ロシアNIS調査月報
2009年11月号
特集◆自動車ビジネスの新たな挑戦
特集◆自動車ビジネスの新たな挑戦
調査レポート
経済危機後のロシアの乗用車市場
調査レポート
暗雲低迷の極東中古車ビジネス
ビジネス最前線
メイドインロシアで勝負するヨコハマタイヤの品質
ミニレポート
経済危機に喘ぐロシアの乗用車生産部門
ミニレポート
ロシア政府が打ち出している自動車産業支援策

ビジネス最前線
ロシアビジネスに求められる中小企業的視点
重要なお知らせ
当会HPにおける会員専用ページ開設と新サービス
データバンク
2009年上半期のロシア・NIS諸国の経済統計
データバンク
2009年上半期の日本の対NIS主要国貿易統計
研究所長日誌
日ロ地域間交流の拡大に向けて
ドーム・クニーギ
飯島一孝著『ロシアのマスメディアと権力』
クレムリン・ウォッチ
ロシアでもマニフェスト
エネルギー産業の話題
ロシア石油化学分野の最新の動き(その6)
ロシアビジネスQ&A
◎ロシアの農業機械市場
業界トピックス
2009年8-9月の動き
◆古河電工子会社のロシア新工場が稼動
2009年1〜8月の通関統計


経済危機後のロシアの乗用車市場

ロシアNIS経済研究所 次長
坂口泉

はじめに
1.概況
2.主要ブランド別の販売状況
3.主要モデル別の販売状況
4.価格帯・乗用車タイプ別の販売状況
5.主要地域別の販売状況
6.経済危機後の新車輸入状況
7.中古車市場の状況
8.外国メーカーの価格戦略
9.購買者の心理の変化
おわりに

はじめに
 2008年9月のリーマンショック以降、ロシアの乗用車市場は極端な不振に陥り、今も出口の見えない状態が続いている。しかも、状況の変化のスピードがあまりにも速いため、多くの外国メーカーが、今後のロシア市場への対応を手探りで模索することを余儀なくされている。ロシア市場における戦略を見直し明確な方向性を見出すには、情報を適時に収集し分析することがこれまで以上に必要になるのではなかろうか。
 本稿では以上のような状況を踏まえ、経済危機後のロシアの乗用車市場の現状を、最新データをもとにできるだけ多面的かつ詳細にご紹介したいと考えている。


暗雲低迷の極東中古車ビジネス

ロシアNIS経済研究所 研究員
齋藤大輔

はじめに
1.中古車ビジネスの風景
2.極東を直撃した関税引き上げ
3.極東と国産車購入促進策
最後に

はじめに
 ロシアが外国製自動車にかける関税を引き上げてから8ヵ月余り。ロシア極東・ウラジオストクの中古車市場を歩くと、並べればどんどん売れていた昨年と違い、買いに来る客は少なく、値引きしても売れない、あきらめの空気が漂っていた。世界不況も重なり、中古車ビジネスの取り巻く環境は、これまでに経験したことのない厳しい状況にある。
 ソ連解体後のロシア極東経済を支えてきた中古車ビジネスはその役割を終えたのか、それとも再生はあるのか。
 本稿では、ロシア極東の中古車ビジネスの現状について報告する。なお、関税引き上げ前後の動きについては、拙稿「関税引き上げと極東中古車ビジネスの今後」(ユーラシア研究所「ロシア・ユーラシア経済−研究と資料−」2009年6月号、No.923)を参照願いたい。  


ビジネス最前線
メイドインロシアで勝負するヨコハマタイヤの品質

横浜ゴム タイヤ海外第一営業部
欧州課課長 古川 豊さん
ロシア工場建設プロジェクト
課長補佐 藤原 利郎さん

はじめに
 今年8月、横浜ゴムは伊藤忠商事との共同出資でロシアにタイヤ生産販売会社を設立する旨を発表しました。新工場の建設地はモスクワの南方約500kmのリペツク州の経済特区です。ロシア初の日本のタイヤメーカーの生産拠点、そしてリペツク州に進出した初めての日本企業と初めてづくしで、ロシア国内での注目度も高まっています。そこで今回は同社の欧州事業を統括する立場の古川さんと、ロシアの現地工場の立ち上げに最初から関わってきた藤原さんに、ロシアのタイヤ市場と横浜ゴムのロシア事業について伺いました。


ミニレポート
経済危機に喘ぐロシアの乗用車生産部門

はじめに
 経済危機の中、ロシア資本の乗用車メーカーは構造的問題への取り組みを怠ってきたツケを支払うことを余儀なくされており、いずれも国家の支援なしでは生き残ることが困難な状況に追い込まれている。なかには、IzhAvto(イジェフスク自動車工場)のように破産する企業も出てきている。また、外国乗用車メーカーの現地工場も、経済危機による深刻な販売不振という厳しい現実への対応を迫られている。本稿では、経済危機の中、懸命に生き残りの道を模索する純国産メーカーの現状と、外国メーカーの現地工場の経済危機への対応ぶりをご紹介する。(坂口泉)


ミニレポート
ロシア政府が打ち出している自動車産業支援策

はじめに
 金融危機勃発後、ロシア政府は様々な国内自動車産業支援策を打ち出している。本稿では、主な支援策の概要を紹介する。(坂口泉)


ビジネス最前線
ロシアビジネスに求められる中小企業的視点

潟~ナト国際コンサルティング
代表取締役 公認会計士 上村雅幸さん

はじめに
 大手国際会計事務所の一員として、上村さんはチェコやポーランドなど旧東欧諸国において、大手日系メーカーの現地工場の立ち上げをサポートしてきました。その延長線上で、さらに「東」の大国、ロシアにも駐在したところ、地続きにもかかわらず、かくも大きな違いがあるのかと驚かれたとのこと。しかし、それを機に、帰国後は「日本企業のためのロシア専門の会計事務所」として、ミナト国際コンサルティングを設立されました。今回は上村さんの現地でのご経験、そして今後の活動についてお聞きします。


■重要なお知らせ■
当会HPにおける会員専用ページ開設と新サービス

はじめに
 (社)ロシアNIS貿易会はこのほど、ホームページをリニューアルし、「会員専用ページ」を新たに開設いたしました。
 今後は、「会員専用ページ」を通じた情報提供サービスが、当会の会員サービスの柱の一つとなります。
 そこで、以下では、「会員専用ページ」のご利用方法について案内させていただくとともに、その中味をご紹介いたします。


研究所長日誌
日ロ地域間交流の拡大に向けて

 1970年10月に設立された「日ロ沿岸市長会議」は、第22回会議を8月19・20日の両日、函館で開催した。
 今回の会議は日ロ双方からの要望もあって、従来の市長会からビジネス交流にも枠を広げることになり、今回はじめてロシアNIS貿易会と環日本海経済研究所が共催者として加わり、「日ロ沿岸ビジネスフォーラム」を同時開催することになって参加者も180名を数えて盛会であった。
 日ロの地域間を横断した初の試みは、参加者が多かっただけではなく、活発な議論は時間が経つのも忘れ、マンネリ化しつつある中央におけるこの種フォーラムでは忘れかけていた議論が復活し、むしろ新鮮味が感じられた。日ロ沿岸市長会の会員はそれぞれに姉妹都市関係にあるところが多く、過去の交流の実績と問題点や今後への展望を滔々と述べていたが、この間の長い輝かしい歴史の存在を垣間見ることができた。なお、同フォーラムにつき詳しくは、当会の『ロシアNIS経済速報』9月15日号をご参照いただきたい。(遠藤寿一)


クレムリン・ウォッチ
ロシアでもマニフェスト

 「二頭」の問題は8月号に書いたばかりですが、その後もメドヴェージェフとプーチンの関係を巡る憶測が絶えません。8月初め頃の一時期、プーチン首相の「活躍ぶり」を伝えるメディア報道が目立ったため、2012年の大統領選出馬を視野においたキャンペーンのスタートかという論調がかなり見られました。二頭関係は変質したという見方です。 経営危機のため従業員がストをしたシベリアのパルプ工場に政府支援を与える布石として、プーチン首相が潜水艇に乗り込んでバイカル湖底の汚染情況を確かめたのもその一つでした。うさん臭い芝居ですが大衆受けする要素はあります。その直後に今度はウドムルト共和国の山村を訪れ、水泳や乗馬で自慢の肉体美を披露しました。休暇とも言えない1日限りの滞在でもあり、もっぱらPR目的ではないかと勘ぐられました。 8月中旬には、メドヴェージェフとプーチンがソチで会い、仕事の打ち合わせの後で、連れ立って市内を散策、カフェに入ってサッカーをテレビ観戦したというパフォーマンスがありました。明らかに、それに先立つ報道が生んだ憶測を打ち消す狙いだったと思われます。すると、「わざわざ打ち消すくらいだから、怪しいのだ」という見方になってきます。 (月出皎司)


エネルギー産業の話題
ロシア石油化学分野の最新の動き(その6)

 2008年8月号の本コーナーにおいて、ロシアのポリプロピレン生産部門の2007年時点の状況を取り上げましたが、2008年のデータ(『石油ガス垂直統合』誌、2009.No.11)を入手することができたので、今回はそれをご紹介いたします。


ロシアビジネスQ&A
ロシアの農業機械市場

 ロシアでは国民生活向上を目的として、教育、保健、住宅、農業の4分野を対象とする国家優先プロジェクトが実施されています。このうち農業分野では、穀物や畜産品などの農産物の増産、農業に対する投資拡大、農産物の輸入依存度の低下、農村部住民の生活水準の向上を目指して、多くの予算措置がなされています。日本企業にとっても、農業機械設備の輸出拡大など期待がかかります。
 今回はロシアの農業の現状と政府による農業支援策がロシアへの日本の農業機械輸出に与える影響についての質問にお答えします。