ロシアNIS調査月報
2010年12月号
特集◆ロシアの消費市場を
解剖する
特集◆ロシアの消費市場を解剖する
調査レポート
データで見るロシア国民とその所得・消費
調査レポート
経済危機後のロシアのアルコール飲料市場
調査レポート
ロシア医薬品市場と小売部門の動向
調査レポート
ロシア化粧品市場と日系メーカーの展開
ビジネス最前線
ユニクロ世界統一ブランドでロシア市場に挑む
ビジネス最前線
普通の国・ロシアのトイレタリー市場
ビジネス最前線
変貌するロシアの消費スタイル
―リーマン・ショック後の状況
ミニレポート
回復途上のロシア広告市場
データバンク
ロシア消費市場のブランド・ランキング
データバンク
危機下でもロシアの小売チェーンは売上を維持
ロシアビジネスQ&A
◎ロシアへの食品輸出ノウハウ

調査レポート
ロシア東部地域と中国東北部の協力プログラム
イベント・レポート
第2回日本カザフスタン経済官民合同協議会の開催
研究所長日誌
大津事件(ロシア皇太子ニコライ遭難)に倣う
クレムリン・ウォッチ
政治分析者の目で見たロシア民主化の近未来
エネルギー産業の話題
随伴ガスの有効利用向上をめざして
自動車産業時評
ロシア・タイヤ市場と各メーカーの動き
ドーム・クニーギ
芳地隆之著『満洲の情報基地ハルビン学院』
業界トピックス
2010年10月の動き
◆MURASAKIにロシア最優秀スキンケア賞
通関統計
2010年1〜9月の通関実績
日本の対ロシア月別輸出入通関実績
日本の対ロシア月別乗用車輸出動向


データで見るロシア国民とその所得・消費

ロシアNIS経済研究所
服部倫卓

はじめに
 本稿では、ロシアの消費市場を分析するうえでの前提となる人口、世帯、家計所得・消費、資産などに関する基礎的な統計データをできるだけ網羅的に紹介し、それらの統計に関する解説をお届けする。データの出所は、とくに明記しない限り、ロシア連邦国家統計局の刊行物およびウェブサイトである。


経済危機後のロシアのアルコール飲料市場

ロシアNIS経済研究所
坂口泉

はじめに
 ロシアでは、ビールの消費量が急激に増加する一方で、ウォッカに代表されるアルコール度数の高い飲料(以下、高アルコール飲料)の消費量が停滞するという傾向が、1990年代後半ごろから続いていた。
 ところが、2008年秋のリーマンショック以降、ビールの消費量が低迷し、アルコール市場でのプレゼンスが低下し始めている。そのような状況の中、ロシア政府はビールに対する課税および規制の強化の動きを活発化させている。この流れが続けば、今後、高アルコール飲料の消費量が増加に転じる可能性も否定できない。
 本稿では、ロシア政府のビールに対する規制の動き等に注意を向けながら、ロシアのビール、ウォッカ、ワイン、低アルコール飲料(カクテル)の各市場の現状を紹介する。


ロシア医薬品市場と小売部門の動向

ロシアNIS経済研究所
山本靖子

はじめに
 新興国市場の一つとして注目されるロシアの医薬品市場。世界の医薬品市場では第11位、シェアもまだ1.5%程度だが、先進諸国に比べて高い2桁台の伸びを示しており、今後も成長が見込まれる。2005年にはロシア政府による薬剤給付制度が開始され、将来的には保険償還制度の導入も検討されている。
 欧米系の大手製薬会社は以前からロシア市場で相当のシェアを確保しており、さらにこの1〜2年は、現地生産化の動きも活発になりつつある。ロシア政府関係者はこの分野における日本からの投資にも期待を寄せているが、日本の製薬会社のロシア市場におけるプレゼンスはまだ小さく、現地生産の段階には至っていないのが現状だ。
 本稿では、まずロシアの医薬品市場について概観した後、同市場の約7割を占める小売部門(薬局での販売)に焦点を当て、現状と動向を分析する。


ロシア化粧品市場と日系メーカーの展開

ロシアNIS経済研究所
芳地隆之

はじめに
 世界の化粧品大手は相次ぎロシアに進出し、企業間の競争が厳しくなっている。フランスの化粧品大手ロレアルは9月、カルーガ州において建設中であったロシアでは自社初の化粧品工場が完成したことを発表した。同工場ではロシア、ウクライナならびに他のCIS諸国向けのロレアルパリ、ガルニアブランドのシャンプー、コンディショナー、ヘアダイが製造される予定である。一方、日本のメーカーもここ数年で現地に販売子会社を設立。順調に売り上げを伸ばしており、モスクワを拠点にCIS市場へ進出していくところもある。本リポートではそうした背景を踏まえて、ロシアの化粧品市場の現状ならびに、日本の化粧品メーカーの展開について報告したい。


ビジネス最前線
ユニクロ世界統一ブランドでロシア市場に挑む

ユニクロ ロシア 代表
山田直芳さん

はじめに
 自動車、家電などの日本ブランドは、ロシア市場において十分認知されていますが、アパレルは従来の日ロ経済関係においては影の薄い分野でした。しかし、ここ数年、カジュアル衣料への需要が高まり、欧米ブランドが相次いでロシアに進出。品質に対するロシア人消費者の目も厳しくなっています。そうしたなか「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングがロシアへの進出を果たしました。ユニクロの世界統一ブランドをロシアの人々に浸透させることを基本スタンスに、現地でのパートナー契約を結ばず、独自に小売展開を進めるユニクロ ロシアの代表、山田さんにお話を伺いました。


ビジネス最前線
普通の国・ロシアのトイレタリー市場

セイジョー・ファー・イースト
代表取締役 山田康夫さん
取締役 望月保志さん

はじめに
 ロシア人にはお金持ちが多いから、高いものが売れる――2000年代以降、日本企業の中でそんなイメージが1人歩きしていた感があります。その一方で、ロシアは何が起こるかわからないという不信感も拭いきれず、ロシア市場を等身大で見ることができないでいるのが現状です。そうしたなか、セイジョー・ファー・イーストがウラジオストクに設立されました。リーマンショックを経てロシアは普通の国になったとの認識の下、同社は一般の消費者に品質の高い日本製品をリーズナブルな価格で提供することを基本に、ロシアで販売網を広げています。セイジョー・ファー・イーストの役員である、イービストレード取締役の山田さん、セイジョー海外事業担当課長の望月さんからお話を伺いました。


ビジネス最前線
変貌するロシアの消費スタイル
―リーマン・ショック後の状況―

(有)スガハラアソシエーツ 代表取締役
菅原信夫さん

はじめに
 ロシア向け輸出や駐在員事務所・現地法人設立のための技術的な支援など、日本企業の現地における商業活動をあらゆる面からサポートされているスガハラアソシエーツ代表の菅原さんにご登場いただきました。鞄比野ワインアンドスピリッツの経営者として、ロシアのアルコール飲料の輸入も手掛けられている菅原さんは、常にロシア市場の情報を更新されており、豊富な経験を踏まえての鋭い指摘は傾聴に値します。文中の写真とコメントはご本人に寄せていただいたものです。こちらもぜひご注目ください。


ミニレポート
回復途上のロシア広告市場

 ロシアの広告代理店協会(以下、AKAR)が発表している数字によれば、1992年の広告市場の規模(クリエィテイブ費を除く)は5,000万ドルだったとされている。その後、市場規模は順調に拡大し、2008年にはついに100億ドル(3,483億ルーブル)を突破した。しかし、2009年は経済危機の影響もあり、市場規模は前年を27%下回る2,557億ルーブルにとどまった。ロシアの広告市場の規模が前年を下回るのは、前回の経済危機直後の1999年以来10年ぶりのことであった。ただ、2010年に入ってからは状況が改善されており、上半期の市場規模は前年同期を10%上回る約900億ルーブルにまで回復した。(坂口泉)


データバンク
ロシア消費市場のブランド・ランキング

  ロシアの消費市場では、グローバリゼーションの波に飲み込まれて世界的なブランドが浸透する一方、当然のことながらロシア独自のブランド、固有の特徴というものもある。本コーナーでは、ロシアのブランド事情に迫るべく、同国で発表されている3つのランキング資料を紹介してみたい。


データバンク
危機下でもロシアの小売チェーンは売上を維持

はじめに
 ロシア『コメルサント』紙の2010年7月15日号に、ロシアの小売チェーンのランキングが掲載されているので、これを表にまとめて紹介する。なお、小誌では2010年3月号でも、「2009年版ロシア小売チェーン・ランキング」という別の資料を掲載しているので(2008年の販売高にもとづく2009年版ランキングという意味)、比較しつつご利用いただければ幸いである。
 今回の資料は、2009年の販売高にもとづくベスト50である。正確には小売チェーンというよりも、それを展開する会社のランキングであり、複数の名称のチェーンを有している場合には、その合計額が示されている。なお、フランチャイズは本調査の対象外である。また、販売高には付加価値税が含まれていない。データの原典は『Retailer Magazine』である。


ロシア東部地域と中国東北部の協力プログラム

ロシア科学アカデミー極東支部経済研究所
D.イゾトフ

はじめに
 2009年9月に中ロ両国の首脳によって承認された「2009〜2018年の中国東北部とロシア連邦極東・東シベリア地域の協力プログラム」は、ロシア側の「2013年までの極東ザバイカル経済発展プログラム」と中国側の「東北振興策」を基盤に作成されたものである。中ロ両国が政経ともに接近するなかで、ロシア極東・東シベリアと中国東北部という大きな可能性を秘めた地域において、同プログラムの実現を通じて今後いかなる協力が展開されるのかが注目されている。
 今回は、ロシア科学アカデミー極東支部経済研究所のイゾトフ研究員に依頼し、上記の協力プログラムの要旨とそれに対する評価をまとめていただいたので、本号ではそれをご紹介することとしたい。


イベント・レポート
第2回日本カザフスタン経済官民合同協議会の開催

はじめに
 2010年9月29日、東京にて「第2回日本カザフスタン経済官民合同協議会」が開催されました。
 主催は、経済産業省、外務省、日本カザフスタン経済委員会、(社)ロシアNIS貿易会、カザフスタン共和国産業・新技術省および在日カザフスタン共和国大使館になります。
 同協議会は、2009年10月の第1回(アスタナにて開催。詳細は月報2010年1月号ご参照)に続くもので、日本側からは岡田秀一・経済産業審議官をはじめとする政府関係機関、商社、メーカー、銀行などより約240名が、またカザフスタン側からはアブディベコフ・産業新技術省次官ほか政府関係機関・企業などから約60名、合計300名が参加致しました。
 以下では、前半に経済産業省通商政策局ロシア・中央アジア・コーカサス原室長による本協議会の成果についての寄稿を掲載し、後半では、本協議会事務局を担当したロシアNIS貿易会より、開催概要についてご報告致します。


クレムリン・ウォッチ
政治分析者の目で見たロシア民主化の近未来

 ロシアの政治情況分析をしながらつねに気にかかってきたことがあります。長期的な視点で見た場合に、現在のロシアとくにその政治体制がどのような発展段階にあるのかという問題です。政治情況分析という仕事それ自体は、このような問題の解明を直接の目的とするわけではありませんが、答えを明らかにしたいという誘惑はありました。
 ここでは、逐一の論証を省略して、筆者の考えのあらましを記します。(月出皎司)


エネルギー産業の話題
随伴ガスの有効利用向上をめざして

 2010年5月号で、ロシアの国営石油会社の随伴ガス有効利用状況をご紹介しましたが、今回は、随伴ガスのフレアリングに関する具体的な数字と、2つの大手民間石油会社の随伴ガス有効利用状況についてご紹介いたします。(坂口泉)


自動車産業時評
ロシア・タイヤ市場と各メーカーの動き

 世界的経済危機の結果、ロシアのタイヤ市場も大きなダメージを受けましたが、同市場の潜在能力は高く評価されており、内外の多くのメーカーが新工場の建設もしくは既存の工場の増強を検討しています。
 以上の状況を踏まえ、今回は、ロシアのタイヤ市場の概況と、同市場における内外のメーカーの動きをご紹介いたします。(坂口泉)