特集◆ロシアにおける企業と国家 |
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調査レポート |
強大化する国営企業「ロスネフチ」 ―民間石油会社「TNK-BP」を買収― |
データバンク |
2012年版ロシア大企業ランキング |
データバンク |
ロシア極東の最新企業ランキング100 |
データバンク |
ロシアの250大鉱工業都市と主要企業 |
INSIDE RUSSIA |
ロシアの政財界とサッカーの関係 |
データバンク |
ロシア人が就職したい会社はどこか? |
ビジネス最前線 |
ロシアでも展開が始まったグローバルデータセンター |
キーパーソンに訊く |
「ウズベク・モデル」は市場経済への段階的処方箋 |
データバンク |
カザフスタンの地域別経済・社会発展度 |
研究所長随想 |
加速するロシアの東進政策を見つめて |
ロシア極東羅針盤 |
カジノタウンを見に行く |
ロシア首長ファイル |
プスコフ州トゥルチャク知事 |
日ロ異文化遭遇の日々 |
ロシア人は晩酌をしない! |
エネルギー産業の話題 |
ロシアで急拡大するLPGの生産 |
自動車産業時評 |
ロシアの自動車用鋼板の最新事情 |
ロジスティクス・ナビ |
北極海航路の展望 |
業界トピックス |
2012年11月の動き ◆ロシアにおけるスマートシティ構想 ◆アイビー化粧品のロシア市場参入奮戦記 |
通関統計 |
2012年1〜10月の通関実績 2012年1〜10月の日ロ貿易 |
強大化する国営企業「ロスネフチ」
―民間石油会社「TNK-BP」を買収―
ロシアNIS経済研究所 部長
坂口泉
はじめに
2012年10月になり、ロシアの国営石油会社「ロスネフチ」が石油生産規模でロシア第3位の民間石油会社「TNK-BP」を買収する意向を正式に表明し、世界的な話題となった。取引が最終的に成立すれば、石油生産規模の点でエクソンモービルを上回る世界最大級の石油会社が誕生することになる。
しかし、そこには、様々な問題点が見え隠れする。たとえば、この取引はロシア政権内部の対立の激化につながる危険性を秘めている。それは、ロスネフチの社長が、あのセーチンだからだ。取引の結果、政権内のセーチン派の燃料エネルギー分野におけるプレゼンスは強化されるだろうが、反セーチン派のそれは逆に弱体化する可能性が高い。反セーチン派もその点を認識しており、ロスネフチによるTNK-BPの買収は容認してはいるものの、それ以上にセーチン派の勢力が強まることは何としても阻止するという意志を明確に示し始めている。当該の取引を契機として、一触即発的な状況が生じつつあるのだ。
また、ロスネフチの強大化というのはあくまで石油の生産規模という量的側面だけを見た場合に言えることであって、たとえば、TNK- BP買収後にロスネフチの収益性が向上し、その点においても強大な会社になるという保証はどこにもない。逆に収益性が悪化することも充分にあり得る。
さらに、TNK-BP買収のための借入金の増大の影響でロスネフチの設備投資額が今後減少する可能性があるが、中長期的に見た場合、そのことが同社のみならずロシア全体の石油生産動向に否定的影響を及ぼすことになるかもしれない。すなわち、ロスネフチの生産規模拡大プロセスが国益に直結するという保証もまたないのである。
以上のような問題意識を根底に踏まえつつ、本稿では、ロスネフチによるTNK-BP買収取引の概要の他、取引終了後に誕生する新生ロスネフチの問題点や燃料エネルギー分野におけるセーチン派と反セーチン派の攻防について述べる。
データバンク
2012年版ロシア大企業ランキング
はじめにロシアの経済週刊誌『エクスペルト』(2012年10月1-7日号、No.39)に、毎年恒例のロシア大企業ランキングが掲載されているので、本誌でもこれを抜粋して紹介するとともに、解説をお届けする。
データバンク
ロシア極東の最新企業ランキング100
はじめにウラジオストクのザラトイ・ログ出版社からこのほど、2011年の売上高にもとづく最新の「ロシア極東企業売上高ランキング100」が発表された。その概要を抜粋して紹介する。
データバンク
ロシアの250大鉱工業都市と主要企業
はじめにこのほど、ロシアの「地域計画化研究所」が作成した「ロシアの250大鉱工業都市」という資料を入手した。ロシアの地域(州・地方・共和国など)レベルの鉱工業生産の統計は珍しいものではなく、本月報でも適宜紹介している。しかし、今回の資料は都市レベルの鉱工業生産高を比較して、上位250都市をランキング形式で示したものであり、ほぼ前例がない画期的なものと思われる。しかも、本資料には、各都市の主要鉱工業部門と、主要企業(具体的な企業名というよりも、それが属す企業グループだが)が記されている。きわめて興味深い内容であり、今号の特集「ロシアにおける企業と国家」というテーマを地方レベルで掘り下げるためにも有用な資料なので、以下これを表にまとめて紹介する。
INSIDE RUSSIA【拡大版】
ロシアの政財界とサッカーの関係
はじめに今回は、いつもより枠を若干拡大して、ロシアにおいて政財界とサッカーがどのような関係を織り成しているか、分析を試みる。たかがスポーツと侮ることなかれ、今号の「ロシアにおける企業と国家」という特集テーマを考察する上で、サッカーは格好の題材である。サッカーを通して、ロシアの政治や経済のありようが見えてくると言っても、決して大袈裟ではない。ロシアでは2018年にFIFAワールドカップが開催されることになっており、その意味でもサッカーの重要性は高まっている。以下本稿では、現在ロシア・プレミアリーグに所属している16クラブの経営の問題を中心に、政財界とサッカーの関係に迫ってみたい。(服部倫卓)
データバンク
ロシア人が就職したい会社はどこか?
はじめにロシアの「全ロシア世論調査センター」が、最新の世論調査において、どの大企業に就職したいかをロシア国民に問い、その結果が発表されたということである。2012年9月15〜16日に全国1,600人の国民を対象に調査し、その結果が同センターのウェブサイトに掲載された。あらかじめ回答者に回答の選択肢を示し、3つまでの複数回答で答える形式の設問である。その結果、ロシア人が就職したい会社のランキングは、下図のとおりとなった。
ビジネス最前線
ロシアでも展開が始まったグローバルデータセンター
KDDIロシアLLC
社長 伊藤 啓司さん
営業マネージャ 小川 洋介さん
はじめに
KDDIの英国法人KDDIヨーロッパがモスクワ市内にKDDIロシアを設立し、営業を開始したのは2011年5月。これにより同社はロシア国内全域での事業展開が可能になりました。さらに今年11月にはデータセンター「TELEHOUSE MOSCOW」を新設。インフラ環境の安定に課題をもつロシアでの最高品質のデータセンターを提供されるとのことですが、ICT(情報通信技術)について十分な知識を有していない読者の方も少なくないと思います(当方がそうです)。そこで今号ではKDDIロシアの伊藤さんと小川さんより、データセンターの具体的なサービスの内容についてご説明いただきました。(芳地隆之)
キーパーソンに訊く
「ウズベク・モデル」は市場経済への段階的処方箋
ウズベキスタン経済研究センター主任研究員
B.エルガシェフ
はじめに
今月は、ウズベキスタンの経済研究センターのエルガシェフ主任研究員のお話をお届けいたします。CERは、1999年にウズベキスタン政府と国連開発計画(UNDP)が共同で設立した同国を代表するシンクタンクです。現在、政府、国際機関、民間のそれぞれが活動予算の3分の1を担う等、「独立系」として認知され、主要出版物である月刊の『経済レビュー』や、その他の報告書において、社会・経済政策全般について提言を行い、それらが、然るべき形で、国の政策決定や、世論の形成に反映されているとのことです。
インタビューでは、好調なウズベキスタン経済の「秘密」、国際的には評価が低い「ビジネス環境」改善の目途、ロシアが主導する「ユーラシア連合」へのスタンス等、お答えになりにくいかと思われる話題についてもお訊きしてみました。(岡田邦生)
データバンク
カザフスタンの地域別経済・社会発展度
はじめにこのほど、カザフスタンのReiting.kzという調査機関が、カザフスタンの16地域の経済・社会発展度のランキングという資料を発表した。この資料は、経済・社会・生活水準にかかわる19の統計指標について16地域を順位付けし、それを集計して16地域の経済・社会発展度の総合ランキングを弾き出している。その概要を、下表のとおり紹介する。数字が若いほど順位が高く優れていることを意味する。
ロシア極東羅針盤
カジノタウンを見に行く
海に突き出した扇状地と周囲に広がる森や草地。ウラジオストクの中心部から北へ車で1時間。幹線道路から外れた未舗装の道路を進むと、カジノタウンの予定地に到着する。カジノタウンはロシアが全国4ヵ所に設置した「カジノ特区」の1つで、620haの用地に、カジノを併設した5つ星ホテルやレストラン、海水浴場、スキー場など総合リゾート地を建設する。25の区画からなり、投資家から開発プランを募集しているところだ。(齋藤大輔)
ロシア首長ファイル
プスコフ州トゥルチャク知事
はじめに首長選挙の復活に伴い、プーチン政権(2005〜2008年)、メドヴェージェフ政権(2008〜2012年)に見られた首長の特徴がどのように変化してくのか。ロシアにおいては地方の経済・投資政策策定や投資環境整備に地方行政府が大きく影響しており、特に知事の志向や手腕でビジネス環境そのものが大きく変化する。任命制の導入により、首長の地元に対する関心や影響力は縮小し、連邦中央を意識する首長が増加した。再び首長選挙が導入されてもこの状況は大きく変化しないとさえいわれている。
しかし、連邦中央としても地方の社会・経済発展は重要な課題であり、メドヴェージェフ政権の下で任命された比較的若い知事の中には、ビジネスに携わった経験を持ち、地元の投資環境改善に関心の高い首長が見られる。その1人がプスコフ州のアンドレイ・トゥルチャク知事である。プスコフ州というとまだ日本でなじみの薄い地域であるが、ロシアの雑誌で毎月取り上げられる「知事ランキング」において、最近その順位を上げている注目の首長である。本誌ではトゥルチャク知事ついて紹介する。(中馬瑞貴)
エネルギー産業の話題
ロシアで急拡大するLPGの生産
ロシアでは2000年以降、LPG(液化石油ガス)の生産量が急激に増加しており、国際的にも注目を集めるようになっています。そこで、今回は、ロシアの調査会社『石油と資本』から入手したデータをベースに、ロシアのLPGの生産、内需、輸出等をめぐる状況をご紹介することにします。(坂口泉)
自動車産業時評
ロシアの自動車用鋼板の最新事情
ロシアの鉄鋼メーカーの鋼板の品質は非常に低かったので、これまでは、納入先は純国産の完成車メーカーに限定されていました。ただ、最近は徐々に品質が向上しており、低価格車向けではありますが、外国メーカーの現地工場にロシア製の鋼板が納入されるケースも出てきています。今回は、ロシアのアフトビジネス社から入手したデータをもとに、ロシアの大手鉄鋼メーカーである、マグニトゴルスク、セヴェルスターリ、ノヴォリペツクの3社の自動車用鋼板の生産状況をご紹介します。(坂口泉)
ロジスティクス・ナビ
北極海航路の展望
2012年夏の猛暑は記憶に新しいところです。同時期、北極でも顕著な海氷衰退が進み、北極海航路の貨物輸送量が過去最高に達しました。地球温暖化を背景に注目される北極海航路の最近の動向をレビューし、将来を展望します。(辻久子)