ロシアNIS調査月報2010年2月号特集◆ロシアの地域と都市への視角 |
|
1月20日発行 |
特集◆ロシアの地域と都市への視角 |
|
直言 |
ロシアにおける地域政策の新たな方向性 ―「バランスのとれた社会経済発展」に向けて |
調査レポート |
ロシアのモノゴーラド(企業城下町)問題 |
調査レポート |
東方をめざすロシアの穀物 ―注目されるシベリア・極東 |
調査レポート |
極東バイカル地域の航空機産業 |
ルポルタージュ |
3ヵ国国境を行く ―ロシア・中国・北朝鮮のコントラスト |
特別寄稿 |
青森県の極東ロシアとの経済交流促進の取組 |
ビジネス最前線 |
ロシア極東ビジネスの新たな商流を求めて |
ミニレポート |
アストラハン訪問記 |
ミニレポート |
2009年の10大ニュースで見るロシアの最新地方情勢 |
ドーム・クニーギ |
ジェトロ編『ロシア工場設立の手引き』 |
データバンク |
2008〜2009年版ロシア地域別投資環境ランキング |
データバンク |
2009年版ロシア都市ビジネス環境ランキング |
イベント・レポート |
第3回日本ウズベキスタン・ビジネスフォーラム開催 |
研究所長日誌 |
21世紀はどんな世紀になるのか |
クレムリン・ウォッチ |
伝道者から権力者へ ―シロビキ人事を進めるメドヴェージェフ |
エネルギー産業の話題 |
いよいよ動き出す太平洋パイプライン |
自動車産業時評 |
GMのオペル売却中止をめぐって |
ロシアビジネスQ&A |
◎ロシアのキャビア事情 |
業界トピックス
|
2009年12月の動き ◆デンソーのロシアビジネスの取組み ◆鳥取県産品テスト輸出の成果と課題 2009年1〜11月の通関統計 |
直言
ロシアにおける地域政策の新たな方向性
―「バランスのとれた社会経済発展」に向けて―
早稲田大学社会科学部助教
堀内賢志
はじめに
今号では、「ロシアの地域と都市への視角」と題し、今日のロシアをローカルな視点から捉え直す特集をお届けします。
その巻頭を飾るレポートを、ロシア政治研究の若手最有望株で、とくに地方政治にお詳しい堀内賢志さんにお寄せいただきました。ロシアの地域政策に関する注目点につき、総論的に解説していただいております。
なお、堀内さんには近く、本テーマをより一層掘り下げた本格的なご論考を披露していただくことになっていますので、そちらもご期待ください。(編集部)
ロシアのモノゴーラド(企業城下町)問題
ロシアNIS経済研究所 次長
服部倫卓
はじめに
1.モノゴーラド概論
2.ロシアの企業城下町の特質
3.経済危機後のモノゴーラド問題
4.モノゴーラド問題解決への取組み
おわりに
はじめに
ロシアで、「モノゴーラド」の問題が焦点となっている。モノゴーラドの定義については後述するが、簡単に言えばロシアで多く見られる企業城下町のことである。2008年秋の金融・経済危機以降、そうした城下町における経済・社会情勢がにわかに尖鋭化し、それを象徴する「ピカリョヴォ事件」も発生、その問題が大きくクローズアップされているものだ。メドヴェージェフ大統領も、2009年11月12日に行った教書演説のなかで、この問題に特別に言及している。
本稿では、ロシアにおけるモノゴーラド現象の全体像につき、先行研究にもとづき整理するとともに、金融・経済危機以降のモノゴーラド問題の展開と、ロシア政府の対応策につき概観する。
東方をめざすロシアの穀物
―注目されるシベリア・極東―
ロシアNIS経済研究所 次長
坂口泉
はじめに
1.穀物生産をめぐる状況
2.輸出動向
3.ロシアの穀物部門が抱える諸問題
4.極東経由での穀物輸出計画
おわりに
はじめに
ロシアが穀物のネットの輸出国になったのはわずか数年前のことであるが、その後、世界の穀物市場でのプレゼンスを急激に高め、今や穀物輸出国として注目を集めるようになっている。ただ、今のところ輸出先は主として北アフリカ・中東、南アジア等の新興国に限定されており、輸出相手国の多様化がロシアの穀物部門の焦眉の課題のひとつとなっている。そのような状況の中、日本企業も関与してロシア産の穀物を極東の港経由で日本や東南アジア諸国に輸出する計画が最近浮上してきているが、極東との位置関係から判断して、シベリアが日本や東南アジア諸国への輸出用の穀物の供給源となる可能性が高い。
以上の状況を踏まえ、本稿では、シベリアにおける穀物生産の状況、極東経由での穀物輸出計画に力点を置きつつ、ロシアの穀物部門の現状と問題点を紹介する。
極東バイカル地域の航空機産業
ロシア科学アカデミー極東支部経済研究所
A.イサエフ
はじめに
航空機産業はロシア経済ハイテク部門の一つであり、その発展は国家安全保障と戦略的国益に左右される。同部門の発展テンポは、多くの点でロシア経済の「資源型発展モデル」からの脱却の指標となるものである。
極東およびバイカル地域では4社の航空機製造会社、すなわち軍用機と民間機の生産に携わる潟Cルクート(イルクーツク市)と潟Rムソモリスク・ナ・アムーレ航空機生産合同(ハバロフスク地方コムソモリスク・ナ・アムーレ市)、軍用・民間用ヘリコプターを主として生産する潟Eランウデ航空機工場(ブリャート共和国ウランウデ市)と潟Aルセーニエフ航空機会社プログレス(沿海地方アルセーニエフ市)が活動している。
潟Cルクートと潟Rムソモリスク航空機生産合同は、ロシア最大の航空機持株会社スホイの子会社であり、またスホイは鞄揶鼾q空機製造会社の傘下企業となっている。
また、潟Eランウデ航空機工場(ブリャート共和国ウランウデ市)と潟Aルセーニエフ航空機会社「プログレス」は、潟鴻Vア・ヘリコプターの傘下企業であり、ロシア・ヘリコプターは、鞄揶齊Y業会社「アバロンプロム」の100%子会社となっている。
ルポルタージュ
3ヵ国国境を行く
―ロシア・中国・北朝鮮のコントラスト―
ロシアNIS経済研究所 研究員
齋藤大輔
はじめに
2009年3月末、ロシア、中国、北朝鮮の3ヵ国国境を5年ぶりに視察した。国境を流れる豆満江(図們江)の氷は半分くらい溶け、芽吹く前の木々が最後の寒さに耐えていた。今回は中国側から視察した。3ヵ国のコントラストが印象的であった。そこで、3ヵ国国境付近の様子をロシアから中国への国境通過や国境の街・琿春、中朝国境の様子も交え報告する。
特別寄稿
青森県の極東ロシアとの経済交流促進の取組
青森県商工労働部国際交流推進課 総括主幹
藤田裕士
はじめに
青森県は1992年8月に極東ロシア・ハバロフスク地方と友好協定を締結し、以後、地方政府代表団の受入れをはじめ、青少年や医師、技術者の派遣・受入れ、国際交流員の招致、県職員のハバロフスク派遣・行政実務研修など、幅広い分野での交流を行ってきた。
民間レベルでも、1990年に青森県日ソ交流協会(現青森県日ロ交流協会)の設立以後、地元のみちのく銀行が中心となって、現地で花や野菜の種の配布など様々な交流を行ってきたが、特に、1995年の青森・ハバロフスク間の国際定期航空路線の開設をきっかけに、ハバロフスク地方等の子供たちを受け入れて県内小中学校生徒と交流を行い、また、本県小中学校生徒をハバロフスクに派遣して交流を行うなど、人の交流が活発に行われてきた。
このように、当初は文化交流、人的交流が中心であったが、これまでの交流で培った両地域の関係を、経済交流に活かしていくことも重要であるとの観点から、青森県は2007年度に初めてハバロフスクに経済調査団を派遣して以降、経済分野での交流を積極的に促進している。以下、本県がこれまで進めてきたハバロフスクを中心とする極東ロシアとの経済交流の取組について紹介させていただく。
ビジネス最前線
ロシア極東ビジネスの新たな商流を求めて
島根県ロシア貿易アドバイザー
浅井利春さん
はじめに
浅井さんは大手商社で長い間、ソ連(ロシア)ビジネスに携わってこられました。その後、ウラジオストクの日本センター所長を経て、島根県貿易アドバイザーに転身。同県企業を中心に、対ロ貿易促進のため、きめ細かいサポートをなさっています。ロシア極東では日本のどのような商品に可能性があるか――新たな商流を開拓すべく、日本海沿岸都市における対ロ貿易の中心地のひとつ、島根県浜田港を拠点として、浅井さんは日本とロシア極東の間を頻繁に行き来されています。
ミニレポート
アストラハン訪問記
はじめに
2009年9月末、ロシア南部のアストラハンの陸上ガス田を視察する機会があった。そこで、本稿では、ガス田の状況とともに、日本人には馴染みの薄いアストラハン州について簡単に報告する。(齋藤大輔)
ミニレポート
2009年の10大ニュースで見るロシアの最新地方情勢
はじめに
ロシアのノーヴォスチ通信は毎年暮れ、同国の「10大ニュース」を発表しているが、それが一般的な10大ニュースだけでなく、実に多彩なのである。政治、経済はもちろん、科学技術、文化、スポーツといったジャンル別の10大ニュースが発表されているのだ。その一環として、ロシアの地方ニュースのベスト10というものも出ている。ロシアの通信社が、自国のどんな地方ニュースを重要と見なしているかというのは興味深く、ロシアの最新の地方情勢を知るうえで有益だ。そこで、ここでは、ノーヴォスチ通信による2009年版ロシア地方10大ニュースを、各ニュースに関する簡単な解説も交えてお届けする。
否定的な話題が多いのはニュースというものの常ではあるが、以下の地方10大ニュースを見ると、やはり悪い出来事の方が多い。とくに、2009年はロシアにとって、地方で多くの惨事が起きた1年だったようだ。
ノーヴォスチ通信はさらにマニアックに、7連邦管区それぞれの10大ニュースというものも制定している。また、モスクワについては、中央連邦管区とは別扱いで、独自の10大ニュースが出ている。というわけで、以下ではロシア全体の地方ニュース・ランキングだけでなく、モスクワおよび7連邦管区の2009年の10大ニュースも箇条書きの形で紹介する。
データバンク
2008〜2009年版ロシア地域別投資環境ランキング
はじめに
ロシアの経済週刊誌『エクスペルト』(2009. 12.21,No.49)が、毎年恒例のロシアの地域別投資環境ランキングの最新版(2008〜2009年版)を発表したので、この資料を抜粋して紹介する。
データバンク
2009年版ロシア都市ビジネス環境ランキング
はじめに
ロシアの『RBK月刊実業』誌は、このところ毎年11月号で、ロシアの都市ビジネス環境ランキングという資料を掲載している(2008年版は当会『ロシアNIS経済速報』2008年12月25日号で紹介)。今般、同誌2009年11月号で、最新の2009年版のランキングが発表された。
ロシアの州、共和国などの「連邦構成体」のビジネス環境ランキングは珍しくないものの(今号掲載の『エクスペルト』誌のそれなど)、「都市」レベルのランキングは貴重なので、最新ランキングを以下のとおり紹介する。
イベント・レポート
第3回日本ウズベキスタン・ビジネスフォーラム開催
はじめに
2009年11月9日(月)〜11月11日(水)、ウズベキスタン共和国タシケント市において経済産業省、ウズベキスタン対外経済関係・投資・貿易省、政策研究所、ウズベキスタン文化・芸術フォーラム基金、ロシアNIS貿易会主催のもと「第3回日本ウズベキスタン・ビジネスフォーラム」が開催されました。
本フォーラムは、2006年11月の第1回、2007年11月の第2回(ともにタシケントにて開催)に続くもので、日本側からは加藤洋一・経済産業省通商政策局通商交渉官をはじめとする政府関係機関、商社、メーカー、銀行より60名が、またウズベキスタン側からは経済省のサイドワ第一次官他約50名が参加いたしました。
また、フォーラム前夜にはウズベキスタン側主催によるオープニングセレモニーが行われ、アジモフ第一副首相兼財務相、カリモヴァ政策研究所所長らが出席をしております。
以下、フォーラムの開催概要についてお伝えするとともに、事務局を代表し当会の治田常務理事より会議を終えての所感を申し上げます。
クレムリン・ウォッチ
伝道者から権力者へ
―シロビキ人事を進めるメドヴェージェフ―
メドヴェージェフ大統領の政治論は、西側に対する警戒心や劣等感、強権政治への傾斜や人権・民主制度への冷笑的な姿勢といったロシア伝統の屈折した心理を少しも感じさせない点で新鮮なものがあります。昨年の大統領教書でも、経済の近代化と政治・社会の近代化を不可分の関係に置いて、ロシア自身が変わる必要性を力説しました。哲学的とも言えるこのような戦略論はプーチン大統領にはみられなかったものです。
しかし、自らを改造せよという主張が、法治主義の強化、政治プロセスの透明化、汚職に対する厳しい対応などの具体的な動きへと展開していくことには、既成エリート層に強い警戒心があります。
事実、昨年秋の統一地方選挙に際して統一ロシア党が行った組織的で露骨な野党排除は、プーチンの威光を頼んだ同党最高指導部や地方権力者らが、メドヴェージェフ的な政治近代化に背を背けていることの証明でした。同党は先頃、メドヴェージェフの近代化に対置するかのように、「ロシア的保守主義」という怪しげな党是を掲げました。
汚職に関しても大統領の呼びかけや警告をどこ吹く風、事態は少しも改善していないというのが社会の実感でしょう。
正義や理想に対して冷笑的なエリートを相手にして、いつまでも美しい言葉だけというのでは、やがて近代化を説く奇特な伝道者としてロシア政治史の片隅に追いやられてしまうでしょう。抵抗勢力に軽んじられたくないなら、実権をもつ権力者になるしかありません。(月出皎司)
エネルギー産業の話題
いよいよ動き出す太平洋パイプライン
太平洋パイプラインの第1期工事が終了し、コジミノ経由での石油の出荷がまもなく始まることになっています。コジミノ経由で供給されるロスネフチの石油の輸出権をめぐる入札がすでに実施されたほか、今後、スルグトネフチェガスとTNK-BPが供給する石油に関する同様の入札が実施される予定です。
ただ、この段階に至っても太平洋パイプラインに関しては情報の空白が少なくありません。今回は、2009年12月3日付けの『コメルサント』紙に掲載されたトランスネフチのトカレフ社長のインタビュー記事などをベースに、太平洋パイプラインに関する情報の欠落を埋めることを試みます。
自動車産業時評
GMのオペル売却中止をめぐって
2009年5月にカナダの自動車部品メーカー「マグナ・インターナショナル」(以下、マグナ)とロシアの政府系銀行「ズベルバンク」の企業連合が、GMの子会社「オペル」の株式55%を取得することでGMおよびドイツ政府と基本合意に達したとのニュースが流れ世界的な話題となりました。詳しくは2009年8月号の本コーナーをご参照ください。
その後、9月にはGMがオペルの株式55%を5億ユーロでマグナ・ズベルバンク連合に売却することを最終決定したとの情報が流れたものの、11月初旬にGMは取締役会の決定にもとづき、オペル株の売却を中止すると発表しました。ロシア側は、オペルの技術を移転することにより、瀕死の状態にある自国の自動車産業の復興を達成することを目論んでいましたが、これでそのシナリオは大きく狂うことになるかもしれません。
今回は、GMがオペルの売却中止を決断するに至るまでの経緯と、その決断に対する関係者の反応をご紹介いたします。
ロシアビジネスQ&A
ロシアのキャビア事情
かつて伝統的なロシア料理にはキャビアが欠かせないものでした。黒パンにたっぷりのせて食べたり、クレープに巻いて食べたり、ゆで卵を半分に切って黄身をくり抜いた部分に詰めて食べたりと、豪快な食べ方をしていました。でも、今ではロシア料理にキャビアを見かける機会がめっきり減りました。相当な料金を払えば別ですが。
そこで今回はロシアのキャビア事情についての質問にお答えします。