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ロシアNIS調査月報2019年7月号特集◆高まるサービス貿易 |
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特集◆高まるサービス貿易の重要性 |
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INTRODUCTON |
ロシア・NIS諸国のサービス貿易を見る視点 |
INSIDE RUSSIA |
ロシアのサービス輸出拡大目標 |
ロジスティクス・ナビ |
シベリア鉄道欧州向け中継輸送構想 |
デジタルITラボ |
ロシアIT産業と世界との繋がり |
ミニ・レポート |
インバウンド観光促進を目指すロシア |
地域クローズアップ |
観光資源豊かなクラスノダル地方 |
ミニ・レポート |
ロシアの医療ツーリズムをめぐる諸問題 |
ロシアメディア最新事情 |
ロシアの空港に新名称! ―予想外の投票結果― |
調査レポート |
2018年のロシア石炭分野の回顧 ―青天に鳴り響いた雷鳴― |
調査レポート |
サハリン周辺領域での日ロ共同災害対応の可能性 |
ロシア極東羅針盤 |
ロシアと中国の国境に橋が架かる |
エネルギー産業の話題 |
ガスプロムとトルクメニスタンの関係小史 |
自動車産業時評 |
Sollers周辺に生じた異変 |
ウクライナ情報交差点 |
ウクライナのゼレンスキー劇場は第2幕へ |
中央アジア情報バザール |
中央アジアの波乱の政権交代 |
ロシアと日本・ 出会いの風景 |
日本とロシアの銀行で考えること |
ロシア音楽の世界 |
プロコフィエフ バレエ「ロミオとジュリエット」 |
蹴球よもやま話 |
ロシア・サッカーの2018/19シーズン終了 |
駐在員のロシア語 |
サーカスに行こう |
業界トピックス |
2019年5月の動き |
通関統計 |
2019年1〜4月の輸出入通関実績 |
おいしい生活 |
キエフで堪能するクリミア・タタール料理 |
記者の「取写選択」 |
ウクライナ大統領@ブリュッセル |
INTRODUCTON
ロシア・NIS諸国のサービス貿易を見る視点
月報の今号では、ロシア・NIS諸国のサービス貿易に焦点をあてる。これまで小誌は基本的に、財(モノ)の生産と貿易の調査・分析に注力してきた。しかし、現代の経済においてサービス産業の重要性が高まっていることは言うまでもなく、ロシア・NIS諸国もその例外ではあるまい。そこで、小誌としては初めて、サービス貿易を前面に掲げる特集を試みることになった次第だ。
特集冒頭の本稿では、まず基礎的な統計を整理する作業を中心に、ロシア・NIS諸国のサービス貿易の全体像を把握することを目指す。残念ながら、トルクメニスタンはサービス貿易統計が入手できないので、本レポートでは対象外となっている。他方、一般的にモンゴルはNISの範疇には入らないが、当会の事業対象国なので、取り上げることとした。(服部倫卓)
INSIDE RUSSIA
ロシアのサービス輸出拡大目標
本コーナーでは、5月号で「動き出したロシアのナショナルプロジェクト」と題し、プーチン政権の推進する12本のナショナルプロジェクトにつき解説し、ナショナルプロジェクト「国際協業・輸出」の中で示されている非原料・非エネルギー輸出の目標についても触れた。
さて、ナショナルプロジェクト「国際協業・輸出」では、非原料・非エネルギー輸出の拡大と並んで、2024年までにサービス輸出を1,000億ドルにまで拡大するという目標も設定していた。元々この目標は、プーチン大統領の実質的な選挙公約と位置付けられた2018年3月1日の年次教書演説で打ち出され、それが「5月大統領令」で改めて示されたものだった。
先日、ナショナルプロジェクト「国際協業・輸出」の一部である連邦プロジェクト「サービス輸出」が一般に公開され、拡大目標のより具体的な中味が明らかになったので、今回はこれを取り上げる。(服部倫卓)
ロジスティクス・ナビ
シベリア鉄道欧州向け中継輸送構想
ロシア鉄道はシベリア鉄道(TSR)を利用した東アジア発着の国際コンテナ輸送を欧州まで延伸し、トランジット輸送を始める計画です。5月23〜24日、ロシアの鉄道輸送関係者が来日し、日本企業に協力を呼びかけました。(辻久子)
デジタルITラボ
ロシアIT産業と世界との繋がり
先日、連邦議会の国家院(下院)にてロシアのインターネット規制に関する法律「インターネット主権」法が成立した。中国をはじめとした各国がインターネット世界への規制を強化する中、ロシアもこれに追随する形だ。本法案によって、ロシアのIT産業と世界との繋がりはどうなるのか。
あまり知られていないかもしれないが、2000年代後半からロシアのIT産業は、欧米を中心とした海外からの受託開発案件を受けて成長をしてきた。オフショア開発である。経済制裁下でも、市場は順調に発展し、ロシアのIT開発と世界のIT産業は、密接に関連してきた。今回は、ロシアのIT産業におけるアウトソーシングと受託開発について取り上げてみようと思う。(牧野寛)
ミニ・レポート
インバウンド観光促進を目指すロシア
一般的に、サービス貿易に占める旅行サービスの比率には、かなり大きなものがある。ロシア当局も当然その重要性は認識しており、連邦プロジェクト「サービス輸出」では、2017年現在90億ドルに留まっていた旅行サービスの輸出額を、2024年には155億ドルにまで拡大するという目標が掲げられている。(服部倫卓)
地域クローズアップ
観光資源豊かなクラスノダル地方
本稿ではすでにロシア有数の観光地としての地位を築きながらも、さらなる発展が期待されるクラスノダル地方の概要と観光資源、すなわちその魅力を紹介する。(中馬瑞貴)
ミニ・レポート
ロシアの医療ツーリズムをめぐる諸問題
ロシアは、サービス輸出の中でも、医療サービスの輸出を重要視している。ナショナルプロジェクト「保健」の一環として、2018年12月14日付で連邦プロジェクト「医療サービスの輸出の発展」が採択しており、そこではロシアで治療を受ける外国人の数が今後下図のように拡大していくという青写真を描いている。これにより、医療サービスの輸出を2017年比で4倍に拡大し、2024年には10億ドルを達成したいとしている。本コーナーでは、ロシアの医療ツーリズムについて論じた現地報道を2本翻訳してご紹介する。
ロシアメディア最新事情
ロシアの空港に新名称!
―予想外の投票結果―
5月31日、プーチン大統領はロシア国内の44の空港の新しい名前を承認しました。空港にロシアの発展に貢献した偉人の名前をつけようというプロジェクトは、ロシア地理学会や歴史学会によって昨年10月から進められてきました。候補はインターネット投票で選ばれ、482万8,000人もの人が参加しました。投票はひとり一回、ひとつの空港のみ、というシンプルなルールだったのですが、結果を見た筆者はショックを受けました。(徳山あすか)
調査レポート
2018年のロシア石炭分野の回顧
―青天に鳴り響いた雷鳴―
ロシアNIS経済研究所 嘱託研究員
坂口泉
2016年の後半ごろから始まった石炭の国際価格の高値傾向は2018年も続いた。その結果、輸出志向の強いロシアの石炭会社の多くが大きな恩恵を被った。たとえば、ロシア最大の石炭会社のSUEKの2018年の売上高は好調だった前年をさらに19.6%上回る82億9,600万ドルに、純利は33.3%増の11億6,400万ドルにそれぞれ達した(国際会計基準準拠の数字)。表面的な流れを見る限りでは2018年はロシアの石炭分野にとって順風満帆な年だったといえる。しかし、すべてが平穏だったというわけではなく、今後の波乱を予見させる異変も生じた。ロシアの石炭産業の中心地であるケメロヴォ州の知事として20年以上の長きにわたり君臨し「ロシア石炭業界のドン」とでもいうべき存在であったアマン・トゥレエフが4月に知事を辞任し、セルゲイ・ツィヴィリョフというそれまで無名に近い存在でしかもケメロヴォ州とは縁もゆかりもなかったビジネスマンが新知事に就任するという一部の業界関係者にしてみれば青天の霹靂どころか天変地異にも匹敵する大事件が勃発したのである。ロシアの石炭業界の勢力図に今後何らかの変化が生じるのは避けられないであろう。蛇足ながら付け加えれば、2019年4月にミハイル・アビゾフ元「開かれた政府」担当大臣が逮捕されたが、彼はかつてクズバスラズレズウーゴリの社長を務めたこともある石炭業界と関わりが深い人物なので、このことも今後の勢力図の変化に一定の影響を及ぼす可能性がある。
本稿では、大手石炭会社の活動状況、輸出インフラ強化の動き、さらには、業界の勢力図の変化の兆しなどに注目しながら2018年のロシアの石炭分野を回顧する。
調査レポート
サハリン周辺領域での日ロ共同災害対応の可能性
関西学院大学災害復興制度研究所
尾松亮
日本ではそれほど頻繁に報じられていないが、ロシア極東サハリン州およびその周辺領域は、津波や暴風、雪崩、土砂災害など災害多発地域である。サハリン州(特にサハリン島以外の島しょ部)は人口や技術・設備、アクセス利便性の面で、災害対応に不利な条件が目立つ地域である。ロシアがサハリン州の一部とみなしている我が国の北方領土も同様の災害リスク地域、かつ災害対応困難地域である。
日本には多種の自然災害に対応してきた経験があり、サハリン州と隣接する北海道をはじめ雪害、暴風被害への対策、人命救助、復旧のノウハウを持つ地域は多い。
災害復旧のノウハウを持った日本の専門家が、サハリン州の災害対応に協力することで、地域間の人的・経済的交流を深めるとともに、災害対応用機械設備の輸出機会を増やすことも期待できる。本稿の目的は、災害危険地域としてのサハリン州とその周辺領域の特性を抑えたうえで、日ロ経済交流の拡大に資する共同災害対応活動の可能性を探ることである。
ロシア極東羅針盤
ロシアと中国の国境に橋が架かる
2019年5月31日、アムール州の中心都市ブラゴヴェシチェンスクの郊外と中国黒竜江省の黒河市の間を流れるアムール川に橋がつながり、トルトネフ副首相ら両国代表が出席して式典が行われた。
ロ中国境は、ロ中朝3ヵ国国境の図們江河口付近を起点とし、ウスリー川、アムール川、アルグン川を経て、ロ中蒙国境で終わる東部と、モンゴルとカザフスタンに挟まれた西部の2つから構成する。国境の長さは約4,300kmにものぼる。アムール川の国境に橋がかかるのは2ヵ所目である。(齋藤大輔)
エネルギー産業の話題
ガスプロムとトルクメニスタンの関係小史
2019年3月になり、価格面での折り合いがつかず2016年以降停止していたトルクメニスタン産のガスの買い付けをガスプロムが再開するというニュースが飛び込んできました。ガスプロムはこれまでガスの買い付けをめぐりトルクメニスタンとの間で対立と和解を繰り返してきましたが、本稿では、ソ連解体後より続いている両者の複雑な関係の小史を振り返ってみたいと思います。(坂口泉)
自動車産業時評
Sollers周辺に生じた異変
2019年春になりロシアの自動車メーカー「Sollers」の周辺がにわかに慌ただしくなっています。同社はフォードと合弁企業「フォードSollers」を設立しロシア国内の3工場でフォード車の生産を行っていましたが、赤字続きで2019年3月に同合弁企業はフォードの乗用車の現地生産を打ち切ることを発表しました。
また、4月には極東地方に所在するマツダとの合弁工場が、2020年より鉄道輸送料金関連の特典を失う可能性が出てきたことが判明しました。本稿では、Sollersの周辺で生じているそれらの異変の詳細をご紹介します。(坂口泉)
ウクライナ情報交差点
ウクライナのゼレンスキー劇場は第2幕へ
月報の前号に、「2019ウクライナ大統領選挙の顛末 ―異例の政権交代はなぜ起きたのか―」と題するレポートを掲載した。同レポートを脱稿した時点では、まだ新大統領の就任式の日取りすら決まっていなかったのだが、その後ウクライナ政治は思わぬ急展開を見せた。5月20日にV.ゼレンスキー新大統領の就任式が挙行されると、就任演説でゼレンスキーが議会(最高会議)解散と前倒し選挙を宣言したものである。いわば、ゼレンスキー劇場の第2幕が開いた形だ。そこで本稿では、前号のレポート脱稿後に生じたウクライナ政治の動きを補足・整理することにする。 (服部倫卓)
中央アジア情報バザール
中央アジアの波乱の政権交代
2019年3月にカザフスタンでナザルバエフ大統領が辞任を表明し、憲法規定に従って、トカエフ上院議長が次期大統領選挙までの大統領(「大統領代行」ではなく「大統領」)に就任した。中央アジアと言えば、権威主義的・強権的であり、長期政権が主流。政権交代の歴史を見ても、タジキスタンの内戦、キルギスの政変、トルクメニスタンおよびウズベキスタンの現職逝去後に憲法を逸脱した権限移譲と波乱なしには語れない。そんな中で自発的に国家元首が辞任、憲法規定に沿って政権交代が実現するという珍しい流れがカザフスタンで起きた。
そのカザフスタンについてはすでに『ロシアNIS調査月報』2019年5月号の本連載や同誌6月号の宇山智彦「カザフスタンのナザルバエフ『院政』」などで、詳しく述べられているのでそちらを参照していただくことにして、本稿ではその他の中央アジア諸国でこれまでどのように政権交代が起きたのか、改めてまとめておくことにしたい。(中馬瑞貴)
ロシアと日本・出会いの風景
日本とロシアの銀行で考えること
先日、東京のあるスーパーで買い物をしていた。夜の帰宅時間帯だったので少し混んでいた。4〜5人が並ぶレジの列に立っていると、前のお客さんたち全員が現金で支払をしていたのに気づいた。かくいう私も現金払いだった。その時に思い出したのが、少し前に聞いた日本のラジオ番組のこと。テーマは日本と外国の銀行システムや銀行サービス、そして安全面から見たその利用パターンの違いというものだった。(D.ヴォロンツォフ)
ロシア音楽の世界
プロコフィエフ バレエ「ロミオとジュリエット」
ご存知、文豪シェイクスピアによる戯曲「ロミオとジュリエット」に基づく、ソ連の作曲家セルゲイ・プロコフィエフが作曲した大傑作バレエである。作曲家自身によって3つの管弦楽組曲とピアノ独奏用組曲にも編曲されている。(ヒロ・ミヒャエル小倉)
蹴球よもやま話
ロシア・サッカーの2018/19シーズン終了
ロシアのサッカーはヨーロッパの主要国と同じ秋春制を採用しており、先日2018/19シーズンの全日程を終了した。最高峰のプレミアリーグでは(図表2参照)、ゼニト・サンクトペテルブルグが4シーズン振りにチャンピオンの座を奪還。一方、前シーズンのリーグ王者だったロコモティヴ・モスクワは、5月22日に決勝が行われたロシア・カップで優勝を果たし、ディフェンディングチャンピオンの面目を保った。(服部倫卓)
駐在員のロシア語
サーカスに行こう
自分自身の余暇だけでなく、同僚や本社からの「お客さん」と一緒に気晴らし・気分転換するのにうってつけなのがサーカスだ!と個人的には思う。(新井滋)
おいしい生活
キエフで堪能するクリミア・タタール料理
ウクライナのキエフは、外食するのがそれなりに楽しい街である。もちろん、ウクライナ料理店には事欠かないが、それが続いて飽きてきたような時には、目先を変えたくなるだろう。そんな時にお薦めしたいのが、クリミア・タタール料理店「ムサフィル」である。キエフ市内に2店舗があり、非常に繁盛している。(服部倫卓)
記者の「取写選択」
ウクライナ大統領@ブリュッセル
欧州連合(EU)や北大西洋条約機構(NATO)が本部を置くベルギー・ブリュッセル。両機構に加盟していないのに、この都市に年に何度も足を運ぶ首脳がいる。ウクライナの大統領である。(小熊宏尚)