ロシアNIS調査月報
2020年2月号
特集◆中央アジアは
どこまで変わるか
 
特集◆中央アジアはどこまで変わるか
講演録
“ポスト”ナザルバエフのカザフスタン
―政治・経済・石油の視点から―
イベント・レポート
第10回日本アゼルバイジャン経済合同会議
調査レポート
中央アジアの石油ガス分野の今
―期待と現実の狭間―
データバンク
2019年版カザフスタン大企業ランキング
中央アジア情報バザール
2019年中央アジア・コーカサス主要ニュース
ロシアメディア最新事情
ロシアにおける労働移民の暮らし
―モスクワの中の中央アジア―
INSIDE RUSSIA
ウズベキスタンがロシアに接近
―ユーラシア経済連合加盟も検討―
ドーム・クニーギ
岡奈津子著『〈賄賂〉のある暮らし:
市場経済化後のカザフスタン』
おいしい生活
サマルカンドでワインの試飲

イベント・レポート
日露クリエイティブ経済フォーラム
ロシア極東羅針盤
屈強な極東中古車ビジネス
地域クローズアップ
「シベリアの真珠」と称されるアルタイ共和国
自動車産業時評
2019年秋時点のロシアの中古車市場の状況
ロジスティクス・ナビ
日欧間トランジットの試行
ウクライナ情報交差点
ゼレンスキーとプーチンの直接対決
産業・技術トレンド
ロシアにおけるカイゼン活動
デジタルITラボ
ロシアにおける定額動画配信サービス
ロシア音楽の世界
マリインスキー劇場で日露文化交流コンサート
ロシアと日本・
出会いの風景
日本・ロシアの空港間を旅しながら思う
シネマ見比べ隊!!
ニコライ2世を偲んで
駐在員のロシア語
保険の話
業界トピックス
2019年12月の動き
通関統計
2019年1〜11月の輸出入通関実績
記者の「取写選択」
共産圏へのエクソダス


講演録
“ポスト”ナザルバエフのカザフスタン
―政治・経済・石油の視点から―

D.サトパエフ・V.ドドノフ・O.チェルビンスキー

 ロシアNIS貿易会では、12月10日に都内で産業協力・企業間交流セミナー「“ポスト”ナザルバエフ時代を展望する3つの視点〜政治・経済・石油〜」を開催しました。2019年3月に独立前の1990年からその地位にあったヌルスルタン・ナザルバエフ大統領が突如辞任したことに鑑み、政権交代が同国に与える影響を、政治、経済、石油産業という3つの視点から読み解き、カザフスタンに対する理解を深めることを目的としたものです。当該の3つの分野の専門家として、カザフスタンより民間調査分析機関「Kazakhstan Risks Assessment Group」代表のドシム・サトパエフ氏、カザフスタン共和国大統領付属戦略研究所(KISI)主任研究員のヴャチェスラフ・ドドノフ氏、カザフスタン石油・ガス分野のビジネス専門誌『Petroleum』編集長のオレグ・チェルビンスキー氏を招聘し、それぞれの視点から大統領交代後のカザフスタンの現状と展望について詳細に報告をいただきました。セミナーには約50名が聴衆として参加し、終了後のネットワーキングでは報告者との積極的な交流の様子が見られました。以下、本セミナーにおける各報告の内容と、北海道大学スラブ・ユーラシア研究センターの宇山智彦教授との討論の模様を掲載いたします。


イベント・レポート
第10回日本アゼルバイジャン経済合同会議

 2019年11月21日(木)如水会館にて、日本アゼルバイジャン経済委員会(事務局:ロシアNIS貿易会)およびアゼルバイジャン日本経済協力国家委員会の主催のもと、「第10回日本アゼルバイジャン経済合同会議」が行われた。前回のバクー開催から2年半ぶりとなった今般会議では、2018年11月にアビド・シャリホフ副首相の後任としてアゼルバイジャン側議長に就任したムフタル・ババエフ環境・天然資源大臣を東京に迎え、双方より商社、メーカー、省庁・政府系機関関係者など約100名が一堂に会し、経済関係発展のための協議や情報交換、人脈形成を行った。以下、第10回日本アゼルバイジャン経済合同会議の概要について報告する。(大内悠)


調査レポート
中央アジアの石油ガス分野の今
―期待と現実の狭間―

ロシアNIS経済研究所 嘱託研究員
坂口泉

 中央アジアの石油ガス分野といえば、真っ先にカザフスタンの石油分野とトルクメニスタンのガス分野を思い浮かべる人が多いのではなかろうか。カザフスタンは現時点でも世界有数の産油国のひとつであるが、カスピ海大陸棚の新鉱区の開発が順調に進めば生産規模のさらなる拡大が期待できると考えられている。また、トルクメニスタンのガス分野に関しても、ガルニキシュという巨大な新鉱床群の開発が思惑通りに進展すればさらなる飛躍が期待できると考えられている。
 ただ、現実に目を転じると、カザフスタンの石油分野もトルクメニスタンのガス分野も期待とは裏腹に苦戦を強いられているとの印象を受ける。本稿では、その苦戦の背景に潜む要因に注意を向けながら両国の石油ガス分野の現状を紹介する。さらに、本稿ではウズベキスタンの石油ガス分野、キルギスとタジキスタンの石油市場の状況などについても言及する。


データバンク
2019年版カザフスタン大企業ランキング

 小誌ではこれまでに何度か『エクスペルト・カザフスタン』誌が発表したカザフスタン大企業ランキングを紹介してきたが、今回は同誌(2019.10.16)で紹介されたカザフスタン大手資産運用会社「Centras Securities」が「Kazakhstan Growth Forum」の中で発表した「カザフスタン大企業ランキングC500」について、『エクスペルト・カザフスタン』の解説を交えて紹介することとする。


中央アジア情報バザール
2019年中央アジア・コーカサス主要ニュース

 通信社「Politics Today(polit.info)」が「CISにおける2019年の結果」と題して、加盟国の2019年3大ニュースを伝えた。政治、経済、社会、文化、スポーツなど幅広く取り上げられている。そこで本稿では、当該記事の中から中央アジアおよびコーカサス(ジョージアを除く)の3大ニュースを紹介する。(中馬瑞貴)


ロシアメディア最新事情
ロシアにおける労働移民の暮らし
―モスクワの中の中央アジア―

 今回はモスクワにおける労働移民の現状についてご紹介したいと思います。私自身、あまり自分が移民という意識はないのですが、外国籍でロシアに住み、働いているので、れっきとした移民であり、それに伴う様々な手続きが必要になります。まずは昨年末のビッグニュースからご紹介すると、2019年11月1日から、ВНЖ(長期滞在許可)の有効期限が5年間から無期限になりました。これを持っていると、ロシア中のどこにでも住んで働くことができ、年金なども、ほぼロシア人と同じような権利が得られます。私自身も5年間有効の長期滞在許可を持っているので、これで少しは楽になるのかな?と思いきや、そう簡単にはいかないようです。(徳山あすか)


INSIDE RUSSIA
ウズベキスタンがロシアに接近
―ユーラシア経済連合加盟も検討―

 ウズベキスタンでは、2016年9月2日にI.カリモフ大統領が亡くなった。Sh.ミルジヨエフ氏が、大統領代行を経て、同年12月14日に正式に大統領に就任し、現在に至る。カリモフ時代には独立独歩の外交路線を歩み、ロシアとも一定の距離を置いていたウズベキスタンだが、ミルジヨエフ現政権が改革開放政策を進める中で、ロシアとの協力にも積極姿勢に転じている。それのみならず、2019年秋には、ウズベキスタンがロシア主導のユーラシア経済連合への加盟を検討しているとの情報も浮上した。本レポートでは、ミルジヨエフ政権成立後のウズベキスタン・ロシア関係、ユーラシア経済連合加盟検討の動きに関し、報道および現地有識者の論評を取りまとめてお伝えする。(服部倫卓)


おいしい生活
サマルカンドでワインの試飲

 2016年にウズベキスタンを旅行した際に、サマルカンド・ワイン工場でワインの試飲をした。サマルカンド・ワイン工場は1868年設立のワイナリーで、ワイン醸造博物館を併設する。予約をしないで直接行ったら、その日は運悪くブルガリア人の団体客で貸し切りだった。明日来るように言われたが、明日のフライトで帰ると伝えると、あっさりと団体客に加えてもらえた。(斉藤いづみ)


イベント・レポート
日露クリエイティブ経済フォーラム

 2019年11月15日、サンクトペテルブルグにおいて、第1回目となる日露クリエイティブ経済フォーラムが開催された。同フォーラムは、第4回国際クリエイティブ産業・伝統工芸コングレス(The 4th International Congress on Creative Industries and Traditional Crafts)の一環として行われたもので、主催者はロシア産業商業省、ロシア文化省、クリエイティブ産業・伝統工芸コングレス組織委員会で、総合スポンサーとしては国際ショーディエフ財団が名を連ねた。(Yu.ストノーギナ)


ロシア極東羅針盤
屈強な極東中古車

 ビジネス観光ブームに沸くウラジオストク。日本人をはじめ外国人観光客がウラジオストクに来てまず最初に驚くのが右ハンドルの日本製中古車の多さであろう。そのロシア向け中古乗用車の輸出が好調だ。2019年1〜11月の最新データによると、輸出台数は10万3,957台と、前年の同じ時期と比べて30%以上の伸びとなった。輸出台数が10万台の大台を上回るのは2014年以来となる。(齋藤大輔)


地域クローズアップ
「シベリアの真珠」と称されるアルタイ共和国

 ロシアの格安航空券を扱うサイトAviasalesが25,000人のユーザーを対象に、ロシアで最も訪れてみたい観光地を調査したところ、1位バイカル湖(36%)、2位カムチャッカ(28%)、3位アルタイ(18%)という結果であった(RIA Novosti 2019.10.21)。バイカル湖やカムチャッカは日本人でも耳にしたことのあるロシア有数の観光地だ。一方で、アルタイとはどんな魅力があるのだろうか? ロシアにはアルタイ地方とアルタイ共和国という2つの連邦構成主体が存在している。隣接しているが別々の構成主体だ。アルタイ地方についてはすでに本誌で取り上げたことがあり(『ロシアNIS調査月報』2016年2月号)、本稿ではアルタイ共和国について紹介する。(中馬瑞貴)


自動車産業時評
2019年秋時点のロシアの中古車市場の状況

 ロシアの調査会社「Autostat」より、2019年1〜9月期のロシアの中古車市場の状況に関する情報を入手できましたので、今回は、同期の中古車市場の概況と、中古車のブランド・モデル別販売状況をご紹介します。その他、地域別の中古車の販売状況についてもご紹介します。(坂口泉)


ロジスティクス・ナビ
日欧間トランジットの試行

 スエズ運河経由で輸送されている日欧間コンテナ貨物の一部を、シベリア鉄道利用に振り分けられないかとの期待を込めて、試験輸送が行われています。2019年末時点での進捗状況を報告します。(辻久子)


ウクライナ情報交差点
ゼレンスキーとプーチンの直接対決

 12月9日にパリにゼレンスキー・ウクライナ大統領、プーチン・ロシア大統領、マクロン・フランス大統領、メルケル・ドイツ首相が集結し、ドンバス和平問題を交渉する「ノルマンディー方式」の会談が開催された。4者の会談は約9時間に及び、その後ウクライナ・ロシア二国間の会談が1時間20分ほど続いた。(服部倫卓)


産業・技術トレンド
ロシアにおけるカイゼン活動

 筆者は2017年より経産省より委託を受けた弊会の事業で、ロシア企業の生産性向上支援事業に従事してきた。本事業では日本の現場改善の専門家により、ロシア企業の生産性向上を目指し、改善活動を支援している。製造業が発展途上であるロシアに日本の製造業のノウハウを移植することで、ロシアの産業多様化を支援するという発想は非常に理にかなったものである。とは言え、実際に実施するとなると、日本側の限界、ロシア側の現実、限られた時間等の制約が立ちはだかることになる。そのような中、どのようにロシアの生産性向上を支援してきたかについてまとめる。(渡邊光太郎)


デジタルITラボ
ロシアにおける定額動画配信サービス

 今回は、ロシアにおいても、近年、急速に拡大しているインターネット動画配信サービスについて取り上げたいと思う。(牧野寛)


ロシア音楽の世界
マリインスキー劇場で日露文化交流コンサート

 日露両国のアーティストが共演して、日露両国の音楽を演奏するコンサートで、日露文化交流を実施する。そんなプロジェクトを2016年に立上げ、「日露の架け橋」」との副題も付いて、2017年3月と2019年12月の2回、なんとか実現することができた。今回と次回の「ロシア音楽の世界」では、筆者がプロデューサーを務めたその2回の文化交流イベントを振り返ってみたい。(ヒロ・ミヒャエル小倉)


ロシアと日本・出会いの風景
日本・ロシアの空港間を旅しながら思う

 どこの国でもその国の玄関は空港だ。成田空港、シェレメチェヴォ空港を結ぶフライトを利用すれば、その日のうちに日本とロシアのそれぞれの玄関を見比べられる。多くの読者と同様に私もその経験を多数持った。(D.ヴォロンツォフ)


シネマ見比べ隊!!
ニコライ2世を偲んで

 2月になると「祖国防衛軍の日」やマースレニツァなどの祝日、慣習で1月に引き続きお祝いモードに満ちるロシアですが、帝政最後の皇帝ニコライ2世が退位する契機となった2月革命が起きたことも想起されますね。このたびは、不遇の皇帝ニコライ2世に想いを馳せながら、皇太子時代のロマンスを描いた力作『マチルダ 禁断の恋』をご紹介したいのです。(佐藤千登勢)


記者の「取写選択」
共産圏へのエクソダス

 ベルリンの壁が崩壊してから2019年11月で30年となり、世界中のメディアが冷戦とその終結を振り返った。ソ連を盟主とする共産圏は冷戦期、北米や西欧などへの脱出、亡命を図る人の多さに苦慮。越境を阻むために作られた壁の消滅は「資本主義の勝利」と受け止められた。しかし、資本主義国から共産圏への大量移住という例外が冷戦期の極東で起きたのは忘れられがちだ。(小熊宏尚)