ロシアNIS調査月報2014年9-10月号特集◆挑戦するロシア極東 |
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特集◆挑戦するロシア極東 |
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キーパーソンに訊く |
ロシアにとって極東開発は21世紀の国家的優先課題 |
調査レポート |
ロシア極東の新型特区 ―大転換かゲームか― |
調査レポート |
ロシア極東北部の経済開発 ―サハ・カムチャッカ・マガダン・チュクチ― |
ビジネス最前線 |
知られざる地方の良品をロシアに紹介したい |
出張・駐在の達人 |
日ロ間の航空事情と極東 |
ロシア極東羅針盤 |
動くロシア・北朝鮮関係 |
ロジスティクス・ナビ |
ザルビノ港に開発の足音 |
ロシア首長ファイル |
ユダヤ自治州ヴィンニコフ知事 |
調査レポート |
2013年のロシアの貿易統計 |
データバンク |
2014年1〜6月の日ロ貿易 ―輸出減と輸入増が続く― |
研究所長随想 |
シェワルナゼ元ソ連外相の死 |
INSIDE RUSSIA |
ソチ五輪から2018年ワールドカップへ |
モスクワ便り |
Doing Businessにみるロシアの投資環境 |
ユーラシア産業紀行 |
ロシア航空機開発の中心地ジュコフスキー市 |
エネルギー産業の話題 |
外国の製油部門に進出するロシア石油会社 |
自動車産業時評 |
中国ブランド車のニューウェーブ |
ウクライナ情報交差点 |
EU連合協定のウクライナ経済への恩恵 |
中央アジア情報バザール |
中央アジアの2014年上半期経済動向 |
日ロ異文化遭遇の日々 |
素直に質問に答えないロシア人 |
ドーム・クニーギ |
『現代思想』2014年7月号【特集】ロシア |
業界トピックス |
2014年7月の動き ◆中小企業の視点から見た極東ビジネス |
通関統計 |
2014年1〜6月の通関実績 |
キーパーソンに訊く
ロシアにとって極東開発は21世紀の国家的優先課題
―A.ガルシカ・ロシア連邦極東発展大臣インタビュー―
はじめに
極東発展省は2012年5月に新設された省です。ガルシカ大臣は民間から抜擢され2013年9月に二代目の大臣としてその職に就かれました。それに伴い、省の幹部人事も一新され、若い専門家集団によって極東発展戦略の抜本的見直しが開始されました。従来の極東開発政策は、中央政府による公共投資を中心とするものでしたが、新指導部はこうした手法ではなく、ロシア極東に周辺地域で最良の投資及びビジネス環境を整えた新型特区を設置し、そこに内外の投資を呼び込み、輸出志向型の産業を発展させるという全く新しい手法を提案しました。ガルシカ大臣には、新たな極東開発戦略の概要及び同戦略の実行への自信、また、日本企業への期待などをお聞きしました。(岡田邦生)
ロシア極東の新型特区
―大転換かゲームか―
ロシアNIS経済研究所 主任
齋藤大輔
はじめに
最近、ロシアが日本や韓国などにロシア極東への投資を求めてくるようになった。プーチン大統領のアジアシフトのおかげで、ロシア極東にかつてない注目が集まっている一方、ビジネス環境の悪さから投資が進まないことが背景にある。ロシア極東はこれまで投資の呼び込みに熱心ではなかった。むしろ、投資が少ないことを日本や韓国のせいにすることもあった。それがいま、手のひらを返すように投資を呼びかける。
プーチン政権が新たな極東開発の柱として、地域を絞って大胆な優遇税制と規制緩和を導入して国内外から投資を呼び込み、アジア太平洋への輸出拡大によって経済成長に結びつける新型特区(先進経済発展区)構想を打ち出してから10ヵ月がたつ。この間、極東発展省は、特区の候補地を十数ヵ所まで絞り込み、優遇税制等を規定した法案を議会に提出するところまでこぎつけた。だが、その構想は机上の域を出ていない。果たして極東を大きく変えるほどのインパクトを生み出すのか。あるいは、モスクワのインテリが頭の中で考えたシミュレーションゲームに終わるのか。同構想については、これまでも本誌の「ロシア極東羅針盤」というコーナーで取り上げてきた。そこで本稿では構想の詳細と課題についてまとめた。
ロシア極東北部の経済開発
―サハ・カムチャッカ・マガダン・チュクチ―
ロシア科学アカデミー極東支部経済研究所
D.ヴィシネフスキー A.デミヤネンコ O.プロカパロ
はじめに
ロシア極東北部は、その規模だけでなく、様々な自然ファクターに左右される多様な経済活動実施条件でも際立っている。このため、このファクターについては詳細に検討せず、極東北部の域内、すなわち北端(Extreme North)(亜北極地帯)、極北(Far North)、近北(Near North)において緯度別マクロ経済地帯を形成するとき(地図)、この影響が非常に端的に現れることを確認したい。経済活動実施条件の観点から比較的均質であるこれらの各地帯は、何よりも地域経済運営及び住民分布の点で、他所とは大きく異なっている。
本論文では、ロシア極東北部の域内にある連邦構成主体及びマクロ経済地帯のレベルでの地方経済システムの形成における特徴とその発展見通しの解明に、力点が置かれている。
我々執筆者は本論文を書くにあたり、P.ミナキル所長の指導のもとロシア科学アカデミー極東支部経済研究所で作成された極東連邦管区の中長期的発展予測に関する長年の調査結果、また国家統計機関の資料を中心に参考とした。
ビジネス最前線
知られざる地方の良品をロシアに紹介したい
開SN 代表取締役
田代雅章さん
田代さんのロシアとの出会いはソ連時代の末期、新潟港を出た観光船に乗って降り立ったウラジオストクの町でした。長らく外国人の立ち入りが禁じられていた軍事都市を訪問したのは、ご本人の好奇心からでしたが、ソ連解体後、北東アジアにおける経済交流の活発化を目指す「環日本海経済圏」構想に共感し、1993年4月に新潟市でJSN(Japan Sea Network)を設立。ロシア極東とのビジネスを始められました。現在、本社は東京に構えていますが、田代さんの目は、大手メーカー製品のような知名度はないものの、地方でつくられている良質な商品に向けられており、インタビューでは日ロの地域間交流に寄せる思いも伝わってきました。(芳地隆之)
出張・駐在の達人
日ロ間の航空事情と極東
この3年間でロシアでは大規模な航空再編が行われ、アエロフロート・ロシア航空を中核としたアエロフロートグループが急激にシェアを伸ばしている。ロシア国内線についてもアエロフロートグループ全体で30%以上のシェアを持っているが、第2位のS7航空が17%、第3位のUTエアが16%のシェアを持っており、国際線より激しい競争が行われている。大規模な航空再編以降、ロシア国内においてはアエロフロートグループが運航する路線に対して激しい価格競争を仕掛ける動きが顕著となっている。また、アエロフロート以外の航空会社が運航していない路線に対し、競合他社は許認可取得のため行政訴訟を起こすなどして強行に参入し、競争を仕掛けるケースも見受けられる。このような競争はサービスの質を高めると共に価格の下落を引き起こすため、利用者にとっては大変有益だ。また、近年はこの競争が日本就航路線でも見受けられるようになった。(花岡健治)
ロシア極東羅針盤
動くロシア・北朝鮮関係
北朝鮮北東部の港湾都市・ラソン特別市で、ロ朝合弁の輸出ターミナルが完成し、2014年7月18日、ロシア鉄道のヤクーニン社長や北朝鮮の全吉寿鉄道大臣が出席して開業式典が羅津港(ラジン港)で行われた。両国は昨年9月に、ロシア極東のハサンと羅津を結ぶ鉄道の改修を終えており、これでロシアが北朝鮮の港を利用して自国の資源を海外に輸出する態勢が整ったことになる。(齋藤大輔)
ロジスティクス・ナビ
ザルビノ港に開発の足音
ザルビノ港が先進経済発展区の候補に挙げられています。同港の開発に手を挙げているのは運輸、通信、鉱物などの部門で急成長中のスンマ・グループです。ザルビノ港の歴史的背景及び期待されるスンマの「大ザルビノ港」開発構想を取り上げます。(辻久子)
ロシア首長ファイル
ユダヤ自治州ヴィンニコフ知事
はじめに
今回は、極東特集に合わせて、極東連邦管区に属するユダヤ自治州の知事を紹介する。ロシアにおいて民族名称を冠する共和国や自治管区はいくつもあるが、「自治州」と称される構成主体はたった1つ、ユダヤ自治州だけである。モスクワから約8,000qも離れた地にあるこの地域のことはあまり一般的には知られていない。しかし、それもそのはず。民族名称地域とはいえ、冠名民族であるユダヤ人は常に少数派で、年々減少し、現在では自治州の総人口の1%程度に過ぎない。一方で、この地域にはシナゴーグがあり、ユダヤの文化やイディッシュ語を学ぶ学校もある。
他の構成主体とは異なる歴史や文化を持つこのユダヤ自治州を統治しているのはアレクサンドル・ヴィンニコフ知事だ。今回はヴィンニコフ知事について紹介するだけでなく、ユニークな歴史・文化を持つユダヤ自治州についても合わせて紹介したいと思う。(中馬瑞貴)
2013年のロシアの貿易統計
ロシアNIS経済研究所 次長
服部倫卓
はじめに
ロシア連邦関税局が発行する『ロシア連邦外国貿易通関統計』の2013年年報が刊行され、2013年の同国の貿易動向に関する詳しいデータが明らかになった。そこで本稿では恒例により、『ロシア通関統計』およびその他の資料を駆使し、同国の最新の貿易統計を図表にまとめて極力詳細に紹介するとともに、データに関する解説をお届けする。
データバンク
2014年1〜6月の日ロ貿易
―輸出減と輸入増が続く―
はじめに
日本財務省から、2014年上半期(1〜6月期)の貿易統計が発表されたことを受け、当会では上半期の日本とロシア間の貿易に関し、輸出入商品構成をまとめたので、早速これを紹介したい。すでに『ロシアNIS経済速報』(2014年8月号5日号、No.1635)に表を掲載済みだが、ここに再録する。なお、今号の巻末に、ロシア以外のNIS諸国との輸出入動向も掲載しているので、あわせてご参照いただきたい。
INSIDE RUSSIA
ソチ五輪から2018年ワールドカップへ
はじめに
昨今では、世界的なスポーツイベントを、BRICSをはじめとする新興国が誘致するケースが増えている。本年はロシアのソチで冬季五輪があったし、サッカーのFIFAワールドカップ(W杯)がブラジルで開催された。そして、4年後の次回W杯は、ロシア大会である。
今回は、ロシアの国家発展、世界の中の地位といった観点から、これらのスポーツイベントにつき総括・展望する。(服部倫卓)
モスクワ便り
Doing Businessにみるロシアの投資環境
はじめに
ウクライナ情勢やマレーシア機撃墜事件を巡って、ロシアに対する強硬論が欧米や日本の報道等で強まりつつある。こうした強硬論は、客観報道から離れて、何やらエモーショナルなものすら感じられ、個人的には、どうも薄気味の悪い、嫌な感じがしている。我々は、こういう時こそ時流に流されず、冷静にロシアを観察しなければならないと思う。ということで、今回は、ロシアのビジネス・投資環境についての話題を、今だからこそあえて取り上げることとしたい。(中居孝文)
ユーラシア産業紀行
ロシア航空機開発の中心地ジュコフスキー市
はじめに
ジュコフスキー市はモスクワ郊外の都市で、ソ連時代から航空機開発の中心地であったことで知られている。航空関連研究施設、企業の拠点が集まり、現在でも航空機開発活動には欠くことのできない場所である。今回は、ジュコフスキー市とともに、訪問することができた同市の航空機部品サプライヤーについて紹介する。(渡邊光太郎)
エネルギー産業の話題
外国の製油部門に進出するロシア石油会社
ロシアのいくつかの大手石油会社は、原油の輸出先の確保や、先端技術へのアクセスを主要な目的として、1990年代の末ごろから欧州の製油所の買収を開始し、現在は、多数の製油所を影響下に置くことに成功しています。また、最近は、アジア諸国の製油部門にも強い関心を示し始めています。今回は、ロスネフチ、ガスプロムネフチ、ルクオイルの3社を取り上げ、各社の傘下に入っている外国製油所の現状、ならびに、それらの会社のアジアでの動きを紹介します。(坂口泉)
自動車産業時評
中国ブランド車のニューウェーブ
ロシア市場では中国車が一定のプレゼンスを確保していますが、認知度が高いのはLifan、Geely、Great Wall、Cheryの「4強」だけで、残りの中国ブランドの存在感は非常に薄くなっています。そのような状況の中、4強以外の中国メーカーも最近になり、ロシア市場でのプレゼンスの確立を目指し活発な動きを示し始めています。今回は、4強の現状と、ロシア市場への新規参入を目指す中国メーカーの戦略を紹介します。(坂口泉)
ウクライナ情報交差点
EU連合協定のウクライナ経済への恩恵
はじめに
先月のこのコーナーで、6月27日に調印されたEUとウクライナの連合協定についてお伝えした。筆者はその後、関税率の問題を中心に、連合協定の中身の分析を進めたので、今回はそれを報告したい。結論から言えば、協定によって生じるウクライナにとっての関税上のメリットは、喧伝されているほど大きなものとは思われない。(服部倫卓)
中央アジア情報バザール
中央アジアの2014年上半期経済動向
はじめに
2014年7月に入って中央アジア各国では2014年上半期の社会・経済発展に関する統計データが公式に発表されている。「公式に」とは各国の統計機関が記者会見を開いて公表するケースと政府の会合で担当者もしくは大統領自ら公表するケースがある。
当会では毎年6月号で前年のロシアNIS各国の社会・経済データを紹介しているが、その際には基本的にCIS統計委員会が発表する統計集の各国の数値を載せている。ただし、トルクメニスタン、ウズベキスタン、グルジアなどについては記載がないため、当該国の統計機関のデータを引用している。程度の差はあれ、各国の統計機関のHPも年々充実してきているが、掲載までに時間がかかる。
そこで、今回は「最新のデータ」ということで、中央アジア5ヵ国で統計機関や政府が発表した社会・経済指標と若干のコメントを各国報道から抜粋してお伝えする。(中馬瑞貴)