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ロシアNIS調査月報2021年5月号特集◆エネルギー激動と |
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特集◆エネルギー激動とロシア経済 |
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調査レポート |
守りを固めるロシア:2020年マクロ経済実績の分析 |
調査レポート |
2020年のロシアの石油・ガス産業 |
調査レポート |
2020年の日ロ貿易:コロナに翻弄された1年 |
講演録 |
コロナ禍のロシアの経済と石油・ガス産業 |
INSIDE RUSSIA |
スエズ運河事故とロシアの国益 |
イベント・レポート |
国際的水素サプライチェーンの構築と日本の技術 |
ロシアの二国間関係 |
冷めた中でもプラグマティックなロシアと米国 |
ロジスティクス・ナビ |
ロシア極東港湾の動向 |
自動車産業時評 |
2020年のロシア商用車市場 |
ロシア極東羅針盤 |
極東の人口減少が再び加速 |
シベリア・北極圏便り |
Biosensorica社畜産業でのIoT活用 |
ミニ・レポート |
ロシア食品店「赤の広場」が銀座にオープン |
HOW TO ビジネス実務 |
ロシア税制の未来を読み解く(1) |
シリーズ 工業団地探訪 |
ロシアの工業団地と類似インフラの比較(上) |
データリテラシー |
ロシア産はちみつと日本でのブランディング |
デジタルITラボ |
ロシアにおけるアグリテック |
ウクライナ情報交差点 |
微減に転じたウクライナの出稼ぎ収入 |
中央アジア情報バザール |
中央アジア諸国の食糧安全保障 |
ロシアメディア最新事情 |
SNSに露出する子どもと変わる家族の姿 |
ロシア音楽の世界 |
ラフマニノフ「ヴォカリーズ」 |
業界トピックス |
2021年3月の動き |
通関統計 |
2021年1〜2月の輸出入通関実績 |
記者の「取写選択」 |
ガガーリンの子供たち |
調査レポート
守りを固めるロシア:2020年マクロ経済実績の分析
北海道大学スラブ・ユーラシア研究センター 教授
田畑伸一郎
2020年はロシア経済も新型コロナウィルスに翻弄される1年となった。石油に強く依存するロシア経済は、コロナ感染拡大の第1波の際に生じた油価急落の影響を強く受け、4月に取られた感染防止のための企業活動の停止によって大きな打撃を受けた。夏頃にはコロナ感染もある程度収まり、経済も回復の兆しを見せたが、秋以降の第2波の到来により、再び経済活動が停滞することとなった。
それでもGDPの減少率は3%に留まり、主要国のなかでは減少幅が比較的小さくて済んだ。これには、経済活動が停止された際にも、資源産業や素材産業などは生産活動を続けられたことや、観光業や飲食業など、他国においてコロナ禍の影響を最も強く受けたサービス産業のGDPに占める比重がそれほど大きくないことなどが寄与した。
ロシア政府も他の国々と同じようにコロナ対策のために財政出動を行ったが、その規模はGDPの3%程度と見られ、財政赤字が極端に大きくなることはなかった。ロシアには政府系ファンドとして国民福祉基金が設けられているが、それにあまり頼ることもなかった。油価下落の影響でルーブル・レートが低落し、ルーブルを支えるための事実上の市場介入が行われたが、金価格の上昇や為替差益により、外貨準備は史上最高の水準となった。ロシア政府は、むやみに財政支出を増やしたり、外貨準備を取崩したりするのではなく、ロシアに対する欧米諸国の対応が厳しくなっているなかで、より深刻な経済危機を起こさないために守りを固めているように見える。
調査レポート
2020年のロシアの石油・ガス産業
ロシアNIS経済研究所 名誉研究員
坂口泉
2020年はロシアの石油ガス分野もコロナ禍の直撃を受け、それに起因する不測の事態が多発した。石油分野では、コロナ禍とロシア側が下した協調減産協定を破棄するという決断の結果、3月に入り油価が急落し、ロシアの代表的油種であるUralsの価格が一時バレル10ドル台にまで落ち込むという不測の事態が生じた。ロシアの石油分野の主要な税金である採掘税も輸出関税も油価がそのレベルまで下がると税率がほぼゼロになるので、石油ガス収入への依存度が高いロシアではもうひとつの「緊急事態」が生じていたことになる。大慌てしたロシアが急いで協調減産協定への復帰を宣言したこともあり4月以降は「緊急事態」からは脱却できたが、油価の低迷が当面続くと予測したロシア政府は秋になり石油分野に対する課税圧力を強化するという「禁じ手」に打って出た。不況下での課税圧力強化はロシアの石油会社に大きな衝撃を与えた。実際、当該の「禁じ手」の影響を最も強く受けることになったルクオイルは2021年春時点でもその撤回を政府に対し執拗に要求していた。
ガス分野もやはりコロナ禍に伴うガス価格の急落や需要の低迷といった不測の事態に見舞われ、2020年のガスプロムのガスの輸出量は数量ベースで見ても金額ベースで見ても前年の数字を大きく下回った。NOVATEKやサハリンエナジーなどによるLNGの輸出も数量ベースの数字はほぼ前年より若干増加したものの、金額ベースの数字は縮小した。ガス分野に関しても、やはりコロナ禍に翻弄された1年だったといえるのではなかろうか。
本稿では、コロナ禍がロシアの石油ガス分野に及ぼした影響に留意しながら、2020年の同分野で生じた主な出来事を振り返ってみたい。
調査レポート
2020年の日ロ貿易:コロナに翻弄された1年
ロシアNIS経済研究所 副所長
中居孝文
なお、これまで小誌では、財務省が3月に発表する前年貿易統計の確定値にもとづいて、5月号に日ロ貿易の統計を掲載してきた。しかし、このほど財務省より、3月には前年の「確々報値」を発表し、1年分の修正を加えた「確定値」は11月に発表するとのアナウンスがあった。というわけで、以下に掲載する2020年のデータは、「確定値」ではなく、「確々報値」ということになるので、ご了承いただきたい。
2020年の日ロ貿易は輸出入合計で165億5,767万ドルとなり、前年比22.8%減の大幅な低下となった。日本側の輸出は58億7,040万ドル(18.2%減)、輸入は107億626万ドル(25.2%減)で、輸出入ともに2年連続の低下となった。また2020年には48億3,586万ドルの日本の入超で、2009年以来、12年連続の輸入超過となった。
講演録
コロナ禍のロシアの経済と石油・ガス産業
V.ツヴェトコフ A.ガブエフ M.ベロヴァ S.サヴシキン
2021年3月1日(月)、3日(水)、5日(金)の3日間にわたり、ロシアNIS貿易会では、ロシア・カザフスタン・アゼルバイジャンの経済・エネルギー専門家による連続ウェビナー「コロナ禍の2020年を回顧する−経済と石油ガス産業への影響−」を開催した。本稿では、その中から3日と5日に行われたロシアの専門家による報告要旨をご紹介する。
INSIDE RUSSIA
スエズ運河事故とロシアの国益
3月23日に発生し、29日に解消されたスエズ運河封鎖事故は、ロシアの国益にとってはどのようなかかわりがあっただろうか?(服部倫卓)
イベント・レポート
国際的水素サプライチェーンの構築と日本の技術
2021年3月11日、当会は日本の水素利活用技術をロシア及び他CIS諸国に広く紹介することを目的としたウェビナー「国際的水素サプライチェーンの構築と日本の水素技術」を開催した。ウェビナーには、液化水素の製造及びその国際物流チェーンを築くべく実証事業を実施している川崎重工業、CO2フリーの水素キャリアとしてのアンモニアの製造及び利用拡大を目指す日揮ホールディングス、同じく水素キャリアとしてメチルシクロヘキサン(MCH)を用いた水素の輸送・貯蔵技術を開発している千代田化工建設、そして再生可能エネルギーを活用した水素製造・貯蔵を基礎とする建造物での水素循環システムの構築を目指す清水建設から、それぞれ各社を代表するエンジニアが登壇し、各社の技術を紹介した。(長谷直哉)
ロシアの二国間関係
冷めた中でもプラグマティックなロシアと米国
2021年1月、米国にバイデン政権が誕生した。プーチン大統領にとっては、クリントン、ブッシュ、オバマ、トランプに次ぐ5人目のカウンターパートの誕生である。主要大国のトップ同士の関係は世界的にも注目される。
そんな中、3月4日にバイデン大統領はプーチンを「殺人者」呼ばわりし、大きな話題となった。各種報道で米ロ関係の悪化に拍車がかかったとの評価が飛び交っている。
本稿では、政治対立の陰に隠れている、経済関係を中心にロ米関係を見ていくことにする。(中馬瑞貴)
ロジスティクス・ナビ
ロシア極東港湾の動向
コロナの影響を受けてロシア港湾全体が伸び悩んだ2020年、極東港湾だけは取扱量が増加しました。本稿では極東水域の主要港湾の動向を紹介し、好況の要因を探ります。(辻久子)
自動車産業時評
2020年のロシア商用車市場
ロシアの調査会社「ASMホールディング」と「Autostat」より、2020年通年のロシアの商用車の登録台数、生産、販売、輸入に関するデータを入手することができましたが、今回はそれらのうち中・大型トラックとバスに関する情報を中心にご紹介します。(坂口泉)
ロシア極東羅針盤
極東の人口減少が再び加速
コロナ危機でロシア極東の人口減少が再び加速している。極東地域(ブリャート共和国とザバイカル地方を含む)の人口は2021年初現在で推計812万4,053人と前年より4万5,150人減った。ソ連解体以降、30年連続の減少となり、減少に歯止めがかからない状況が続く。(齋藤大輔)
シベリア・北極圏便り
Biosensorica社畜産業でのIoT活用
本稿では、3月2日に実施した当会事業「トムスクAIピッチデイ『AI技術と製造業への応用の可能性』」に登壇した、トムスク(TUSUR:トムスク国立制御システム・無線通信大学)発のスタートアップである、Biosensorica社の創業者、ヴャチェスラフ・コブゼフ氏へのインタビューを紹介したいと思います。(長谷直哉)
ミニ・レポート
ロシア食品店「赤の広場」が銀座にオープン
2021年3月22日、銀座1丁目の昭和通り沿いに「赤の広場 銀座店」が正式にオープンした。日本在住歴20年ウクライナ出身のミヤベ・ヴィクトリアさんが代表取締役CEOを務める。ミヤベさんは2006年に貿易専門商社VSP鰍設立し、ロシアから食品を輸入して15年目になる。2015年ビクトリー鰍設立し、ネットショップのロシア食品専門店「ヴィクトリアショップ」で販売を開始した。そして今年、念願の実店舗をオープンさせた。(斉藤いづみ)
HOW TO ビジネス実務
ロシア税制の未来を読み解く(1)
本コラムでは前回までロシア会計をテーマにしてきましたが、今回からは執筆者も新たに、ロシア税制をテーマにしたいと思います。
ロシア税制というと、難解なイメージが先行してしまい、本コラムのコンセプトには少し合わないのではないか?と思い、副題を「ロシア税制の未来を読み解く」という内容にしてみました。
(上村雅幸)
シリーズ 工業団地探訪
ロシアの工業団地と類似インフラの比較(上)
ロシアでは工業団地のほかにも企業の誘致を図るインフラとして様々な概念、用語、制度が並立しており、日本企業がロシアにおける生産立地を検討する際に混乱することも懸念される。今回と次回は個別の工業団地の探訪はお休みとし、ロシアにおける工業団地とそれに類似する企業立地インフラの諸概念を整理してみたい。さらにその中でロシアでは工業団地をどのように位置づけているのか、日本企業が一般にイメージする工業団地とはどこで異なるのか、についても考えてみたい。(大橋巌)
データリテラシー
ロシア産はちみつと日本でのブランディング
近年、ロシア企業が日本市場への食料品輸出を目指すケースが増えてきたように感じます。コロナ禍発生前に訪問したいくつかのロシアの地方では、意図しない形ではありましたが、食料品の売り込みを受けたり、あるいは日本の食品市場に関する情報を求められたりするなど、地場産品を積極的に海外展開しようとする現地政府や企業関係者の熱意を感じ取れる場面に何度も遭遇しました。もちろん、それぞれの場で紹介された食料品の種類は、乳製品、加工肉製品、菓子類、健康食品など多岐にわたりますが、その中でも紹介される頻度の多かった製品が、はちみつです。(長谷直哉)
デジタルITラボ
ロシアにおけるアグリテック
先日、ROTOBOの主催で、トムスクのIT企業やスタートアップ企業を紹介するオンラインイベント「トムスクAIピッチデイ」が開催された。その中で、日本企業から最も注目を浴びた企業は、トムスク市内の大学発ベンチャー「ビオセンソリカ(Biosensorica)」であった。同社は、家畜(主に酪農牛)に取り付けるIoTセンサーを開発し、家畜の体温データや行動データから発情状態を検知し、効率的な受胎をサポートするソリューションを開発している。ビオセンソリカに関しては、本誌の別記事を参照頂きたい。本稿ではロシアの農業・畜産分野におけるテクノロジー企業、いわゆるアグリテック市場を概観する。(牧野寛)
ウクライナ情報交差点
微減に転じたウクライナの出稼ぎ収入
ウクライナでは、国内に良い働き口が乏しく、国民が国外での出稼ぎ収入に依存する度合いが年々強まっている。そこで、本コーナーでは定期的に、ウクライナの出稼ぎ労働者が本国にもたらす個人送金(いわゆるレミッタンス)のデータを取り上げているが、このほどウクライナ中央銀行が2020年の統計を発表したので、早速これをグラフにして紹介する。(服部倫卓)
中央アジア情報バザール
中央アジア諸国の食糧安全保障
世界的な人口増加による食料需要の増大、気候変動や環境破壊による生産減少など様々な背景によって、必要な食料を安定的に入手できるかどうか、すなわち「食糧安全保障(Food Security)」という言葉に近年、世界的な関心が高まっている。また、特にコロナ禍においては国境を超えるモノの移動が制限され、国内で自給自足が可能であるか、生産の多角化が可能であるかなど、農業分野の発展や改革に注目が集まった。
中央アジアでは食糧安全保障や農業改革がどのようにとらえられているのか。EIUのランキングを紹介しながら、各国の対策についてみていきたい。(中馬瑞貴)
ロシアメディア最新事情
SNSに露出する子どもと変わる家族の姿
SNSが私たち全世代の生活に浸透して久しくなり、一般の子どもが私生活を投稿し、ファンを集めてお金を稼ぐことも珍しくなくなりました。日本にもキッズインスタグラマーがいますが、ロシアやウクライナのそれは規模感が段違いです。今回の気になるニュースはウクライナ発。ロシアでもセンセーショナルに取り上げられています。(徳山あすか)
ロシア音楽の世界
ラフマニノフ「ヴォカリーズ」
世界で一番大きな手をしていたピアニストは? おそらく、セルゲイ・ラフマニノフ(1873〜1943)に敵うピアニストは今のところ現れていないはずである。誰にもマネの出来ないピアノ技巧で一世を風靡したラフマニノフは、身長198センチの巨人で、大きな手を広げて、長い指でもって鍵盤の上を縦横無尽に活躍した世紀の名ピアニストであった。(ヒロ・ミヒャエル小倉)
記者の「取写選択」
ガガーリンの子供たち
「率直に言えば、シャトルで飛行したかった」。宇宙飛行士、古川聡さんは2011年7月15日、国際宇宙ステーション(ISS)でこう話した。最後のスペースシャトルがドッキングした際の記者会見でのことだ。彼は前月、ロシアのソユーズ宇宙船でISS入りしていた。(小熊宏尚)