ロシアNIS調査月報
2016年9-10月号
特集◆ロシアの貿易・外国投資
統計を活用する
特集◆ロシアの貿易・外国投資統計を活用する
調査レポート
2015年のロシアの貿易統計
データバンク
ロシアのサービス貿易統計
データバンク
ユーラシア経済連合の域内貿易
データバンク
新しくなったロシアの外国直接投資受入統計
データバンク
2016年1〜6月の日ロ貿易
―自動車輸出に回復の兆し―
ミニ・レポート
ウェブサイト・データベースで貿易統計を入手
ウクライナ情報交差点
ロシア・ウクライナ貿易のデータ検証

イベント・レポート
ROTOBOロシア経済ミッション派遣報告
―モスクワ・エカテリンブルグ―
調査レポート
ロシア石油ガス化学分野の現実
―崩れるクラスター構想―
調査レポート
ロシアにおける解雇制度と実務上の留意点
ビジネス最前線
「逆境をチャンスに」の発想でビジネス拡大へ
研究所長随想
「サイクス・ピコ協定」から100年
INSIDE RUSSIA
ロシアにとっての友好国・非友好国は?
モスクワ便り
欧州勢が掲げるロシアビジネスの課題(3)
ロシア極東羅針盤
石炭ブームに沸く極東港湾
地域クローズアップ
スヴェルドロフスク州は日ロ関係の新拠点となるか
産業・技術トレンド
ロシアの重要地域ウラルの工業地帯
自動車産業時評
2015年のロシアのタイヤ市場
ロジスティクス・ナビ
北極海航路とヤマルLNG
中央アジア情報バザール
中央アジアの2016年上半期政治・経済動向
データの迷い道
インフラ・機械設備の老朽化
駐在員のロシア語
リクルート
シネマ見比べ隊!!
移植実験系SF映画のメッセージ
デジタルITラボ
「ポケモンGO」とロシア政府
蹴球よもやま話
追い詰められるロシアのムトコ・スポーツ相
業界トピックス
2016年7月の動き
通関統計
2016年1〜6月の輸出入通関実績
記者の「取写選択」
世界陸上@モスクワ


調査レポート
2015年のロシアの貿易統計

ロシアNIS経済研究所 調査部長
服部倫卓

 ロシア連邦関税局が発行する『ロシア連邦外国貿易通関統計』の2015年年報が刊行され、2015年の同国の貿易動向に関する詳しいデータが明らかになった。そこで本稿では恒例により、『ロシア通関統計』およびその他の資料を駆使し、同国の最新の貿易統計を図表にまとめて紹介し、あわせて解説をお届けする。
 2015年のロシアの商品輸出総額は3,415億ドル(前年比31.3%減)、輸入総額は1,930億ドル(同37.3%減)で、収支は1,485億ドルの黒字であった。ロシアの貿易には、2014年に発生したウクライナ危機を背景に、景気後退、欧米による経済制裁、ロシアによる欧米産食料品への報復制裁、石油・資源価格の落ち込み、通貨ルーブルの下落、主要貿易相手国の一つウクライナとの関係悪化といった強烈な逆風が吹いている。2014年の輸出入の縮小はまだしも小幅だったものの、2015年にはいよいよ否定的な諸要因の影響が全面的に表れた形だ。2015年のロシアの輸出入の落ち込み幅は、リーマンショック後の2009年のそれにほぼ匹敵する。


データバンク
ロシアのサービス貿易統計

 本月報では、これまでロシアの商品貿易のデータ紹介には注力してきたものの、サービス貿易に関しては取り上げる機会があまりなかった。現代の経済では、サービス貿易の重要性が増しており、当然ロシアもその例外ではないので、以下ではロシアのサービス貿易統計の概観を試みる。


データバンク
ユーラシア経済連合の域内貿易

 2015年に発足したユーラシア経済連合には、現時点でロシア、ベラルーシ、カザフスタン、キルギス、アルメニアの5ヵ国が加盟している。その事務局に相当するユーラシア経済委員会のウェブサイトの統計コーナーには、連合および加盟国の様々な経済データが掲載されている。ここではそれを活用し、ユーラシア経済連合域内貿易の基礎データをまとめてみる。


データバンク
新しくなったロシアの外国直接投資受入統計

 かつてロシアでは、ロシア連邦国家統計局が、外国投資に関する統計データを発表していた。当会の月報および速報でも、その統計を定期的に紹介していた。ところが、統計局による発表は2013年分のデータまでで打ち切られ、現在ロシアの外国投資(具体的には直接投資=FDI)統計の発表主体は中央銀行に一本化されている。以下では、本月報では初めての企画として、この中銀発表のロシアのFDI統計を抜粋して紹介する。


データバンク
2016年1〜6月の日ロ貿易
―自動車輸出に回復の兆し―

 恒例により、日本財務相発表の貿易統計にもとづき、2016年1〜6月の日ロ貿易動向を表にまとめてお届けする。注目すべきことに、上半期の終盤になって、日本の対ロシア自動車輸出に回復の動きが見られる。


ミニ・レポート
ウェブサイト・データベースで貿易統計を入手

 本月報ではこれまで基本的に、ロシア連邦国家統計局やロシア関税局の発行している紙の刊行物をベースに、ロシアの貿易統計をお届けしてきた。しかし、最近は紙の刊行物が手元に届くのを待たずとも、コンテンツをオンラインで入手できたり、あるいはデータベースでより詳しい貿易データを取得したりできるようになっている。それらのサイトは無料にもかかわらず、情報が早く、データの加工も容易であり、メリットが大きい。そこでこの小レポートでは、ロシアの貿易データを入手するのに便利なサイトを紹介してみたい。 (服部倫卓)


ウクライナ情報交差点
ロシア・ウクライナ貿易のデータ検証

 2014年にウクライナで政変が起きて以降、ロシアとウクライナの貿易は激減している。そして、両国の貿易統計を見比べると、額そのものの縮小に加えて、両国の統計の乖離が目立つようになっている。そこで筆者は、両国統計を用いて、ロシア・ウクライナ間の輸出入取引を集計し、比較作業を試みた。(服部倫卓)


イベント・レポート
ROTOBOロシア経済ミッション派遣報告
―モスクワ・エカテリンブルグ―

 ロシアNIS貿易会では、2016年7月9日から14日にかけて、ROTOBOロシア経済ミッションをモスクワとエカテリンブルグに派遣した。7月9日〜12日のモスクワ部分は村山滋会長(川崎重工業会長)、12日〜14日のエカテリンブルグ部分は小林洋一副会長(伊藤忠商事副会長)を団長に、同ミッションには、商社、銀行、メーカー等から21名が参加した。今回は村山会長の就任後初のモスクワ訪問であり、モスクワにおいてはガルシカ極東発展大臣をはじめ経済発展省、エネルギー省等のロシア政府要人、また当会のカウンターパートである実業ロシアのレピク会長との面談を行った。また、エカテリンブルグにおいては、スヴェルドロフスク州のオルロフ第一副知事と意見交換を行うとともに、第7回国際産業見本市イノプロムに参加し、2017年のイノプロム・パートナー国に関わるMOUをロシア産業・商業省等との間で調印した。
 以下では、今回の経済ミッションの概要につき、事務局よりご報告することにしたい。 (齋藤大輔・中居孝文)


調査レポート
ロシア石油ガス化学分野の現実
―崩れるクラスター構想―

ロシアNIS経済研究所 嘱託研究員
坂口泉

 高付加価値製品の生産の強化ならびに輸入代替の促進を産業政策の最優先課題として掲げるロシア政府は、2011年にエネルギー省に命じ「2030年までのロシアのガスおよび石油化学の発展計画という文書を策定させた。「発展計画」は、ロシアの6地域に石油ガス化学の生産拠点(クラスター)を構築し、それらを軸としてロシアの産業全体の近代化を促進することを視野に入れた野心的な文書であったが、その発表当初より、マーケティングの裏付けが乏しい上に資金や原料基盤の確保の目処もたっていない非現実的なプロジェクトを羅列した単なるプロジェクト・リストに過ぎないとの批判も出ていた。結論から言えば、その批判は的確なものであった。「発展計画」に列挙されていたプロジェクトの多くが、経済的合理性の欠如という致命的な欠点を克服することができず苦戦を強いられているのである。このため、2015年よりロシア政府は「発展計画」の見直し作業を開始している。
 本稿では、まず原料基盤の実体ならびに主要製品(5大汎用樹脂)の需給動向といったロシアの石油ガス化学分野に関する基礎的情報に言及した後に、「発展計画」で示されている6つのクラスターならびに個々のプロジェクトの現状をご紹介することとする。


調査レポート
ロシアにおける解雇制度と実務上の留意点

松嶋希会

 ロシア・ビジネスにおいて、事業縮小に伴い人員を整理したい、費用削減のため、この際、勤務効率が不良な従業員や業務評価が低い従業員を解雇したいと考える会社が増えている。しかし、ロシアでは、法律で解雇が厳しく制限されており、解雇は難しいと、人員体制の最適化に躊躇している会社もある。法定の解雇手続が厳格であるとの認識は、間違いではない。一方で、法定解雇手続によらず、最終的には、話し合いにより従業員に会社を去ってもらう事例は多い。結局のところ交渉次第であるが、交渉を円滑に進めるには、解雇制度の理解、そして、その理解に基づく日頃の人事管理が鍵となっている。そこで、本稿では、ロシアにおける解雇制度を概説し、解雇実務も紹介したい。
 使用者(雇用主)と労働者(従業員)の間の労働契約の終了を含めた労働関係は、主に2001年12月30日付連邦法第197-ФЗ号ロシア連邦労働法典が定めている。本稿で引用条文に法令名がない場合、労働法の条文である。


ビジネス最前線
「逆境をチャンスに」の発想でビジネス拡大へ

兼松梶@モスクワ事務所 所長
竹中二郎さん

 兼松鰍ヘ1964年にモスクワに駐在員事務所を開き、対ソ連・ロシア貿易に長く従事している老舗です。今回は、兼松モスクワ事務所長の竹中二郎さんにご登場いただき、ロシア・ウクライナにおける同社のビジネスやロシア市場のポテンシャル等についてお話を伺いました。竹中さんは、モスクワで昭和40年生まれの有志からなる「昭和40年会」の幹事を務めるなど、異業種交流にも積極的で、その人柄からモスクワの駐在員仲間にたいへん慕われている存在です。(中居孝文)


研究所長随想
「サイクス・ピコ協定」から100年

 5月17日、Financial Timesはコラムで、今もなお迷走を続ける中東情勢を論じた。第一次世界大戦(1914〜1918年)中に英国とフランスが密かに結んだサイクス・ピコ協定から100年が経った。オスマン帝国の領土を英仏の勢力圏に分割する密約は、両国の都合で取り決められた。シリアは5年にわたる内戦で分割され、イラクは2003年の米国主導の侵攻で分裂した。民族・宗派が割拠する同協定以前の状態に逆戻りしたことになる。(遠藤寿一)


INSIDE RUSSIA
ロシアにとっての友好国・非友好国は?

 ロシアの世論調査機関「レヴァダ・センター」は、ロシア国民の諸外国に関する意識を定期的に調査している。最新の調査は2016年5月に実施され、センターのサイトで結果が発表された。この中で、「貴方がロシアにとって最も近い国、友人、同盟国と思う国を5つ選んでください」という設問と、逆に、「貴方がロシアにとって最も非友好的、敵対的と思う国を5つ選んでください」という設問があるので(回答の選択肢を示した設問形式)、以下でその回答状況をご紹介したい。(服部倫卓)


モスクワ便り
欧州勢が掲げるロシアビジネスの課題(3)

 2016年5月6日のソチでの日ロ首脳会談において、安倍総理からプーチン大統領へ8項目の協力プランが提示され、そのひとつに「中小企業交流・協力の抜本的拡大」が掲げられた。だが、実際には、ロシアで活動する日本企業の約9割は大企業であり、中小企業による活動はとても少ない。
 他方、ロシアで活動する欧州企業は、中小企業がかなりの部分を占める。その意味で、今後日本がロシアとの間で中小企業交流を推進する際には、欧州勢の経験が参考になると思われる。
 今号では引き続き、欧州ビジネス協会(AEB)が発表した2015/16年版の「ポジション・ペーパー」の要旨をご紹介する。今回はロシアで活動する欧州の中小企業が直面している主要な課題について取り上げることにしたい。(中居孝文)


ロシア極東羅針盤
石炭ブームに沸く極東港湾

 ナホトカ市内から車で40分。ヴランゲリ湾に面したヴォストーチヌィ港はロシア極東最大の港だ。ロシアの東の玄関口の1つとして注目されてきた。高台から港を一望した。石炭のヤマで覆い尽くされた、その横で新しい岸壁をつくる埋め立て工事が始まっていた。ショベルカーやダンプカーが土煙をあげながら整地作業にあたっていた。2016年3月、3年ぶりに同港を訪問した。前回訪れた時には大気中に舞い上がった石炭の黒い粉が港を覆い尽くしていたが、今回は土煙が周囲の環境を汚していた。ここに処理能力2,000万tの石炭積出ターミナルをつくる。極東港湾の石炭取扱量の約3割に匹敵する規模で、専用積出施設としては、極東で3ヵ所目となる。プロジェクトを主導するのはスンマグループ。いまは山を切り崩して新しい岸壁や道路、鉄道引込線をつくる作業が行われている。(齋藤大輔)


地域クローズアップ
スヴェルドロフスク州は日ロ関係の新拠点となるか

 2016年7月、ロシアのスヴェルドロフスク州エカテリンブルグ市でロシア最大規模の産業見本市、国際工業見本市「イノプロム」が開催された。本年2月末にマントゥロフ・ロシア産業・商業大臣が訪日した際、日本企業の積極的な参加を呼びかけていたこともあり、当会も企業の代表から成る視察ミッションを派遣したことは、今号でも報告しているとおりだ。
 2010年以来、毎年同市で開催され、今年で第7回を迎えた「イノプロム」であるが、次回、2017年には日本がパートナー国となって開催されることが決定した。より多くの日本企業が関心を持ち、積極的に参加することが期待されている。
 昨今の日ロ関係を見ると、2015年9月にウラジオストクで開催された東方経済フォーラムにおける日ロセッションや2016年6月に開催されたサンクトペテルブルグ国際経済フォーラムの中での(日ロ)ラウンドテーブルなど、モスクワ以外の都市で開催される国際イベント両国の関係が強調される機会が度々見られる。サンクトペテルブルグやウラジオストクといえば、モスクワに次いで日本にとって馴染みのある地域である。それに比べると、スヴェルドロフスク州やエカテリンブルグ市の知名度は、やや劣るかもしれない。
 そこで本稿では、今後注目されていくであろうスヴェルドロフスク州について紹介する。 (中馬瑞貴)


産業・技術トレンド
ロシアの重要地域ウラルの工業地帯

 日本においてウラル地方の注目度は意外なことに高くない。確かに、日本から遠距離にあり、政治的に取り上げられることは少ない。しかし、ウラル地方の中心となるスヴェルドロフスク州工業生産高はモスクワ市、サンクトペテルブルグ市、モスクワ州に次ぐ4位であり、隣接するチェリャビンスク州、ペルミ地方、バシコルトスタン共和国も工業生産高上位である。この一帯の経済的重要度は明らかである。日本では注目度が低いものの、欧州企業の活動は活発で、ウラル地方の主要企業を訪問すると、欧州企業製の製造設備がならぶ。目に見える設備を以外でも、欧州企業の存在感は大きい。日本が別の所に気をとられている間に、おいしいところは欧州企業に押さえられてしまったという感じがする。7月10日から7月17日までウラル地方中心地スヴェルドロフスク州の主要企業を訪問するビジネスミッションを行ない、その実態を見てきた(同一時期に行なわれた弊会会長ミッションとは別のミッションで、有力企業への訪問・商談を中心に行なった)。ビジネスミッションでの体験を含め、ウラル地方の可能性を紹介する。なお、ウラル地方という言葉を使っているが、産業の性質を考えると、ウラル連邦管区東部はどちらかというとシベリアに近い。本稿におけるウラル地方という言葉は、ウラル山脈周辺という意味にとっていただければと思う。(渡邊光太郎)


自動車産業時評
2015年のロシアのタイヤ市場

 経済状況の悪化の影響を受け、ロシアのタイヤ市場も縮小傾向にありますが、新車市場と比較するとその不振の度合いは比較的軽微なものとなっています。また、不況にもかかわらず、タイヤの国内生産量は増加傾向にあります。
 本稿では、そのあたりの事情に着目しながら、2015年のロシアのタイヤ市場の概況、ロシア最大の生産量を誇るフィンランドのノキアンタイヤの現地工場の現状、日本メーカーの現地工場の動き等をご紹介することにします。(坂口泉)


ロジスティクス・ナビ
北極海航路とヤマルLNG

 日本が猛暑にうなされる夏、北極海を覆っていた氷がようやく解けて北極海航路が賑わいを増します。同航路の動向と現在最大の荷主、ヤマルLNGプログラムの計画をまとめます。(辻久子)


中央アジア情報バザール
中央アジアの2016年上半期政治・経済動向

 2016年も折り返し地点を過ぎた。昨今、世界経済が低迷する中、2016年上半期は世界中でテロが頻発し、英国のEU離脱やトルコのクーデターなど、国際情勢を揺るがす出来事が相次いでいる。本稿は、中央アジア・コーカサス各国の2016年上半期の社会・政治・経済情勢ついて概説し、この地域の現状についてまとめておく。経済情勢については、各国の統計機関が発表したデータを取り上げているが、一部の国ではそれだけでは情報が不十分なため、政府会合に関する報道も適宜活用した。なお、ジョージアについては、統計機関からも報道からも2016年上半期の経済統計を確認できなかったため、本稿では割愛した。(中馬瑞貴)


データの迷い道
インフラ・機械設備の老朽化

 今回はロシアのインフラ・機械設備の老朽化の話である。プーチン大統領の第一期就任時、2000年頃はこのテーマが重要な政策課題となっていた、所謂「2003年問題」というような形である。ロシアのインフラ・機械設備の老朽化が激しく進んでいて、2003年には多くのインフラの耐久期限が近づき、事故が多発する、そして、対外債務の支払いのピークがくるなど、二重の危機が近く到来するということであった。ところが、その後の原油高、高い経済成長のなかで、これらのテーマはいつの間にかうやむやとなった。2005年にモスクワで大規模停電が発生したものの、この問題は意識されなかった。政府の対外債務も大幅に減少し、債務問題も喫緊の問題ではなくなった。しかし、インフラ・機械設備の老朽化は進んでいる。(高橋浩)


駐在員のロシア語
リクルート

 従業員を採用する場合、自社でどれだけ時間や費用といったリソースをかけられるかに応じて方法が異なる。以下にいくつかご紹介する。(新井滋)


シネマ見比べ隊!!
移植実験系SF映画のメッセージ
『両棲人間』VS『ドウエル教授の首』

 秋も近づいてくると何か面白い小説を読みたくなるものですが、子供の頃のようにSFや冒険小説の架空世界に我を忘れて埋没するあの体験、あの快楽が懐かしくはないでしょうか? 大人になると、現実を忘れて小説世界にのめり込むことが難しくなっていくように思うのです。それでも、幼少期に読んだ不思議な世界、謎を秘めた物語の記憶、その読書体験は忘れられないもので、数十年を経て思わぬところでその小説と出逢ったりすると、ノスタルジーに浸らずにはいられません。今回ご紹介したい2つの映画作品は、いずれも昭和の頃に少年少女向けに邦訳小説が出ていて、当時の日本の子供たちに大きなインパクトとトラウマを残したに違いないものです。(佐藤千登勢)


デジタルITラボ
「ポケモンGO」とロシア政府

 さて、本稿を執筆している7月26日の時点で、テレビや新聞、ネットのニュース欄はいずれも人気モバイルアプリ「ポケモンGO」に関する記事だらけ、現時点で未だ公式配信されていないロシアでも、ウリュカエフ経済発展大臣をはじめとする政府関係者らが本アプリについて言及するなど、話題沸騰中のようだ。ちなみに筆者、日本で公式配信がスタートした7月22日の直前のザワザワで初めて「ポケモンGO」の存在を知り、デジタル連載の担当者としての甘ちゃんぶりをただただ猛省しているところである。(大渡耕三)


蹴球よもやま話
追い詰められるロシアのムトコ・スポーツ相

 ロシアのドーピング・スキャンダルが世界を騒がせているが、ロシア選手団全体がリオデジャネイロ・オリンピックから全面的に排除されるという最悪の事態は、かろうじて回避されたようだ。ロシアのアスリートは一定の条件を満たすことでリオ五輪に出場でき、それぞれの国際競技団体がその判断を下すということになった。いずれにしても、世界アンチドーピング機構(WADA)が、ロシアのドーピング隠しは国家ぐるみの行為であったと認定したことで、ロシアのスポーツ行政の元締めであるヴィターリー・ムトコ・スポーツ相は、きわめて厳しい立場に立たされた。ムトコ大臣の今後の去就は、当然のことながら、サッカー界、とりわけ2年後に迫ったFIFAワールドカップ・ロシア大会にも影響が大であろう。(服部倫卓)


記者の「取写選択」
世界陸上@モスクワ

 ルジニキ競技場を埋めた数万人が吠えた。2013年8月18日、陸上世界選手権(世界陸上)の1600m女子リレー。第3走者クセニヤ・ルイジョワはトップを走る米国選手を捕らえて抜き去り、バトンはアンカーのアントニナ・クリボシャプカへ。米国の猛追を振り切ってゴールすると、興奮は最高潮に達した。(小熊宏尚)