ロシアNIS調査月報
2020年6月号
特集◆NIS経済・貿易の
最新動向
 
特集◆NIS経済・貿易の最新動向
調査レポート
2019年のロシア・NIS諸国の経済トレンド
データバンク
2019年の日本の対NIS諸国貿易統計
データバンク
韓国の対中央アジア貿易投資動向
中央アジア情報バザール
2019年の中央アジアの貿易実績
ウクライナ情報交差点
ウクライナの鉄鋼輸出はほぼ現状維持
おいしい生活
プロフ缶で#おうちプロフはいかが?

調査レポート
ロシアの2035年までのエネルギー戦略
自動車産業時評
2019年のロシア商用車市場
ロジスティクス・ナビ
2019年データで見る日ロ貿易の物流地理
ロシア極東羅針盤
日本の極東貿易シェア低下
INSIDE RUSSIA
予想外の展開をたどった戦勝75周年
地域クローズアップ
変化と発展を目指すチェチェン共和国
産業・技術トレンド
2019年ロシアの旅客機生産
デジタルITラボ
コロナ影響下のロシアベンチャー投資
ロシアメディア最新事情
人気YouTubeチャンネルから見るロシア世相
ロシアと日本・
出会いの風景
コロナウイルスと新たなビジネスチャンス
駐在員のロシア語
サバイバルロシア語:メディカル編(3)
ロシア音楽の世界
ショスタコーヴィチのピアノ音楽 ―24の前奏曲―
業界トピックス
2020年4月の動き
通関統計
2020年1〜3月の輸出入通関実績
記者の「取写選択」
ブリヤートの350年


調査レポート
2019年のロシア・NIS諸国の経済トレンド

ロシアNIS経済研究所

 本誌では毎年6月号において、前年のロシア・NIS諸国の経済実績を踏まえつつ、各国の最新の経済動向について論評するという企画をお届けしている。本年も2019年のデータがほぼ出揃ったので、早速それを試みたい(『ロシアNIS経済速報』2020年4月15日および4月25日号より再録)。なお、モンゴルは一般的にはNISの範疇に入らないが、モンゴルも本レポートの対象に加えている。
 執筆は当会ロシアNIS経済研究所のスタッフによるものであるが、ロシアについては北海道大学スラブ・ユーラシア研究センターの田畑伸一郎教授に特にご寄稿いただいた。


データバンク
2019年の日本の対NIS諸国貿易統計

 恒例により、日本財務省発表の貿易統計にもとづいて、2019年の日本とNIS諸国との貿易に関し、データをとりまとめて紹介する。日本とロシアの貿易については、すでに5月号に掲載済みである。なお、日本とNISとの貿易に加え、モンゴルとの貿易データも取り上げてる。


データバンク
韓国の対中央アジア貿易投資動向

 韓国の文在寅政権における外交戦略のひとつ「新北方政策」は、とかくロシアや中国など大国との経済協力にスポットが当てられがちだが、同政策内では中央アジア諸国との関係強化も同様に謳われている。2019年4月の文大統領中央アジア3ヵ国歴訪(トルクメニスタン、ウズベキスタン、カザフスタン)は新北方政策の一環として実施されたものであり、各国で韓国の“武器”とも言える大統領によるトップセールスを展開、訪問中に結ばれた共同プロジェクトの総額は280億ドル以上にも上るという。そこで本稿では、韓国と中央アジア諸国との経済交流の動向を探るべく、2012年〜2019年までの二国間貿易および対中央アジア直接投資の統計データを整理し、概観する。なお本稿執筆に際しては、貿易データは国際貿易センター(ITC)のデータベースを、韓国の対中央アジア直接投資額と新規進出企業数のデータは韓国輸出入銀行のデータベースをそれぞれ参照した。(大内悠)


中央アジア情報バザール
2019年の中央アジアの貿易実績

 中央アジア各国の統計委員会(タジキスタンは統計庁)が発表したデータを基に各国の2019年の貿易統計をまとめたので、簡単な解説とともに紹介する。なお、トルクメニスタンについては公式統計が公開されていないが、参考までに報道ベースのデータおよび専門家の解説を紹介する。(中馬瑞貴)


ウクライナ情報交差点
ウクライナの鉄鋼輸出はほぼ現状維持

 ここ数年ですっかり農業に水をあけられたとはいえ、ウクライナで元々基幹産業だったのは鉄鋼業であり、今でも重要産業であることに変わりはない。以下では、最新の輸出データを整理する。(服部倫卓)


おいしい生活
プロフ缶で#おうちプロフはいかが?

 中央アジア料理の代表格といえばプロフだ。ロシアでも広く親しまれているのはもちろん、今や一部の中央アジアファンの貢献もあって日本においても徐々に知名度を上げつつある。クッ○パッドを覗いてみると、中々の本格派から日本ナイズされたものまで多彩なプロフのレシピがズラリ。現地で見るような巨大鍋がなくても、炊飯器さえあれば誰でも簡単に自宅でプロフを作れてしまうわけだ。「でも手間暇かけず手軽にあの味にありつきたい!」、そんなあなたにはプロフ缶がオススメ。(大内悠)


調査レポート
ロシアの2035年までのエネルギー戦略

酒井明司

 この3月にロシアとサウジアラビアの原油減産交渉が決裂して以来、COVID-19蔓延による急激な世界経済の減速と石油需要減退の中で原油価格は釣瓶落しとなった。危機感を覚えたOPECプラスが4月に大幅減産で何とか合意に到ったものの、現在の低価格がいつまで続くのかはCOVID-19次第としか言えない状況に陥っている。
 こうした現状では、1〜2年先ですら世界のエネルギー資源市場がどうなっているのか、またその中でロシアがどのような立場を取らざるを得ないのかの予想は甚だ難しいものになる。それにもかかわらず、去る4月2日に「ロシア連邦の2035年までのエネルギー戦略」が政府により正式に承認された。プーチンが大統領令でこの戦略文書作成を命じてから7年も経ている。その間に、草案が何度か公表されても結論には至れず、を繰り返してきたのだから遅過ぎた承認ではある。


自動車産業時評
2019年のロシア商用車市場

 ロシアの調査会社「ASMホールディング」と「Autostat」より、2019年通年のロシアの商用車の生産、販売、輸入に関するデータを入手することができましたが、今回はそれらのうち中・大型トラックとバスに関する情報を中心にご紹介します。(坂口泉)


ロジスティクス・ナビ
2019年データで見る日ロ貿易の物流地理

 2019年の日ロ貿易はドルベースで前年比5.9%収縮しました。本稿では主要輸出品が日本のどの港から積出され、輸入品がどの港に揚がったのかという物流地理を探ります。(辻久子)


ロシア極東羅針盤
日本の極東貿易シェア低下

 極東税関の通関統計によると、2019年のロシア極東地域の貿易高は、輸出が288億ドル、輸入が84億ドル、輸出入の総額は372億ドルとなった。収支は204億ドルの黒字であった。前の年と比べて、輸出が2.1%、輸入が33.4%、総額では7.8%の増加となった。貿易相手国のトップ3は、中国、韓国、日本。この3ヵ国が貿易高全体の75%を占める。なかでも、中国が2016年以降、最大の貿易相手国となっている。その一方で、日本のシェアの低下が際立つ。3ヵ国のシェアは中国が28.2%、韓国が27.2%、日本が19.7%。3ヵ国のシェアは拮抗していて、その順番は毎年変わり、日本が1番になることも、韓国がトップになることもあった。しかし、2016年以降、中国、韓国、日本の順番が定着している。日本はツートップの中韓に大きく水をあけられている。極東地域における日本のプレゼンスが低下している。(齋藤大輔)


INSIDE RUSSIA
予想外の展開をたどった戦勝75周年

 ロシアにとって、5月9日の対独戦勝記念日は、最も重要な祝日である。本年2020年は、戦勝75周年を迎えるということで、諸外国の元首も招いて盛大な記念式典を開催する予定だった。ところが、新型コロナウイルスの感染拡大により、プーチン政権はその延期を余儀なくされた。この問題に派生して、日本にとっては厄介な事態が生じた。ロシアで4月24日に成立した法律により、同国で第二次世界大戦の終結を記念する日が、これまでの9月2日から、9月3日へと変更されたのである。 (服部倫卓)


地域クローズアップ
変化と発展を目指すチェチェン共和国

 ロシアの地域の中で知名度が高いにもかかわらず、経済やビジネスといったテーマとは無縁のチェチェン共和国。1990年代と2000年代の2度にわたる紛争や今も発生するテロの影響で「チェチェン=危険」というイメージが定着している。そして、経済的にロシアで最も発展の遅れた地域の1つであることも事実だ。しかし、2度の紛争で壊滅状態にあった共和国の中心都市グロズヌィは、今や高層ビルや大型ショッピングセンターが建ち並び、急速に近代化した街の1つ。2008年に誕生した世界でも最大規模のイスラム寺院「チェチェンの命」は発展のシンボルだ。街の治安は改善してきていて、犯罪数が年々減少している。そこで本稿では、変化と発展の道を辿るチェチェン共和国について紹介したい。なお、チェチェン紛争についての詳細は専門的な書籍も多く、専門家が様々な議論を展開しているのでそちらに譲ることとしたい。(中馬瑞貴)


産業・技術トレンド
2019年ロシアの旅客機生産

 例年にならい、Vzlyot誌に掲載された生産数に基づき、2019年のロシアの旅客機生産についてまとめる。2019年は、スホーイスーパージェット(SSJ)がいよいよ苦しくなり、MC-21も先が見えないという不透明感があふれる状況になっている。こうした状況について、2019年のロシアの旅客機生産の実績とともに紹介する。(渡邊光太郎)


デジタルITラボ
コロナ影響下のロシアベンチャー投資

 先日、日経新聞で『大企業スタートアップ投資「減らす」9割、協業後退も』といった見出しの記事が掲載された。デロイトトーマツベンチャーサポートのアンケート調査によると、新型コロナウイルスの感染拡大で、本業の業績悪化を懸念した大手企業の多くが、2020年におけるベンチャー投資を2019年より減らす意向を示している。近年、日本のベンチャー投資を牽引していたのが、大手の事業会社だったこともあり、スタートアップ企業の間で不安が広がっている。一方で、バブル化していた企業価値が適正な価格に落ち着き、割安な株価を投資機会と見て、積極的に投資を行うと表明するベンチャーキャピタルも多い。スタートアップ界隈では、「コロナ影響下でもアクティブに動いているスタートアップ投資家」といったリストが共有されている。
 一方で、ロシアはどうか。本稿では、新型コロナウイルス感染拡大前のロシアスタートアップ企業への投資状況と、コロナ影響下での投資家の投資姿勢に焦点を当てたいと思う。(牧野寛)


ロシアメディア最新事情
人気YouTubeチャンネルから見るロシア世相

 新型コロナがロシア中で猛威をふるう中、私の住むモスクワでは5月31日までの自主隔離生活が延長されることが決定しました。世の中の不安定さに加えて、家にいる時間が長いので、ニュースや情報に対するニーズは高まっていると感じます。そしてニュースといっても、第一チャンネルやロシア新聞、タス通信などのいわゆる「大本営発表」ではなく、一般的には二流、三流の情報源とされているSNSやYouTubeの存在感がとても大きいです。そこで今回はYouTubeに特化して、ロシア語話者に人気のチャンネルや、ロシア社会を知るために個人的に注目しているチャンネルについてご紹介してみたいと思います。(徳山あすか)


ロシアと日本・出会いの風景
コロナウイルスと新たなビジネスチャンス

 このエッセイを書いている本日は4月中旬のある日で、東京の家にいる。平日には在宅勤務しており、日本国民と同様に外へ出ないようにしている。この先が見えず、緊張感がある。このエッセイを掲載した月報が読者の皆さんのお手元に届く頃には、きっと状況が変わっているので、環境、自分の心境が少し変わるかもしれないが、その点は予めご理解をお願いしたい。実は違うテーマについて書こうと思っていたが、全世界的に同じように、残念ながら、新型コロナウイルスについて、そしてあらゆる面へのその影響についてしか考えられない状況なわけで、その切り口で日本人・ロシア人のそれぞれの受け止め方、その違い、そしてこの中で生じているビジネスチャンスについて、少し意見をシェアしたい。(D.ヴォロンツォフ)


駐在員のロシア語
サバイバルロシア語:メディカル編(3)

 あってほしくないことだが、ロシアに駐在、あるいは出張している間に流行、大流行中の新型コロナウイルスに感染してしまったら 、入院させられることになる。そのような場合に備えての語彙、表現を覚えておきたい。(新井滋)


ロシア音楽の世界
ショスタコーヴィチのピアノ音楽
―24の前奏曲―

 ショパンで有名な前奏曲集にインスパイアされて、同じ「24曲の前奏曲」を書いたのが、ロシアの作曲家アレクサンドル・スクリャービンと、ドミトリー・ショスタコーヴィチであった。ショスタコーヴィチの24の前奏曲も、ショパンの24曲と同様、全ての調性を使用している。1曲目ハ長調に始まり、2曲目は並行短調のイ短調、3曲目は5度上のト長調、次の4曲目はまたその並行短調のホ短調、と言った具合に、長短の2曲ずつが5度の間隔で配列(後述)、最後の24曲目がニ短調で締めくくる。この点もショパンのものと全く同じように作曲されている。(ヒロ・ミヒャエル小倉)


記者の「取写選択」
ブリヤートの350年

 「ブリヤートの自発的なロシア国家編入350周年」。こう書かれた巨大バナーが2011年8月、東シベリア・ブリヤート共和国の首都ウランウデに掲げられていた。文字の上にはロシアとブリヤートの民族服の若者が腕を組んで踊る絵も。私は違和感を覚えた。まるで「諸民族の友好」をうたうソ連の政治宣伝ではないか。(小熊宏尚)