特集◆韓国企業のロシアビジネスに学ぶ |
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調査レポート |
韓国企業のグローバル戦略とロシア市場での展開 |
調査レポート |
現代自動車の戦略とロシア市場での展開 ―「選択的重点的現地適合化戦略」を検証する― |
エネルギー産業の話題 |
ロシア・NISの石油ガス部門での韓国の動き |
自動車産業時評 |
ロシア乗用車市場で存在感示す韓国メーカー |
ミニ・レポート |
韓国企業流ロシアNISビジネスとリスク管理 |
ミニ・レポート |
韓国ロッテがモスクワで直面したトラブル |
データバンク |
日本・韓国の対ロシア経済関係の統計比較 |
調査レポート |
アジア市場にシフトするロシア石炭産業 |
ビジネス最前線 |
ロシアに進出する日系企業の鉄鋼需要に応える |
データバンク |
2010〜2011年のNIS諸国の貿易統計 |
INSIDE RUSSIA |
ロシア新政権の組織と人事 |
研究所長随想 |
新しいロシアへ向けての胎動 |
ロシア極東羅針盤 |
動き出したカジノタウン構想 |
ロジスティクス・ナビ |
ロシア版「借港出海」 |
ロシアビジネスQ&A |
ロシアの中小企業との取引の留意点 |
業界トピックス |
2012年5月の動き ◆日本測定がウクライナ製放射線測定器を販売 |
通関統計 |
2012年1〜4月の通関実績 2012年1〜4月の日ロ貿易 |
韓国企業のグローバル戦略とロシア市場での展開
多摩大学経営情報学部 教授
金美徳
ロシア市場では、LGエレクトロニクスとサムスン電子が家電や携帯電話、ロッテが製菓やサービス、ヒュンダイ自動車が自動車で市場を席巻している。LGエレクトロニクスは、エアコン、掃除機、オーディオ、電子レンジなど9つの家電製品がトップシェア。韓国家電メーカー初のモスクワ州ルザ地区(モスクワから100km西に位置)の家電工場では、テレビ・洗濯機・冷蔵庫・オーディオなど年間400万台を生産している。サムスン電子は、携帯電話とテレビ市場でそれぞれトップシェア。カルーガ州カルーガ市(モスクワから南西85kmに位置)のテレビ工場では、年間300万台のテレビを生産し、ロシアのみならず、ウクライナやカザフスタンなどCIS地域でも販売している。ロッテは、モスクワに百貨店やオフィスビルなどで構成された「ロッテプラザ」を完成。また、2010年9月にはモスクワにチョコパイ工場が完成するとともにロッテホテルが開業した。
現代自動車の戦略とロシア市場での展開
―「選択的重点的現地適合化戦略」を検証する―
事業創造大学院大学 教授 富山栄子
京都大学大学院経済学研究科 教授 塩地洋
はじめに
現代/起亜自動車の躍進が目覚しい。世界の販売台数において2010年でフォードを抜いて第5位に浮上するまでに成長した(1位トヨタ842万台、2位GM838万台、3位VW714万台、4位日産/ルノー671万台)。第4位の日産/ルノーを、日産とルノーの別々に分けると現代自動車は第4位になる。現代自動車は、低価格と生産性の高さで国際優位性を獲得し、競合他社が注目しない新興国を中心に完成車輸出と現地工場展開によって急成長を遂げてきた。
本稿では最初に現代の「選択的重点的現地適合化戦略」が中心である商品企画製品開発プロセスと新製品開発の重点政策であるデザイン戦略、それを可能にしてきたトップマネジメントによるスピード経営について取り上げ、それらが新興国において現代の強みになっていることについて論述する。次にBRICsの一国であるロシアにおける現代自動車の「選択的重点的現地適合化戦略」について分析し、新興国市場での市場創造の方策について含意を導出する。
エネルギー産業の話題
ロシア・NISの石油ガス部門での韓国の動き
今のところ大きな成果が出ているとは言い難い部分もありますが、韓国は、ロシア、カザフスタン、ウズベキスタンなどの旧ソ連の国々において、石油ガス分野の上流の権益の獲得を目指し積極的に動いています。また、ロシア産ガスの輸入を視野に入れた、北朝鮮横断ガスPL建設構想にも取り組んでいます。そこで今回は、ロシア・NIS諸国での上流の権益獲得をめぐる韓国企業のこれまでの動きや、北朝鮮横断ガスPL建設計画の概要と現状などをご紹介することとします。(坂口泉)
自動車産業時評
ロシア乗用車市場で存在感示す韓国メーカー
ロシアの乗用車市場では韓国メーカーの存在感が非常に強くなっています。シボレー・ブランドを展開する韓国GM(旧大宇)と、大宇ブランドを展開するGMウズベキスタンも韓国系メーカーとみなすと、2011年のロシアの乗用車市場における韓国勢のシェアは20%を超えたと推定されます。国別でみると、これはロシア純国産車に次ぐ2番目の数字です。今回は、ロシア市場で強い存在感を示す韓国メーカーの最新の動きをご紹介します。(坂口泉)
ミニ・レポート
韓国企業流ロシアNISビジネスとリスク管理
はじめに
韓国企業が展開するロシアNISビジネスの特徴はどこにあるのか? 日本企業との大きな違いは何か? その理由を本稿では、韓国政府によるサポートならびに韓国の企業経営の特徴という点に焦点を当て、関係者へのヒアリングも踏まえて考えてみたい。(芳地隆之)
ミニ・レポート
韓国ロッテがモスクワで直面したトラブル
はじめに
モスクワのノーヴィ・アルバート通りに誕生し、この街の新たなランドマークとなった「ロッテプラザ」。(日本ではなく)韓国のロッテ・グループが建設し、2010年に開業にこぎ着けたものであり、当地における韓国資本の勢いを象徴する存在となった。
ところが、このロッテプラザとモスクワ市当局の間で、トラブルが発生している。完成したロッテプラザの床面積が、当初の契約に示されていた面積を超過しているとして、モスクワ市側が追加の土地賃借料を支払うよう求めているものである。モスクワ市は駆け引きの一環として、ロッテ・グループがモスクワ市南西部で手掛けている第2のプロジェクト、「ロシア・コリアン文化センター」の建設認可を取り消すという動きにも出たようだ。
韓国系企業がロシア市場で積極果敢にビジネスを進めていることには一目置くとしても、それによって生じているトラブルにも我々は目を向けるべきであろう。そこで以下では、本件紛争に関する『RBCデイリー』紙の報道振りを、抄訳して紹介する。
データバンク
日本・韓国の対ロシア経済関係の統計比較
はじめに
日本と韓国の対ロシア経済関係を比較するために、このコーナーでは、日韓両国の対ロシア貿易および外国投資の統計を図表化してご紹介する。貿易および投資の総額だけの、ごく簡単な資料ではあるが、ご参考になれば幸いである。
図表の作成に当たっては、日韓を同じ条件で比較するため、ロシア側の統計を利用している。図表1〜3の貿易のデータはロシア連邦関税局の統計、図表4〜7の外国投資のデータはロシア連邦国家統計局の統計を出所としている。なお、2011年の外国投資に関しては、まだ断片的なデータしか発表されていないため、空欄がある点、ご容赦願いたい。
グローバル化の時代に二国間の通関統計で経済関係を評価することには限界があるし、ロシアの外国投資統計に難点が多々あることに関しては本月報で累次ご報告しているとおりであるが、あくまでも全体像を把握するための一次的接近ということで、ご理解いただきたい。
アジア市場にシフトするロシア石炭産業
ロシアNIS経済研究所 部長
坂口泉
はじめに
現在、ロシアで生産される石炭の約3分の1が輸出されているが、2011年はアジア市場向けが特に好調で、極東の港経由の石炭の輸出量がロシア国内のその他の地域の港経由の石炭の輸出量を上回るという状況が生じた。これは、福島原発事故の影響でアジア市場での石炭需要が増加したことや、アジア市場をめぐりライバル関係にあるオーストラリア産の石炭の供給が洪水の影響で滞ったことなどによるものである。停滞気味の欧州市場と異なり、成長が期待できるアジア市場を重視する傾向がロシアの石炭業界内で強くなりつつあるのは事実で、複数の大手石炭会社が同市場でのプレゼンスのさらなる強化をめざし、輸出用のインフラの整備や選炭工場の増設に積極的に取り組む意向を表明している。2011年は、ロシアの石炭分野のアジア市場へのシフト傾向が目立った年だったといえる。ただ、同年はアジア市場へのシフトを加速させる上で阻害要因になると考えられる事象が少なからず散見された年でもあった。本稿では、アジア市場へのシフトの動き、ならびに、その動きを阻害する可能性のある要因に注目しながら、2011年のロシア石炭分野の状況を振り返ってみたい。
ビジネス最前線
ロシアに進出する日系企業の鉄鋼需要に応える
有限会社 メタルワン ロシア
社長 遠藤訓さん
はじめに
鉄鋼総合商社のメタルワンは2012年4月に現地法人の有限会社メタルワン ロシア(LLC METAL ONE RUS)を設立しました。初代社長に就任した遠藤さんは、それ以前から同社のモスクワ駐在員事務所長として、2008年秋の経済危機とそこからの回復を現地で体感されています。新たに現法として本格的に市場参入をするに当たって重視しているのは、将来的な日系製造業のロシア進出を見据えたビジネス環境づくり。日本の鉄鋼総合商社としてロシアにおいて、現法化を活かし自社のプレゼンスをどうやって向上させていくか。変化の激しい同国市場で遠藤さんは様々なビジネスの可能性を視野に入れています。
データバンク
2010〜2011年のNIS諸国の貿易統計
はじめに
小誌では、NIS諸国の基礎的な経済データの紹介に努めており、その一環として毎年1回、NIS諸国の貿易データをまとめて掲載することにしている。その際に、以前は基本的に、CIS統計委員会の統計集『CIS諸国の外国貿易』を情報源として利用していた。同統計集はロシア・NIS諸国の貿易データを同一の様式で載録しており、有用だからである。
しかし、『CIS諸国の外国貿易』は近年刊行に時間がかかるようになり、年初も過ぎた頃にやっと2年前の統計が出るというサイクルになりつつある。今回も、2010年の貿易データを載録した『2010年のCIS諸国の外国貿易』を我々が入手できたのは、本年の3月頃であった。他方、昨今では各国の統計関係のウェブサイトが充実し、貿易データもネットでとれる国が増えてきている。そこで、一昨年から本レポートのシリーズでは、『CIS諸国の外国貿易』にもとづき統計を共通様式で紹介することを基本としつつも、可能な範囲内で最新値である前年のデータも盛り込むという形のリニューアルを図っている。
INSIDE RUSSIA【拡大版】
ロシア新政権の組織と人事
はじめに
ロシアでは、5月7日にV.プーチン氏が大統領に就任し、その指名により翌8日にD.メドヴェージェフ氏が首相に承認されたのに続き、21日には新内閣が発足した。これで、プーチン大統領とメドヴェージェフ首相から成る新体制が、本格始動することとなったわけである。
今回のこのコーナーでは、いつもよりもページを拡大して、ロシア新政権の組織と人事に関する事実関係を整理してお伝えするとともに、解説をお届けする。なお、本稿は拙稿「ロシアのメドヴェージェフ新内閣の読み方」(『ロシアNIS経済速報』2012年5月25日号、No.1562)に加筆して完成させたものである。(服部倫卓)
ロシア極東羅針盤
動き出したカジノタウン構想
ロシアの沿海地方にカジノタウンを作る計画が動き出している。投資が進まずに企業探しに苦労していたが、昨年夏にようやく建設が始まった。国が指定したカジノゾーンはウラジオストク市中心部から70km、空港から23kmも離れた人里離れたところにある(ムラビヨフ湾チェルパフ岬付近)。敷地面積620ha。ホテル16棟やヨットハーバー、スキー場、海水浴場なども備えたカジノ併設型の総合リゾートを建設する。計画は3段階からなり、2025年の完成を目指す。(齋藤大輔)
ロジスティクス・ナビ
ロシア版「借港出海」
「借港出海」とは、中国語で海への出口を持たない内陸国が、近隣国の海港を利用して外国貿易を行うことを指します。近年では、中国東北部の吉林省が北朝鮮やロシアの港湾を対外貿易に利用している事例があります。ロシアは東西南北に海港を有する海洋国家ですが、様々な理由から主に欧州部で近隣国港湾を利用してきました。実は日ロ貿易もその恩恵に浴してきたのです。ロシアの対外貿易における借港の実態を解明します。(辻久子)
ロシアビジネスQ&A
ロシアの中小企業との取引の留意点
ロシアでは、国営企業や特殊な事業体を除き、一般企業としては、出資形態や運営形態から、有限会社、非公開型株式会社、公開型株式会社があります。ロシアで中小企業といえば、出資金が少なく容易に設立できる有限会社か、簡単に登記できて優遇税制もある個人事業主ということになるでしょう。パンフレットやホームページ等での企業情報の開示はまだ一般的でなく、また民間の企業信用調査制度が未発達なロシアで、相談者のように、展示会で商談した個人事業主や有限会社と取り引きを開始してよいのか、もっと大きくてまともな会社があるのではないかと悩まれるのも当然と思います。(原真澄)