特集◆ロシア・NISの消費市場と小売業 |
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調査レポート |
ロシアの食品スーパー業界に変化の兆し |
ビジネス最前線 |
継続は力なり、ロシア向け消費財輸出 |
イベント・レポート |
JAPAN EXPO in RUSSIA 2012開催 日本の食、住環境、産業・技術、文化をロシアに紹介 |
データバンク |
ロシアの最新小売りチェーン・ランキング |
データバンク |
ウクライナ・ベラルーシ・カザフの小売チェーン |
ミニ・レポート |
伸び悩むロシアのインスタントラーメン市場 |
ミニ・レポート |
ロシアの消費市場で事業を拡大するドイツ企業 |
ドーム・クニーギ |
中尾ちゑこ著 『ロシアン・ビューティー ―ビジネス体験から覗いた美の世界―』 |
キーパーソンに訊く |
ソ連の過ちは「ソ連人」という「民族」を生み出そうとしたこと |
データバンク |
ロシアの外国投資DBと日本の対ロ投資 |
データバンク |
NIS諸国の外国投資受入統計 |
ミニ・レポート |
太平洋沿岸へのパイプライン完成 |
研究所長随想 |
西洋と東洋の文明の十字路に立つロシア |
INSIDE RUSSIA |
2020年までのロシアの鉱工業発展プログラム |
ロシア極東羅針盤 |
ふらふらする極東開発 |
ロシア首長ファイル |
ニジェゴロド州シャンツェフ知事 |
日ロ異文化遭遇の日々 |
恐怖の「試してみよう!」 |
エネルギー産業の話題 |
ロシアの石油ガス企業の海外進出 |
自動車産業時評 |
ロシアの商用車市場の状況 |
ロジスティクス・ナビ |
バム鉄道とワニノ港 |
業界トピックス |
2012年12月の動き ◆ロシアの在留邦人数と日系企業進出事例 |
通関統計 |
2012年1〜11月の通関実績 2012年1〜11月の日ロ貿易 |
ロシアの食品スーパー業界に変化の兆し
ロシアNIS経済研究所 部長
坂口泉
はじめに
1990年代半ばにロシアに出現したスーパーチェーンは順調に市場でのプレゼンスを強化してきたが、競争の激化に伴い各チェーンの利益率は年々低下する傾向にある。また、販売高に目を転じれば、全体的には伸びているものの、既存店ベースでみるとマイナスという会社が少なくない。このため業界内では一種の閉塞感が漂いはじめている。
そのような状況の中、行政主導での「追い風」が吹き始めている。キオスクに代表される簡易店舗や小規模店舗でのアルコール飲料の販売が2012年夏から禁止されたが、2013年からはビールとタバコの販売も禁止される見込みとなっており、キオスクや小規模な個人商店の客がスーパーチェーンに大量に流入する可能性が高くなっているのである。また、キオスク淘汰の動きは、これまでロシアでは地味な存在であった自動販売機のプレゼンスの急激な高まりにつながる可能性も秘めている。これまで、日本企業とロシアの食品スーパー業界もしくは食品小売業界との接点はそれほど強いものではなかったが、「追い風」を契機にそれらの業界における日本企業のビジネスチャンスが広がる可能性も考えられる。
本稿では「追い風」と日本企業のビジネスチャンスを意識しながら、ロシアの商品小売市場と食品スーパー業界の現状を紹介する他、自動販売機に代表される食品の新しい小売販売形態の発展の可能性などについても言及したい。
ビジネス最前線
継続は力なり、ロシア向け消費財輸出
潟cバサ交易インターナショナル 代表取締役社長
白井健一さん
はじめに
白井(しろい)さんはユーラシア投資環境整備に入社された後、様々なロシアビジネスに携わってこられました。長年にわたって培ってきたご経験やノウハウを基に設立されたツバサ交易インターナショナルでは、ロシアからの消費財の輸入、そして地元・新潟県企業の商品のロシア向け輸出などをしておられます。ロシアの消費財市場はどのような状況にあるのか。日本製品を売り込む難しさ、それを乗り越えるためのカギは何か。日本海側の地方自治体による輸出振興事業にも関わってこられた白井さんから、マクロ経済面から具体的なビジネスの現場まで多面的に語っていただきました。(芳地隆之)
イベント・レポート
JAPAN EXPO in RUSSIA 2012開催
日本の食、住環境、産業・技術、文化をロシアに紹介
ロシアNIS貿易会 業務部次長
原真澄
はじめに
2012年11月28日〜29日、モスクワ・エクスポ・センターにおいて、日本単独展示会「JAPAN EXPO IN RUSSIA 2012」が開催された。JAPAN EXPO IN RUSSIA 2012は、同実行委員会、株式会社JTB法人東京とともに、ロシアNIS貿易会が主催した。
この展示会は、新たにロシアとの貿易を目指す「食」「住環境」「産業・技術」「文化」に関わる日本企業に、ロシアの有望バイヤーとの商談機会を提供することを目的としており、昨年2011年のプレ開催に続いて、2回目の開催となった。JAPAN EXPO IN RUSSIA 2012には、自治体(鳥取県、島根県)、企業、団体など、68の団体・企業が9ブースで展示および商談を行った。
本稿では、JAPAN EXPO IN RUSSIA 2012の模様をお知らせする。
データバンク
ロシアの最新小売チェーン・ランキング
はじめに
このほど編集部では、ロシアのINFO Lineという調査機関が作成したロシアの小売業に関するレポートを入手した。その中に、ロシアの小売チェーン100社のランキングというものが掲載されているので、以下ではそれを抜粋して紹介する。
データバンク
ウクライナ・ベラルーシ・カザフの小売チェーン
はじめに
このコーナーでは、ロシア以外のNIS諸国のうち、ウクライナ、ベラルーシ、カザフスタンの小売チェーンに関連する一連のランキング資料を掲載する。国によって得られる資料が千差万別で、紹介の仕方もバラバラになってしまうが、ご容赦願いたい。
ミニレポート
伸び悩むロシアのインスタントラーメン市場
はじめに
2008年12月下旬、日清食品がロシアのインスタントラーメン市場でトップシェアを誇るマレベンフード・セントラル社(以下、マレベンフード)の持ち株会社であるアングルサイド社(キプロス企業)への出資を通しロシア市場に参入する意向を表明した。さらに、2011年4月にはサンヨー食品が、ロシアでインスタントラーメンの生産・販売を中心に事業を展開しているキングライオングループの持ち株会社「KLサンヨーフーズ(キプロス企業)」の株式の49.99%を取得し、同社の共同運営を通じた資本業務提携を締結したことが明らかになった。
この日本の大手2社の動きの背景には、ロシアのインスタントラーメン市場の潜在的ポテンシャルに対する大きな期待感が存在する。実際、ロシアにはインスタントラーメン好きの人が多いが、一方で、健康に悪い、カロリーが高いといった否定的イメージを抱く人も少なくない。そのせいか、ここ数年は市場規模が伸び悩む傾向が強くなっている。ロシアのインスタントラーメン市場に関する情報は非常に乏しいが、本稿では英国のユーロモニター・インターナショナル社(以下、ユーロモニター社)やロシアの調査機関(RBCリサーチ)から入手した情報をベースに、同市場の現状を紹介する。(坂口泉)
ミニレポート
ロシアの消費市場で事業を拡大するドイツ企業
はじめに
現在、ロシアに進出しているドイツ企業の数は2012年6月末現在で約6,500社、進出地域は83の連邦構成主体のうち81に上る(ドイツ外務省)。ドイツは現在、ロシアにとって2番目の貿易パートナーであるが、最大の相手国である中国とはその商品構成は異なっており、消費市場において独中の製品がロシアにおいて競合関係になるケースは少ない。ドイツ企業のロシアビジネスをサポートする独ロ商工会議所(本部:モスクワ市)は、ロシアの消費市場の急速な発展は2008年秋のリーマンショックによって収束し、現在は市場での競争が本来あるべきかたちになっていると認識している。そうした状況のなか、ドイツのメーカーならびに小売チェーンはロシアの消費財市場において事業を拡大しており、今号では、その具体例およびドイツ企業のロシアビジネスに対する官民の支援について紹介したい。(芳地隆之)
キーパーソンに訊く
ソ連の過ちは「ソ連人」という「民族」を生み出そうとしたこと
ウズベキスタン芸術院会長
A.ヌル
はじめに
今月は、新春特別企画の趣で、ウズベキスタン芸術院のヌル会長のインタビューをお届けします。人一倍感性豊かな芸術家の目に、独立後の20年はどのような時代として映っていたのか。ソ連時代と現在のウズベキスタンでは、芸術の果たす役割はどう違うのか。ともすれば、閉鎖的と評されるウズベキスタンにおいて、芸術家の創造や表現の自由は担保されているのか等々、様々な角度から、ソ連、そして、新生ウズベキスタンにおける芸術と社会の在り様について語っていただきました。(岡田邦生)
データバンク
ロシアの外国投資DBと日本の対ロ投資
はじめに
筆者は過去数年、ロシアの外国投資に関する統計資料をとりまとめて紹介するレポートを毎年作成し、本月報に掲載してきた。最新のものは、本誌2011年8月号に掲載した「2010年のロシアの外国投資統計」である。
前回のレポートで報告したとおり、ロシアの外国投資統計をめぐる状況には、最近になって大きな変化があった。ロシア連邦国家統計局が、同国の外国投資受入状況に関する統計を、ウェブサイト上のデータベースで無料公開するようになったのである。前回レポートでは、このデータベースによって初めて明らかになった日本の対ロシア投資の詳しいデータなども紹介した。
だが、その後ロシア統計局がデータベースのインターフェイスを変更するという出来事があり、まずそれに戸惑うことになった。さらに、ロシア統計局は2011年の外国投資データをなかなかデータベースに入力せず、筆者は例年夏頃に外国投資統計のレポートを発表していたのだが、それにはまったく間に合わなかった(せっかくオンライン上のデータベースなのに、紙より遅いというのは感心しないところだ)。秋頃だったか、ようやくデータベースは更新されたものの、2011年の統計を紹介するのには、すっかり時機を逸してしまったというわけである。
その一方で、ロシア統計局のデータベースには、注目すべき進展もあった。ロシア統計局は従来、外国投資統計につき、フローのデータを重視し、ストックのデータについては当該時点のごく簡略な数字しか発表しないのが常であった。ウェブ上のデータベースにも、当初はフロー統計しかなかった。しかし、現在統計局が公開しているデータベースは、フローとストックの2本立てとなっているのである。一般的に言って、外国投資の状況を吟味する上で、ストック統計の重要性の方が高いと思われるが、新版のデータベースを駆使することにより、その相手国別・産業部門別・地域別の詳しい内訳が自在に調べられるようになったのである。
そこで今回のレポートでは、ロシア統計局が公開している外国投資統計データベースにつき解説するとともに、実際にそれを駆使して最新のロシアの外国投資受入状況を図表にまとめてお届けする。特に、ストックの投資受入残高の数字は、同データベースによって初めて詳細が判明したものなので、それを念入りに紹介することに努めたい。むろん、日本の対ロシア投資状況も、新データベースに依拠して、詳細なデータを紹介する。2011年の統計を取り上げるのにはだいぶ遅いタイミングになってしまったが、上述のような事情によるものなので、ご容赦願いたい。(服部倫卓)
データバンク
NIS諸国の外国投資受入統計
はじめに
このほど、CIS統計委員会から、『2007〜2011年のCIS諸国のファイナンス・投資・価格』と題する統計集が刊行された。この中に、ロシア・NIS諸国の外国投資受入状況に関する統計(各年のフローの数字)が掲載されている。数字は2011年までとやや古く、主要投資国や産業部門別の内訳が示されていないなど、かなり不充分な資料ではある。しかし、マイナーな国の統計は貴重であり、こうした共通の様式で一まとめになっているのは国情を比較するのには便利なので、以下でデータを表にまとめて紹介する。
なお、この資料にデータが出ているのは、ロシア、ベラルーシ、モルドバ、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、アゼルバイジャン、アルメニアだけであり、ウクライナ、ウズベキスタン、トルクメニスタンのデータはこの統計集には出ていない(ただしウクライナは同国の統計委が独自に直接投資受入残高の統計を定期的に発表しているが)。
ミニレポート
太平洋沿岸へのパイプライン完成
はじめに
シベリアの油田地帯からロシア極東の太平洋沿岸へ石油を送るパイプラインが全線完成し、昨年12月25日、開業式典がハバロフスクで行われた。3年前に先行開業した区間と合わせて、全長約4,700kmが1本のパイプラインでつながった。式典に中継で参加したプーチン大統領は「ロシア東部地域のインフラの可能性を飛躍的に広げる」、「国際市場にESPOという新しいブレンドが生まれた」との期待を述べた。
東シベリア・太平洋パイプラインシステム(ESPO)はプーチン大統領の極東重視を象徴するプロジェクトである。プーチン政権はダイナミックな成長が続くアジア太平洋地域に戦略の舵を切り、同諸国との関係を強化してきた。なかでも、ロシアの強みであるエネルギー資源輸出を、戦略のテコと位置づけ、パイプラインの建設を急ピッチで進めてきた。供給量はまだそれほど多くないが、アジア太平洋地域で存在感を示しつつある。原油の大半を中東産に依存する日本にとっても、新たな供給源と供給ルートの確保はエネルギー安全保障上、大きな意味をもっており、ESPOからの原油はサハリンからの石油や天然ガスと並んで、重要な供給源となっている。(齋藤大輔)
INSIDE RUSSIA
2020年までのロシアの鉱工業発展プログラム
はじめに
ロシア政府は2012年12月27日付の政府指令で、国家プログラム「鉱工業の発展とその競争力向上」を採択した。この文書は、今後のロシアの産業政策にとって根幹的な文書になると想定される。そこで以下では、このプログラムに関する基礎的な事実関係を整理しておくことにする。(服部倫卓)
ロシア極東羅針盤
ふらふらする極東開発
2012年12月、ザラトイログ湾にかかる橋をみていると、9月のAPECサミット後のウラジオストクは失速しているように思う。APEC前の勢いがどこかにいってしまったかのように現状維持の空気が漂う。APEC後の次期開発計画が中央政府内の対立でなかなか決まらないことも影を落とす。地元政府関係者などウラジオストクの人たちと話していると、大きな目標を成し遂げた後の燃え尽き感と次に何をしたらよいのかわからない先行き喪失感が同居しているかのようだ。つくったけど本当に必要だったのかと自問自答していることもあろう。真価が問われるのはAPEC後なのに、エンジンを失ったかのようだ。(齋藤大輔)
ロシア首長ファイル
ニジェゴロド州シャンツェフ知事
今月は工業が盛んな生産拠点としても、人口が多く、消費市場としても魅力のあるニジェゴロド州を率いるシャンツェフ知事を紹介する。(中馬瑞貴)
エネルギー産業の話題
ロシアの石油ガス企業の海外進出
ロシアの石油ガス会社による海外への進出プロセスが始まってから約20年が経過しましたが、今回は、ロシアの専門誌『石油ガス垂直統合』(2013.No.23-24)に掲載されたデータをベースに、1990年代半ばから今日に至るまでのロシアの石油ガス会社の海外進出の動きを時系列的に振り返ってみます。(坂口泉)
自動車産業時評
ロシアの商用車市場の状況
商用車市場は乗用車市場と比較すると規模が小さく目立たない存在ですが、堅調な伸びを示しています。さらに、今後も堅調さを維持する可能性が高く、それなりに重要な市場なのですが、 乗用車市場と比較すると圧倒的に情報量が少なくなっています。そこで、今回は、ロシアの商用車市場の2012年1〜9月期の全般的状況の他に、小型商用車、中・大型トラック、バスの各部門の現状について、できるだけ詳しくご紹介することとします。(坂口泉)
ロジスティクス・ナビ
バム鉄道とワニノ港
プーチン大統領が昨年秋の国家評議会で迅速な対応を要求したように、極東・シベリア地域の発展のためにはバム鉄道の輸送能力増強が必要との声が高まっています。バム鉄道の現状と、海への出口であるワニノ港、ソヴィエツカヤ・ガバニ港の役割について取り上げます。(辻久子)