ロシアNIS調査月報
2008年12月号
特集◆ロシア経済は
どこに向かうのか
特集◆ロシア経済はどこに向かうのか
特報
第3回日露投資フォーラム開催
―新たなステージに進む日ロ投資協力
調査レポート
国際金融危機の影響を被るロシア経済
調査レポート
ロシア林業の高付加価値化は可能か
調査レポート
サンクトペテルブルグの自動車クラスター論争
研究所長日誌
太平洋原油パイプラインはロシア極東を活性化できるか
クレムリン・ウォッチ
バブルの終わり ―ロシアを襲う経済危機
データバンク
2008年版ロシア大企業ランキング

ビジネス最前線
日本の優れた技術をロシアの近代化に生かせ
ドーム・クニーギ
野口悠紀雄著『超「超」整理法』
エネルギー産業の話題
減産基調のロシアの石油生産
自動車産業時評
2008年上半期のロシアのトラック生産状況
月刊エレクトロニクスNews
ロシア・テレビ販売市場の基礎データ
ロシアビジネスQ&A
◎ロシア語ホームページ作成のポイント
業界トピックス
2008年10月の動き
◆日本食文化ロシア普及協会の取り組み
2008年1〜9月の通関統計


特報
第3回日露投資フォーラム開催
―新たなステージに進む日ロ投資協力―

ロシアNIS経済研究所 調査役
中居孝文

はじめに
 本年9月4日〜6日、ロシア・サンクトペテルブルグ市において、経済産業省、ロシア経済発展省、サンクトペテルブルグ市および日露貿易投資促進機構(日本側の事務局はロシアNIS貿易会)主催のもとで「第3回日露投資フォーラム」が開催された。
 本フォーラムは、2006年9月の第1回(サンクトペテルブルグ開催)、2007年2月の第2回(東京開催)に続くもので、日本側からは高市早苗経済産業副大臣、当会の西岡喬会長ほか、メーカー、商社、銀行および政府機関などから254名(107社・団体・機関)、ロシア側からはヴォスクレセンスキー経済発展省次官、マトヴィエンコ・サンクトペテルブルグ知事ほか261名(137社・団体・機関)、合計515名が参加した。
 また、9月5日には日露投資フォーラムの分科会と並行して「第9回日本ロシア経済合同会議」(日本経団連日本ロシア経済委員会ほか主催)が同じ会場内で開催された。
 以下では、第3回日露投資フォーラムの概要をご紹介する。


国際金融危機の影響を被るロシア経済

ロシア科学アカデミー世界経済国際関係研究所 主任研究員
V.シュヴィトコ

はじめに
1.世界的な金融危機の展開とロシア
2.危機対策措置の内容
3.緊急措置の効果と中期的措置の方向性
4.当面の脅威と課題


 1年ほど前に米国の低所得者向け住宅ローン焦げ付き問題から発生した金融不安が、その規模と中身の重大さを膨らませながら、世界の主要経済国に影響を及ぼすようになり、世界的な金融危機を発生させた。しかし、ロシア国内では、つい最近まではその動きを自国に関係ないものとみて、政府と財界の両者とも、潜在的脅威となるプロセスが徐々に展開していたにもかかわらず、景気の中期予測や行動の方針と戦術に是正を加える必要を感じていなかったようだ。
 一方、2008年9月に銀行セクターに起こった流動性不足をきっかけに、「金融危機」がロシアのマスコミの流行語になり、ロシアの経済が金融システムの崩壊と経済危機の前夜にあるという印象を持たせるレポートが溢れるようになった。急に高まった世間の関心に応えて、エコノミストの解説が数多く出てはいるが、冷静でバランスの取れたものが少なく、論拠を欠いた極端な発言は世間を戸惑わせ、不安を強化している側面もある。
 その一方、客観的にみても状況が正常なものでなく、予想外の変化が起こりかねないといういこともあり、世界とロシアの経済、とりわけその金融部門の向こう1年間の行方を見定めることは難しい。
 以下本稿では、2008年10月末の時期にいたるまでの事実関係を中心に、世界の金融不安がロシアの企業部門に及ぼす影響について論じてみることにする。

ロシア林業の高付加価値化は可能か

ロシアNIS経済研究所 次長
坂口泉

はじめに
1.丸太の輸出関税率引き上げ措置
2.新森林法典に関連する動き
3.森林伐採部門の現状と展望
4.合板、パーティクルボード、ファイバーボード部門
5.紙パルプ部門
おわりに

はじめに
 ロシアの林業分野が今、新しい局面を迎えようとしている。丸太の輸出関税の段階的な引き上げ措置が2007年夏より開始されており、2009年1月1日からは1立米あたり50ユーロという極端に高い税率が適用される予定となっている。これは、ロシア政府が昨今打ち出している加工産業育成の方針に沿った措置で、原料(丸太)の輸出を制限することにより、高付加価値商品(合板、紙パルプ製品等)の生産・輸出を促進しようという思惑がそこには存在する。さらに、この措置と連動する形で、高付加価値商品生産関連プロジェクトに一定額以上の投資を行う内外資本に対し、有利な条件で森林区画を提供するという措置の適用も開始されようとしている。
 もっとも、少なくとも短期的に見た場合、これらの措置が期待されたほどの効果を生まないどころか、むしろ大きな混乱をもたらす可能性の方が高いように思われる。たとえば、今のところ高付加価値商品の生産設備の新設あるいは拡充の進捗状況が思わしくないという事実を勘案すると、丸太輸出の制限措置が木材伐採量の減少につながり、伐採企業が大量に倒産するというシナリオも充分に考えられる。
 以上のような状況を踏まえ、本稿ではまず、ロシア政府が現在打ち出している諸措置の内容を紹介した後に、それらの措置が及ぼす影響に留意しつつ、ロシアの林業分野の主要部門の現状と今後の展望について考察を試みる。


サンクトペテルブルグの自動車クラスター論争

ロシアNIS経済研究所 次長
服部倫卓

はじめに
1.論争のあらまし
2.部品産業誘致の動き
3.イノベーション政策との連携は?
4.むすびにかえて

はじめに
 今さら言うまでもなく、ロシア北西部のサンクトペテルブルグ市およびその近郊のレニングラード州では(本稿では両者を総称して「サンクトペテルブルグ地域」と呼ぶ)、外国自動車メーカーによる自社工場の建設が相次いでいる。これほど狭いエリアに大手自動車メーカーの工場がひしめいているところは、世界的にも稀ではないかと思われる。「ペテルブルグ=ロシアのデトロイト」という呼び声が高まり、さらには当地における「自動車産業クラスター」の形成が盛んに語られるようになったのも、無理からぬところである。
 しかし、これもまたよく知られているように、ロシアに進出した各外国メーカーは、部材の現地調達の困難に直面している。輸入部品を組み立てる工場が集中的に立地していることだけをもって、それを真の「自動車産業クラスター」と呼びうるかと言えば、大いに疑問だ。現に、地元では、『エクスペルト北西』誌を舞台として、「自動車産業クラスター論争」とも言うべき議論が戦わされている。
 他方、ペテルブルグ市行政府は、科学技術、イノベーション促進政策に力を入れている。本来、産業クラスターにおいては、生産企業のみならず、研究開発機関や教育機関なども役割の一翼を担うことが期待されるはずである。したがって、ペテルブルグ市当局のイノベーション政策が、自動車産業クラスターの形成とどのようにかかわってくるのか(あるいは、こないのか)というのも、大きな注目点だ。
 そこで本稿では、ペテルブルグの自動車クラスター論争を紹介するとともに、それに関連する自動車部品産業誘致の動き、市のイノベーション促進政策に関する考察を試みる。


クレムリン・ウォッチ
バブルの終わり
―ロシアを襲う経済危機―

 ロシアも世界的な金融危機と経済混乱の波に襲われています。本稿では金融危機をなるべく政治との関わりの中で観察してみることにします。(月出皎司)


データバンク
2008年版ロシア大企業ランキング

 ロシアの経済週刊誌『エクスペルト』(2008年10月6-12日号、No.39)に、毎年恒例のロシア大企業ランキングが掲載されているので、本誌でも早速これを抜粋して紹介する。


ビジネス最前線
日本の優れた技術をロシアの近代化に生かせ

テツオ・トレーディング梶@代表取締役社長
鐵尾安夫さん

はじめに
 ロシアの企業や消費者の日本製技術・製品に対する敬意と関心が高まっているにもかかわらず、日本の中小企業による対ロ・ビジネス案件がなかなか成約に至らない。規模は小さくとも、多くの成功例が生れれば、裾野は大きく広がるのに――そんな歯がゆさを解消するための心強いパートナーがテツオ・トレーディングです。これまでの豊富なビジネス経験を生かすべく、2007年5月に同社を設立された社長の鐵尾さん。ご自身を語っていただくことで、ロシアビジネスの過去・現在・未来が見えてきます。


エネルギー産業の話題
減産基調のロシアの石油生産

 2008年に入りロシアの石油生産はやや不振で、上半期の生産量は前年同期比で0.4%減となっています。大手の石油会社の中では、スルグトネフチェガスとガスプロムネフチが4%以上の減産を記録。また、ルクオイルとTNK-BPもそれぞれ2%前後の減産となりました。ただ、ロシア最大の生産規模を誇るロスネフチだけは好調で、前年比で5%以上の増産を達成しています。
 今回は、なぜこのような個体差が生じたのかという点にも留意しつつ、ロシアの大手石油会社の2008年上半期の石油生産動向をご紹介いたします。


自動車産業時評
2008年上半期のロシアのトラック生産状況

 ロシアでは2007年に、経済の好調さを背景に、建設業者等からの大型トラックに対する需要が急激に高まりました。その結果、KAMAZ、Uralといった大型トラックを主力とするメーカーが大幅に生産台数を伸ばし、全体でも16%と大幅な増産となりました。
 2008年上半期も引き続き大型トラックに対する需要は好調でしたが、中小型トラックがやや伸び悩み、上半期のトラックの生産台数は前年同期比6.6%の伸びにとどまっています。
 今回は、2008年上半期のロシアの主なトラックメーカーの生産状況を整理することにいたします。


月刊エレクトロニクスNews
ロシア・テレビ販売市場の基礎データ

 このほど当会では、現地ディスカバリー・リサーチ・グループ社のレポートなどにもとづき、ロシアのテレビ販売市場の基礎データを整理しましたので、以下そのデータをグラフにまとめてご紹介いたします。


ロシアビジネスQ&A
ロシア語ホームページ作成のポイント

 今日、企業にとってインターネットでの情報発信はなくてはならない存在になっています。世界の市場を相手にする企業にとって、最低限日本語と英語のホームページが必要です。ロシア市場を目指す企業なら、ロシア語のホームページから情報を発信すれば可能性が広がることでしょう。 今回はロシア語でホームページを制作するにはどうしたらよいかという質問にお答えします。