ロシアNIS調査月報2011年1月号特集◆ロシア大企業の研究 |
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12月20日発行 |
特集◆ロシア大企業の研究 |
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調査レポート |
ロスネフチの過去・現在・未来 |
調査レポート |
ガスプロムの政治的考察 |
調査レポート |
未完のロシア鉄道改革 |
調査レポート |
ロシアのナノテク戦略とロスナノ社 |
ビジネス最前線 |
大きな可能性を秘めた日ロ経済協力 |
データバンク |
2010年版ロシア大企業ランキング |
特報 |
ロシア政府、国有大企業の株を放出 |
データバンク |
2009年版ロシア極東大企業ランキング |
ミニレポート |
ロシア最大の民間石油会社ルクオイル |
ドーム・クニーギ |
溝端佐登史・小西豊・出見世信之編著 『市場経済の多様化と経営学 ―変わりゆく企業社会の行方』 |
データバンク |
2010年1〜9月のロシア・NIS諸国の経済統計 |
エネルギー産業の話題 |
ロシアの製油所用触媒・添加剤事情 |
自動車産業時評 |
回復基調のロシア・トラック市場 |
ロジスティクス・ナビ |
ウスチルガ港の対日貨物誘致 |
ロシアビジネスQ&A |
◎ロシアの新しい外国人就労制度 |
研究所長日誌 |
「アジアの時代」は経済連携から安全保障の確立へ |
業界トピックス
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2010年11月の動き ◆サントリーウイスキー、シルクロードへ |
通関統計 |
2010年1〜10月の通関実績 日本の対ロシア月別輸出入通関実績 日本の対ロシア月別乗用車輸出動向 |
ロスネフチの過去・現在・未来
ロシアNIS経済研究所
坂口泉
はじめに
ロスネフチは、かつてはルクオイルやユコスの影に隠れ、まったく目立たない存在であったが、ユコス解体プロセスの中で同社の資産の受け皿になったことにより急拡大し、現時点ではロシア最大の石油会社となっている。特に上流部門は強く、最近本格生産が開始されたバンコール鉱床は、ロシアで最も有望な新鉱床とみなされている。
ただ、同鉱床の開発に資金を集中的に投下している関係で、下流部門への投資は不十分なものとなっており、傘下の製油所の近代化は遅れ気味となっている。また、随伴ガスの有効利用の点でも他社に後れをとっている。さらに、傘下最大の鉱床であるプリオプスコエ鉱床で減産傾向が観察され始めたという事実も気になる。
本稿では、このように明と暗の両面を持ち合わせるロスネフチという会社の概要を、時間軸を意識しながら紹介する。
ガスプロムの政治的考察
高知大学 人文学部
塩原俊彦
はじめに
ロシア連邦政府にとって、ガスプロムは税収をもたらす「金の卵」である。ガスプロムからの税収(1.1兆ルーブル)は2009年連邦予算歳入の15%程度を占めていたとみられており、ガスプロムの政府に与える影響力は大きい。その一方で、政府はガスプロム株の過半数を有しており、ガスプロムの経営に影響力を行使できる立場にある。こうした相互関係がガスプロムの政治利用という現象を引き起こしている。本稿は、ガスプロムをめぐる政治利用という側面に絞って分析することで、ロシアの大企業ガスプロムの問題点を明らかにしたい。
未完のロシア鉄道改革
ロシアNIS経済研究所
齋藤大輔
はじめに
株式会社「ロシア鉄道」は、鉄道改革に伴う鉄道省の管理・監督部門と運行・経営部門の分割により、運行・経営部門を引き継いで2003年10月に誕生した。
運行部門、関連企業、職員等の大半はロシア鉄道に引き継がれ、鉄道事業主体であった鉄道省は管理・監督官庁として再出発した。2004年3月の連邦機関の再編1)により、鉄道省は鉄道以外の交通政策を管轄する運輸省と通信政策全般を管轄する通信情報化省と統合され、運輸通信省として、161年の歴史に幕を閉じた。
ロシア鉄道の営業エリアは、西はカリーニングラード、モスクワから東はウラジオストク、サハリンまでの広大な国土をカバーしている。営業キロは8万5,281kmにおよび、1日に約304万tの貨物を運び、1日に約301万人の乗客が利用している。営業キロは米国に次いで世界第2位であり、電化距離(4万2,910km)では世界第1位である。
ロシアの鉄道輸送は、ロシアの地理的、自然的な特殊性から、旅客と貨物輸送の両方で大きなシェアを占め、国内輸送体系の中で重要な役割を果たしている。国内貨物輸送に占める鉄道貨物のシェアは42%、旅客は38%を超える(2009年)。
労働力の受け皿としての役割も果たしており、総労働力人口の約1.4%に相当する約108万人が従事している。
政府は2001年5月、経営危機に瀕していた巨大なロシア鉄道の力を分散して、民間会社の参入を実現し、鉄道事業の公平な競争を促すため、事業別分割・民営化、上下分離化を柱とする大改革を決定。2010年を区切りとする改革は、総仕上げの段階に入っている。
そこで本稿では、設立から8年目を迎えた「ロシア鉄道」の現状と改革の実施状況について報告する。
ロシアのナノテク戦略とロスナノ社
ロシアNIS経済研究所
服部倫卓
はじめに
ロシアのメドヴェージェフ現政権は、「近代化」を戦略的な課題として掲げており、それを「イノベーション」を通じて達成しようとしている。その際に鍵を握るものの一つが、ナノテクノロジーである。そして、それを推進する役割を割り当てられている主体こそ、「ロシア・ナノテクノロジー・コーポレーション(ロスナノ)」に他ならない。
従来、ロスナノは「国家コーポレーション」という組織形態だった。これは日本語で言えば「公社」に該当し、今号の特集テーマである「大企業」の範疇からはやや外れるかもしれない。しかし、2010年7月の立法により、同公社を近日中に株式会社に改組することがすでに決まっている。こうしたことから、ロスナノを一つの大企業として分析の俎上に上せることには充分な道理があるし、ロスナノが他の大企業の企業戦略に絡んでくる可能性も大きい。そこでこのレポートでは、ロシアのナノテク戦略と、そこにおけるロスナノの役割について、簡単に報告してみたい。
ビジネス最前線
大きな可能性を秘めた日ロ経済協力
メトローポルグループ
副社長・東京支社代表 A.チブレヴィッチさん
顧問 菅川健二さん
はじめに
メトローポルは、証券業務からスタートし、現在ではロシアにおける投資・金融分野でのリーディングファイナンスグループにまで成長しました。親日的な経営者であるミハイル・スリペンチュック社長が率いる同社は、日本との経済協力に大きな可能性をみており、2004年4月には東京都中央区に東京支社を設立、日本企業とのプロジェクトを着々と進めています。そのメトローポルの東京支社長として、日本企業の窓口になっているのがアレクサンドル・チブレヴィッチさんです。同社顧問である菅川さんとともに、日本企業との信頼関係の構築に努めながら、様々な日ロの経済協力の可能性を探っています。
データバンク
2010年版ロシア大企業ランキング
はじめに
ロシアの経済週刊誌『エクスペルト』(2010年10月4-10日号、No.39)に、毎年恒例のロシア大企業ランキングが掲載されているので、本誌でもこれを抜粋して紹介するとともに、解説をお届けする。
データバンク
2009年版ロシア極東大企業ランキング
はじめに
当会では、ウラジオストクのザラトイ・ログ出版社が発表したロシア極東の100大企業のランキングを、過去にも何度か紹介したことがある。今般我々は、2009年に発行された最新の同ランキング(第8版)を入手した。2008年の売上高にもとづく2009年版のランキングということであり、今となっては少々古い感もなきにしもあらずだが、「特集◆ロシア大企業の研究」の枠内で、ここにご紹介する。
エネルギー産業の話題
ロシアの製油所用触媒・添加剤事情
ロシアの製油所は現在、ユーロ3、4、5への対応の必要性に迫られていますが、その中で、触媒と添加剤に対する関心も高まっています。そこで今回は、ロシアの触媒および添加剤市場の状況をごく簡単にではありますが、ご紹介したいと思います。(坂口泉)
自動車産業時評
回復基調のロシア・トラック市場
世界的経済危機の結果、ロシアのトラック市場も大きなダメージを受けましたが、乗用車市場同様に、2010年春頃から順調に回復しており、生産、販売とも大幅に増加しています。以上の状況を踏まえ、今回はASMホールディング社発表の数字を基に、2010年1〜9月期のロシアのトラック市場の状況をご紹介します。(坂口泉)
ロジスティクス・ナビ
ウスチルガ港の対日貨物誘致
2010年11月12日、東京で開催された第4回日露投資フォーラムの分科会B「輸送・インフラ:近代化の可能性」で発表されたロシア側の発表を紹介します。今号ではイズライリト(株)ウスチルガ会長による「アジア太平洋地域からバルト海諸国への貨物輸送の新たな可能性」と題する報告の要旨を紹介し、公式に発表されている関連情報を付け加え構成しました。(辻久子)
ロシアビジネスQ&A
ロシアの新しい外国人就労制度
2010年7月にロシアの外国人の就労法が改正され、一定の基準を満たす外国人であれば、労働許可および就労ビザを取得する際の手続きが、従来に比べて大幅に簡素化されました。
今回はロシアの新しい労働許可および就労ビザ制度についての質問にお答えします。