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ロシアNIS調査月報2018年2月号特集◆ロシア・NIS |
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特集◆ロシア・NIS消費市場の大研究 |
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調査レポート |
淘汰の波にさらされるロシアの食品スーパー業界 |
調査レポート |
ロシアにおけるファッション産業の現状 ―グローバル化とパトリオティズム― |
調査レポート |
現代ロシア女性のライフスタイル ―消費市場攻略のヒント― |
データバンク |
ロシア国民が好きなブランド・ランキング |
データバンク |
国内勢が巻き返しを図るロシアのネット通販市場 |
デジタルITラボ |
ロシアでモバイル決済は普及するか |
ミニ・レポート |
ロシア・チョコレート市場の回復と高級化 |
自動車産業時評 |
不況に苦しむロシアの自動車ディーラー業界 |
中央アジア情報バザール |
大きな可能性を秘めるカザフスタンの小売市場 |
ウクライナ情報交差点 |
ウクライナの消費部門と小売チェーン |
ロシアと日本・ 出会いの風景 |
買い物パラダイス秋葉原の思い出 |
ビジネス最前線 |
寒冷地向け手袋をロシア全土に |
ビジネス最前線 |
ロシアでのトラック現地生産のねらい |
ミニ・レポート |
東シベリアから世界へ羽ばたくイルクーツク州 |
INSIDE RUSSIA |
プーチンは大記者会見で何を語ったか |
ロシア極東羅針盤 |
酷すぎた日ロ極東投資会合 |
地域クローズアップ |
北カフカス最大の人口を誇るダゲスタン共和国 |
エネルギー産業の話題 |
欧州市場におけるガスプロムのプレゼンス |
ロジスティクス・ナビ |
モスクワを周るラストチカ号 |
駐在員のロシア語 |
ロシア文学のすゝめ |
産業・技術トレンド |
米企業を通じロシア製部品を利用するMRJ |
ロシアメディア最新事情 |
最高学府の学部長に聞くロシアのメディア(下) |
シネマ見比べ隊!! |
ロシア版異類婚姻譚の謎 |
蹴球よもやま話 |
サッカー日本代表・約束の地 ―カザンとロストフナドヌー― |
ドーム・クニーギ |
服部倫卓・越野剛編『ベラルーシを知るための50章』 |
業界トピックス |
2017年12月の動き |
通関統計 |
2017年1〜11月の輸出入通関実績 |
記者の「取写選択」 |
ロシア革命100年 |
調査レポート
淘汰の波にさらされるロシアの食品スーパー業界
ロシアNIS経済研究所 嘱託研究員
坂口泉
1990年代半ばにロシアに出現したスーパーチェーンは一時驚異的な成長ぶりを見せていたが、2000年代後半頃から競争の激化に伴い各チェーンの利益率は年々低下する傾向にある。また、売上高に目を転じれば、全体的には伸びているものの既存店ベースでみるとマイナスという会社が少なくない。油価が急落した2014年秋以降はその傾向がさらに顕著となっており、準大手や地方スーパーの中には業績が悪化し身売りを余儀なくされるところも出始めている。2017年に入って以降は景気がやや上向いているものの、消費者の節約志向に変化は見受けられず、既存店ベースで見た場合、大手チェーンも苦戦を強いられている。ロシアのスーパー業界は何をやっても上手く行く急成長の時代から体力勝負の淘汰の時代に移行していると考えられ、体力の弱い会社やマーケティングを軽視する会社は市場からの退出を余儀なくされるだろう。
本稿では、M&Aの動きに着目しながら主要なスーパーチェーンの現状を紹介する他、不況の中でも急成長を続ける均一価格店チェーンや酒類を主に取り扱うチェーンの概要、さらには、キオスク、市場(いちば)、自動販売機をめぐる状況などにも言及する。
調査レポート
ロシアにおけるファッション産業の現状
―グローバル化とパトリオティズム―
大阪大学 言語文化研究科 教授
藤原克美
2014年のクリミア統合以降の欧米諸国からの経済制裁と対抗制裁措置、国際原油価格の低迷を背景とする通貨・金融危機は、ロシア経済に大きな打撃を与えた。2015年のGDPは対前年比▲3.7%で2009年ほど深刻ではなかったものの、危機そのものは長期化し、2016年にも▲0.2%のマイナス成長を記録した。2017年に入りようやく成長に転じたが、予測値は1.5%程度で、かつてのような高成長は当面見込まれていない。
国民生活への影響を見ると、2014年以降の約4年間で実質的な国民所得は9.5%、個人消費は7.1%減少している。ファッション産業でも、図表1のとおり市場は2015年に大幅に縮小したあと徐々に回復の兆しはみられるが、2012年の水準にようやく達したところである。したがって、2014年以降の危機への言及を抜きにロシアのファッション産業の現状を論じることはできないが、本稿ではグローバル化とパトリオティズム(愛国主義)をキーワードに、消費者と企業のトレンドを見ていこう。なお、ファッション産業は通常、衣類、靴、アクセサリーより構成されるが、ここでは主に衣類を検討する。
調査レポート
現代ロシア女性のライフスタイル
―消費市場攻略のヒント―
ロシアNIS貿易会 モスクワ事務所
L.ソコロヴァ・K.オスタニナ
ロシアに生きる25〜35歳の現代の女性とは、どのような存在だろうか?
本稿では、若いロシア人女性のライフスタイルの様々な側面、具体的には社会における女性の権利と状況、教育水準、職業的および個人的な関心、趣味、家族の中での、また個人的なプライオリティなどについて考察する。
まず最初に権利面での基本、統計データを検討し、その上で、ロシアの大都市に生きる若い世代の女性たちのライフスタイルの諸問題をより詳しく見ていくことにする。
データバンク
ロシア国民が好きなブランド・ランキング
消費市場の重要な要素となるのが、ブランドである。そこで、本コーナーでは、ロシア国民が好きなブランド・ランキングをご紹介したい。オンライン・マーケット・インテリジェンスという機関が、ロシアで定期的に実施しているブランドに関する国民意識調査の最新結果を取り上げる。
データバンク
国内勢が巻き返しを図るロシアのネット通販市場
ロシアにおいても、商品小売市場におけるネット通販の重要性が高まっていることは、諸外国と同じである。ただし、現下ロシアの場合には、国内のネット通販業者が、外国勢、具体的には中国系のアリババによって市場を掘り崩され、国内勢による巻き返しが課題となっている点が特徴的である。
本稿では、業界団体のプレゼンテーション資料と、現地で発表されたレポート・報道に依拠し、図表の掲載を中心として、ロシアのネット通販市場につき報告する。(服部倫卓)
デジタルITラボ
ロシアでモバイル決済は普及するか
先日、ロシア家電大手のMヴィデオは、2017年3Qまでに、非接触型の決済が前年同期比で2.7倍に成長したと報告した。これにより、店頭での非接触型決済比率は20%にまで増加したという。
今回は、消費市場特集の一環として、ロシアで急増するモバイル決済について見ていこうと思う。
(牧野寛)
ミニ・レポート
ロシア・チョコレート市場の回復と高級化
チョコレートは、ロシアで最も人気のお茶請けであり、贈り物で、ロシアの生活や文化に密着している最も代表的なスイーツと言える。現在、スーパーやデパートにはロシア製および外国製の様々な種類のチョコレートおよびチョコレート菓子が並ぶ。日本のチョコレート菓子メーカーRoyceやチョコレート専門店などがショッピングセンターなどに出店している。ロシアのチョコレート市場の現状を見ていくこととする。(斉藤いづみ)
自動車産業時評
不況に苦しむロシアの自動車ディーラー業界
2017年秋にネザヴィシモスチという大手自動車ディーラーが経営破綻しました。同社は高級車を中心に扱っておりブランドイメージが高かったので驚きましたが、調べてみると、一時に比べれば新車が売れなくなっている今、ネザヴィシモスチのように新車販売からの収入に過度に依存する自動車ディーラーはいずれも厳しい現実に直面しているようです。
今回は、ロシアの自動車ディーラー業界の概況とネザヴィシモスチの経営破綻の経緯の他、ロルフ、アフトミールといった大手ディーラーの現状をご紹介します。
(坂口泉)
中央アジア情報バザール
大きな可能性を秘めるカザフスタンの小売市場
今号の特集に合わせて本連載でもカザフスタンの小売市場について紹介する。世界40カ国以上に拠点を有する世界有数のグローバル経営コンサルティングファーム「A.T.カーニー」が発表しているGlobal Retail Development Indexによると、カザフスタンは新興国30ヵ国のうち、2016年には第4位に位置していた。経済の大幅な低迷によりカントリーリスクが高まったため、2017年版では16位と大幅に順位を落としているが、市場の飽和性が低く、まだポテンシャルがあると考えられている。(中馬瑞貴)
ウクライナ情報交差点
ウクライナの消費部門と小売チェーン
ウクライナの消費市場は、当然のことながら、2014年以降の国家的・経済的危機により、大きな打撃を受けた。経済危機の局面では、必需品の食品よりも、非食料商品の消費が手控えられる傾向があるので、耐久消費財などを売りたい外国企業にとって、ウクライナの魅力はだいぶ低下してしまった。ようやく、2016年以降、消費は回復に転じており、特に非食料商品は先送りされていた需要が顕在化していると見られる。(服部倫卓)
ロシアと日本・出会いの風景
買い物パラダイス秋葉原の思い出
今号の話題はロシアの消費市場ということで、数十年にわたってその市場の中で特別なニッチを占めていた日本のある場所についても言及しないといけないと思う。タイトルにも出ているが、私自身にとっては、過去のことでもあり、あくまでも懐かしい思い出ということになるが、その日本のある場所、有名な秋葉原電気街だ!(D.ヴォロンツォフ)
ビジネス最前線
寒冷地向け手袋をロシア全土に
叶ツ井商店 専務取締役
青井貴史さん
マイナス60度の厳寒下でも軟らかさを保つゴム手袋――。ここ数年、ロシア各地の見本市などで積極的に営業活動を展開しているのが、高機能手袋の製造・卸を手がける青井商店です。北海道旭川市から日本全国に商品を供給しながら、寒冷地ならではのノウハウを活用できる先としてロシア市場の開拓を本格化しています。青井貴史専務(41)に、ここに至る経緯と現状を伺いました。(吉村慎司)
ビジネス最前線
ロシアでのトラック現地生産のねらい
日野自動車
西尾武師さん 尾崎健太さん
大手商用車メーカーである日野自動車は2017年10月、ロシアでの工場建設を発表しました。久々の大型のロシア進出案件であり、日ロ経済関係の中では貴重な明るい話題ではないかと思います。今回は日野自動車のロシア工場建設を主導された西尾さん、尾崎さんにお話しを伺いました。
底を打ったとは言え、ロシア経済はまだ本格的な回復基調にはなく、自動車販売は2012年に過去最高を記録した後、2016年までに半減しています。2017年は回復に転じていますが、まだまだ過去の規模に遠く及びません。ロシア経済の先行きに不透明感の残るこの時期に進出を決断した背景には、冷静な計算がありました。ロシアビジネスを拡大する上で他の企業の方にも参考になるものがあるのではと思います。(渡邊光太郎)
ミニ・レポート
東シベリアから世界へ羽ばたく
イルクーツク州 ロシアの地域が、チャンスを逃すまいと、日本のパートナーとの関係構築と、日本からの投資の呼び込みに、以前にも増して積極的に取り組むようになっている。例えば、新たなビジネスパートナーを探す方法の1つとして、2017年にロシアのいくつかの地域が取り組んだものに、投資プレゼンテーションを、ビジネス界の代表者らを招待して日本で行う、というものがあった。これに取り組んだロシアの地域の中には、日本との経済・貿易関係を発展させる大きなポテンシャルを秘めているイルクーツク州も含まれていた。同州の投資ポテンシャルに関するプレゼンテーションは、2017年11月9日に東京で開催された。(K.オスタニナ)
INSIDE RUSSIA
プーチンは大記者会見で何を語ったか
ロシアのプーチン大統領は12月14日、内外の記者団を集め、毎年恒例の大規模記者会見を開催した。前回の本コーナーでお伝えしたとおり、プーチン大統領は12月6日、来たる3月の大統領選への出馬を表明した。14日の大規模記者会見は、その直後のイベントとなり、一層注目が高まった。大規模記者会見は、2001年に始まり、今回が13回目となる。今回の会見には、過去最多の1,640人のジャーナリストがエントリーしたとされる。プーチン大統領は3時間40分あまりにわたる会見で、55の質問に答えた。以下では、今回の大規模記者会見におけるプーチン大統領の主な発言要旨を整理しておく。(服部倫卓)
ロシア極東羅針盤
酷すぎた日ロ極東投資会合
「ロシア極東の投資環境はいつまでたってもよくならないだろうな」。
2017年12月18日にウラジオストクで、極東発展省が初めて開いた日本企業に投資を呼びかける会合「日本投資家デー」に参加して、そう思った。(齋藤大輔)
地域クローズアップ
北カフカス最大の人口を誇るダゲスタン共和国
北カフカス連邦管区の中で最大の人口を誇るダゲスタン共和国は、同管区の中では、スタヴロポリ地方に次いで2番目に地域総生産が大きい。しかし、投資環境はいいとは言えず、一定のポテンシャルを持ちながらも課題が山積みの地域である。(中馬瑞貴)
エネルギー産業の話題
欧州市場におけるガスプロムのプレゼンス
ガスプロムの欧州市場へのガス輸出量は、2015年以降増加し続けており、2017年1〜9月期の数字も前年同期よりも145億立米多い1,413億立米に達しました。このままの状態が続けば、2017年通年でも欧州向けの輸出量が過去最高の水準に達するのはほぼ確実とみられています。以上の状況を踏まえ、今回は、2016年までのガスプロムのガス輸出の状況、2017年1〜9月期の輸出増の背景にある事情、ライバルの動きなどをご紹介します。(坂口泉)
ロジスティクス・ナビ
モスクワを周るラストチカ号
2016年9月10日に開通したモスクワ中央環状線は、地上を走る地下鉄14号線として定着しています。快適性が人気のラストチカ号は中長距離用も開発され、ロシア鉄道旅客部門の中心的列車になろうとしています。(辻久子)
駐在員のロシア語
ロシア文学のすゝめ
ビジネスで使うロシア語を磨くため、「ビジネスロシア語」の教科書を隅から隅まで読み、そこに書いてあることを覚えるのも有益ではあるが、それだけやるのは何とも退屈な作業である。無味乾燥な文章ばかりでは、印象に残らず、脳に定着しにくい。定着させるためには、自分にとって面白いと思えるロシア語の読み物を加えると良い。政治経済のニュースが面白いと思えば、それを丹念に読めばよい。筆者自身の経験では、ロシア人の誰もが学校で読まされたと思われるロシア文学の古典が役に立った。(新井滋)
産業・技術トレンド
米企業を通じロシア製部品を利用するMRJ
国産旅客機MRJにロシア製部品が搭載されている。これは日本とロシアの協力関係の成果と言うよりも、米国企業の戦略的ロシア活用の結果である。どうして、米国企業がこのような成果を生み出すことができるかについて、考査してみたい。(渡邊光太郎)
ロシアメディア最新事情
最高学府の学部長に聞くロシアのメディア(下)
ロシアメディアの現状について、モスクワ大学・ジャーナリズム学部、エレーナ・ヴァルタノヴァ学長のインタビュー後半をお届けします。今回はロシアのマスコミの根本的な構造に迫ります。おすすめの新聞や雑誌も教えてもらいました。(徳山あすか)
シネマ見比べ隊!!
ロシア版異類婚姻譚の謎
『サルタン王物語』VS『ドラゴン』
このたびは『ドラゴン』というタイトルの比較的新しいファンタジー作品を紹介したいと思い、かつ、共通するテーマとして異類婚姻譚というジャンルの古典『サルタン王物語』を比較していきたいと思います。(佐藤千登勢)
蹴球よもやま話
サッカー日本代表・約束の地
―カザンとロストフナドヌー―
前回このコーナーでは、2018年FIFAワールドカップ(W杯)ロシア大会で日本代表の試合会場となることが決定した3つの都市、サランスク、エカテリンブルグ、ヴォルゴグラードの現地事情について述べた。今回は、その延長上で、さらに2つの街について語ってみたい。日本代表のキャンプ地に決まったカザンと、決勝トーナメント1回戦の会場になる可能性があるロストフナドヌーである。(服部倫卓)
記者の「取写選択」
ロシア革命100年
英国ロイヤル・アカデミー・オブ・アーツで2017年2〜4月に行われた「ロシア芸術1917〜1932」展は、一時は入場が制限されるほどの人気だった。10月には英仏共同製作の歴史コメディー映画「The Death of Stalin」が封切られ、11月からは現代美術館テート・モダンで共産党宣伝ポスターなどを集めた「Red Star Over Russia」も。昨年のロンドンはロシア革命百周年を記念した催しが目白押し。私も何度か足を運び、革命とソ連の残像を楽しんだ。
それに引き換え、革命に対するクレムリンの事実上の沈黙を背景に、ぎこちないムードが漂ったロシア。歴史イベントであれ芸術展であれ、政権の顔色を気にする時代は過去のものになっていないという現実を、世界に示す形となった。先述した映画は、ロシアでは上映禁止が検討されている。
(小熊宏尚)