ロシアNIS調査月報2014年11月号特集◆ロシア自動車市場の |
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特集◆ロシア自動車市場の期待と不透明感 |
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調査レポート |
ロシアにおける自動車現地生産の動向 ―逆風に挑む完成車メーカー― |
調査レポート |
自動車部品産業のウリヤノフスク州進出の可能性 |
ビジネス最前線 |
ロシアでのトラック生産・販売体制の構築 |
ビジネス最前線 |
ロシアでのプレス部品製造 ―自動車部品製造の成功事例― |
データバンク |
2014年上半期のロシア乗用車市場 ―加速する販売不振― |
ミニ・レポート |
極東中古車ビジネス2014 |
ロジスティクス・ナビ |
ロシア向け完成車輸送の動向 |
モスクワ便り |
中国勢の存在感が増したオートサロン |
ウクライナ情報交差点 |
ウクライナの乗用車販売はほぼ半減 |
キーパーソンに訊く |
明治日本に学ぶアゼルバイジャン |
データバンク |
2014年上半期の日本の対NIS主要国貿易統計 |
ミニ・レポート |
ロシアの地域政策の変化 ―地域発展省の廃止と統一地方選― |
研究所長随想 |
第一次世界大戦から100年 |
INSIDE RUSSIA |
秋風漂うソチ国際投資フォーラム |
ロシア極東羅針盤 |
新しい段階に入ったロ中関係 |
ユーラシア産業紀行 |
ウズベキスタンの航空機産業 |
エネルギー産業の話題 |
バシネフチをめぐる喧騒 |
中央アジア情報バザール |
カザフスタンの省庁M&A |
日ロ異文化遭遇の日々 |
ロシアと日本の相互理解のために |
ドーム・クニーギ |
池田正弘著『ロシア縦横無尽 ―未踏の大国 四輪の旅』 |
業界トピックス |
2014年8-9月の動き ◆ロシアの消費材需要を掘り起こす |
通関統計 |
2014年1〜8月の通関実績 |
ロシアにおける自動車現地生産の動向
―逆風に挑む完成車メーカー―
ロシアNIS経済研究所 部長
坂口泉
はじめに
2013年春ごろから観察され始めた市場の縮小傾向は、ロシアの経済成長の鈍化、ルーブル安傾向といった逆風を受けてさらに深刻化しており、2014年8月の新車販売台数は前年同月比で25.8%も減少した。それに、ウクライナ問題に伴う対ロ制裁の影響も加わり、市場を取り巻く不透明感は日増しに強まっている。
ただ、現地生産を行っているどの完成車メーカーもロシア市場の中長期的ポテンシャルを非常に高く評価しており、攻めの姿勢を崩すことなく、現地生産モデルのラインナップの強化、ローカルコンテンツの上昇等に積極的に取り組んでいる。本稿では、ローカルコンテンツをめぐる状況に留意しながら、ロシアの乗用車生産の概況と同国で現地生産を行っている各完成車メーカーの最新の動きをご紹介する。
自動車部品産業のウリヤノフスク州進出の可能性
ロシアNIS経済研究所 研究員
渡邊光太郎
はじめに
ウリヤノフスク州は、自動車メーカーUAZの本拠地があり、周囲にトリヤッチ等の自動車生産地も多く、伝統的に自動車製造、自動車部品製造が盛んであった。近年は、州政府の強いイニシアティブにより投資環境を整え、ブリヂストンやタカタのような日系企業も含め、複数の自動車部品メーカーが進出するようになっている。この投資環境はロシアでトップレベルと評されている。この度、9月22日から26日までウリヤノフスクにて自動車・自動車部品メーカーの担当者との意見交換、現場調査を行なう機会を得た。各社がウリヤノフスクに進出した理由を分析することにより、同州が自動車部品産業の進出先としてどのようなメリットがあるのかを考査する。
ビジネス最前線
ロシアでのトラック生産・販売体制の構築
いすゞ自動車梶@営業第三部門 部門統括補佐
新島靖之さん
はじめに
いすゞ自動車は日系商用車メーカーとして初めてロシアへ進出しました。時はバブル経済の真っ盛り。ロシアのパートナーは強気の販売姿勢でしたが、数年後にリーマンショックが――。数年をかけて大量の在庫を処理した後、ロシアにおける再スタートを切るための責任者となったのが新島さんです。ロシア政府の優遇税制措置とWTO加盟による市場開放という、相反する方向性をもった同国の自動車市場において、現地のパートナーであるソラーズと連携を図りながら、本社から舵取りをしておられます。ロシア政府の優遇政策が終了する2018年に制度条件はフラットになるだろうという新島さんのお話は、今後を展望する上で多くのヒントを与えてくれます。(芳地隆之)
ビジネス最前線
ロシアでのプレス部品製造
―自動車部品製造の成功事例―
蟹HI グローバルビジネス統括本部
ロシアプロジェクト部長 山田邦彦さん
企画管理部長 瀬尾明洋さん
はじめに
ロシアでは日本メーカーも含め外資系自動車メーカーの現地生産が行われるようになりましたが、部品の現地調達が困難であるということが言われています。一方、完成車メーカーからの期待は大きいものの、部品メーカー側からは、ロシアでビジネスを進めることは難しいのではないか、また、モデル毎の生産台数が少ないので仕事量確保や生産効率の維持が難しいのではないかという懸念が聞かれます。今回は、プレス部品製造の合弁会社を設立し成功しているIHIにそうした懸念に対する回答になるようなお話を伺うことができました。
IHIと自動車メーカーZIL社の合弁会社であるアルファオートモーティブテクノロジーズ社(AAT社)は、IHI49%、ZIL51%の合弁会社で、現在400名の従業員(内6名が日本人)で自動車のボディー等のプレス部品を製造しています。ZIL社はモスクワ市の中心部近くに工場を持ち、ソ連時代より商用車を生産してきました。また、ZILはソ連の最高級乗用車のブランドとしても知られます。(渡邊光太郎)
データバンク
2014年上半期のロシア乗用車市場
―加速する販売不振―
はじめに
リーマンショックの影響を受け、ロシアの乗用車市場の規模は2009年に一挙に前年の半分にまで縮小したが、その後、急激に回復し、2012年には過去最高の約294万台の新車販売台数を記録した(小型商用車を含む数字)。ところが、ロシア経済の成長テンポの鈍化を背景に2013年春ごろから販売の不振が目立ち始め、同年の販売台数は前年比5%減の約278万台にとどまった。2014年に入ってからも不振は続いており、改善の兆しは今のところ見えていない。それどころか、状況が一層深刻化する兆候が見え始めており、6月の販売台数は前年同月比で約17%も減少した。7〜8月も不振で、それぞれ前年同月の数字を20%以上下回った。以下、販売不振の原因や各メーカーの対応策などに着目しながら、2014年上半期のロシアの乗用車市場の状況をご紹介する。(坂口泉)
ミニレポート
極東中古車ビジネス2014
財務省が発表した貿易統計によると、2013年のロシア向け中古乗用車輸出は前年と比べ19.7%増の15万7,944台となり、15万台を突破した。国別では4年連続で最大の輸出相手国となった。
ロシア向け中古乗用車輸出は2000年代前半にかけて、ロシアの好景気とメイドインジャパンへの人気などから、倍々ゲームのように増え続け、2008年には51万7,456台を記録した。しかし、2009年1月の関税の大幅引き上げの影響から、輸出台数は1年で約9割と大幅な低下を示し、4万4,649台と、2003年以来の最低値を記録した。その後は、リサイクル税導入などロシア側の政策変更があったものの、景気の回復や根強い日本車人気から、輸出台数は2009年を底に再び上昇傾向となり、2013年には2008年の約3割の水準まで回復した。(齋藤大輔)
ロジスティクス・ナビ
ロシア向け完成車輸送の動向
やや減速したとはいえ完成車(新車)は日本の対ロシア輸出の基幹品目です。さらに、グローバル化を強める日系メーカーが、世界各国で製造した完成車をロシアへ持ち込む例も増えています。産地や輸送ルートが多様化する完成車物流の近況を整理します。(辻久子)
モスクワ便り
中国勢の存在感が増したオートサロン
はじめに
8月末、モスクワの見本市会場クロックス・エクスポにおいて、「モスクワ国際自動車サロン(MIAS2014)」と自動車部品・関連用品展示会である「インターオート」が開催された。今回のオートサロンは、ウクライナ情勢、そして欧米・日本による対ロ経済制裁という状況の中で開催され、その影響が懸念されたが、本号ではその概要及び様子をレポートしたい。(中居孝文)
ウクライナ情報交差点
ウクライナの乗用車販売はほぼ半減
はじめに
ロシア自動車特集に合わせて、本コーナーでもウクライナの乗用車販売市場を取り上げる。国家的な危機が続くウクライナでは、2014年に入って乗用車販売が激減し、1〜8月の販売台数は前年同期に比べほぼ半減している。(服部倫卓)
キーパーソンに訊く
明治日本に学ぶアゼルバイジャン
駐日アゼルバイジャン共和国特命全権大使
G.イスマイルザーデ
はじめに
アゼルバイジャンは、コーカサス山脈の南麓、カスピ海の西岸に位置する人口940万人の国で、ロシア、グルジア、アルメニア、イランと国境を接しています。隣国のアルメニアとは、停戦状態にあるものの、西部のナゴルノ・カラバフ地方をめぐり、緊張した関係が続いています。イスマイルザーデ大使は、新生アゼルバイジャンが生み育てた初の日本専門家であり、もちろん日本語にも堪能であられます。今回のインタビューでは、石油・ガス産業によって発展著しいアゼルバイジャンが目指す新たな産業化政策の方向性、WTO加盟の是非、EUやロシアとの距離感、さらに、今後の日本との関係をどのように考えておられるかなどをお聞きしました。(岡田邦生)
データバンク
2014年上半期の日本の対NIS主要国貿易統計
はじめに
日本財務省発表の貿易統計にもとづいて、2014年上半期(1〜6月期)の日本とNIS主要国との貿易に関し、輸出入商品構成のデータをとりまとめて紹介する。取り上げるのは、ウクライナ、ベラルーシ、カザフスタン、キルギス、ウズベキスタン、トルクメニスタン、アゼルバイジャン、グルジアである。なお、ロシアのデータはすでに9-10月号に掲載済みなので、そちらをご参照いただきたい。
ミニレポート
ロシアの地域政策の変化
―地域発展省の廃止と統一地方選―
はじめに
2014年9月14日、復活から3年目となる連邦構成主体首長選挙を含む統一地方選挙が実施された。今年は3年目にして最多の30構成主体で首長選挙が行われたほか、14連邦構成主体の議会選挙、その他多数の地方自治体選挙を合わせて84の連邦構成主体で選挙が実施された(クリミア、セヴァストーポリを含む)。そして、過去2年と同じ流れを汲んでおり、すべての構成主体で現職知事が当選、すべての構成主体議会選挙で統一ロシアが第一党となった。
統一選挙に先立ち、2014年9月8日に地域発展省が廃止された。ここ数年、極東開発省、北カフカス発展省、クリミア担当省というように特定の地域開発に特化した省が誕生し、地域発展省の下部機関であった建設・住宅・公共政策庁が省へ格上げとなり、その管轄が地域発展省から委譲した。地域発展省の役割が縮小し、存在意義や必要性が失われつつあるというのが廃止の理由である。
2014年3月、ロシアにクリミア共和国およびセヴァストーポリ市が編入したことにより、ロシアの連邦構成主体の数が85に増えており、それに合わせて新しく連邦管区も誕生し、構成主体の代表で構成される上院の議席数も増えた。このように、制度的にも実質的にも変化しているロシアの地域および地域政策について整理しておく必要がある。
そこで、本稿は首長ファイルの拡大版としての位置づけで首長選挙の結果を中心に最近のロシアの地方の現状を概観する。(中馬瑞貴)
INSIDE RUSSIA
秋風漂うソチ国際投資フォーラム
はじめに
本コーナーでは、2014年7月号で、「逆風下のペテルブルグ国際経済フォーラム」と題するレポートをお届けした。そのペテルブルグのフォーラムと並び、ロシアで最高の格式を誇るのが、ソチ国際投資フォーラムである。本年も、9月18日から21日にかけて、D.メドヴェージェフ首相らロシア政財界の要人が多数参加して、第13回のソチ・フォーラムが挙行された。しかし、5月のサンクトペテルブルグでの催しから4ヵ月を経て、ロシア経済を取り巻く内外の環境はより一層複雑化しており、今次フォーラムの様子にもそれが表れていた。以下、報道にもとづき、ソチ・フォーラム2014につきまとめを試みる。(服部倫卓)
ロシア極東羅針盤
新しい段階に入ったロ中関係
ロシア連邦関税局の統計によると、2013年のロシアと中国の貿易高は、ロシアから中国への輸出が356億ドル、中国からロシアへの輸入が532億ドルとなり、輸出入の総額は888億ドルだった。2012年と比べ、輸出に大きな変化はなく、輸入も3%、貿易高も2%とわずかな増加に留まったものの、この888億ドルという貿易高はロ中貿易史上最も高い数値である。ロシアにとって中国は最大の貿易相手国となっており、一方、中国にとってロシアは10番目の貿易相手国となっている。(大渡耕三)
ユーラシア産業紀行
ウズベキスタンの航空機産業
はじめに
ウズベキスタンは綿花の栽培で知られ、現在の日本への輸出のほとんどが同国で産出する金となっている。こうしたことからウズベキスタンは一次産品の国と感じられる方も多いかもしれない。しかし、ウズベキスタンではソ連時代に航空産業が育ち、昨年まで航空機の製造が行われていた。残念ながら、航空機本機の製造からは撤退するようであるが、かつては当時世界最大だった航空機を始め大型輸送機の量産を行っていた世界的にも有力な航空機製造工場が存在した。(渡邊光太郎)
エネルギー産業の話題
バシネフチをめぐる喧騒
バシネフチというロシアの大手石油会社の周辺が慌しくなっています。2014年6月には、民営化プロセスに不備があったとして株式の85%が裁判所により差し押さえられました。そして、9月には、差し押さえられた株式の所有者であるAFK「システマ」のオーナーのエフトゥシェンコフが、不正にバシネフチの株式を取得した容疑で自宅軟禁下に置かれました。今後、バシネフチの株式が国により没収され、国が指名する企業に譲渡される可能性も十分に考えられます。以上の状況を踏まえ、今回は、バシネフチという会社の概要と問題となっている民営化の経緯を紹介することにします。(坂口泉)
中央アジア情報バザール
カザフスタンの省庁M&A
はじめに
2014年8月6日、ナザルバエフ・カザフスタン大統領は政府組織改革に関する大統領令を発布した。これにより、カザフスタン政府は17省9庁(Agency)という構造から12省1庁へと大幅に改編された。カザフスタンではここ数年、頻繁に組織改編が行われており、2010年3月、2013年1月にも大規模な政府改編が行われている(ロシアNIS経済速報2010年4月5日号/2013年1月25日号)。そこで今回の本特集では組織改編後のカザフスタンの政府構造について紹介し、その特徴を整理する。(中馬瑞貴)