ロシアNIS調査月報
2010年9-10月号
特集◆ロシアの貿易と
エネルギー輸出
特集◆ロシアの貿易とエネルギー輸出
調査レポート
2009年のロシアの貿易統計
調査レポート
ロシアの石油・ガス輸出の実態
データバンク
2009年のロシア極東の貿易と外国投資受入
エネルギー産業の話題
ロシアのLPG(液化石油ガス)の輸出状況

調査レポート
国家コーポレーションを探る
―ロシアテクノロジーを中心に
ビジネス最前線
ロシア極東港湾に荷役機械を売り込む
報告
第40回ロシアNIS貿易会通常総会報告
研究所長日誌
トルストイ没後100周年 ―未完のまま残された大作
クレムリン・ウォッチ
日ロ外交の「非対称性」
自動車産業時評
ロシアの大型トラック市場、外資は依然強気
ドーム・クニーギ
堀内賢志著『ウラジオストク ―混迷と希望の20年』
業界トピックス
2010年7月の動き
◆ロシア向け果物輸出を手掛けるジェイエフエー
通関統計
2010年1〜6月の通関実績
日本の対ロシア月別輸出入通関実績
日本の対ロシア月別乗用車輸出動向


2009年のロシアの貿易統計

ロシアNIS経済研究所 次長
服部倫卓

はじめに
 ロシア連邦関税局が発行する『ロシア連邦外国貿易通関統計』の2009年年報が刊行され、2009年の同国の貿易動向に関する詳しいデータが明らかになった。そこで以下では恒例により、ロシア通関統計およびその他の資料を駆使し、同国の最新の貿易統計を詳細に紹介するとともに、データに関する解説をお届けすることにする。


ロシアの石油・ガス輸出の実態

ロシアNIS経済研究所 次長
坂口泉

はじめに
1.天然ガス
2.原油
3.石油製品
おわりに

はじめに
 エネルギー(原油、石油製品、天然ガス)はロシアの主要輸出産品で、同国の輸出総額に占めるそのシェアは6割を超えている。これらの産品がロシア経済の命運を握っているといっても過言ではない。したがって、そこには熟慮の末に生み出されたバランスのとれた輸出戦略が存在するはず、と考えがちであるが、現実は必ずしもそうなっていない。たとえば、原油やガスの輸出戦略に目を向ければ、経済的合理性から大きく逸脱しているのではとの疑念を抱かせる動きが目立つ。また、石油製品の輸出動向に目を転じると、高付加価値製品の輸出の割合を増加させるという国家的目的が完全に忘れ去られているような印象を受ける。本稿では、これらの問題を視野にいれながら、ロシアのエネルギー輸出の実態を紹介する。


データバンク
2009年のロシア極東の貿易と外国投資受入

はじめに
 例年どおり、ロシア極東連邦管区の最新の貿易および外国投資受入データを、ロシア科学アカデミー極東支部経済研究所(P.ミナキル所長)よりご提供いただいたので、表にまとめて紹介する。なお、ユダヤ自治州、チュクチ自治管区は重要度が低いので、表の掲載は割愛する。

エネルギー産業の話題
ロシアのLPG(液化石油ガス)の輸出状況

 LPG(液化石油ガス)はブタン、プロパン等を主成分とする気体燃料で、圧縮することにより常温でも容易に液化することが可能。ロシアでは今後LPGの生産および輸出量が増加すると見込まれており、輸出用ターミナルの建設計画が複数検討されています。そこで今回は、ロシアのLPG輸出の概況と、主なターミナル建設計画を紹介します。(坂口泉)

国家コーポレーションを探る
―ロシアテクノロジーを中心に―

高知大学 人文学部
塩原俊彦

はじめに
1.国家コーポレーション
2.ロシアテクノロジー
結びにかえて

はじめに
 ロシアでは2007年だけで、6つの国家コーポレーションを設立するための法律が制定された(1つが政府提案、2つが大統領提案、3つが下院議員提案)。こうした動きを反映して、本誌2007年12月号で「『国家コーポレーション』と『ロシアテクノロジー』」という拙稿を書いた。本稿では、前回十分に論じられなかった点を補足しながら、現在までの国家コーポレーションについて説明したうえで、再びロシアテクノロジーについて詳細に論じたい。多くの企業を傘下に置くロシアテクノジーはロシア企業の問題点を考察するうえで象徴的であり、読者の関心も高いと判断したからである。


ビジネス最前線
ロシア極東港湾に荷役機械を売り込む

TCM 特機事業部 特機営業部 第2営業グループ
部長代理 大丸広和さん

はじめに
 産業車両、建設車両、特機車両メーカーとしてグローバルに事業を展開するTCMは、日本で最初にフォークリフトとホイールローダを製造した会社です。同社のロシアビジネスの歴史は古く、フォークリフトはソ連時代から輸出されていますが、2009年には同社の他の主力製品であるRTG(タイヤ式トランスファークレーン)がウラジオストク港に納入されました。それを手掛けたのは、TCMの新興国向け特殊車両営業を担っている大丸さんです。現在はロシア極東の港湾に対して、さらなる売り込みも図っておられる大丸さんに、最初の受注にいたるまでの経緯や現状の問題点等について、お話をうかがいました。


第40回ロシアNIS貿易会通常総会報告

はじめに
 社団法人ロシアNIS貿易会は平成22年5月24日に東京の如水会館にて第40回通常総会を開催いたしました。総会においては、第1号議案「平成21年度事業報告書」、第2号議案「平成21年度財務諸表」、第3号議案「平成22年度事業計画書」、第4号議案「平成22年度収支予算書」、第5号議案「役員選任の件」、第6号議案「定款変更の件」が承認されました。
 以下では総会において承認された平成21年度事業報告、平成22年度事業計画、新役員および顧問名簿を掲載するとともに、総会における西岡会長の挨拶を掲載いたします。

クレムリン・ウォッチ
日ロ外交の「非対称性」

 このところ、日本とロシアの外交関係がどうもうまく行っていないようです。格別深刻な事態に陥っているとは思いませんが、どこか噛み合っていない印象を受けます。
 日本外交にとって対ロシア関係の基本は領土問題。貿易や文化交流その他もろもろの分野で関係が発展していても、領土問題に関して進展があるか、少なくとも進展への展望があるのでなければ、全体としての対ロシア外交は否定的な評価を受けてしまいます。まさにこの分野で噛み合いが外れてきた感じを受けるのです。(月出皎司)

自動車産業時評
ロシアの大型トラック市場、外資は依然強気

 ボルボ・トラックは2009年1月より、カルーガの自社工場(生産能力は1万5,000台/年)で大型トラックの現地生産を開始しました。ダイムラーもまた、KAMAZ(カマ自動車工場)と合弁を設立し年内中にもメルセデス・ベンツの大型トラックの現地生産を開始することになっています。
 最近、両社の現地法人の責任者がロシアの経済紙のインタビューを受け、ロシアの大型トラック市場の現状と展望、現地生産計画の見通し等について語っていますので、今回はその要旨をご紹介いたします。(坂口泉)