ロシアNIS調査月報
2021年6月号
特集◆コロナ・資源乱高下・
政情不安に揺れるNIS
 
特集◆コロナ・資源乱高下・政情不安に揺れるNIS
調査レポート
2020年のロシア・NIS諸国の経済トレンド
データバンク
2020年の日本の対NIS諸国貿易統計
データバンク
2020年の中央アジア・コーカサス貿易統計
INSIDE RUSSIA
ロシア・ウクライナ・ベラルーシの不毛な三角関係
エネルギー産業の話題
カザフスタン石油・ガス産業の最新動向
自動車産業時評
2020年のNIS諸国の乗用車市場
ロシアの二国間関係
ロシアと中国の狭間で揺れるタジキスタン
ウクライナ情報交差点
ウクライナでは鉄鋼よりも鉄鉱石の輸出が好調
中央アジア情報バザール
水利権をめぐるキルギスとタジキスタンの国境紛争
おいしい生活
ますます身近になるウクライナのお菓子

調査レポート
ロシア極東経済への新型コロナの影響
ロジスティクス・ナビ
シベリア鉄道はスエズ運河を補完しうるか
シリーズ 工業団地探訪
ロシアにおける工業団地と類似インフラの比較(下)
HOW TO ビジネス実務
ロシア税制の未来を読み解く(2)
ロシア極東羅針盤
2020年のロシア極東経済
地域クローズアップ
農業とハイテクという2つの顔を持つペンザ州
ロシア政財界人物録
ロシアで最も稼ぐ女性バカリチュク
デジタルITラボ
ロシアから5Gのキラーアプリは生まれるか
産業・技術トレンド
ロシア自動車工場への製造ライン販売のハードル
データリテラシー
数字で見るスコルコヴォ:現状と実績
ロシアメディア最新事情
モスクワ国際映画祭取材の舞台裏
ロシア音楽の世界
ショスタコーヴィチ交響曲第6番ロ短調
ドーム・クニーギ
高橋浩著『日本とソ連・ロシアの経済関係
―戦後から現代まで』
業界トピックス
2021年4月の動き
通関統計
2021年1〜3月の輸出入通関実績
記者の「取写選択」
欧州のロシアショップ


調査レポート
2020年のロシア・NIS諸国の経済トレンド

ロシアNIS経済研究所

 本誌では毎年6月号において、前年のロシア・NIS諸国の経済実績を踏まえつつ、各国の最新の経済動向について論評するという企画をお届けしている。本年も2020年のデータがほぼ出揃ったので、早速それを試みたい(『ロシアNIS経済速報』2021年4月15日および4月25日号より再録)。なお、モンゴルは一般的にはNISの範疇に入らないが、モンゴルも本レポートの対象に加えている。
 執筆は当会ロシアNIS経済研究所のスタッフによるものであるが、ロシアについては北海道大学スラブ・ユーラシア研究センターの田畑伸一郎教授に特にご寄稿いただいた。


データバンク
2020年の日本の対NIS諸国貿易統計

 恒例により、日本財務省発表の貿易統計にもとづいて、2020年の日本とNIS諸国との貿易に関し、データをとりまとめて紹介する。日本とロシアの貿易については、すでに5月号に掲載済みである。なお、日本とNISとの貿易に加え、モンゴルとの貿易データも取り上げてる。
 なお、これまで小誌では、財務省が3月に発表する前年貿易統計の確定値にもとづいて、6月号に日本・NIS貿易統計を掲載してきた。しかし、このほど財務省より、3月には前年の「確々報値」を発表し、1年分の修正を加えた「確定値」は11月に発表するとのアナウンスがあった。したがって、以下に掲載する2020年のデータは、「確定値」ではなく、「確々報値」ということになるので、ご了承いただきたい。


データバンク
2020年の中央アジア・コーカサス貿易統計

 中央アジアおよびコーカサス諸国の統計機関発表のデータに基づき、各国の2020年の貿易統計をまとめたので、簡単な解説を交えてご紹介する。ここでは、トルクメニスタンとアルメニアを除いた6カ国の貿易について統計を表にまとめている。各国ごとに、地域別貿易実績、主要貿易相手国、主要輸出入品目構成(アゼルバイジャンを除く)についての表を作成した。


INSIDE RUSSIA
ロシア・ウクライナ・ベラルーシの不毛な三角関係

 ロシアのV.プーチン大統領は4月21日、年次教書演説を行った。演説で目立ったのは、欧米およびそれになびくNIS諸国に対する敵対的な姿勢であった。本稿では、教書演説の対外関係に関連した部分を紹介し、また最近の対ウクライナおよび対ベラルーシ関係を整理する。(服部倫卓)


エネルギー産業の話題
カザフスタン石油・ガス産業の最新動向

 カザフスタンはロシアに次ぐ旧ソ連圏第2位の産油国であると同時に、中央アジア有数の産ガス国としても知られています。本稿では同国の石油ガス分野の現状の他に、同国産ガスの主要な輸出ルートとなっている「中央アジア〜中国」ガスパイプラインの概要もご紹介します。(坂口泉)


自動車産業時評
2020年のNIS諸国の乗用車市場

 今回は、旧ソ連諸国のうちウクライナ、カザフスタン、ベラルーシの3か国をとりあげ、それぞれの国の2020年の乗用車市場の状況をご紹介します。その他、ウズベキスタンの自動車生産の現状もご紹介します。(坂口泉)


ロシアの二国間関係
ロシアと中国の狭間で揺れるタジキスタン

 旧ソ連および中央アジアの小国タジキスタンには、独立直後の内戦の影響もあって、今なお約7,000人規模のロシア軍が駐留しており、国防・軍事面でロシアに大きく依存している。また、タジキスタン経済を支える海外送金の大半はロシアで働く労働移民によってもたらされている。ロシアにおける労働移民の数としては、タジキスタンはウズベキスタンに次ぐ第2位であり、両国の人口の違いを考えるとそれがどれほど大きなものか理解することができるだろう。(中馬瑞貴)


ウクライナ情報交差点
ウクライナでは鉄鋼よりも鉄鉱石の輸出が好調

 最近でこそ農業に水をあけられているが、ウクライナでもともと基幹産業だったのは鉄鋼業であり、今でも重要産業であることに変わりはない。以下では、最新の鉄鋼輸出データを整理し、関連して鉄鉱石の輸出も取り上げる。(服部倫卓)


中央アジア情報バザール
水利権をめぐるキルギスとタジキスタンの国境紛争

 2021年4月29日、中央アジアのキルギスとタジキスタンの国境で、死者約40人と負傷者200人以上(2021年5月5日時点の報道)の被害を出す両国の独立以来最も大規模な軍事衝突が起きた。直接的な原因は前日から続いていた両国の国境地域における水資源をめぐる利権対立だが、さらにその背景には長年にわたって未解決の国境問題がある。そこで本稿では、日本でも報道された今回の軍事衝突について事実関係を紹介するとともに、その背景にある国境問題にスポットを当てる。(中馬瑞貴)


おいしい生活
ますます身近になるウクライナのお菓子

 数年前から、ウクライナ産のチョコレートは、日本の消費者にも届くようになっていた。ポロシェンコ前大統領の会社として有名なロシェン社のチョコレートは今では楽天市場にお店があるし、一時期「おかしのまちおか」などでも非常に手頃なウクライナ産チョコレートが売られていた。そして今般、ウクライナ産チョコレートだけでなく、ビスケット、クラッカー、パイなどのお菓子も、日本で手軽に買えるようになった。(服部倫卓)


調査レポート
ロシア極東経済への新型コロナの影響

ロシア科学アカデミー極東支部経済研究所
P.ミナキル

 2020年に世界を襲い、現在も続いているコロナ禍は、ロシアの地域経済にも大きな影響を及ぼしており、当然ながら極東地域もその例外ではない。もっともモスクワを中心とするロシア欧州部から遠く離れ、産業構造も異なるロシア極東では、新型コロナの感染状況にもコロナ禍による経済への影響度合いにも、ロシア欧州部とは状況に違いがみられる。本稿では、そのあたりの事情を含めて、コロナ禍によるロシア極東経済への影響を概観する。


ロジスティクス・ナビ
シベリア鉄道はスエズ運河を補完しうるか

 3月にスエズ運河を1週間にわたって塞いだ大型コンテナ船座礁事故時には、代替ルートとしてシベリア鉄道が注目されました。本稿ではシベリア鉄道を利用した欧州向け輸送サービスを巡る最近の動きを紹介します。(辻久子)


シリーズ 工業団地探訪
ロシアにおける工業団地と類似インフラの比較(下)

 前回は、ロシアにおける工業団地に類似する企業立地インフラあるいは用語として、「工業建築地域」「生産区域」「工業地区」「経済特区」「テクノパーク」を概観してきた。今回は、前回に紙幅の都合で書き切れなかった、テクノパークの実例から始めたい。(大橋巌)


HOW TO ビジネス実務
ロシア税制の未来を読み解く(2)

 本コラムでは、昨今の目まぐるしく変化していくロシア経済の中にあって、国家の収入源である税制は今後どのように変化していくのか、といった視点から未来を読み解いていきます。税制の未来の動きを考えることで皆様のロシアビジネスの将来予測に少しでも有用な情報をお届けできればと思っています。
 さて、第2回は付加価値税についての未来予想図を読み解きたいと思います。(上村雅幸)


ロシア極東羅針盤
2020年のロシア極東経済

 新型コロナウイルスで深刻な打撃を受けたロシア極東の地域経済。2020年の経済データは前年を下回る状態が続く。制限解除後も苦しい状況に変わりはない。(齋藤大輔)


地域クローズアップ
農業とハイテクという2つの顔を持つペンザ州

 ペンザ州は沿ヴォルガ連邦管区に属する地域であり、タンボフ州やリャザン州など中央連邦管区に属する地域と接する境界地域だ。沿ヴォルガ連邦管区と言えば、製造業が集積しており、日本でも比較的馴染みのある地域が多いが、ペンザ州は伝統的に農業が中心の地域ということもあって、日本ではあまり名が知られていない。しかし、実はここ数年、ペンザ州は鉱工業生産が急成長を続けており、特に電子・コンピューター産業や製薬・医療機器産業など、ハイテク技術分野の産業の発展が目立っている。本稿では、農業とハイテク・イノベーションという対照的な2つの顔を持つペンザ州について紹介していくことにする。(中馬瑞貴)


ロシア政財界人物録
ロシアで最も稼ぐ女性バカリチュク

 ロシア版Forbes誌は2014年から「ロシアの女性富豪ランキング」を発表しています。このランキングでずっとトップを獲得してきたのは、建設業や投資で財を成したYe.バトゥーリナ氏でした(同氏は2019年に死去したルシコフ前モスクワ市長の妻でもありました)。しかし、2021年3月に公表されたランキングでは初めて、同氏以外が第1位に登場しました。それが、タチアナ・バカリチュク「Wildberries」社長です。Wildberriesは、2014年ごろからロシアで認知度と利用が急拡大した、衣料品やファッションを軸としたEコマース企業であり、ロシアでのオンライン通販業者として売上トップに立つ企業でもあります。(長谷直哉)


デジタルITラボ
ロシアから5Gのキラーアプリは生まれるか

 先日、サンクトペテルブルグ市内で、大手通信会社MTSが5Gセンターの開所式を行った。開所式には、クアルコム、エリクソン、サムスンなどが参加している。筆者は日本人唯一の参加者であった。MTSはモスクワで2019年に同センターを開所しており、サンクトペテルブルグは2拠点目となる。5G(第5世代移動通信システム)を活用したサービスの開発が主たる目的だ。本センターの運営は、MTSの中でスタートアップ企業との連携を主事業としているMTSスタートアップ・ハブ(Startup Hub)が行っている。本センターの詳細は、後述するとして、今回はロシアにおける5Gの推進状況と5G時代のサービス・ソリューションを開発するロシアのスタートアップに焦点をあててみたいと思う。(牧野寛)


産業・技術トレンド
ロシア自動車工場への製造ライン販売のハードル

 日本が一番得意な産業分野は自動車である一方、ロシアが一番苦手な産業分野は自動車である。そうすると、自動車分野で、ビジネス上のマッチングが成立しそうに見える。例えば、日本製の設備を納入することで、ロシアの自動車の品質を上げることはいかにもありえそうに聞こえる。しかし、事はそんなに単純ではなかった。商売は無償ボランティアではないので、経済的合理性がないと成り立たない。ロシアの自動車産業のあまりの技術力のなさと、規模の小ささは、経済的合理性や技術的合理性の成立を妨げ、日本企業によるロシア自動車産業への生産設備の販売の大きな障害となるのが現実であった。筆者が実際に見た事例をベースに、いかに簡単な話でないかということについて説明したい。(渡邊光太郎)


データリテラシー
数字で見るスコルコヴォ:現状と実績

 ロシアにおけるイノベーション拠点、新規技術開発に取り組む最先端のテクノパークとしての地位を確固としつつある、スコルコヴォ。フォーラムやセミナーなど同地で実施されるビジネスイベントに参加することで、スコルコヴォの現況を見知った方も増えてきたのではないでしょうか。同地が更地の頃から見知っている身としては、個人的にも感慨深いものを感じます。 今回はこのスコルコヴォに関し、その事業活動や成果を数字に基づいて紹介します。開設11年目を迎えるスコルコヴォ、その現状はどのようなものなのでしょうか。(長谷直哉)


ロシアメディア最新事情
モスクワ国際映画祭取材の舞台裏

 緊急事態宣言が出ている日本とは対極に、コロナなど無かったかのように気持ちが緩んでいるモスクワ。街が通常運転しているだけでなく、映画祭のような大勢が集まるイベントさえも開催できるようになったのは驚きです。43回目を迎えるこの映画祭、今年は5本の日本映画が公式招待されました。いつも通りドタバタした、取材の舞台裏をお伝えします。(徳山あすか)


ロシア音楽の世界
ショスタコーヴィチ交響曲第6番ロ短調

 ブルックナー交響曲で、チェリビダッケ指揮の公演ならどうしても聴きに行きたい、リヒャルト・シュトラウスの作品で、カルロス・クライバー指揮の公演ならどうしても聴きに行きたい、と必死にチケットを買い求めて通っていたのが欧州での90年代。80年代の日本でも、ブルックナーで朝比奈隆の指揮なら是非聴きに行こうとこだわっていたことがあった。
 現在では、そんな熱狂的愛着を覚える組合せは、なかなかなさそうと思っていたのだが、あったのである。それが「ショスタコーヴィチ交響曲を井上道義指揮で」である。(ヒロ・ミヒャエル小倉)


記者の「取写選択」
欧州のロシアショップ

 東京・銀座に3月、ロシア食品店「赤の広場」が開店した。かつて新橋に「白樺」、池袋の西武百貨店に「ソ連東欧センター」というソ連物産店が存在し、私自身、後者でアルバイトをしたこともある。新生ロシア30年の今年、この種の店が復活したのは感慨深い。
 一方、崩壊したソ連から住民が多数流入した欧州では、移民を顧客としたロシア・旧ソ連食品の店が以前から多数存在する。(小熊宏尚)