特集◆ついに決定したロシアのWTO加盟 |
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調査レポート |
ロシアのWTO加盟決定に寄せて |
調査レポート |
WTO加盟でロシア自動車産業はどう動くか |
調査レポート |
ロシア連邦の知的財産権事情 ―WTO加盟に伴う概括の試み― |
調査レポート |
ロシアのWTO加盟が極東経済に及ぼす影響 |
ビジネス最前線 |
ロシアのWTO加盟は近代化の梃子になる |
ミニ・レポート |
WTO加盟でロシアの各産業・商品市場が被る影響 |
データバンク |
2011年版ウクライナ500大企業ランキング |
データバンク |
2010〜2011年版ロシア地域別投資環境ランキング |
研究所長随想 |
「ニコライの日記」に見る日露の順法意識の相違 |
INSIDE RUSSIA |
ロシア下院選結果と今後の中央・地方関係 |
ロシア極東羅針盤 |
止まらないロシア極東の人口減少 |
ロシア首長ファイル |
イルクーツク州メゼンツェフ知事 |
エネルギー産業の話題 |
サモトロール〜プルペ〜ザポリャルノエPL |
自動車産業時評 |
ロシア市場で注目される低価格車 |
ロジスティクス・ナビ |
ロシアの通関事情とフィンランド・トランジット |
ロシアビジネスQ&A |
ロシアの廃棄物処理とリサイクル ―「MOTTAINAI」をロシアに広める |
出張・駐在の達人 |
ロシアで日本のテレビ・DVDを観るには |
業界トピックス |
2011年12月の動き ◆高機能歯みがきのサンギがロシアへ進出 |
通関統計 |
2011年1〜11月の通関実績 日本の対ロシア月別輸出入通関実績 日本の対ロシア月別乗用車輸出動向 |
ロシアのWTO加盟決定に寄せて
みずほ総合研究所 主任研究員
金野雄五
はじめに
1993年6月にロシアがGATT(WTOの前身)への加盟申請を行ってから18年超を経て、ついに本年、ロシアのWTO(世界貿易機関)加盟が実現する。2011年11月の作業部会での合意を受けて、同12月16日のWTO閣僚会議ではロシアの加盟が全会一致で承認された。同閣僚会議のプレスリリースによれば、今後、12月の加盟承認から220日以内にロシア議会によって一連の加盟協定文書が批准され、その30日後に正式に加盟国になるとされていることから、ロシアの加盟は2012年9月頃になると見込まれる。
こうした状況を踏まえ、本稿ではロシアの加盟承認に至るまでの経緯と、加盟条件の概要を解説する。まず第1節では、WTOへの新規加盟プロセスの概要とロシアの加盟交渉の経過を概観する。第2節では、ロシアの加盟交渉の終盤において争点となった問題を中心に、それぞれの論点と交渉の帰結を整理する。第3節では、現時点までに明らかになったロシアの加盟条件の概要と、そのビジネス環境への示唆について考える。
WTO加盟でロシア自動車産業はどう動くか
ロシアNIS経済研究所 部長
坂口泉
はじめに
ロシアの自動車分野に導入されている工業アセンブリ措置は、同国のWTO加盟を阻害する最大の問題のひとつとみなされていたが、2011年10月下旬になり、EUとの間でこの問題の解決策に関する基本合意が得られたとの情報が出た。また、米国との間でもこの問題についての基本合意が得られ、ロシアのWTO加盟に向けての動きが加速することとなった。工業アセンブリ措置に関連する問題の解決が、ロシアのWTO加盟を促進する起爆剤になったとの見方も可能であろう。
この観点に立ち、本稿では、工業アセンブリ措置をめぐりEUおよび米国との間で具体的に何が争点となっていたのかという点や、ロシアのWTO加盟が同国の自動車産業にどのような影響を及ぼすのかといった点についてご説明したい。
ロシア連邦の知的財産権事情
―WTO加盟に伴う概括の試み―
東京知財事務所 弁理士
熊谷弘
ロシアのWTO加盟が、2011年12月16日に開催されたWTO(世界貿易機関)閣僚会合において承認された。ロシア下院での批准を経て、2012年遅くも7月23日までの正式加盟が見込まれる。ロシアと関税同盟を形成するカザフスタンとベラルーシのWTO加盟も促進されると見込まれ、両国のGDP1,420億ドル、550億ドルを加えたWTO新加盟のロシア圏GDP規模(2010年で約1.7兆USドル)は現在GDP世界8位のインドに匹敵する。
ロシアのWTO加盟によりロシア圏との経済交流が今後一層活発になると予想される(経済効果の予測その他については別項に譲りたい)が、ここで想起すべきは、1995年1月のWTO創設に至った大きな要因の一つが、近年における「知的財産権」関連の貿易・経済交流の急速な拡大にあったことである。WTO設立マラケシュ協定の不可欠の一部にTRIPS(Trade Related Aspects of Intellectual Property=知的所有権の貿易関連の側面に関する協定)が締結された由縁である。
本稿では、WTO加盟後一層拡大・活発化すると予想されるロシアとの経済交流において、特許権、商標権、著作権等の「知的財産権」がどのように影響を与え、どのように活用が見込まれるか、基本的な事柄を考えてみたい。
ロシアのWTO加盟が極東経済に及ぼす影響
ロシア科学アカデミー極東支部経済研究所
Ye.デヴァエヴァ
はじめに
ロシアは、市場経済への移行開始以来、国際的な貿易機構への統合に尽力してきた。1992年にロシアがGATTへの加盟の意向を表明したことは、この分野における大きな前進となった。GATTはGATSと並びWTOの制度的基盤を成すものであり、加盟各国間における貿易自由化の推進、そして開かれた貿易の互恵性を確保するための法制度および経済制度の整備を目指すものである。
ロシアにとって長年の課題であったWTO加盟は、以下のような多数の戦略的・経済的メリットをもたらし得る。
上記のメリットに加え、WTO加盟は、経済開放度の上昇により、ロシア経済の近代化プロセスの推進に必要な諸条件の確立をもたらず可能性もある。
ビジネス最前線
ロシアのWTO加盟は近代化の梃子になる
元サンクトペテルブルグ日本センター所長
日露貿易アドバイザー
朝妻幸雄さん
はじめに
朝妻さんは2007年12月、日ロ貿易経済関係の発展と深化における多大な貢献が称えられ、ロシア連邦「友好勲章」を受章されました。商社マンとしての対ソ連・ロシアビジネス、そしてモスクワ、サンクトペテルブルグでの日本センター長の活動と40年以上に渡る地道な活動が評価された結果だと思います。ビジネスの現場とロシア経済全体の変遷という、いわばミクロとマクロの両面を知る数少ない一人である朝妻さんに、ロシアがWTO加盟に至るまでの紆余曲折やWTO加盟がロシアに及ぼすプラス面とマイナス面、そして日本とロシアの経済関係の展望にいたるまで、じっくりと語っていただきました。
ミニレポート
WTO加盟でロシアの各産業・商品市場が被る影響
はじめに
ロシアがいよいよWTOに加盟することになり、ロシアの新聞・雑誌やネットにはロシアの各産業セクターおよび商品市場にどのような影響が及ぶかに関する観測記事が多数掲載されている。最も重要な自動車産業・市場に関しては今号で別途記事をご用意しているので、この小レポートはそれ以外の主要セクターに関し現地報道を抜粋する形で若干の展望を試みたい。(服部倫卓)
データバンク
2011年版ウクライナ500大企業ランキング
はじめに
小誌では2011年4月号において「NIS大企業総覧」と題する特集を組み、その一環として「ウクライナ200大企業ランキング」という記事を掲載した。その際は『エクスペルト・ウクライナ』誌によるランキングを紹介したのだが、実はウクライナではそれ以外にも大企業ランキングがいくつか存在する。インヴェストガゼータ出版の100大企業ランキング、ウクライナ版『フォーブス』誌の400大企業ランキング、そして『グヴァルジヤ』誌の500大企業ランキングなどが知られている。このなかから、今回は、最も網羅的な『グヴァルジヤ』誌のウクライナ500大企業ランキングを紹介してみたい。
データバンク
2010〜2011年版ロシア地域別投資環境ランキング
はじめに
ロシアの経済週刊誌『エクスペルト』(2011. 12.19-25, No.50)が、毎年恒例のロシアの地域別投資環境ランキングの最新版(2010〜2011年版)を発表したので、この資料を抜粋して紹介する。
INSIDE RUSSIA
ロシア下院選結果と今後の中央・地方関係
はじめに
2011年のロシアは下院選挙で幕を閉じた。2012年3月に行われる大統領選挙の前哨戦とも言える下院選挙は、与党・統一ロシアが得票率を低下させたものの、過半数の議席を獲得し、第一党を維持した。国内外のメディアは選挙の不正ややり直しを求めるモスクワでの一連の騒動について大きく取り上げ、日本でも特に批判的な論調が多数報道された。
しかし、再選挙が行われることはなく、第六期下院の最初の会合が12月21日に行われ、新しい議長にはナルィシュキン元大統領府長官が就任した。さらに翌22日には刷新された連邦議会向け大統領教書演説が行われ、メドヴェージェフ大統領はこれまでの政策の成果報告と今後の方針について語った。4年間大統領を務めたメドヴェージェフの事実上、最後の教書演説となったわけであるが、こちらについての関心は薄いようだ。
残り数か月となったメドヴェージェフ政権が最後に力を入れようとしているテーマの1つはこれまで、メドヴェージェフ政権ではあまり注目されなかった政治制度改革である。
そこで、今月は下院選挙の結果とメドヴェージェフ政権が集大成として掲げた政治改革の内容を紹介する。なお、選挙結果のグラフや表についてはロシア連邦中央選挙管理委員会のホームページ(http://www.cikrf.ru/)から得たデータ(2012年1月10日時点)を独自にまとめたものである。(中馬瑞貴)
ロシア極東羅針盤
止まらないロシア極東の人口減少
165万人。ロシア極東からこの20年間で減少した人の数だ。住民の流出が止まらないまま、ソ連解体から20年を迎えた。
図1と表1は極東の人口推移を示したものである。1991年の人口は806万人であった。2011年の人口は641万人であったので、この20年間の減少率は2割以上となる。このことは単純にロシア極東の活力が失われていることを意味する。これだけの規模の減少であるから、その落ち込みは住民の生活や経済活動に大きな影響を与えてきた。(齋藤大輔)
ロシア首長ファイル
イルクーツク州メゼンツェフ知事
はじめに
2012年、ロシア最大の注目は3月に行われる連邦大統領選挙である。メドヴェージェフ大統領の下で、4年間首相を務めたプーチンが2011年9月の「統一ロシア」党大会で次期連邦大統領選挙への出馬を正式に発表した。彼の当選はほぼ確実であるが、1回目の投票で過半数を獲得することができるか、決選投票までもつれ込むか注目である。
対立候補として、2011年12月に行われた下院選挙で議席を獲得した各党の党首やそれ以外の政党や団体の後押しを受けた代表も年末に続々と候補者登録を行った。久しぶりに地方首長からも候補者が現れ、イルクーツク州のドミトリー・メゼンツェフ知事が大統領選挙への出馬を表明した。今月はメゼンツェフ知事に焦点を当てる。(中馬瑞貴)
エネルギー産業の話題
サモトロール〜プルペ〜ザポリャルノエPL
サモトロール〜プルペ〜ザポリャルノエ石油パイプラインは、クラスノヤルスク地方北部およびヤマロ・ネネツ自治管区の新鉱床の石油を太平洋パイプラインに供給することを主目的として建設が計画されたものですが、2011年秋にその第1フェーズに相当するサモトロール〜プルペ区間が完成しました。また、ほぼ同時期に、第2フェーズに相当するプルペ〜ザポリャルノエ区間の建設開始も内定しました。今回は、このパイプラインの建設をめぐる状況や、クラスノヤルスク北部やヤマロ・ネネツの新鉱床の開発の促進が太平洋パイプラインに及ぼす影響についてご紹介します。(坂口泉)
自動車産業時評
ロシア市場で注目される低価格車
ロシアの乗用車市場では、50万ルーブル未満での購入が可能な低価格車が市場の核を形成しており、売れ行き上位15モデルのほとんどが、この価格帯の車で占められています。
今回は、ロシアで人気の低価格車の全般的な特徴、ならびに、最近特に注目を集めている低価格モデルの概要についてご紹介します。(坂口泉)
ロジスティクス・ナビ
ロシアの通関事情とフィンランド・トランジット
ロシアの煩雑な通関手続きは対ロシア貿易の障壁の一つと指摘されてきました。通関をよりスムーズに行う対策としてフィンランド・トランジットが利用されてきました。一時水際通関への移行が話題となり、今では電子通関制度の導入も進んでいます。最近の通関事情を整理します。(辻久子)
ロシアビジネスQ&A
ロシアの廃棄物処理とリサイクル
―「MOTTAINAI」をロシアに広める―
日本語の『もったいない』は、食べ物を残したり、物を粗末にしたり、水や電気を無駄に使った時などに使われる、いましめの言葉です。昨年9月25日に亡くなったケニアの環境保護活動家でノーベル平和賞を受賞したワンガリ・マータイさんが、2005年に訪日した際に、『もったいない』には、自然や物に対する敬意や愛が込められていると感銘を受け、しばしば口にしたことから、世界中に広まりました。今や「MOTTAINAI」は、地球環境に負担をかけず、持続可能な循環型社会実現のためのアイコトバとなっています。今回は、ロシアの廃棄物処理の状況とリサイクル設備の輸出の可能性についての質問にお答えします。(原真澄)
出張・駐在の達人
ロシアで日本のテレビ・DVDを観るには
はじめに
日本から離れていても、インターネットにつながる環境とパソコンや携帯端末さえあれば、ニュースをフォローすることは簡単である。単に文字情報や写真だけではなく、動画のニュースを観ることも可能だ。YouTubeにアクセスすれば、スポーツ中継のハイライトシーンも観られる。
そうはいっても、連続ドラマ、バラエティー、スポーツ番組をまるごと観られるわけではない。それを可能にするための方法をいくつか紹介する。(新井滋)