ロシアNIS調査月報2009年6月号特集◆世界経済危機のなかのNIS諸国 |
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特集◆世界経済危機のなかのNIS諸国 |
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調査レポート |
2008年のCIS諸国の経済トレンド |
調査レポート |
NIS諸国の乗用車産業・市場の最新事情 |
調査レポート |
金融危機と天然ガス戦争に翻弄されるウクライナ |
調査レポート
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黒海港湾の覇を競うロシアとウクライナ(下) |
ビジネス最前線 |
アルマティを拠点に中央アジア経済をウォッチ |
ミニレポート |
日本キルギス・ビジネスフォーラム開催 |
ミニレポート |
日本ウズベキスタン・投資ビジネスセミナー2009 |
データバンク |
2008年のCIS諸国の経済統計 |
データバンク |
2008年の日本の対NIS諸国貿易統計 |
ドーム・クニーギ |
田中明彦著『ポスト・クライシスの世界 ―新多極時代を動かすパワー原理』 |
研究所長日誌
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建設機械は日ロ貿易の伝統的な重要品目 |
クレムリン・ウォッチ
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メドヴェージェフとシロビキ ―最近の情況― |
エネルギー産業の話題
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サハリン3〜6プロジェクトの最新動向 |
自動車産業時評
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2009年第1四半期のロシア乗用車市場 |
ロシアビジネスQ&A
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◎ロシアのギフト市場 |
業界トピックス
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2009年4月の動き ◆ドラッグストアのセイジョーがウラジオ進出 ◆ロシア・ビジネスサポートが現法を設立 2009年1〜3月の通関統計 |
2008年のCIS諸国の経済トレンド
ロシアNIS経済研究所
はじめに
CIS全般:金融経済危機で各国経済の脆弱性が露呈
ロシア:油価高騰にもとづく経済成長の終焉
ウクライナ:出口の見えないトリプル複合危機
ベラルーシ:金策に追われる「やじろべえ国家」
モルドバ:農業が回復しワイン輸出も復活
カザフスタン:石油景気の終焉と強まる国家管理・規制
キルギス:近隣諸国の景気後退が打撃
ウズベキスタン:「市場経済の辺境」に危機の波はいまだ届かず
トルクメニスタン:新政権下で市場経済化、ついに始まる
タジキスタン:アルミと綿花の市況悪化に苦しむ
アゼルバイジャン:足元は好調も差し迫る岐路
アルメニア:6年連続「2桁成長」に終止符
グルジア:南オセチア紛争の代償は外資の流出
はじめに
CIS諸国の2008年の経済データが出揃った。CIS統計委員会の発表によれば、2008年のCIS全体の経済成長率は、5%だった。詳しい統計数字は、今号の「データバンク」のコーナーを参照していただきたい。ここでは、例年どおり、2008年の経済実績を踏まえながら、各国の最新の経済情勢について解説することにする(『ロシアNIS経済速報』2009年4月15日および4月25日号より再録)。
執筆は当会ロシアNIS経済研究所のスタッフによるものであるが、ロシアについては北海道大学スラブ研究センターの田畑伸一郎教授にとくにご寄稿いただいた。
NIS諸国の乗用車産業・市場の最新事情
ロシアNIS経済研究所 次長 坂口泉
はじめに
1.ウクライナ
2.ウズベキスタン
3.カザフスタン
4.ベラルーシ
5.その他のNIS諸国
おわりに
はじめに
NIS諸国の乗用車市場はロシア市場とは様相を異にしており、それぞれかなり個性的である。最初に目につく特徴は、その市場規模の小ささである。最も規模が大きなウクライナ市場でも2008年の新車販売台数は約62万台とロシアの4分の1未満にすぎない。
また、乗用車の輸入関税率をみてもカザフスタンやウクライナのようにロシアよりも低い国から、ウズベキスタンのように極端に高い国まで様々である。中古車の輸入に関しても、ウクライナのように中古車の輸入量が非常に少ない国もあれば、カザフスタンのように非常に多い国もある。さらに、全般的に保護主義の傾向が強くなってはいるものの、その程度や背景にある事情、あるいは、保護政策の内容にはかなりの差異が見られる。
本稿では、ロシアの専門調査機関「アフトビジネス」社から入手したデータを中心に、各国の市場の個性や世界的経済危機から受けた影響に留意しながら、ウクライナ、ウズベキスタン、カザフスタン、ベラルーシをはじめとするNIS諸国の乗用車産業・市場の最新状況を紹介する。
金融危機と天然ガス戦争に翻弄されるウクライナ
北海学園大学 非常勤講師
藤森信吉
はじめに
1.なぜ危機は生じなかったのか
2.金融危機後の天然ガス戦争
3.今後の展望 ―経済危機とガス輸送システムの将来―
はじめに
2000年初、ウクライナ国債は事実上デフォルトした。1998年のルーブル危機後、ウクライナ当局の通貨防衛策により外貨準備が払底し、償還繰り延べを余儀なくされたのであった。しかし、同時に2000年はウクライナ経済が独立以来のマイナス成長から脱した年でもあった。そして2000年(半期で見れば1999年下半期にすでにプラス成長)から2008年に至るまで、ウクライナ経済は9年連続プラス成長を維持し、2005年に欧州連合(EU)から、2006年にアメリカからそれぞれ「市場経済国」認定を受け、2008年には世界貿易機構(WTO)加盟を果たした。また、国債デフォルト対策のために国立銀行総裁から首相に登用されたユーシチェンコは2004年「オレンジ革命」の当事者となり、以後「民主化」のイコンとしてウクライナの国際的イメージを大いに高めた。「市場経済国」かつ「民主主義国」の評価を手に入れたウクライナにとって2000年代後半は、ウクライナ政府が2002年に掲げた「ヨーロッパ選択政策」、すなわち欧州連合(EU)と北大西洋条約機構(NATO)加盟によるヨーロッパ統合政策が現実味を帯びた時期でもあった。
その一方で、2006年以降のいわゆる「天然ガス戦争」による輸入ガス高騰は、ガス消費量の3/4を輸入に頼るウクライナ経済に悪影響を及ぼすはずであった。同じような高騰を受けた1993から1994年にかけて、ウクライナ経済はハイパーインフレ、鉱工業生産の大幅な低下、消費者の不払いによる対ロ・ガス債務累積に見舞われ、文字通り崩壊の瀬戸際に立たされたからである。しかし、2006〜07年に生じたのは、2005年よりはるかに高い経済成長であった。その後、2008年第3四半期にウクライナ経済は失速し、2009年初の「天然ガス戦争」後の輸入ガス価格の上昇が、回復に暗い影を落としている。
本稿は、まず2006年時の輸入額高騰がなぜウクライナ経済に影響を与えなかったのか、ウクライナの経済指標から説明・検討する。次いで天然ガス戦争後の2009年1月19日に調印されたガス契約を中心に検討し、今後の展望を行いたい。
黒海港湾の覇を競うロシアとウクライナ(下)
ロシアNIS経済研究所 次長
服部倫卓
はじめに
2009年4月号に引き続き、黒海港湾レポートの後半をお届けする。後半はウクライナの港湾セクターに焦点を当てる。
ビジネス最前線
アルマティを拠点に中央アジア経済をウォッチ
且O菱東京UFJ銀行 アルマティ駐在員事務所 所長
冨通夫さん
はじめに
我が国メガバンクの雄である三菱東京UFJ銀行は2008年12月、カザフスタン最大の商業都市アルマティに駐在員事務所を開設しました。アルマティを拠点に中央アジア全域の政治経済情報を収集し、日系企業に提供していくとのことです。
そこで今回は、アルマティ事務所の所長として現地に駐在されている冨通夫さんのインタビューをお届けします。事務所の役割と概要についてお聞かせいただくとともに、カザフスタンの経済状況と政府による危機対策に関する評価などを中心にお話を伺いました。
ミニレポート
日本キルギス・ビジネスフォーラム開催
はじめに
本年2月25日(水)〜26日(木)、キルギスのビシケク市において、「日本キルギス・ビジネスフォーラム」が開催された。日本・キルギスのビジネス関係者約150名が参加し、キルギスで開催された両国間のビジネス会議としては過去最大のものとなった。以下では、この日本キルギス・ビジネスフォーラムの概要をご紹介することとしたい。なお、フォーラムでのプレゼン内容を詳しくお知りになりたい方は、下記URLに報告者の資料が掲載されているので、ご利用いただきたい。
→http://www.jp-ca.org/kyrgyzforum/documents.html
ミニレポート
日本ウズベキスタン・投資ビジネスセミナー2009
経済産業省通商政策局ロシア室
はじめに
去る3月30日(月)、経済産業省は、当省会議室において、在京ウズベキスタン共和国大使館およびウズベキスタン政策研究所と共催で「日本ウズベキスタン・投資ビジネスセミナー2009」を開催しました。
本セミナーは、二階経済産業大臣の発案によるもので、オチロフ駐日ウズベキスタン共和国特命全権大使(当時)、当省の岡田通商政策局長、竹田日本貿易振興機構理事ほか政府、政府関係機関、メーカー、商社などから130名を超える参加者を得ました。
以下、概要についてお伝えします。
クレムリン・ウォッチ
メドヴェージェフとシロビキ ―最近の情況―
メドヴェージェフ大統領はプーチン前大統領と比較して、シロビキ、とくに治安機関に対する指導力が著しく劣るという指摘が当初からありました。治安機関統制の問題は、情報活動や刑事事件捜査を政治的圧力や経済的利益獲得の手段として悪用する権力濫用の傾向、取り締まる側にまで広がっている汚職、治安機関による人権侵害の風潮等々の現状に国家がどう対処するのか、ということです。メドヴェージェフ大統領はこれらの現象と闘う強い意思を示してはいますが、その力量が足りないのではないかと疑われてきたわけです。(月出皎司)
エネルギー産業の話題
サハリン3〜6プロジェクトの最新動向
2007年9月号の本コーナーで、サハリン3〜6プロジェクトの動きを取り上げたことがあります。今回は、前回レポート発表後の動きに着目しながら、サハリン3〜6をめぐる状況をご紹介いたします。
サハリン3〜6プロジェクトには、確認される限り、9〜10の鉱区が含まれていますが、まだライセンス保有者が最終的に確定していないキリンスキー、アヤシ、東オドプト以外の鉱区では、すでに直接探査が実施されています。以下では、これまでに実施された探査の状況を中心に、各プロジェクトの進捗状況をご報告いたします。
自動車産業時評
2009年第1四半期のロシア乗用車市場
2008年秋以降、ロシア乗用車市場の状況は急激に悪化し、乗用車の国内生産台数も減少傾向にあります。また、純国産メーカーの中には危機的な財務状況に陥っているところも少なくありません。
今回は、2009年第1四半期の生産の数字などをもとに、ロシアの主要な純国産メーカー(AvtoVAZ、IzhAvto、ソラーズ)の最新の状況をご紹介いたします。さらに、2009年に入ってからの乗用車(新車)の輸入をめぐる興味深い情報もお伝えします。
ロシアビジネスQ&A
ロシアのギフト市場
ロシア人はお祝いやプレゼントが大好きな国民です。業務上あるいは個人的につきあいのあるロシア人に、年に何度も訪れるお祝いの日にどんなプレゼントをあげたらいいのか、悩みの種となっている方も多いことでしょう。でもこのことは、ロシアに大きな市場が生まれていることも意味しています。
今回はロシアのお祝いとギフト市場についての質問にお答えします。