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ロシアNIS調査月報2019年12月号特集◆ロシア・NIS経済 |
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特集◆ロシア・NIS経済と鉄道 |
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調査レポート |
輸送力拡張で変わるバム鉄道 |
ミニ・レポート |
二転三転するロシアの高速鉄道計画 ―カザンかサンクトペテルブルグか― |
ロジスティクス・ナビ |
シベリア鉄道トランジットの波 |
INSIDE RUSSIA |
2020〜2022年のロシア鉄道の投資プログラム |
ロシア極東羅針盤 |
極東港湾と鉄道の連携問題 |
ウクライナ情報交差点 |
ウクライナ鉄道の老朽化と孤立 |
中央アジア情報バザール |
中央アジアの鉄道をめぐる最新情勢 |
地域クローズアップ |
着実な発展を見せるモルドヴィア共和国 |
ロシアメディア最新事情 |
鉄道の新座席クラスでどの席を選ぶべき? |
ユーラシア珍百景 |
サハリンから消えゆく日本遺産の狭軌鉄道 |
調査レポート |
ロシアの農水産物をめぐる最新の動き |
データバンク |
2019年版ロシア50大外資企業ランキング |
データバンク |
2019年1〜9月の日ロ貿易 |
エネルギー産業の話題 |
プリオブスコエ鉱床への税制上の特典供与 |
産業・技術トレンド |
ロシアの工作機械代理店 |
デジタルITラボ |
オープンイノベーションフォーラム参加報告 |
ロシアと日本・ 出会いの風景 |
果物狩りとキノコ狩りの日ロ娯楽比較 |
ロシア音楽の世界 |
プロコフィエフ・ピアノ協奏曲第3番 |
シネマ見比べ隊!! |
松山に眠るロシア兵たち |
駐在員のロシア語 |
雑談力1 |
業界トピックス |
2019年10月の動き |
通関統計 |
2019年1〜9月の輸出入通関実績 |
記者の「取写選択」 |
ラトビアの現実主義 |
調査レポート
輸送力拡張で変わるバム鉄道
ロシアNIS貿易会モスクワ事務所 所長
齋藤大輔
シベリア鉄道と並んで、ロシアの東と西を結ぶ幹線であるバム鉄道。未開発の資源鉱床が多数存在し、ロシアの東方戦略にとって重要な戦略拠点ということもあって、バム鉄道の輸送力強化は、ロシア鉄道の中でも特別にクローズアップされてきた。ロシアの東西を結ぶ代表的な幹線といえば、いまでもシベリア鉄道であるが、ここ数年の輸送力強化によって、バム鉄道への注目が集まっている。沿線の資源開発の進展や輸出拠点の整備により、文字通り「第二シベリア鉄道」としての役割を果たすようになっている。現在進行形で変化を遂げるバム鉄道の現在と将来を展望する。
ミニ・レポート
二転三転するロシアの高速鉄道計画
―カザンかサンクトペテルブルグか―
筆者は小誌2015年7月号で、「モスクワ〜カザン高速鉄道は中国の支援で推進」と題するレポートを執筆している。ロシアは、同国初となるこの高速鉄道プロジェクトを、当初は自力で進めようとしたが、2015年に中国との協力に舵を切り、中国の一帯一路政策に乗る形で建設を実現しようとした。
しかし、それから4年あまりを経て、当初目標にしていた2018年のサッカー・ワールドカップ(W杯)も過ぎ去ったのに、モスクワ〜カザン高速鉄道はまだ着工にも至っていない。それどころか、2019年4月にこの事業はいったん白紙に戻り、モスクワ〜サンクトペテルブルグ高速鉄道を優先する動きが出てきた。そして、この間、中国との協力の機運は低下し、ロシアは再び高速鉄道事業の自力更生に傾きつつある。(服部倫卓)
ロジスティクス・ナビ
シベリア鉄道トランジットの波
シベリア鉄道・バム鉄道の増強計画が進む中で、コンテナ輸送にも多様化が進んでいます。カザフスタンで開催されたシベリア鉄道のコンテナ輸送に関する国際会議の発表資料を用い、最近の動向を紹介します。(辻久子)
INSIDE RUSSIA
2020〜2022年のロシア鉄道の投資プログラム
潟鴻Vア鉄道は、「2020〜2022年の投資プログラム」の策定作業に取り組んでいる。その草案の骨子がロシアの鉄道系メディアで報じられたので、以下ではそこに掲げられている投資プログラムの表を抜粋して紹介する。(服部倫卓)
ロシア極東羅針盤
極東港湾と鉄道の連携問題
極東港湾の貨物量は増え続けている。しかし、極東方面の貨物輸送は2つの大きな課題を抱えている。1つは、バム鉄道とシベリア鉄道東部区間の輸送力である。これはロシア鉄道が莫大な資金を投じて、拡張事業を実施している。もう1つは、鉄道と港湾の調整である。ロシア鉄道は港湾の荷役会社とそれぞれ協定を結んでいるが、どの会社のどの商品をどれだけ輸送するかは交渉にかかっている。しばしば問題も勃発する。輸送制限を受ける極東方面の貨物輸送を巡っては、鉄道と港湾との間で対立が発生する。(齋藤大輔)
ウクライナ情報交差点
ウクライナ鉄道の老朽化と孤立
ウクライナの鉄道をめぐる問題に関しては、2019年8月号の本コーナーで、「ウクライナとベラルーシの鉄道トランジット輸送」として報告した。今回は、前稿と重複する部分もあるが、追加情報を加え、ウクライナの鉄道について改めて論じる。(服部倫卓)
中央アジア情報バザール
中央アジアの鉄道をめぐる最新情勢
ユーラシア大陸の真ん中に位置する中央アジアが国際的な運輸・物流ルートの確立に重要な意味を持つ地域であることは言うまでもない。そしてその重要性は中国が「一帯一路」政策を発表して以来、ますます高まっている。従来から国内の鉄道インフラが未整備であった中央アジア各国はこうした対外的な関心の高まりを背景に、国内の鉄道インフラ整備を積極的に進めると同時に、域内・周辺国との鉄道の連結にも進展がみられている。そこで、昨今の中央アジア地域における鉄道の整備状況などについてまとめておくことにしたい。(中馬瑞貴)
地域クローズアップ
着実な発展を見せるモルドヴィア共和国
2018年FIFAワールドカップ(W杯)ロシア大会の会場の1つとして日本でも知られるようになったモルドヴィア共和国(行政中心都市サランスクで日本がコロンビアと対戦)。本誌の特集との関連でいえば、鉄道車両の生産高で第4位を占めるRM Reilは、共和国第2の都市ルザエフカに拠点を置く。
製造業が集積し、日本企業の進出も盛んな沿ヴォルガ連邦管区にありながら、日本はもちろん、外国企業の進出事例が乏しくあまり耳にすることのないモルドヴィア共和国だが、連邦政府が推進する輸入代替政策やイノベーション政策の成功事例をいくつも挙げており、着実に経済発展を遂げている。そこで本稿ではモルドヴィア共和国について紹介しよう。
(中馬瑞貴)
ロシアメディア最新事情
鉄道の新座席クラスでどの席を選ぶべき?
2020年1月から、ロシア鉄道の座席クラスの名称がリニューアルし、チケットもその新しいクラスに基づいて値決めされることになりました。従来の一等と二等にあたる「リュクス」「クペー」はそれぞれ「ビジネス」「コンフォート」という名称になり、三等と四等にあたる「プラツカールト」と「シヂャーチイ」は「エコノミー」または「ビュジェット」(低予算の意)という風に、名前が変わります。この名称変更は、ロシア鉄道のマーケティング戦略の刷新によるものです。確かに最近はマンション販売などでも、「ビジネス」「コンフォート」「エコノミー」という3段階のクラス分けが定着しているので、この改革は現代のロシア人の感覚に合わせたもの、と言えそうです。
私は「リュクス」に乗ったことはありませんが、二等から四等までは体験しました。この月報の読者で四等に乗った人は多分いないと思うので、貧乏旅行をしたつもりになって体験談をお読みください。(徳山あすか)
ユーラシア珍百景
サハリンから消えゆく日本遺産の狭軌鉄道
ロシア極東のサハリンには、日本統治時代の名残が色々と残っており、その一つに、かつて日本が敷設した軌間1,067mmの狭軌鉄道もあった。しかし、ロシアは2003年からサハリンの鉄道の軌間をロシア本土と同じ1,520mmの広軌に入れ替えるプロジェクトに着手。曲折を経て、このほど9月1日より、広軌による鉄道運行が開始された。大陸とサハリンを鉄道橋で結ぶお膳立てが、これで整ったと言えようか。(服部倫卓)
調査レポート
ロシアの農水産物をめぐる最新の動き
ロシアNIS経済研究所 嘱託研究員
坂口泉
以前からロシアの食品関連のレポートを作成したいと思っており準備をしてきたが、ロシアの加工食品は国際競争力が全般的に低く日本企業の方々にはあまり興味を持っていただけない可能性が高いとの結論に至り、農産物と水産物を取り上げることにした。農産物に関しては本誌2019年8月号に掲載された拙稿(「ロシア農業の発展動向と課題」)で言及しなかった産品のみを取り上げることを目指したが、穀物、大豆、鶏肉・豚肉・牛肉はそのプレゼンスと注目度の高さを勘案するとどうしても省略することができなかったので、重複することとなった。その点はご容赦いただければ幸いである。
ロシアの漁業分野はこれまで私にとっては全く未知の世界であったが、カニの漁獲割当の分配方式の変更に伴いロシアの経済紙にもロシアの漁業に関する情報が出ることが多くなった他、幸運にもロシアの水産物の養殖に関する情報も入手できたので、それらの情報をもとに手探りでレポートにまとめてみた。土地勘が全くない分野なので、日本企業の皆さまの要求を満たしうるレベルには到底達していないとは思うが、ごくわずかでも皆さまのビジネスの参考になれば幸いである。
データバンク
2019年版ロシア50大外資企業ランキング
ロシア版『フォーブス』誌のサイトに、2019年版ロシア50大外資企業ランキングという資料が掲載されたので、これを抜粋して掲載する。なお、2018年の売上高にもとづき2019年に発表されたランキングということなので、ご注意いただきたい。
エネルギー産業の話題
プリオブスコエ鉱床への税制上の特典供与
西シベリア最大の石油鉱床のひとつであるプリオブスコエに税制上の特典が供与されることになりました。同鉱床は2000年ごろに本格的な生産が開始された比較的新しい鉱床なのですが、その開発に取り組んでいるロスネフチとガスプロムネフチの強い要請に従い、2019年春に税制上の特典の供与を政府が決定しました。今回は、税制上の特典供与の背景にある事情、ならびに、同鉱床の開発の歴史と現状をご紹介します。(坂口泉)
産業・技術トレンド
ロシアの工作機械代理店
日本の産業機械メーカーと話しをすると、良い代理店を紹介して欲しいという要望が多い。これからロシアに対してビジネスを始める場合、顧客との関係を持ち、案件を拾ってきてくれる代理店は、ロシアビジネスの入り口として非常にありがたい存在である。こうした要望は非常にまっとうなものだが、残念ながら、これまでロシアの産業機械代理店について調査する機会に恵まれなかった。そのため、ロシアの産業機械を扱う代理店を網羅するようなリストを作るには程遠い状態である。とはいえ、代理店に関する情報は非常に需要が高い。本稿では、代理店の役割や意義を説明するとともに手持ちの工作機械・産業機械の代理店の情報を紹介する。(渡邊光太郎)
デジタルITラボ
オープンイノベーションフォーラム参加報告
10月21日から23日にかけて、モスクワ郊外にあるロシア版シリコンバレー・スコルコヴォにて、「オープンイノベーションフォーラム2019」が開催された。これはスコルコヴォが主催するロシア最大規模のスタートアップイベントの一つである。筆者は3日間に渡り、本フォーラムへ参加した。今回は、同イベントのレポートである。(牧野寛)
ロシアと日本・出会いの風景
果物狩りとキノコ狩りの日ロ娯楽比較
今回は政治や経済、ビジネスなどからは離れた、軽く読んで頂けるようなテーマを選んだ。日本人の趣味(娯楽)の一つである「果物狩り」(リンゴ、イチゴ、ぶどうなど)についてだ。非常にシンプルな書き物ではあるが、果物狩りをひとつの事例として、日本人とロシア人の娯楽(および娯楽に対する「スタンス」)の違いなどについて考えてみたいと以前より思っていた。かく言う私自身も「キノコ狩り」が趣味のひとつなので、一応は詳しいつもり。(D.ヴォロンツォフ)
ロシア音楽の世界
プロコフィエフ・ピアノ協奏曲第3番
最も大好きなピアノ協奏曲であるこの曲は、ロシア3月革命の年、1917年から着手され、革命のどさくさで筆が中断していたが1921年に書き上げられている。第1楽章冒頭のロシア風旋律のクラリネット・ソロ、カスタネットに導き出されるオーボエの第二主題、フルート、ピッコロとじゃれ合うピアノソロの高音域。第2楽章の第三変奏は象が酔っ払ったようなブギウギ風の後打ちビート。皮肉屋さんのプロコフィエフらしい、ウィットに富んだ5つの変奏によって構成された大変面白い楽章。第3楽章アレグロの最初の主題は、日本で聴いた「越後獅子」に曲想を得たとされているとてもユニークなリズムのメロディー。船に乗り遅れた偶然で日本に滞在する羽目になり、次の船の出航タイミングまでの退屈しのぎの滞在中に、彼が芸者遊びもしていたお蔭で覚えたとも言える成果であろうか? プロコフィエフ本人はこの楽章を、「ソリストとオケの討論」と呼んでいる。最後の28小節間は強打の連続。ピアノはメロディー楽器、と言うより打楽器だ、と言わんばかりの使われ方。(ヒロ・ミヒャエル小倉)
シネマ見比べ隊!!
松山に眠るロシア兵たち
『ソローキンの見た桜』
今年も残すところわずかとなりました。来たる年は2020年。このたびご紹介する作品『ソローキンの見た桜』の歴史的背景、日露戦争が実に遠い遠い昔のことのように思えますけれど、2019年3月に日本で公開されたこの作品により、1904年から翌年にかけて築かれたロシア兵捕虜と松山の人々との交流を追体験することができるように思います。オレンブルグ国際映画祭では観客特別賞を受賞し、すでにロシアでも話題を呼んだ作品ですが、11月末からはロシア全国にて200館規模で劇場公開されるとのこと! ロシアでも日露戦争や松山市への興味を通して、日本との心理的距離をいっそう縮める契機となるのではないでしょうか。(佐藤千登勢)
駐在員のロシア語
雑談力1
ビジネスで会うロシア人との会話も、半分以上は雑談であろう。人間関係を構築するうえで「雑談力」は相当重要であるように思う。「雑談力」をロシア語に訳そうとして、雑談を和露辞典で調べてみると、болтовня, пустословие とある。中身のない無駄話のことだ。そうするとУмение заниматься болтовнёй? ― ちょっと違う気がする。どうやら意訳した方が良さそうだ。 Умение / искусство вести беседу、あるいはумение поддерживать разговорとしてはどうであろう。つまり会話を持たせる術のことであろうと思う。(新井滋)
記者の「取写選択」
ラトビアの現実主義
バルト3国のラトビアは2018年4月、ロシアと2007年に結んだ国境条約に基づき、国境画定に関する最終文書を発効させた。ロシアとの領土問題は完全解決。しかし代償は大きかった。条約締結時のラトビア大統領、ヴィチェフレイベルガ氏は2015年8月、筆者とのインタビューで当時の決断を振り返り、ロシアとの領土問題を抱える日本は「強くなるしかない」と訴えた。(小熊宏尚)