ロシアNIS調査月報
2017年7月号
特集◆ロシアビジネスの流儀
特集◆ロシアビジネスの流儀
調査レポート
ロシア企業から合弁事業を提案されたら
ビジネス最前線
ロシアの人事労務管理の最新事情
イベント・レポート
ロシア工業団地セミナー
―ロシアにおける日本企業の現地生産の課題―
ロジスティクス・ナビ
シベリア鉄道フォーラム

調査レポート
輸出依存度を強めるロシアの石炭産業
調査レポート
ウクライナの農産物・食品輸出とEU市場
データバンク
2015年のロシアの地域総生産統計
研究所長随想
ユダヤ系ロシア人ピアニスト・シロタ家の系譜
―日本憲法70周年に寄せて―
INSIDE RUSSIA
ロシア軍需産業の輸入代替
地域クローズアップ
投資環境の良好なリペツク州
エネルギー産業の話題
資源なき石油立国ベラルーシの行方
自動車産業時評
2016年のロシア商用車市場の状況
産業・技術トレンド
ついに初飛行した新型旅客機MC-21
ウクライナ情報交差点
ウクライナ小売市場の国産品比率
中央アジア情報バザール
中央アジアと「一帯一路」構想
デジタルITラボ
政府が主導するロシアのベンチャー投資
シネマ見比べ隊!!
「家族と愛と信頼の日」に寄せて
駐在員のロシア語
予算なしのマーケティング
蹴球よもやま話
サッカーおよびW杯に関するモスクワ市民の意識
業界トピックス
2017年5月の動き
通関統計
2017年1〜4月の輸出入通関実績
記者の「取写選択」
スティングとソ連TV


調査レポート
ロシア企業から合弁事業を提案されたら

松嶋希会

 ロシアNIS貿易会では4月20日に、ROTOBO月例報告会「ロシア企業から合弁事業を提案されたら」と題し、会員企業向けの報告会を開催いたしました。日系企業のロシアビジネス支援に携わっておられる弁護士の松嶋希会さんを講師にお迎えし、ロシアで合弁事業を決定する前に検討すべき事項や、協議にあたり留意すべき点などにつき解説していただいたものです。このたび、報告会の報告内容をベースとしたレポートを松嶋さんよりご寄稿いただきましたので、以下ご紹介いたします。(編集部)


ビジネス最前線
ロシアの人事労務管理の最新事情

ロシアビジネスコンサルタント
新井滋さん

 ロシアに進出する外国企業にとって、現地人材の確保・活用の問題は、常に重要なテーマとなってきました。離職率が高く、「売り手市場」という感が強かったロシアの労働市場ですが、景気の低迷により、若干様相が変わってきた印象もあります。そこで今回は、かつてSONYのロシア現地法人の社長を長く務められ、その後は人材問題などを中心にコンサルタントとして活動されている新井滋さんに、ロシアの人事労務管理の諸問題についてお話をうかがいました。新井さんはロシア事情およびロシア語に造詣が深く、小誌では「駐在員のロシア語」の連載も担当していただいております。(服部倫卓)


イベント・レポート
ロシア工業団地セミナー
―ロシアにおける日本企業の現地生産の課題―

 2017年4月26日、東京・如水会館にてロシアNIS貿易会とロシア工業団地協会の共催によるロシア工業団地協会セミナー「ロシアにおける日本企業の現地生産の課題」が開催され、ロシア側からはロシア各地の工業団地関係者24名、日本側からは当会会員を中心に約50名が参加した。
 ロシア工業団地協会は、2013年から毎年日本各地(東京、大阪、名古屋)でロシアの工業団地を紹介するセミナーを開催しており、当会は2014年よりこれに協力している。5回目となる今回、ロシア側代表団は日韓訪問ミッションという形をとり、韓国のソウルにて同様のセミナーを開催後、東京において本セミナーを開催した。
 以下では、ロシア工業団地協会セミナー「ロシアにおける日本企業の現地生産の課題」の各報告者の発言要旨を紹介することにしたい。(中居孝文)


ロジスティクス・ナビ
シベリア鉄道フォーラム

 2017年5月24日、ロシア鉄道傘下のシベリア横断鉄道調整評議会(CCTT)及び日系物流会社団体の共催で、第3回『新生シベリア鉄道輸送ビジネス・フォーラム』が都内で開催されました(ロシアNIS貿易会後援)。内外の専門家の発表に基づき、シベリア鉄道によるコンテナ輸送の最新事情を紹介いたします。(辻久子)


調査レポート
輸出依存度を強めるロシアの石炭産業

ロシアNIS経済研究所 嘱託研究員
坂口泉

 2016年は水資源をめぐる状況が良かった関係で石炭の国内消費量は減少したものの、低迷が続いていた石炭の国際価格が年中盤頃から回復に転じたこともあり輸出が好調であったため、同年のロシアの石炭生産量は前年比3.1%増の3億8,570万tに達した。
 ただ、年中盤以降に回復に転じたとはいえ(ただし、一般炭の価格は2016年末頃から低下傾向にある)、それまで長期的に続いた石炭の国際価格の低迷は、輸出依存度の高いロシアの石炭会社から確実に体力を奪いつつあり、大手の中にも事実上の破綻状態に追い込まれるところが出始めている。さらに、比較的健全な財務状況を維持している会社の多くも、設備投資額の縮小や採算性の悪い炭鉱の閉鎖などの危機対応策を打ち出すことを余儀なくされている。
 本稿では、国内市場の縮小と石炭の国際価格の不安定感という厳しい経営環境の中で打開策を模索する大手石炭会社の実情に着目しながら、2016年のロシア石炭分野を回顧する。


調査レポート
ウクライナの農産物・食品輸出とEU市場

ロシアNIS経済研究所 副所長
服部倫卓

 ウクライナは、世界的に見ても有力な農業国であり、農産物輸出国である。同国では、従来主力だった重厚長大型の鉱工業が衰退しつつあるだけに、農業・食品産業の重要性は高まる一方である。本稿では、ウクライナの農産物・食品輸出の動向を概観し、特に同国が統合を遂げようとしているパートナーの欧州連合(EU)への輸出の問題を詳細に検討する。


データバンク
2015年のロシアの地域総生産統計

 ロシア連邦国家統計局は先日、2015年の同国の地域総生産の統計を発表した。地域総生産は国内総生産(GDP)を地域別に(州などのレベル)ブレークダウンしたものだが、GDPよりも発表が遅いので、このほどようやく2015年の数字が発表されたというわけである。そこで本コーナーでは、この最新データを図表にまとめて紹介することにする。


研究所長随想
ユダヤ系ロシア人ピアニスト・シロタ家の系譜
―日本憲法70周年に寄せて―

 5月3日憲法記念日の「日本経済新聞」コラムには、日本国憲法施行70周年に寄せて、日本のクラシック音楽界の発展に多大の足跡を残したロシア人ピアニストのプロフェッサー・シロタと、その一家の物語が語られていた。(遠藤寿一)


INSIDE RUSSIA
ロシア軍需産業の輸入代替

 筆者は月報の本年5月号、6月号で、ロシアの輸入代替の諸問題を論じた。今回の本コーナーでは、同テーマに関する補足情報として、軍需産業部門の輸入代替に関し論じる。(服部倫卓)


地域クローズアップ
投資環境の良好なリペツク州

 モスクワの周辺にはたくさんの地方都市があり、カルーガやヤロスラヴリなど、外資系企業の誘致に成功し、知名度を上げている地域が多数ある。こうしたモスクワ周辺の都市の中でも、ここ10年、地域別投資環境ランキングで常に10位以内にランクしている地域の1つが本稿で紹介するリペツクである。リペツク州には日本の大手タイヤメーカーである横浜ゴムが進出しているほか、外資系企業が数多く参入している。 (中馬瑞貴)


エネルギー産業の話題
資源なき石油立国ベラルーシの行方

 ベラルーシは、ロシアから輸入した原油を自国2箇所の製油所で精製して、製品を主に欧州方面に販売することを、産業・貿易の柱としています。自前の石油資源は乏しいにもかかわらず、石油大国ロシアの「おこぼれ」にあずかるような形で、しばらく前まで高成長を実現していました。しかし、ここ2〜3年の石油価格の低迷でロシアが打撃を受ける中、ベラルーシはそれ以上に厳しい局面を迎えています。(服部倫卓)


自動車産業時評
2016年のロシア商用車市場の状況

 ロシアの調査会社「ASMホールディング」より、2016年のロシアの商用車(トラック、バス、小型商用車)の生産、販売、輸入に関するデータを、ロシアの自動車市場調査会社「Autostat」からは2016年末時点のロシアの商用車登録台数に関する情報をそれぞれ入手しましたので、今回はそれらをご紹介することにします。(坂口泉)


産業・技術トレンド
ついに初飛行した新型旅客機MC-21

 ロシアの新世代旅客機の第二弾として開発が進められていたMC-21が5月28日に初飛行をした。MC-21は外見的にはライバルとなるボーイング737やエアバスA320と比べ遜色がないどころか優位性まである機種で、年間1,000機の需要がある旅客機では最も大きい市場を狙う。2000年以降、ロシアにおいて旅客機の開発と製造は復活する傾向にあるが、MC-21はロシアの航空産業再興の成否を左右する重要な機種である。初飛行に際し、MC-21がどのような航空機か、今後、どのようなことが期待されるかについて紹介する。(渡邊光太郎)


ウクライナ情報交差点
ウクライナ小売市場の国産品比率

 ウクライナに、「ウクライナ分析センター」というシンクタンクがある。今般そのフェイスブックページに、ウクライナで小売販売されている商品に占める国産品の比率という資料が掲載されたので、今回はこれを取り上げてみたい。(服部倫卓)


中央アジア情報バザール
中央アジアと「一帯一路」構想

 2017年5月14〜15日、北京で「一帯一路」国際協力フォーラムが開催された。フォーラムには、スイス、スペインなど欧州を含む29カ国の首脳および130カ国の代表が参加した。中央アジアからはナザルバエフ・カザフスタン大統領、アタムバエフ・キルギス大統領、ミルジヨエフ・ウズベキスタン大統領が出席した。本稿では、中国のイニシアチヴで注目される「一帯一路」構想を軸に、中国と中央アジアとの関係について触れてみたい。(中馬瑞貴)


デジタルITラボ
政府が主導するロシアのベンチャー投資

 ロシアベンチャーキャピタル協会の調査によると、2016年のロシアにおけるベンチャー投資件数は、昨年対比+10.5%の210件であった。一方で、投資金額は前年の85%にあたる1億2,800万ドルであった。投資件数は2013年から基本的には増加傾向である。(牧野寛)


シネマ見比べ隊!!
「家族と愛と信頼の日」に寄せて
『YOU AND I』VS『エターナル』

 7月8日(旧暦6月25日)は、家族と結婚の守護聖人ペテロと聖女フェヴロニヤの日として正教会で祝われてきましたが、2008年7月8日より、「家族と愛と信頼の日」として一般的に広く祝うようこの日が制定されております。この日を象徴する花は、ハーブティーでも知られるカモミール。家族の安らぎと平和を願うには相応しい花ですね。
 このたびは「家族と愛と信頼の日」に寄せて、家族や婚姻、信頼をテーマとした2つのドラマものを紹介したいのです。(佐藤千登勢)


駐在員のロシア語
予算なしのマーケティング

 以前勤めていた会社で年に一度マーケティングの予算を立てようというと、決まって広告・宣伝費だけについて議論したものだ。たとえば、広告に割り当てられる予算はどのくらい? どの雑誌に広告を掲載するか? どの商品を広告対象にするか? ただ マーケティングって、本来これだけじゃないだろうにと思いながら会議に加わっていた。こうした広告活動をマーケティングと呼ぶ場合、それはその言葉の狭い意味に過ぎない。(新井滋)


蹴球よもやま話
サッカーおよびW杯に関するモスクワ市民の意識

 FIFAワールドカップ(W杯)ロシア大会も1年後に迫り、この6月17日から7月2日にかけてはW杯のプレ大会と位置付けられるFIFAコンフェデレーションズカップ2017もロシア国内4会場で開催される。それでは、今日のロシア国民は、サッカーのこと、W杯のことをどう考えているのか?このテーマに関し、全ロシア世論調査センターが本年2月にモスクワ市民1,200人を対象に実施した意識調査があるので、以下ではその結果を紹介する。全国レベルの調査でないのが残念だが、大イベントを1年後に控えたロシアの雰囲気の一端を知ることはできよう。(服部倫卓)


記者の「取写選択」
スティングとソ連TV

 2010年秋、ロンドンの演劇場ロイヤル・アルバートホールはほぼ満員だった。ステージ上には英国のロックシンガー、スティング。ロイヤルフィルと共演する、"Symphonicity"と名付けられた凝った趣向のコンサートの半ばで、彼は静かに語り始めた。(小熊宏尚)