ロシアNIS調査月報2008年11月号特集◆日ロ自動車ビジネスは |
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特集◆日ロ自動車ビジネスはどこまで広がるか |
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特報 |
日本のアフターマーケット企業が見たロシアの自動車関連ビジネスの可能性 |
調査レポート |
ロシアの自動車ディーラー業界事情 ―地方進出の動きを中心に― |
調査レポート |
ロシアのアフターマーケットの成熟度 |
ビジネス最前線 |
ロシアに浸透する「HINO」ブランド ―極東からモスクワまで |
ミニ・レポート |
外国ブランド乗用車のロシア現地生産 |
ミニ・レポート |
ロシアにおけるバスの生産と市場 |
データバンク |
2008年上半期のロシア乗用車市場 |
メタルワールド |
日本からの設備導入も決まったインテルコスW |
データバンク |
2008年1〜6月のロシア・NIS経済 |
データバンク |
2008年1〜6月の日本の対ロシア・NIS諸国貿易統計 |
ユーラシア巡見 |
最新アルメニア事情 |
研究所長日誌 |
盛況だった第3回日露投資フォーラム |
クレムリン・ウォッチ |
ロシア・グルジア戦争 ―経緯と影響 |
日本センター所長 リレーエッセイ |
キエフ編 日本センター活動を通じて知るウクライナ |
ドーム・クニーギ |
A.マステパノフ著・杉本侃監修『21世紀のロシア・エネルギー戦略 2008年版』 |
エネルギー産業の話題 |
ロシア製油部門の最新事情 |
ノーヴォスチ・レビュー |
深刻なロシアの森林火災 |
ロシアビジネスQ&A |
◎ロシアからのアルコール飲料の輸入方法 |
業界トピックス
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2008年8-9月の動き ◆ロシアで顕微鏡販売を強化する日本電子 2008年1〜8月の通関統計 |
特報
日本のアフターマーケット企業が見たロシアの自動車関連ビジネスの可能性
潟Iートマート・ネットワーク 編集長
貴堂郁
はじめに
小誌では、毎年11月号で、ロシアの自動車市場の特集を組むのが、恒例となっている。本年は、「日ロ自動車ビジネスはどこまで広がるか」と題して、特集をお届けする。
言うまでもなく、自動車セクターは、日ロ経済関係の柱である。これまでは、ロシア・ヨーロッパ部での乗用車(新車)の販売と、ロシア極東向けの中古乗用車輸出がその中心となってきたが、ここに来て日ロ自動車ビジネスがさらに深化・多様化する様相を見せ始めている。そのトレンドを捉えてお伝えしようというのが、今号の趣旨である。
自動車ビジネスの深化・多様化という観点から、注目される分野のひとつが、アフターマーケット市場である。本年8月末から9月初頭にかけて、有力企業の経営トップを含む日本のアフター企業の代表団が、ロシア市場視察ツアーを行った。我々ロシアNIS貿易会も、この視察団にジョイントする形で、ビジネスマッチングを実施している。
そこで小誌では、この視察ツアーを企画した潟Iートマート・ネットワークの貴堂編集長に、今回の視察の成果、参加者の反応、ロシア市場の将来性などについて、ご寄稿いただいた。以下、そのレポートをお届けする。(編集部)
ロシアの自動車ディーラー業界事情
―地方進出の動きを中心に―
ロシアNIS経済研究所 次長
坂口泉
はじめに
1.地方進出の動き
2.修理メンテナンス・サービス強化の動き
3.下取りサービスの発展の可能性
4.主要ディーラーの現状
おわりに
はじめに
市場の急激な拡大に伴い、ロシアの各自動車ディーラーも順調に成長を続けてきたが、ここにきて市場の潮流に変化の兆候が見え始めており、これまでの企業戦略を抜本的に見直す必要に迫られている。たとえば、モスクワおよびサンクトペテルブルグの二大市場において新車の販売台数が伸び悩む傾向が見え始める一方で、大ウラル地方に代表される地方部で新車の販売台数が急激に伸びており、モスクワやサンクトペテルブルグを拠点とする大手自動車ディーラーの多くが地方市場への進出を急ぐようになっている。さらに、メーカー・サイドの発言力の強化ならびに市場での競争の激化の結果、新車販売の利益率が低下しており、各ディーラーはこれまであまり注意を向けてこなかった修理メンテナンス・サービス部門の強化や中古車販売の拡大の必要性に迫られている。
本稿では、市場の潮流の変化への対応振りに焦点をあてながら、ロシアの自動車ディーラー業界の最新の状況をご紹介する。
ロシアのアフターマーケットの成熟度
ロシアNIS経済研究所 調査役
芳地隆之
はじめに
現在のロシアでは日本車の人気が高まるに従って、日本の自動車用品メーカーおよび同卸・小売企業のロシア市場への関心が強くなっている。そうしたなか、当会は、日本の自動車アフターマーケット関連企業のミッションがロシア最大の自動車アフターマーケットの見本市「第4回インターアフト2008(開催期間:8月27日〜31日、於:モスクワ“クロッカス・エキスポ” 見本市会場)」を視察する機会を捉えて、モスクワおよびサンクトペテルブルグの日本センターの会議室をお借りして、当該分野のロシア企業との面談を実施。協業の可能性についての意見交換を行った。本稿では、現地訪問のなかで見えてきたロシアのアフターマーケットの現状について報告する。
ビジネス最前線
ロシアに浸透する「HINO」ブランド
―極東からモスクワまで―
日野自動車(株) 欧阿・中東部 欧州グループ
主管 舟生達兄さん
はじめに
ロシアにおける日本製乗用車の人気の高さはよく聞くところですが、トラックやバスなどの商用車については、“メイド・イン・ジャパン”といえども、まだまだ馴染みが薄いのが現状です。2008年7月、日本国内での大中トラックの販売シェアNo.1の日野自動車がモスクワとウラジオストクに販売会社「日野ロシア」を設立しました。優れた耐久性、高い安定性、省燃費といった同社の優位性をロシアに広めるべく、舟生さんは事前調査の段階から携り、「シベリア極東からロシア欧州部」に攻める日野自動車独自の戦略を進めています。
ミニ・レポート
外国ブランド乗用車のロシア現地生産
はじめにロシアでは、外国ブランドの乗用車の現地生産が数年前から開始されているが、ここにきて、その規模が急激に拡大してきている。2004年には13万台にすぎなかった生産台数が、2007年には45万台に達した。また、2008年上半期の生産台数も、前年同期を45%上回る29万6,000台に達した。現地生産プロジェクトの数の方も急増しており、主要なものだけでも20前後に達している。
この小レポートでは、代表的な外国ブランド車の現地生産プロジェクトの概要を整理することにする。現地生産プロジェクトは、外資が主導するグリーンフィールド(更地での新工場建設)方式のものと、ロシア資本が主導するブラウンフィールド(既存施設拡張・再利用)方式を中心としたものの2つのタイプに大別される。以下に紹介するプロジェクトのうち、前半のフォードから現代までが外資によるグリーンフィールド投資に、後半のAvtoVAZ以降のものがロシア資本によるブラウンフィールド投資に該当する。
ミニ・レポート
ロシアにおけるバスの生産と市場
はじめにロシアのアフトスタトという調査機関によれば、2008年初頭でのロシアのバスの登録台数は、前年の数字を6.2%上回る80万5,600台とされている。ここ10年間のバスの登録台数の伸び率は年率約2%なので、2007年は例年になく登録台数の伸びが著しかったといえる。
メタルワールド
日本からの設備導入も決まったインテルコスW
外資系自動車メーカーのロシアにおける部材の現地調達は、総じて苦戦を強いられています。しかし、自動車用プレス部品の分野では、進展しているプロジェクトがあります。サンクトペテルブルグのインテルコスW社の大規模設備投資です。
もともとインテルコスは内外の自動車・家電メーカーに付属設備や金属プレス部品を供給する優良企業でした。そして、2007年に鉄鋼大手のマグニトゴルスクが同社を買収し、大掛かりな設備投資に乗り出したことで、近い将来にロシアで自動車用プレス部品の本格的な現地調達が可能になる展望が開けています。この9月には日本のH&F社が、インテルコス向けのプレスラインを受注したというニュースも飛び込んできました。
昨年のこのコーナーでは、ロシアの鉄鋼大手による自動車用鋼板の増産の動きをレポートしましたが、今回はインテルコスをめぐる動きに絞って最新事情をお伝えします。
ユーラシア巡見
最新アルメニア事情
東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所
非常勤研究員 吉村貴之
今年の8月後半、南オセチアをめぐるグルジアとロシアの戦火が冷めやらぬ中、アルメニアに調査に入った。3年ぶりの訪問で、首都エレヴァンの様相もすっかり変わっていた。まず空港からして、新しいターミナルが旧ターミナルに併設されていたが、これはアルゼンチンのアルメニア系実業家エドゥアルド・エウルネキアンの寄付によるものだという。
エレヴァンの市街地も都市整備事業が順調に進み、交通量の多い交差点の立体交差化の工事が行われている。この整備事業の資金も、2006年にルノー日産とGMとの提携をゴリ押ししたことで有名になったアメリカの不動産王で投資家のカーコリアンが設立した私的財団からの寄付によるものだ。また、現在のエレヴァンの街を設計したタマニアンが計画しながら完成できなかった北大通りがオープンし、中央の共和国広場からオペラ座までをつなぐ街路の両脇はビジネス街として利用されることになっている。現地の企業だけでなく、アルメニアの数少ない友好国イランのビジネスマン達もオフィスを構えているという。
クレムリン・ウォッチ
ロシア・グルジア戦争
―経緯と影響―
8月に起きたグルジアとの軍事紛争は、ロシア新政権にとって厳しい試練でした。ソ連崩壊後のロシアにとって初めての本格的な対外戦争は、グルジアの2地域を親ロシア政権の下で独立させて、これをロシアが単独承認するという結果に発展しました。少なくとも15年におよぶこの地域の紛争を新しい段階に進めたことになりますが、同時に、ロシアと西側諸国との関係をこれまでになく緊張したものにしました。(月出皎司)
日本センター所長リレーエッセイ
日本センター活動を通じて知るウクライナ
ウクライナ・日本センター所長
田宮友恵
はじめに
2006年の5月にウクライナ・日本センター(UAJC)をオープンして2年以上の月日が経過した。古都キエフでの生活も2年半を超え、2007年の成長率が9%という急激な経済成長と変化を目の当たりにしている。都心は車、特に高級車が増え、交通渋滞は深刻化する一方である。ブランドショップが軒並みオープンし、気がつくとあちこちに高層マンションやオフィスビルが建築されている。現地通貨グリブニャ建ての定期預金の年利率が20%を超える銀行も出てきた。
急激な成長に伴う物価上昇も、住民として身にしみて感じている。在留邦人が集まれば物価が高くなったと愚痴をこぼし、日本の100円ショップを懐かしむ日々である。都心の洒落たカフェでコーヒーを飲むと10ドル近く請求され、「値段はEU並み、サービスは旧ソ連並み」の現状に歯噛みすることもある。また人件費も高騰し、現地日系企業のローカル・スタッフ平均給与は、マネージャークラスはすでに国際水準の月額数千ドルで、UAJCで2年半前に第1号現地スタッフを350ドルで雇用した日は遠い昔となってしまった。
エネルギー産業の話題
ロシア製油部門の最新事情
ロシアはエネルギー大国ながら、国内の製油所は老朽化が著しく、石油製品の品質が高まらない原因となっています。また、石油精製業界は、価格形成メカニズムの不透明さという問題も抱えています。
今回は、こうした問題にかんがみ、ロシアの大手製油所の近代化を目的とする設備投資状況と、2008年上半期の石油製品の国内市場の動向をご紹介いたします。
ノーヴォスチ・レビュー
深刻なロシアの森林火災
ロシアの森林が燃えている。まさに、そうとしか言いようがない。森林業者の話によると、最も木が燃えやすい8月には、ロシアの森林火災の「発生曲線」は最高点に至るのだが、今年の曲線の最高点は昨年よりもはるかに高くなった。ロスレスホーズ(ロシア森林局)の実際のデータによれば、先週の1週間だけでも、森林地帯で360件以上の火災が発生し、約2,400haの森林が焼失した。8ヵ月で約23,000件の火災が発生したという火災全体の年間発生件数も事態の深刻さを物語っている。火は2007年の同じ時期より1.7倍も多い森林を「食」し、犠牲になった面積は約250万haに達している。
ロシアビジネスQ&A
ロシアからのアルコール飲料の輸入方法
本コーナー8月号でロシアにアルコール飲料を輸出するにはどうしたらよいかという質問を取り上げましたが、今回はロシアを代表するアルコール飲料であるウォッカを日本に輸入するにはどうしたらよいかという質問にお答えしましょう。