ロシアNIS調査月報2013年8月号特報◆ROTOBOロシア経済ミッション |
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特報◆ROTOBOロシア経済ミッション |
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特集◆ロシア極東の経済と水産業 |
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調査レポート |
ロシア極東水産業の現状と発展戦略 |
調査レポート |
ロシア極東の水産ビジネスと日本 |
調査レポート |
動き出したロシア極東農業 ―衰退から成長産業へ― |
ルポルタージュ |
カムチャッカ半島の「密漁の村」を訪ねて |
データバンク |
2012年のロシア極東の経済統計 |
資料 |
シリーズ◆ロシアの産業政策(4) 国家プログラム「漁業の発展」 |
ロシア首長ファイル |
カムチャッカ地方イリューヒン知事 |
イベント・レポート |
サハリン・ビジネスフォーラム開催される |
イベント・レポート |
カムチャッカ地方投資可能性プレゼンテーション |
報告 |
ロシアNIS貿易会平成25年度定時総会報告 |
調査レポート |
輸出強化をめざすロシアの石炭産業 ―2012年の動きを中心に― |
ビジネス最前線 |
日露投資プラットフォームを活用する利点とは |
キーパーソンに訊く |
M.パンジキッゼ・グルジア外務大臣インタビュー 欧州回帰は不変の原則、ロシアとは直接対話を継続 |
研究所長随想 |
テロ対策を機に接近する米露外交の歴史 |
INSIDE RUSSIA |
ロシアの経済相交代と政策論争 |
モスクワ便り |
間近に見たメドヴェージェフ |
日ロ異文化遭遇の日々 |
五段階評価の「3」の意味するところ |
エネルギー産業の話題 |
ガスプロムとロスネフチの極東石化プロジェクト |
自動車産業時評 |
2012年のロシアのトラック生産・販売動向 |
ロジスティクス・ナビ |
バルト海水域のコンテナ物流 |
ドーム・クニーギ |
東浩紀編『チェルノブイリ・ダークツーリズム・ガイド』 |
業界トピックス |
2013年6月の動き ◆日本企業のロシアビジネスは新たなステージへ |
通関統計 |
2013年1〜5月の通関実績 |
イベント・レポート
ROTOBOロシア経済ミッション
―モスクワ・カルーガ・ヤロスラヴリ―
はじめに
ロシアNIS貿易会は、6月2日から9日にかけて、西岡喬会長を団長に、「ROTOBOロシア経済ミッション」を派遣した。西岡会長率いるロシア経済ミッションは、2009年に極東地域、2010年にウラル地域、2011年に沿ヴォルガ地域(タタルスタン共和国およびバシコルトスタン共和国)、2012年に再び沿ヴォルガ地域(ウリヤノフスク州)を訪問している。そして、5回目となる今回の西岡会長ミッションでは、首都モスクワと、それに隣接したカルーガ州およびヤロスラヴリ州を訪問した。従来のミッションは、どちらかと言えば、これから日系企業の進出が期待される地域に赴いたものであった。それに対し本年は、すでに日系企業が工場を建設し成功を収めている地域を選択し、その情勢を視察することに主眼があった。また、モスクワにおいては、当会の新たなパートナーである「実業ロシア」との共催で、「日露ビジネス対話」を開催した。
以下本稿では、今回の会長ミッションの概要と成果につき、事務局よりご報告申し上げる。(服部倫卓)
ロシア極東水産業の現状と発展戦略
ロシア科学アカデミー極東支部経済研究所
L.ヴォルコフ
極東の水産業はロシアの漁獲量の多くの部分(60%以上)をまかなっており、ロシア国民の食事におけるタンパク質の大部分を供給している。
1990年代初頭、制度面でのショック(企業の民営化、最適な企業規模の崩壊、規模効果の喪失など)と水産業全体への投資不足が水産業の衰退を加速させ、極東水産業の深刻な危機が始まった。なかでも、航海で活動するロシア漁船団の規模は破滅的なまでに縮小した。1990年代初頭までロシアの漁船団は19ヵ国の200海里経済水域内で操業し、その漁獲量は170万tだった。ところが、2003年には航海およびロシア以外の領海での漁獲量は50万7,000tにまで落ち込み、航海での漁獲量も33万tに減少した。航海およびロシア以外の領海での操業縮小は、さらに別の影響をもたらした。極東の水産業の状況が悪化するまでは漁獲量の60%前後がロシアの排他的経済水域外で獲られていたのに対し、1993年から現在に至るまで、漁獲量の70%以上がロシアの排他的経済水域内で獲られている。
ロシア極東の水産ビジネスと日本
開SN
河尾基
はじめに
公式統計や企業の公開情報、マスコミ報道ばかりをにらんでいてもなかなか実態が分からないことは、水産業に限らずあらゆる分野について言えるが、特にロシア極東の水産業ではその傾向が顕著であるように思われる。その主な原因は、ソ連崩壊後に極東の水産業が中央からの十分な支援を得られないまま幾多の中小企業に分裂し、独自の進化を続けたためだと言える。近年は次第に市場の寡占化が進んでいるとはいえ、業績を全面公開して上場を行うような大手もほとんどなく、部外者にとっては分かりにくい業界のままである。
本稿を執筆するにあたり、ロシア専門の水産商社のベテランの方々からもお話をお伺いし、多少とも全体の見通しが良くなるように心がけたが、行き届かない部分も多いことをご容赦頂ければありがたい。
動き出したロシア極東農業
―衰退から成長産業へ―
ロシアNI経済研究所 主任
齋藤大輔
はじめに
「ロシア極東で農業」。そんな言葉に違和感を覚える人がほとんどであろう。域内総生産の4分の1は資源採掘が占め、農業は3.7%にすぎない。日本の企業関係者が極東に抱くイメージは資源であり、しかも農業なんて頭の片隅にもないというのが正直なところであろう。この地でも農業が営まれていることについてはあまり知られていない。
そんなロシア極東農業にいま注目が集まっている。北海道銀行がアムール州で大豆とソバの生産を試験的に始めた。商社イービストレードは沿海地方でソバの生産に乗り出す。農業とまったく関係ないメーカーも動き出した。
「衰退産業から成長産業へ」。生産性向上の余地拡大、手つかずのままの肥沃な大地、日本への近さなど、日本企業関係者はそのポテンシャルに注目する。
厳しい気候のなかで、農業地帯は極東南部に限られ、ヨーロッパロシアやシベリアの大穀倉地帯と比べると見劣りするものの、それでも大豆はロシアNo.1の生産規模を誇り、一大産地のアムール州は、大豆を核とした産業育成を進める。世界的な食料価格の高騰を契機に、極東への農業投資にも関心が集まっており、ロシア政府は極東をアジア太平洋市場への輸出拠点と位置づけ、農産物輸出拡大の戦略を描く。
そこで本稿では、あまり知られていないロシア極東農業についてまとめた。なお、本文中の数字は特段の断りがない限り、数字が揃っている2010年のデータを使用する。
ルポルタージュ
カムチャッカ半島の「密漁の村」を訪ねて
「密漁の村」があると聞き、昨年10〜11月、カムチャッカ半島に行った。半島の西の端にあるウスチ・ボリシェレツクという村だ。そこは、「住民の半数以上が密漁をしている」(WWFカムチャッカ)という。
カムチャッカ半島は世界有数のサケの遡上地だ。北太平洋を泳ぐ野生のサケの3割がカムチャッカ由来とされる。そんなすばらしい環境なのに、村は貧しかった。貴重な資源であるサケも密漁に脅かされていた。(前田基行)
データバンク
2012年のロシア極東の経済統計
APECに沸いた1年だった。9月、ウラジオストクでAPECの首脳会合が開かれた。
ロシアは開催決定以来、会場施設やホテルの建設を急ピッチで進めてきた。総投資額は日本円で約2兆円。1ヵ所への集中開発としては異例だった。
ルースキー島に架かる橋は47ヵ月、ザラトイログ湾に架かる橋は49ヵ月。どちらも当初の完成予定から数ヵ月間遅れたが、それでも本番に間に合わせてきた。ルースキー島の会場施設も、空港近くに新設された旅客ターミナルも、空港と市中心部を結ぶ幹線道路もすべて見事なもので、その規模といい、着工から完成までのスピードといい、ロシアという国の勢いをそのまま象徴していた。
サミットは、目覚ましい経済成長で変貌を遂げたロシアを全世界にアピールする最高の舞台となった。極東重視を掲げるプーチン政権は、開発を加速させる方針だ。
資料
シリーズ◆ロシアの産業政策(4)
国家プログラム「漁業の発展」
はじめに
「産業政策」の対象を鉱工業と考えれば、漁業はその範疇からやや外れることになるのかもしれない。ただ、せっかくの水産業の特集なので、ぜひ本シリーズで漁業の国家プログラムも紹介してみたいと思い立った次第だ。ロシア連邦政府は2013年3月7日に、国家プログラム「漁業の発展」を採択しているので、今回はこれを取り上げてみたい。
さて、編集部では、この国家プログラムの主要部分を翻訳したものの(重要性が低いと思われる箇所は割愛)、残念ながら紙幅の制約により、翻訳テキストを雑誌に掲載することは断念せざるをえなかった。そこで、翻訳テキストは当会ウェブサイトに掲載した。
ロシア首長ファイル
カムチャッカ地方イリューヒン知事
はじめに
2013年4月、カムチャッカ地方知事率いる政府代表およびビジネス代表の一行が日本を訪れ、東京でプレゼンテーションを開催した。極東地域に位置するカムチャッカ地方は、ユネスコの自然遺産に指定された火山群、多種多様な動植物、スキーや温泉などの観光資源にあふれるロシア有数の観光地であり、天然資源、木材、水産なども豊富な地域である。今号の極東・水産特集と関連させ、本稿ではイリューヒン・同地方知事に焦点を当てる。(中馬瑞貴)
イベント・レポート
サハリン・ビジネスフォーラム開催される
はじめに
4月24日、ザ・プリンス パークタワー東京において、「サハリン経済・投資ポテンシャル ビジネスフォーラム」が開催された。主催はロシア・サハリン州の行政府であったが、ロシアNIS貿易会ではこの行事を後援した。
以下では、全体会合におけるA.ホロシャヴィン・サハリン州知事の基調報告の内容を紹介するとともに、主要分科会の模様をお伝えする。(服部倫卓)
イベント・レポート
カムチャッカ地方投資可能性プレゼンテーション
はじめに
4月16日、東京のホテルニューオータニにおいて、「カムチャッカ地方への投資可能性プレゼンテーション」が開催された。ロシアNIS貿易会は、カムチャッカ地方行政府と共同で、この催しを共催した。以下では、V.イリューヒン知事の基調講演を中心に、同プレゼンテーションの模様を簡略に紹介する。(服部倫卓)
ロシアNIS貿易会平成25年度定時総会報告
はじめに
一般社団法人ロシアNIS貿易会は東京の如水会館にて、6月11日に平成25年度定時総会を開催いたしました。「平成24年度事業報告」、「公益目的支出計画実施報告書」の報告、第1号議案「平成24年度計算書類等」、第2号議案「定款の一部改正」、第3号議案「役員選任の件」の承認がなされました。
以下では総会において報告された平成24年度事業報告を掲載するとともに、総会における西岡会長の挨拶を掲載いたします。
輸出強化をめざすロシアの石炭産業
―2012年の動きを中心に―
ロシアNIS経済研究所 部長
坂口泉
はじめに
ロシアの石炭分野の生産能力は現時点で、すでに4億t/年を超えているが、今後、さらに増加する可能性が高い。一方、国内需要は伸び悩んでおり、将来的にも大きな伸びは期待できない。国内需要だけに期待していては、設備過剰になる危険性が極めて高く、大手石炭会社の多くは、日本、中国、韓国をはじめとするアジア諸国への輸出の強化を軸に、自社のビジネスの拡大をめざしている。
たとえば、ロシアの最大手石炭会社であるSUEKは、選炭工場の新設や極東の石炭ターミナルの能力増強により、品質の高い一般炭のアジア市場への輸出を増やすことを最優先課題として掲げている。また、メチェルはサハ共和国のエリガ炭鉱の開発を促進し、良質の原料炭の中国、韓国、日本等への供給量を増やすことを目論んでいる。さらにバイサロフという実業家が率いるトゥヴァ・エネルギー産業会社は、アジア市場への原料炭の輸出を視野に入れたエレゲスト炭鉱開発プロジェクトに取り組んでいる。
本稿では、このようなロシア極東地方経由でのアジア諸国への石炭輸出強化の動きに注目しながら、2012年のロシアの石炭分野を回顧する。
ビジネス最前線
日露投資プラットフォームを活用する利点とは
轄総ロ協力銀行
山下総一郎さん
はじめに
安倍総理大臣が日本の国家元首として10年ぶりにロシアを訪問していた4月29日、株式会社国際協力銀行(JBIC)はロシアの国営銀行であるロシア開発対外経済銀行およびロシア直接投資基金との間で、日露投資プラットフォームの設立に関する覚書を締結しました。同プラットフォームは日本企業が展開するロシアビジネス、あるいは参画する事業に対して3機関が支援を行うための枠組みです。直接資金供与を行うファンドとは異なり、ひとつの案件に各機関がそれぞれに出資や融資などを行う(事業規模は日ロ合計で10億ドル規模)というものですが、具体的にはどういう仕組みで、日本企業にとってはどんなメリットがあるのか。JBICで全般的な窓口役を担われている山下さんにお話を伺いました。(芳地隆之)
キーパーソンに訊く
M.パンジキッゼ・グルジア外務大臣
欧州回帰は不変の原則、ロシアとは直接対話を継続
はじめに
パンジキッゼ外務大臣は、グルジアと日本との関係強化を目的に、5月21日から24日まで初来日されました。グルジアでは昨年10月に議会選挙が行われイワニシビリ現首相率いる野党連合「グルジアの夢」が、サーカシビリ大統領率いる「統一国民運動」を破り、150議席のうち半数以上の85議席を獲得して勝利しました。パンジキッゼ外相には、欧州連合(EU)や北大西洋条約機構(NATO)への加盟交渉の現状、前政権下で発生した南オセチア紛争により外交関係が断絶しているロシアとの関係修復の試みなど、新政権の外交政策についてお話いただきました。また、日本の印象や日本との関係の今後の展望、日本企業への期待などについても語っていただきました。(岡田邦生)
INSIDE RUSSIA
ロシアの経済相交代と政策論争
はじめに
6月24日、ロシア連邦政府で、経済発展相の交代があった。D.メドヴェージェフ現内閣が発足した2012年5月以来、その座にあったA.ベロウソフ大臣が退任し、同氏は経済問題担当の大統領補佐官に転身した(経済問題担当の大統領補佐官は、E.ナビウリナ女史が中銀総裁に就任したことに伴い、空席になっていた)。そして、ベロウソフに代わり、新経済相に任命されたのが、これまで中銀の第一副総裁を務めてきたウリュカエフ氏であった。
本稿では、今回の経済相人事の意味合い、その背景にあった政策論争について考察し、今後のロシアの経済政策および経済発展省の体制について占うことにする。(服部倫卓)
モスクワ便り
間近に見たメドヴェ−ジェフ
はじめに
モスクワで生活をはじめて1年半が過ぎた。この連載の話は、赴任前からあったが、そろそろ仕事や生活にも慣れてきただろうということで再度お呼びがかかった。
ということで、唐突だが、本号より「モスクワ便り」を始めることにした。あまり大上段に構えると長続きしないと思うので、モスクワでの仕事や日常を通じて、見たり、聞いたりしたことを中心に雑感を述べていきたい。いわばブログのようなものである。
第1回は、メドヴェージェフ首相を間近でみたという話からはじめよう。(中居孝文)
エネルギー産業の話題
ガスプロムとロスネフチの極東石化プロジェクト
ロシアの石油ガス専門誌『石油ガス垂直統合』の最新号(2013年第11号)に極東地方においてガスプロムとロスネフチが取り組んでいる石油ガス化学関連プロジェクトを紹介する記事が掲載されました。今回は、その記事をもとに、極東地方の石油ガス化学関連プロジェクトの現状と今後の展望を紹介します。(坂口泉)
自動車産業時評
2012年のロシアのトラック生産・販売動向
ロシアの自動車専門誌『アフトビジネス』(2013年第1号)に2012年のロシアのトラック市場の概況を紹介する記事が掲載されました。今回は、その記事を参照しながら、2012年のロシアのトラックの生産・販売、各メーカーの動き、輸入の状況等についてご紹介します。(坂口泉)
ロジスティクス・ナビ
バルト海水域のコンテナ物流
サンクトペテルブルグ港を核とするバルト海水域では中長期的にコンテナ貨物の増加が確実視され、ターミナルの新増設計画が目白押しです。同水域におけるコンテナ物流の動向と施設整備計画を紹介します。(辻久子)