ロシアNIS調査月報2014年7月号特集◆急変するロシア経済の環境 |
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特集◆急変するロシア経済の環境 |
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講演録 |
ロシア経済と日ロ経済関係の行方 ―第2回ROTOBO月例報告会より― |
ビジネス最前線 |
ロシア経済の実相と求められる競争の環境 |
INSIDE RUSSIA |
逆風下のペテルブルグ国際経済フォーラム |
調査レポート |
価格低迷に苦しむロシアの石炭産業 ―2013年の動きを中心に― |
調査レポート |
中国内陸発中央アジア・ロシアへの鉄道輸送路 |
調査レポート |
ウクライナ大統領選とポロシェンコ |
ルポルタージュ |
極寒のシルクロードを走る ―カザフ・中国国境鉄道― |
データバンク |
2013年のロシア極東の貿易 |
データバンク |
ロシアのネット販売サイト・ランキング |
研究所長随想 |
ロシア演劇に多くを学んだ日本の新劇 |
モスクワ便り |
外交の舞台となった旧サッヴァ・モロゾフ邸 |
ロシア極東羅針盤 |
極東のタンデム |
ユーラシア産業紀行 |
ロシア名産品チタンのヴェルフニャヤサルダ |
エネルギー産業の話題 |
クラスノヤルスク地方の石油産地 |
自動車産業時評 |
2013年のロシア中古車市場 |
ロジスティクス・ナビ |
日ロ貿易の物流ルート |
中央アジア情報バザール |
トルクメニスタン訪問記 |
日ロ異文化遭遇の日々 |
徹底考察、ロシア人の無賃乗車 |
業界トピックス |
2014年5月の動き ◆日ロのビジネス交流に貢献する五大洋 |
通関統計 |
2014年1〜4月の通関実績 |
講演録
ロシア経済と日ロ経済関係の行方
―第2回ROTOBO月例報告会より―
- ロシアのマクロ経済状況(金野雄五)
- ロシアの産業と市場の動向 ―基幹産業である石油ガス分野を中心に(坂口泉)
- 極東開発の展望(齋藤大輔)
- 今後の日ロ経済関係を展望する(遠藤寿一)
はじめに
ロシアNIS貿易会ではこの4月に、会員企業の皆様向けの新たな情報提供サービスとして、「ROTOBO月例報告会」を立ち上げました。当会のスタッフを中心に、また外部の専門家も講師として適宜お招きして、会員の皆様限定で報告会を定期開催していくものです。
5月30日、第2回目の報告会を、東京証券会館にて開催しました。「ロシア経済と日ロ経済関係の行方」と題する、拡大版の報告会です。以下では、同報告会における4名の報告者の講演要旨をお届けいたします。
ロシアでは、外的環境の悪化などから、2013年に成長率が鈍化し、同年のGDPは1.3%の伸びに留まりました。それに加え、2014年に入ってウクライナ問題をめぐって主要先進国との関係が悪化し、ロシアに対する経済制裁の動きが広がっています。果たして、ロシア経済はどこに向かい、日本との経済関係はどのように動いていくのでしょうか。今回の報告会では、4名の報告者が、それぞれの角度から、この問題に迫りました。
当日は、多数のご来場をいただき、お礼申し上げます。今後も、会員の皆様に関心を持っていただけるようなテーマを適宜選び、報告会を続けてまいりますので、どうぞご期待ください。
ビジネス最前線
ロシア経済の実相と求められる競争の環境
三菱商事梶@天然ガス事業本部 ロシア天然ガス事業部
シニアアドバイザー 酒井明司さん
はじめに
1973年に三菱商事へ入社された酒井さんは、社内の語学研修制度に手を上げて、翌年から2年間、ロンドン大学およびモスクワ大学でロシア語を学びました。日本の大学におけるロシア語学習のバックグラウンドのない初めてのケースだったそうです。帰国後はソ連における化学プラントの仕事などに携わり、1986〜1990年のペレストロイカからソ連解体前夜まで、1996〜2002年の金融危機とプーチンの大統領就任というソ連/ロシアが大きく変化するなか、2度のモスクワ駐在を経験。その間、インド、中国、パキスタンなどを担当される時期もありましたが、現在のロシア天然ガス事業部にいたるまで、ソ連/ロシア経済の40年近くの歴史を、ビジネスを通してご覧になってこられました。それゆえ、酒井さんのお話は、大局的な視点と実務者としてのそれの双方を押さえた、通説を覆すような考察や指摘も含む、今号のテーマに相応しい内容となりました。(芳地隆之)
INSIDE RUSSIA
逆風下のペテルブルグ国際経済フォーラム
はじめに
5月22〜24日、ロシアの北都サンクトペテルブルグにおいて、恒例のペテルブルグ国際経済フォーラムが開催された。同フォーラムは、ロシアに数多くある経済・投資フォーラムの中でも最高の格式を誇り、今回で18回を数える。外国企業がロシア・プロジェクトをお披露目する晴れ舞台としても定着している。
しかし、2014年のフォーラムは、まったく様相が違った。折からのウクライナ危機、ロシアによるクリミア編入という事態を受け、強烈な逆風下での開催となったのである。(服部倫卓)
価格低迷に苦しむロシアの石炭産業
―2013年の動きを中心に―
ロシアNIS経済研究所 部長
坂口泉
はじめに
石炭の国際価格の上昇という追い風を受けロシアの各石炭会社は10年ほど前から順調に業績を伸ばしていた。しかし、2013年は一転して石炭価格の低迷という逆風に見舞われることとなった。
シェールガス革命の影響で米国市場において余剰となった米国産やコロンビア産の石炭が欧州市場やアジア市場に大量に流入した結果、2011年初頭時点で1t当たり130ドル近くに達していた一般炭の国際価格は、2013年夏には74ドルにまで落ち込んだ(欧州の港でのFOB価格)。
また、原料炭の方も、オーストラリアの洪水などの影響で2011年の初め時点では300ドル以上にまで上昇していた価格が、2013年にはその約半分の水準にまで落ち込んだ。2013年後半から一般炭に関しては価格回復の兆しが見え始めているが、原料炭の価格の低迷は2014年に入ってからも続いている。
国際価格の低迷は輸出への依存度が高いロシアの各石炭会社の財務状況の悪化につながり、SUEKクズバスやユージヌィ・クズバスをはじめとする複数の大手石炭会社が2013年に赤字に転落した。石炭分野の設備投資額も減少し、2012年には1,169億ルーブルに達していたものが、2013年は35.8%減の750億ルーブルにとどまった(ロシア連邦エネルギー省発表の数字)。
本稿では、2013年のロシアの石炭分野の概況の他、価格低迷という逆風の中での各大手石炭会社の動きや、状況改善の切り札のひとつとして位置付けられているアジア太平洋諸国方面への輸出強化の動きなども紹介する。
中国内陸発中央アジア・ロシアへの鉄道輸送路
明治大学 商学部 専任講師
町田一兵
はじめに
中国と中央アジア・ロシアは国土を接する隣国同士であり、2008年のリーマンショック以降、欧米との貿易が横ばいに留まり、それまでの経済成長を維持するため、内需拡大の一環として、中国内陸部に経済発展の重心をシフトさせた。政府は鉄道・道路を中心に国内の交通インフラ整備に力を入れ、その結果、交通関連インフラの整備が急速に進み、それをベースに国境を越え、中央アジア・ロシアを含む隣国との強化を図ろうという動きが起きている。
その一つの理由として、日本や東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国との領海紛争が続くなか、これまでの国土安全や地域安定を中心に中央アジア・ロシアと作り上げた国際組織をベースに、海路を経由しない陸上国際輸送ルートの構築によるリスクヘッジが考えられる。
このほか、豊富な資源や鉱産物を持つ中央アジア・ロシアは中国にとって魅力的な輸出先であると同時に、経済成長で必要とするエネルギーや鉱物を調達する貴重な存在である。
新たな国際戦略を展開する中国は、交通面でも中央アジア・ロシアへのアプローチを一層強化する方針である。
ウクライナ大統領選とポロシェンコ
ロシアNIS経済研究所 次長
服部倫卓
はじめに
V.ヤヌコーヴィチ大統領が国外逃亡したことで政権が崩壊していたウクライナで、新大統領を選出する選挙の投票が5月25日に実施された。その結果、実業家で閣僚経験もあるP.ポロシェンコ氏が過半数を得票し、第1回投票で当選を決めた。ポロシェンコは6月7日に就任式を挙行し、新政権をスタートさせている。
本稿では、今回の大統領選の概況について整理するとともに、ポロシェンコ氏の人物像や政見を紹介する。また、今回の選挙を特異なものとする原因となったドンバス地方の分離主義運動についても、併せて触れる。
ルポルタージュ
極寒のシルクロードを走る
―カザフ・中国国境鉄道―
2014年2月、中央アジアから中国へ鉄道でめざすことにした。ロシア極東から中国への国境通過の様子は何度か紹介したことがある。今回はカザフスタンのアルマトイから中国西部のウルムチ(烏魯木斉)へ鉄道で国境を越えてみた。(齋藤大輔)
データバンク
2013年のロシア極東の貿易
極東税関の通関統計によると、2013年のロシア極東地域の貿易高は、輸出が277億ドル、輸入が122億ドル、輸出入の総額は399億ドルとなった。収支は155億ドルの黒字であった。前年比では、輸出が6.8%、輸入が19.0%、総額では10.2%の増加となった。
データバンク
ロシアのネット販売サイト・ランキング
はじめに
ロシアのコメルサント出版が発行している『セクレト・フィルムィ(企業の秘密)』誌の2014年5月号に、2013年版のロシア100大ネット販売サイト・ランキングが掲載されているので、今回はこの資料を抜粋してご紹介する。
今回ランキングの対象となったサイトはロシアのインターネットにおいてネット販売事業を展開している1,500社のサイトである。各サイトは2013年の月平均売上高によって格付けされており、月平均売上高は各サイトの月平均の注文数と顧客単価によって求められている。
それに加え、サイトの使いやすさを示すユーザビリティ指数も併せて掲載されている。このユーザビリティ指数とは、サイトの立ち上がりの速さ、商品を選ぶまでの手続きの数、注文を確定するまでの手続きの数、注文を届ける方法の多様性、支払い方法の多様性を総合的に見て評価されている。
なお、雑誌には掲載されていないが、同誌のHPには101〜196位までのネット販売サイト・ランキングも別途掲載されているので、以下ではそれも併せてご紹介する。なお、HPより抜粋したランキングには、ユーザビリティ指数は記されていない。
モスクワ便り
外交の舞台となった旧サッヴァ・モロゾフ邸
はじめに
5月29日、旧サッヴァ・モロゾフ邸である外務省迎賓館で、スヴェルドロフスク州のプレゼンテーションが行われ、招待されたので参加してきた。旧サッヴァ・モロゾフ邸は、一般には公開されておらず、特別な機会がなければ、中に入ることはできない。そこで今回は、この迎賓館で行われたイベントに関連して思いつくことを書いてみることにしたい。(中居孝文)
ユーラシア産業紀行
ロシア名産品チタンのヴェルフニャヤサルダ
はじめに
ロシアでは産業の付加価値を上げ、資源依存経済から脱却することが課題となっているが、ロシアの工業製品は一般的には評価が高いとは言えない。しかし、金属の中でも精錬、加工の難しいチタンは、ロシアが高い競争力を持つ品目として知られている。生産量でこそ中国に抜かれているものの、ロシアのチタン産業は、航空機などの高品質を要求される分野に利用できるグレードのチタンを製造でき、最もコストパフォーマンスが高いものとみなされている。今回は、ロシアのチタン産業の中心地、ヴェルフニャヤサルダについて紹介する。(渡邊光太郎)
エネルギー産業の話題
クラスノヤルスク地方の石油産地
ロシアでは石油資源が枯渇傾向にあり、多くの産油地域で生産が減少し始めていて、増産余力を有する産油地域の数は年々少なくなっています。今回は、ロシアに残された数少ない増産余力を有する地域のひとつである東シベリアのクラスノヤルスク地方の石油分野の現状をご紹介します。(坂口泉)
自動車産業時評
2013年のロシア中古車市場
ロシアの自動車専門誌『アフトビジネス』に2013年のロシアの中古車(乗用車と商用車)市場を総括する記事が掲載されましたので、今回はその記事を参考に、2013年のロシアの中古車市場の状況をご紹介することとします。(坂口泉)
ロジスティクス・ナビ
日ロ貿易の物流ルート
本誌5月号で紹介されたように、2013年の日ロ貿易の総額は過去最高額を記録しました。輸送貨物量も拡大しています。本稿では品目ごとに、どのような物流ルートが利用されているかについて最近の傾向を紹介します。(辻久子)
中央アジア情報バザール
トルクメニスタン訪問記
はじめに
2014年5月16日、トルクメニスタンの首都アシハバードで第11回日本トルクメニスタン経済合同会議が開催された。本合同会議に合わせて筆者は約1年半ぶりにトルクメニスタンを訪問した。ご存じの通り、中央アジア・コーカサス諸国の中で最も独裁色が強く、統制が厳しいと言われる同国については統計や法令など経済・ビジネス関係の発展に必要な情報を入手しづらく、データを入手できたとしてもその信憑性に疑問を感じることがある。
そこで今回は、トルクメニスタンの現状について同国訪問の見聞をもとに紹介する。統計のような数値データではないので、私見が含まれていることを理解した上で、本稿をご拝読いただきたい。(中馬瑞貴)