今回ご紹介するのはウラルズエナジーという会社ですが、この会社は最近物故したエリツィンの元娘婿のジヤチェンコが株主として名を連ねていることや、サハリン6と呼ばれているプロジェクトの権益を保有していることでもよく知られています。
 ロシアの中堅石油会社に多いパターンですが、この会社もIPO(新規株式公開)で得た資金や、金融機関より獲得した融資で石油生産企業のM&Aを繰り返すことにより規模を拡大してきました。前回紹介したWest Siberian Resources同様、石油価格の高騰という追い風を巧みに利用し成長している石油会社だといえるでしょう。


自動車産業時評
回復するロシアのトラック生産

 ロシアのトラック生産量は、国内の有効需要が激減したこともあって、ソ連解体後一貫して縮小傾向にありました。中・大型トラックの生産の落ち込みには、とりわけ深刻なものがありました。
 しかし、ロシア経済が石油価格の高騰という追い風を受け回復基調に転じた2000年ごろから改善傾向が見受けられるようになり、2006年は、ソ連解体後の期間に限定すれば1999年に匹敵する大幅な増産幅を記録しました(1999年の伸びはルーブル・レートの大幅な下落効果によるものだったと推測される)。とくに下半期の活況は顕著で、平均月産量が2万2,500台と前年同期の実績(1万8,810台)を大きく上回りました。その結果、通年でも前年比19.9%増の24万8,233台の生産を記録しています。
 そこで今回は、好調に転じたロシアのトラック生産部門に焦点を充て、そこで活動する主要メーカーの近況をご紹介いたします。


月刊エレクトロニクスNews
ロシアでも旋風を巻き起こす iPod

 米アップル社は4月9日、デジタル携帯音楽プレーヤー「iPod」の全世界での累計販売台数が1億台を突破したと発表しました。日本も含め、世界の音楽ファンのライフスタイルまで変えてしまったiPodですが、ロシアでの販売状況はどうなっているのでしょうか。情報をとりまとめてお伝えします。