ロシアNIS調査月報2009年8月号特集◆極東ロシア経済ミッションの成果 |
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特集◆極東ロシア経済ミッションの成果 |
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特別インタビュー
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極東ロシア経済ミッションを終えて ―西岡喬会長に訊く― |
調査レポート
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極東ミッションの総括と今後の課題 |
調査レポート
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APECに向けたウラジオ大開発の進捗状況 |
調査レポート
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ワニノ港とソヴガワニ特区を視察して |
調査レポート |
極東ガスパイプライン構想 |
特別寄稿 |
ロシアの木材加工化政策に関する提言 ―現実を踏まえた段階的シフトが必要― |
ビジネス最前線
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北海道の地銀としてロシア極東ビジネスに貢献したい |
ドーム・クニーギ
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安木新一郎著『ロシア極東ビジネス事情』 |
データバンク
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2008年のロシア極東の貿易と外国投資受入 |
データバンク
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ロシアの地域別の総生産と産業構造 |
報告 |
第39回ロシアNIS貿易会通常総会報告 |
調査レポート
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ドイツからロシアビジネスをオペレートする日系企業 |
調査レポート
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ロシアの食品スーパー部門と外資 ―不況下のビジネスチャンス― |
研究所長日誌
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故高垣佑ロシアNIS貿易会前会長の追想 |
クレムリン・ウォッチ |
二頭関係:これは亀裂の徴候なのか? |
エネルギー産業の話題
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一進一退のロシア石油ガス産業 |
自動車産業時評
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ズベルバンク・マグナ連合のオペル買収 |
ロシアビジネスQ&A
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◎ロシアの観光マーケット |
業界トピックス
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2009年6月の動き ◆家具大手カンディハウスのモスクワ販売拠点 2009年1~4月の通関統計 |
特別インタビュー
極東ロシア経済ミッションを終えて
―西岡喬会長に訊く―
社団法人ロシアNIS貿易会は、経済産業省と共催で、5月31日~6月6日に「極東ロシア経済ミッション」を派遣いたしました。総勢70名を超える団員がロシア極東の沿海地方およびハバロフスク地方を訪問し、インフラ建設、エネルギー施設、港湾を視察するとともに、セミナー等を実施しました。
今回の月報では、この極東ロシア経済ミッションの模様と、関連してロシア極東経済の諸情報を特集でお届けします。
まず初めに、今回のミッションで団長を務めました当会の西岡喬会長(三菱重工業(株)相談役兼三菱自動車工業(株)取締役会長)に、ミッションの成果につき帰国後語ってもらいましたので、以下そのインタビューをご紹介します。
極東ミッションの総括と今後の課題
ロシアNIS経済研究所 所長
(極東ロシア経済ミッション事務局長)
遠藤寿一
はじめに
以下では、「極東ロシア経済ミッション」の事務局長を務めた遠藤寿一・ロシアNIS経済研究所所長より、ミッションにつき総括するとともに、今回の成果を踏まえた今後の日ロ経済協力の課題について述べさせていただきます。
なお、極東ロシア経済ミッションの日程と開催概要を本記事の末尾に掲載しましたので、ご利用ください。また、現地で開催されたセミナーのプレゼンテーション資料は、当会のウェブサイトに掲載してあります。当会発行の『ロシアNIS経済速報』2009年6月15日号(No.1465)では、本ミッションに関するロシア・マスコミの報道振りをとりまとめて紹介していますので、あわせて参照していただければ幸いです。(編集部)
APECに向けたウラジオ大開発の進捗状況
ロシアNIS貿易会 経済交流部 次長
原真澄
はじめに
1.ルースキー島連絡橋
2.ザラトイログ湾横断橋
3.ウラジオストク空港
4.その他のAPEC首脳会議関連事業
おわりに
はじめに
今回の極東ロシア経済ミッションの大きな目的の一つは、2012年にウラジオストクで開催されるAPECサミットに向けた関連施設の建設状況を視察することであった。
2012年のAPECサミットに向けたウラジオストクの大開発は、2013年までの極東ザバイカル経済社会発展プログラムのサブプログラムに盛り込まれており、2014年にソチで開催される冬季オリンピック整備事業とともに、国の威信がかかっている。昨年秋からの世界的な経済危機にもかかわらず、ロシア連邦予算から2,020億ルーブル、沿海地方、ウラジオストク市の予算からの拠出、さらには民間からの投資も募り、予算総額2,841億ルーブル(約9,460億円)に上る巨大プロジェクトだ。
ルースキー島連絡橋、ザラトイログ湾横断橋、ホテル・会議場の建設など大規模な工事の着工が遅れていたことから、サミットまでに施設の建設が間に合うのかという心配の声も上がっているが、昨年の夏以降、プーチン首相とバサルギン地域発展相が相次いでウラジオストクを訪れ、現場に活を入れたこともあり急速に工事が進んでいる。本ミッションの訪問時には、ザラトイログ湾横断橋とルースキー島連絡橋の2本の橋の建設やルースキー島の建設資材拠点および建設関連貨物用埠頭の建設も進行中で、その実現を予感させた。
ワニノ港とソヴガワニ特区を視察して
ロシアNIS経済研究所 副所長
高橋浩
はじめに
1.両港の行政および地理的状況
2.ワニノおよびソヴガワニ両港の特徴
3.最後に
はじめに
今回の極東ロシア経済ミッションは、オプション視察として、廣瀬修二・ロシアNIS貿易会副会長を団長として、6月5日にハバロフスクからチャーター便による飛行機で、ワニノ港およびソヴィエツカヤ・ガワニ港を視察したので、その状況および関連情報を記する。とくに、ソヴィエツカヤ・ガワニ港は1年前の2008年5月に、ロシアの初めての港湾特別経済区として認定された3つの特別経済区のうちのひとつであるので、この現状を述べたい。ソヴィエツカヤ・ガワニ(Советская Гавань)は、ソヴガワニ(Совгавань)と略記されるので、ここではソヴガワニを使用する。
極東ガスパイプライン構想
ロシアNIS経済研究所 研究員
齋藤大輔
はじめに
1.概要
2.建設スキーム
3.液化天然ガス工場
最後に
はじめに
極東ガスパイプライン構想とは、サハリン産および東シベリア産天然ガスをパイプラインで中国および太平洋沿岸へ輸送し、国内市場に供給するとともに、アジア・太平洋市場に供給する計画のことをさす。ロシアの独占企業体であるガスプロムが推進している。ルートとしては、サハリンおよび東シベリアのガス田から①中国まで、②太平洋沿岸まで、③中国への支線をもつ太平洋沿岸までの3案が検討されているが、現時点において、具体的に動き出したのは②の太平洋沿岸だけである。ヨーロッパとアジアの双方の市場に供給できる輸送網が整備されれば、ロシアのガス供給国としての地位は格段に高まる。そこで本稿では、着工段階にある太平洋沿岸へのガスパイプライン構想と沿海地方南部での液化天然ガス工場建設計画について報告する。
特別寄稿
ロシアの木材加工化政策に関する提言
―現実を踏まえた段階的シフトが必要―
双日㈱ハバロフスク駐在員事務所 所長
山本光重
はじめに
今回の極東ミッションの一環として、6月4日にハバロフスクにおいて、同地方のビジネス環境および投資プロジェクトに関するプレゼンテーションが開催されました。そのなかでも、双日の山本光重所長が行った報告は、参加者に反響を呼んだようです。そこで、山本所長に、同報告を膨らめる形で、ご寄稿をいただきましたので、ここにご紹介いたします。(編集部)
ビジネス最前線
北海道の地銀としてロシア極東ビジネスに貢献したい
北海道銀行 法人営業部 国際業務室 中国・ロシアデスク
調査役 天間幸生さん
はじめに
北海道銀行は今年に入ると、1月にはロシア第2位の銀行であるVTB(ロシア対外貿易銀行)と業務提携し、3月にはサハリン事務所を開設するなど、ロシア極東での足場を固めています。ロシア市場進出をめざす北海道を中心とした日本企業のサポートをしていくには、現地での生の情報を集め、ノウハウを積み上げることが不可欠。「極東ロシア経済ミッション」が派遣されたこともあり、ますます注目が集まる同地域のビジネスチャンスについて、北海道銀行の天間さんにお話を伺いました。
データバンク
2008年のロシア極東の貿易と外国投資受入
はじめに
例年どおり、ロシア極東連邦管区の最新の貿易および外国投資受入データを、ロシア科学アカデミー極東支部経済研究所(P.ミナキル所長)よりご提供いただいた。今回は、極東ミッション特集の一環として、この資料を紹介する。なお、ユダヤ自治州、チュクチ自治管区は重要度が低いので、表の掲載は割愛する。
データバンク
ロシアの地域別の総生産と産業構造
はじめに
本誌では、2008年1月号で「ロシア地域開発の焦点」と題する特集を組み、データ資料として「ロシアの地域別の総生産と産業構造」という記事を掲載した。その時には2005年のデータが最新値であったが、現在ではすでに2007年までのデータがロシア連邦国家統計局から発表されている。そこで、今回は極東ミッション特集の枠内で、ロシアの地域情勢を把握するための基礎資料として、「ロシアの地域別の総生産と産業構造」の最新版をお届けすることにする。データ出所はロシア連邦国家統計局のウェブサイトだが、作表に当たっては本誌独自で若干アレンジもしている。
第39回ロシアNIS貿易会通常総会報告
はじめに
社団法人ロシアNIS貿易会は平成21年5月20日に東京の如水会館にて第39回通常総会・平成21年度第1回理事会を開催いたしました。総会においては、第1号議案「平成20年度事業報告書」、第2号議案「平成20年度財務諸表」、第3号議案「平成21年度事業計画書」、第4号議案「平成21年度収支予算書」、第5号議案「役員選任の件」、第6号議案「公益法人制度改革への対応」が承認されました。また、理事会においては、第1号議案「役員選任の件」が承認されました。
以下では総会において承認された平成20年度事業報告、平成21年度事業計画、新役員名簿を掲載するとともに、総会における西岡会長の挨拶を掲載いたします。
ドイツからロシアビジネスをオペレートする日系企業
ロシアNIS経済研究所 調査役
芳地隆之
はじめに
1.日立ソフトウェアエンジニアリング
2.リガク
3.在独日系企業の動き
4.対ロ貿易における日独の比較
5.ドイツ企業の対ロ進出状況
はじめに
2008年秋の世界的な経済・金融危機以降、日系企業によるロシア進出の流れは停滞気味であったが、2009年6月、日産自動車のサンクトペテルブルグ工場が稼動を開始。同社カルロス・ゴーン社長は開所式における記者会見で、ロシア経済について「資源価格は回復する可能性が高く、大幅な落ち込みはない」との見通し述べた。
日産自動車のロシアでの現地生産を機に、再び日系企業の進出が加速する可能性もあるが、すでにヨーロッパの拠点からロシアビジネスをオペレートしている日系企業は少なくない。とくにロシアにとって最大の貿易パートナーであるドイツに拠点を有している企業には、地理的・人的メリットを利用した積極的な活動がみられる。そこで本稿では、ベルリンに事務所を置いてロシアビジネスを展開している日立ソフトウェアエンジニアリングならびにリガクのケースを紹介するほか、多くの日系企業の進出先であるデュッセルドルフの日本商工会議所のロシア市場への関心度、ならびにドイツの対ロ経済関係の現状について報告する。
ロシアの食品スーパー部門と外資
―不況下のビジネスチャンス―
ロシアNIS経済研究所 次長
坂口泉
はじめに
1.業界の概況
2.ロシア資本の主要なプレーヤー
3.外資の動き
おわりに
はじめに
2008年秋のリーマンショック以降、ロシアの消費市場はかつての勢いを失っているが、一部の部門では危機をチャンスと捉える外資が活発な動きを示している。たとえば、これまで度々噂が出ていたフランスのカルフールが、2009年6月に遂にロシア第1号店をモスクワにオープンさせた。食品スーパー部門ではその他にも、経済危機の影響を受け苦境に陥っているロシア資本のチェーンを買収するという形でロシア市場への進出を検討している外資が複数存在する。以上の状況を踏まえ、本稿ではロシアの食品スーパー部門の現状と、同部門における外資の動きについて紹介する。
クレムリン・ウォッチ
二頭関係:これは亀裂の徴候なのか?
メドヴェージェフ大統領の就任から1年、どうやら二頭体制に対する外部の見方も落ちついた様子で、一時期は盛んだった院政論や傀儡論はさすがに声が小さくなったようです。大統領と首相は共通の了解事項をベースにして、それぞれの職分を果たしており、その関係は協調的というのが、二頭体制1期目の評価でしょう。経済政策の分野では協調の主軸がリベラル派寄りになっていることを5月号で指摘しました。一方、安全保障問題では大統領がやや対外強硬的なトーンを打ち出していることを7月号に書きました。情況がそれを求めているわけですが、二頭間のバランスがとれている証左とも言えます。
ところが、ここへ来て、この2人の間を「猫が駆け抜けた」、つまり亀裂が走ったというトーンの論調をロシアのメディア等でしばしば見かけるようになりました。(月出皎司)
エネルギー産業の話題
一進一退のロシア石油ガス産業
本誌前号掲載のレポート「経済危機下のロシア石油ガス産業」において、ロシアの石油ガス分野の2009年5月半ば頃までの状況がまとめられています。その後、極東および東シベリアのプロジェクトを中心に、いくつかの注目すべき動きがありましたので、今回はそれらの動きについてご紹介いたします。
自動車産業時評
ズベルバンク・マグナ連合のオペル買収
2008年秋のリーマンショック以、経営不振が一層深刻化したGMは、欧州を拠点とする100%子会社「アダム・オペル」を切り離し、その経営権を他社に譲渡することを決定、ドイツ政府とともに譲渡先の選定作業を行ってきました。そうしたなか、ロシアの政府系銀行「ズベルバンク」とカナダの部品メーカー「マグナ・インターナショナル」の企業連合が譲渡先に内定したことが2009年5月末に判明し、大きな話題となりました。取引が正式に成立すれば、マグナがオペルの株式の20%、ズベルバンクが35%、GMが35%、オペルの従業員たちが10%をそれぞれ保有することになると言われています。以下では、今回の取引に関係した企業の概要、譲渡先決定までの経緯等をご紹介いたします。
ロシアビジネスQ&A
ロシアの観光マーケット
ロシアには、モスクワのクレムリンと赤の広場、サンクトペテルブルグの歴史的街並み、黄金の環、バイカル湖、カムチャツカ火山群など世界遺産に登録されている地区がたくさんあり、観光資源に恵まれています。またここ数年、リッチになったロシア人がヨーロッパ、北アフリカ、アジア、南の島々を訪れ、外国旅行を楽しんでいます。観光はすでにロシアのGDPの1.5%を占め、重要産業に成長しつつあります。
今回はロシアの観光マーケットについて、ロシア科学アカデミー東洋学研究所日本研究センター上級研究員のマリーナ・ピリペンコさんに答えていただきました。