ロシアNIS調査月報2008年7月号特集◆日ロ協業の都 |
|
特集◆日ロ協業の都サンクトペテルブルグ |
|
特報
|
サンクトペテルブルグ・ビジネス戦略会議開催される |
調査レポート
|
逼迫するサンクトペテルブルグ地域の労働市場 |
調査レポート
|
政治家ヴァレンチーナ・マトヴィエンコ |
ビジネス最前線
|
日ロ関係発展の鍵は物流にあり |
講演録
|
サンクトペテルブルグの自動車部品産業 |
商流を読む
|
北都にひしめく大型商業施設 |
メタル・ワールド
|
北西に進路を取るセヴェルスターリ |
ロジスティクス・ナビ
|
ペテルブルグのロジの担い手たち@ |
月刊エレクトロニクスNews
|
ボッシュ・シーメンスの白もの家電工場 |
データバンク
|
サンクトペテルブルグ市とレニングラード州の対外経済関係 |
データバンク
|
サンクトペテルブルグ地域大企業ランキング |
RUSSIAN STYLE
|
ペテルブルグの老舗磁器窯 |
ドーム・クニーギ
|
望月哲男編 『創像都市ペテルブルグ ―歴史・科学・文化』 |
調査レポート
|
2007年のロシアの外国投資統計 |
調査レポート
|
ベラルーシの対外経済関係とルカシェンコ政権(下) |
データバンク
|
2007年のロシアの小売チェーン・ランキング |
ユーラシア巡見
|
カザフのロジスティクス・センター |
ロシア産業の迷宮
|
インターロス・グループの分割 |
クレムリン・ウォッチ
|
新体制発足 ―ややリベラル寄りの二頭協力路線 |
日本センター所長 リレーエッセイ |
ビシケク編 キルギス昨今 |
エネルギー産業の話題
|
イルクーツク州の石油開発の現状 |
自動車産業時評
|
ロシアの地方での外国新車販売状況 |
ノーヴォスチ・レビュー
|
食糧危機がロシアのWTO加盟を遠のかせる |
ロシアビジネスQ&A
|
◎自動車運転免許の取得と事故対処法 |
業界トピックス
|
2008年4月の動き ◆三菱電機がペテルブルグにFAセンター ◆「うどんやさん」がモスクワでチェーン展開 2008年1〜4月の通関統計 |
サンクトペテルブルグ・ビジネス戦略会議開催される
ロシアNIS経済研究所 調査役
中居孝文
はじめに
4月25日(金)、ホテルニューオータニにおいて、「サンクトペテルブルグ・ビジネス戦略会議」が開催された。今回の会議は、成田〜ペテルブルグ間のトランスアエロ便の開設にあわせ、マトヴィエンコ市長を団長とする同市代表団(総勢86名)が訪日したことを機に実施されたものである。当会は、日本貿易振興機構(ジェトロ)とともに後援団体として本会議を全面的に支援した。
周知のように、サンクトペテルブルグでは、自動車メーカー(トヨタ、日産、スズキ)の進出を契機に、日本の商社、物流会社、金融・保険会社等の現地法人や事務所の開設が相次いでおり、 2004年初には3社であった日系企業の進出数が、現時点までに40社を上回るに至った。現在、サンクトペテルブルグは、日本の対ロビジネスにとって、モスクワと並ぶ最重要の拠点であるといってよい。
こうした双方の強い関心を反映して、本会議には、200名を上回る参加者(日本側130名、ロシア側80名)が集まり、会場はほぼ満席の状態であった。
なお、本会議については、ロシアNIS貿易会ホームページに詳細プログラム、プレゼン資料、ロシア側参加者リスト等の情報を掲載している。あわせてご参照いただきたい。
逼迫するサンクトペテルブルグ地域の労働市場
ロシアNIS経済研究所 次長
坂口泉
はじめに
1.労働力不足の現状
2.技術系労働者不足の背景にあるもの
3.フォード工場における労働組合活動
おわりに
はじめに
ロシアでは最近、全国各地で労働力の不足を嘆く声が聞こえ始めている。職種により状況は異なるが、全般的に現業労働者、それも技術系労働者(工場労働者等)が不足している地域が目立つ。その中でもとくに状況が深刻なのが、サンクトペテルブルグ市とその周辺のレニングラード州だといわれている(本稿では、この2地域のことを「(サンクト)ペテルブルグ地域」と称する)。また、これらの地域はロシアの中でも最も労働組合活動が活発な場所としても有名で、レニングラード州に所在するフォードの現地工場では最近、労働者のストライキが原因で生産に大きな支障が生じるという事態が生じた。
これらの問題は、ペテルブルグ地域に進出している(あるいは進出を検討している)日系企業にとっても看過できない問題だと思われる。そこで、本稿では、ペテルブルグ地域の労働力不足の実態とその背景に存在する諸事情、ならびに、フォードの現地工場(レニングラード州フセヴォロシスク地区に所在)の労働組合の活動状況等について紹介する。
政治家ヴァレンチーナ・マトヴィエンコ
ロシアNIS経済研究所 嘱託研究員
中馬瑞貴
はじめに
1.女性政治家
2.マトヴィエンコと中央政府
3.マトヴィエンコとサンクトペテルブルグ市
4.マトヴィエンコ市長と日本
5.マトヴィエンコと家族
おわりに
はじめに
2008年4月25日、ロシア・サンクトペテルブルグ市長マトヴィエンコ女史が東京・成田空港〜サンクトペテルブルグ・プルコヴォ空港初の直行便(トランスアエロ航空)第1便で日本を訪れた。市長の訪日と合わせて、都内ではサンクトペテルブルグ市主催のビジネス戦略会議が開催され、市長は開会のスピーチで、近年深まりつつあるサンクトペテルブルグと日本の経済関係を評価するとともに、今後もさらに相互関係を深めることが目標であると述べた。
サンクトペテルブルグといえば、エルミタージュ美術館、ロシア美術館、マリンスキー劇場などがあり、ロシアの文化・芸術を象徴する都市である。世界中で観光地として人気が高い。さらに近年ビジネス・経済の分野でも注目を浴び、日本との関係で言えば、2005年にトヨタ自動車、2006年に日産自動車が現地工場建設を決めるなど、自動車産業の進出が著しく、他にもさまざまな企業がサンクトペテルブルグに進出している。このように近年発展の目覚しいロシア第2の都市であるサンクトペテルブルグで市長を務めるのが、現在ロシアでもっとも有名な女性政治家の一人と言えるヴァレンチーナ・マトヴィエンコである。
現在はサンクトペテルブルグ市長として活躍するマトヴィエンコ女史は、市長就任前に外交官、連邦副首相、大統領全権代表を務めるなど、さまざまな形でロシア政治に関わってきた。ここでは、連邦中央で政治の経験を持ち、現在は地方で政治を主導するという豊富な政治キャリアを持つロシア第2の都市サンクトペテルブルグ市長、マトヴィエンコ女史に焦点を当てる。
ビジネス最前線
日ロ関係発展の鍵は物流にあり
葛゚鉄エクスプレス トランスコンテナセンター
重松和英さん
はじめに
重松さんは商社で長らくソ連・ロシアビジネスに携われた後、しばらくロシアから離れていました。そんな重松さんを待っていたのが輸送・物流分野です。これまでとは違う業界でありながら、積極的にロシアビジネスを進めてこられたのは、ご本人の豊富な経験と情熱、そして近鉄エクスプレス・辻本社長のリーダーシップによる積極的なロシア市場の開拓があったからでしょう。お話を伺って、現在の同社の事業が、日本のロシアビジネスの将来につながっていることを実感しました。
講演録
サンクトペテルブルグの自動車部品産業
サンクトペテルブルグ自動車部品工業会 専務理事
V.キセレヴィチ
はじめに
(社)ロシアNIS貿易会では、日本自転車振興会補助事業として、3月4日に大阪で、また3月5日に名古屋において「ロシアの自動車部品産業セミナー」を開催いたしました。このセミナーでは、ロシアの自動車業界誌『アフトビジネス』のA.コズロフ編集長およびサンクトペテルブルグ自動車部品工業会のV.キセレヴィチ常務理事にご講演いただきました。以下では、「サンクトペテルブルグの自動車部品産業」と題するキセレヴィチ氏の報告の要旨をご紹介いたします。
なお、コズロフ氏報告「ロシアの自動車部品市場」の要旨は、当会『ロシアNIS経済速報』No.1426(2008年4月5日号)でご紹介いたしましたので、ご参照ください。また、セミナー当日に配布した両氏報告資料を下記の当会サイトに掲載しておりますので、こちらも併せてご利用ください。
商流を読む
北都にひしめく大型商業施設
ロシアの公式統計からドル換算すると、2007年のサンクトペテルブルグ市の商品小売販売総額は176億ドルで、全国シェアは4.1%だった。隣接するレニングラード州は41億ドルで、1.0%である。むろん人口差によるところが大きいが、両者を合計しても、モスクワ市(816億ドル、19.0%)やモスクワ州(264億ドル、6.1%)には水をあけられた格好だ。
しかし、現時点での成長率では、モスクワよりもペテルブルグの方が上である。住民1,000人当たりの商業施設の面積では、ペテルブルグが全国一であるという興味深いデータもある。本レポートでは、商業施設の情報を中心に、ペテルブルグの小売セクターについてお伝えする。
メワルワールド
北西に進路を取るセヴェルスターリ
サンクトペテルブルグ市行政府は、1億ドル以上の投資を実施する主体を(ロシアであるか外国であるかをを問わず)、「戦略的投資家」と称して、各種の優遇措置を提供する政策をとっています。そして、数ある戦略的投資家のなかでも、マトヴィエンコ市長が「ナンバーワンの戦略的パートナー」と呼んではばからないのが、国内の鉄鋼大手セヴェルスターリです。セヴェルスターリは、2005年5月にペテルブルグ市行政府と協定を結び、イジョラ鋼管工場を新たに立ち上げ、需要の高まっている大径管の生産に乗り出しました。
イジョラ鋼管工場については、本誌の2008年4月号に掲載されたレポート「ロシアのパイプラインと鋼管需給の最新事情」でも取り上げていますが、ここではセヴェルスターリとペテルブルグ市の協力関係という観点から、改めてこのプロジェクトに着目してみることにいたします。
ロジスティクス・ナビ
ペテルブルグのロジの担い手たち@
冒頭の記事でお伝えしたとおり、4月25日に東京でサンクトペテルブルグ・ビジネス戦略会議」が開催されました。会議はどのセッションも盛況でしたが、なかでもお申し込みが殺到して一番早く締め切らざるをえなかったのがラウンドテーブル2「サンクトペテルブルグの輸送とロジスティクス」でした。この分野への関心の高さが改めて裏付けられた形です。
そこで、このコーナーでは今回と次回の2回に分けて、同ラウンドテーブルにおけるロシア側のプレゼンテーションの概要を紹介してみたいと思います。今回は、ステルフ社(Corporation Sterh)のK.クルツォフ投資部長による「ペテルブルグ市場に参入する日本企業にとってのロジスティクス・輸送上の課題」と題する報告の要旨です(当日の発言よりも配布資料を中心に構成しました)。
月刊エレクトロニクスNews
ボッシュ・シーメンスの白もの家電工場
サンクトペテルブルグ地域での現地生産に乗り出している外国企業は、何も自動車メーカーだけではありません。家電の分野でも、エレクトロラックスがペテルブルグ工場で洗濯機を生産していますし、メルローニはレニングラード州フセヴォロシスクに電気給湯器の生産工場を構えています。
そうしたなかで、本レポートでは、一番新しいボッシュ・シーメンスの白もの家電工場にスポットを当てます。同社は2007年6月にペテルブルグ市に冷蔵庫工場を完成させ、現在は洗濯機工場を建設中です。これを足がかりに、最終的にはペテルブルグに「アプライアンス・パーク」を創設するといいますから、大変な意気込みです。しかし、自動車産業の場合と同じく、部材の現地調達には非常に苦労しているようです。
データバンク
サンクトペテルブルグ市とレニングラード州の対外経済関係
今回の特集の主役であるサンクトペテルブルグ市とレニングラード州に関し、貿易と外国投資の最新の統計データをとりまとめてお届けする。出典はロシア連邦国家統計局および同サンクトペテルブルグ市・レニングラード州支部の各種刊行物およびウェブサイトであるが(一部サンクトペテルブルグ市行政府から直接提供を受けたものもある)、煩雑になるので、逐一明記はしない。
データバンク
サンクトペテルブルグ地域大企業ランキング
ロシアの経済週刊誌『エクスペルト』は、ロシアの大企業ランキングを毎年制定しており、本『月報』でもその概要を定期的に紹介している。最新の2007年版ランキングは、本誌2007年12月号に掲載している。
ところで、『エクスペルト』誌には数種類の地域版があり(「ヴォルガ」「北西」「シベリア」「ウラル」「南部」)、各地域ごとにも大企業ランキングが作成されているのをご存知だろうか? たとえば、サンクトペテルブルグ市とレニングラード州を含む北西連邦管区については、『エクスペルト北西』2007年10月29日号において、2006年の売上高にもとづく「北西連邦管区250大企業ランキング」が発表されている。
そこで、以下では、この250社のなかから、サンクトペテルブルグ市とレニングラード州の企業だけを抜き出して、本誌独自に「サンクトペテルブルグ地域大企業ランキング」を作成し、そのデータを紹介してみたい。
RUSSIAN STYLE
ペテルブルグの老舗磁器窯
ロシアの陶磁器といえば、やはりグジェリの陶器が最も有名だろうか。グジェリはモスクワ州の伝統的な陶器産地で、白地に青の素朴な食器や置物が土産品としてもおなじみだ。
グジェリ以外にも、現在、ロシアには数十の陶磁器メーカー(工場)がある。ウラル以西地域が陶磁器生産の中心となっており、クバン(クラスノダル市)、コナコヴォ(トヴェリ州)、ドゥリョヴォ(モスクワ州)、ヴェルビルキ(モスクワ州)、ボグダノヴィチ(スヴェルドロフスク州)、プロレタリア(ノヴゴロド州)等のメーカーが大手として知られる。
しかし近年では、ロシア製品の減産の一方で欧州や中国等からの輸入陶磁器が増えており、デザインや価格も様々な品が出回っている。輸入品と国産品のシェアは半々位とされるが、大手スーパーや百貨店では、輸入品の方が多くみられるようになった。
ロシア製の陶磁器は、値段は手頃だが、良く言えば懐かしい、悪く言えばかなり垢抜けないデザインのものが多い。正直、シンプルで機能的な欧州製品やより安価な中国製品が売れているのも仕方がないという気がする。
そんな中で、一線を画しているのが、サンクトペテルブルグの老舗磁器メーカー「インペリアル磁器工場(インペリアル・ポーセレン)」である。以下では、同社についてご紹介したい。(山本靖子)
2007年のロシアの外国投資統計
ロシアNIS経済研究所 次長
服部倫卓
はじめに
1.ロシアの全般的な外資受入状況
2.日本からロシアへの投資
3.ロシアから外国への投資
4.外資参加企業の設立・活動状況
おわりに
はじめに
例年どおり、ロシア連邦国家統計局の各種資料にもとづき、2007年のロシアの外国投資統計をとりまとめて掲載するとともに、データに関する解説をお届けする。
以下ではまず、1において、ロシアの全般的な外国投資受入状況について、最新データを紹介する。2においては、日本からロシアへの投資データを見ることにする。3では、本レポートのシリーズでは初めての試みとして、ロシアから外国への投資動向を吟味する。最後に、4において、ロシアにおける外資参加企業(100%外資企業および合弁企業)の設立・活動状況を整理する。
なお、本レポートでは例年、ロシア科学アカデミー極東支部経済研究所からデータを提供してもらい、日本とつながりの深いロシア極東連邦管区の外国投資受入状況の数字を紹介しているが、残念ながら本年は入手が間に合わなかった。極東のデータは、月報の次号に掲載する予定なので、ご了承願いたい。
ベラルーシの対外経済関係とルカシェンコ政権(下)
「戦略」分析センター 主任研究員
V.カルバレヴィチ
はじめに
6.第三世界との関係
7.社会経済政策の転換
8.原発建設計画
9.内政問題
10.野党勢力の動向
はじめに
前回に引き続き、ベラルーシ「戦略」分析センター主任研究員のV.カルバレヴィチ氏に執筆いただいた同国の対外関係と国内政治・経済情勢に関する論文の抄訳をお届けする。
前号では、ベラルーシ経済に最も大きな影響を与える隣国ロシアおよび欧米との関係を中心とする前編(1〜5節)をご紹介した。今号は、その他の国々との関係、経済政策、内政事情の分析を中心とする後編(6〜10節)である。
データバンク
2007年のロシアの小売チェーン・ランキング
ロシア『コメルサント』紙(2008年4月11日号No.61)に、2007年のロシアの小売チェーン店販売高ベスト50が掲載されているので、次頁以下にランキングをご紹介する(2006年版のランキングは本誌2007年7月号参照)。なお、これはチェーンごとの販売高ではなく、チェーンを経営する事業会社の販売高にもとづいて作成されたランキングであり、一社が複数のチェーンを展開している場合には、その合計額が示されている(「チェーン名」の項目を参照)。販売高は基本的に各社が公表した数字であるが、公表されなかった場合には専門家が推計したとされている。表中のインターネットのアドレスは、当会で独自に調べ、判明した範囲内で付記したものである。
ユーラシア巡見
カザフのロジスティクス・センター
―第9回日本カザフスタン経済合同会議での報告から―
はじめに
5月19日、東京の如水会館において、第9回日本カザフスタン経済合同会議が開催された。このなかで、「分科会2:投資拡大に向けたテクニカル・アシスタンス」においてN.キリバイ運輸・通信省鉄道部長の行った報告「カザフスタン共和国における運輸ロジスティクス・センターの創設に向けた活動について」が、関係者の注目を集めたようである。会議全体の模様については、いずれ別の形でお伝えする機会があると思うが、今号のこのコーナーでは、キリバイ部長の報告内容をいち早くお伝えすることにする。
ロシア産業の迷宮
インターロス・グループの分割
世界有数の大手非鉄会社「ノリリスクニッケル」を核とする巨大企業グループ「インターロス」の分割プロセスが、最近、ついに最終段階を迎えた。インターロスのオーナーはポターニンとプロホロフの2人であったが、2006年後半頃から関係が悪化し、別れ話(「財産分与」交渉)が開始されていたのである。この別離交渉は、デリパスカ(ルサール)やウスマノフ(メタロインヴェスト)といった外部の大物実業家も巻き込むような形で、約2年続いたが、ようやく2008年春になり別離の方向性がほぼ確定した。
本稿では、まずインターロスの概要を紹介した後、今日に至るまでの2人の別離交渉の経緯を説明する。(坂口泉)
クレムリン・ウォッチ
新体制発足
―ややリベラル寄りの二頭協力路線―
陰謀めいた動きと憶測に満ちた大統領交替プロセスも、内閣と大統領府の人事が決まって、ちょっと一段落というところです
わが国の主要メディアの評価をみると、朝日新聞が、メドヴェージェフ色が若干強化まり、セーチンの影響力が後退する可能性ありと指摘したのを除くと、他はおおむね、プーチン院政説に寄った分析だったと思います。パトルシェフFSB長官が安全保障会議に移ったのは、「腹心を配置して大統領を牽制」(日経)し、「外交と安全保障を主導するため」(サンケイ)であり、全体として「これまでの側近を重視する人事」(毎日)であって、「強硬派シロビキの力が強い」(日経)、というわけです。シロビキ優勢だから、経済分野では、「今後も産業国家管理の路線をとる」(日経)ものと思われ、むしろ「産業改革をセーチンが握るので、これまで以上に国家資本主義型」が強まる(サンケイ)という結論になります。
私の見方は、この中では朝日新聞にやや近いものです。その一端は5月14日の衛星放送で話しました。(月出皎司)
エネルギー産業の話題
イルクーツク州の石油開発の現状
(独)石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)がイルクーツク州を拠点とするロシアの民間石油会社「イルクーツク石油会社」と合弁企業を設立し、同州北部の鉱区(北モグジンスキー鉱区)で地質構造調査事業を開始することがこの4月に明らかになり、話題となりました。そこで本稿では、我が国のみならず、ロシアでもほとんど知られていないイルクーツク州の石油開発の現状を紹介いたします。
自動車産業時評
ロシアの地方での外国新車販売状況
周知のとおりロシア市場では外国新車の売れ行きが非常に好調で、2007年は前年比約61%増の約165万台の販売を記録しています。2008年に入ってからも好調さは続いており、第1四半期には前年同期比54%増の45万4,000台の外国新車が売れました。
しかし、多くの外国メーカーにおいて最近ある異変が生じています。最大の消費地であるモスクワでの販売の伸びが鈍化する一方で、地方での販売が急激に伸びているメーカーが少なくないのです。業界関係者の中には、ロシアの乗用車市場は完全に地方の時代に入ったと断言する向きすらあります。
外国新車の地域別販売状況に関する情報の入手は困難ですがが、今回、サンクトペテルブルグ、ウラル地域、シベリア連邦管区の3つの地域の数字を何とか見つけ出すことができたので、それを紹介いたします。なお、各数字は、それぞれの情報源が独自に算出したものなので、お含み置きください。