ロシアNIS調査月報2010年3月号特集◆ロシア・NIS諸国の経済特区 |
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2月20日発行 |
特集◆ロシア・NIS諸国の経済特区 |
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調査レポート |
ロシアの経済政策体系における経済特区の位置付け |
ビジネス最前線 |
リペツク特区でのタイヤ工場建設 |
データバンク |
ロシア経済特区入居207社全リスト |
データバンク |
ウクライナの経済特区における投資動向 |
ミニレポート |
ベラルーシの経済特区 |
ミニレポート |
ウズベキスタンのナヴォイ特区 |
イベント・レポート |
第3回日本ウズベキスタン・ビジネスフォーラム開催 |
調査レポート |
経済危機後のロシア電力セクターの動向 |
イベント・レポート |
第8回日本トルクメニスタン経済合同会議の開催 |
ビジネス最前線 |
ロシアの断熱・緩衝材市場の可能性 |
ビジネス最前線 |
北東アジア国境貿易の道案内人 |
データバンク |
2009年版ロシア小売チェーン・ランキング |
データバンク |
2009年のロシアの経済実績 |
ドーム・クニーギ |
細川孝・桜井徹編著『転換期の株式会社 ―拡大する影響力と改革課題』 |
研究所長日誌 |
中国に水を開けられたロシア ―急回復の中国経済が21世紀を牽引 |
クレムリン・ウォッチ |
方向が定まらないロシアの産業近代化路線 |
エネルギー産業の話題 |
もとの鞘に戻ったルスネフチ |
自動車産業時評 |
2009年1〜9月のロシアのトラック市場 |
ロシアビジネスQ&A |
◎ロシア関連セミナーの開催ノウハウ |
業界トピックス
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2010年1月の動き ◆切削工具のタンガロイ、ロシア子会社を設立 |
通関統計 |
2009年の日本の対ロシア・NIS諸国輸出入通関実績(速報値) 日本の対ロシア月別輸出入通関実績 日本の対ロシア月別乗用車輸出実績 |
ロシアの経済政策体系における 経済特区の位置付け
ロシア科学アカデミー世界経済国際関係研究所 主任研究員
V.シュヴィトコ
1.序論
2.歴史的背景
3.様変わりした2000年代の特区
4.特区の事業活動環境とメリット
5.経済政策体系における特区の位置付け
6.経済特区の現状
1.序論
産業振興策の一手段とされる経済特区の創設は、ロシアにおいて20年強という相対的に古い歴史を持っている。その間には、経済特区の構想と実践が専門家による激しい議論と世間の注目の対象になっていた時期もあれば、政策担当者や企業が無関心を示していた時期もあった。また、その歴史を遡ってみると、効果の評価だけでなく、経済特区の性質、課題、また経済発展促進策全体における位置付けを見る目も大きく変わったことが明らかである。とりわけ、今現在ロシア国内に創設され、始動している経済特区の実績と見通しを評価するにあって、これまでの歴史、背景、政策ツールとしての位置付けとその変化を念頭に置かなければ、的確な判断をするのはまず不可能と考えられる。
以下、このような認識に立って、2005年からロシアにおけるその歴史の新しいページを開いた経済特区の前史と背景をみたうえで、その現代の位置付けと経済政策の体系の中でそれが果たし得る役割について論じてみる試みである。
ビジネス最前線
リペツク特区でのタイヤ工場建設
Yokohama Russia L.L.C. 社長
LLC Yokohama R.P.Z. 社長
沖島潤一さん
はじめに
横浜ゴムは、ロシアでのタイヤ生産工場の建設を決定し、2009年1月にリペツク工業生産特区への入居が正式に決まりました。この生産会社 LLC Yokohama R.P.Z.は、同年8月には増資を行い、横浜ゴムと伊藤忠商事の合弁出資となっています。
日系企業では、いすゞおよび双日が現地資本と組み、エラブガ工業生産特区でトラックを組み立てているという事例があります。しかし、横浜ゴムのプロジェクトは日系企業のみで、しかもグリーンフィールドから工場を立ち上げるという意味で、より本格的な投資と言うことができるでしょう。ロシアへの進出、特区の活用を検討している日系企業にとって、学ぶべき点が多いと思われます。
そこで、現地販売会社Yokohama Russiaの社長を務められ、生産会社のYokohama R.P.Z.の社長も兼務しておられる沖島さんに、モスクワでお話を伺いました。以下、そのインタビューの模様をお届けします。なお、2009年11月号の本コーナー掲載の「メイドインロシアで勝負するヨコハマタイヤの品質」も、あわせてご参照いただければ幸いです。
データバンク
ロシア経済特区入居207社全リスト
はじめに
本コーナーでは、2005年の連邦法にもとづいて設立されたロシアの13の経済特区に入居している企業の全リストを掲載する。入居企業の一覧が、ロシア連邦経済特区管理庁のウェブサイトに掲載されているので、それを特区ごとに分類し表にまとめて紹介するものである。全207社である。
実は、特区管理庁は2009年いっぱいで廃止されてしまったので、今後このウェブサイトがどうなるのかは不明であり、場合によっては入居企業の一覧も閲覧できなくなる恐れもあるので、ここでデータを整理しておくことにはそれなりの意義があるものと考える。
データバンク
ウクライナの経済特区における投資動向
はじめに
「ウクライナには、かつては経済特区が存在したが、2004年のオレンジ革命の結果成立した政権の下で、それらは廃止されてしまった。」これが、一般に流布している認識ではないだろうか。ウクライナ事情にかなりお詳しい方でも、そのように理解なさっている場合が多いと思う。
しかし、実はその理解は正しくない。ウクライナの経済特区は存続しているし、入居企業は引き続き特典を受けているし、特区では新規の投資も行われているのである。現に、ウクライナ統計国家委員会は『ウクライナの特別(自由)経済区および優先開発地域の投資プロジェクトへの投資の流入と実施』と題する統計集を、今でも定期的に刊行している。
ウクライナの経済特区をめぐる経緯は複雑であり、限られた紙幅のなかではとても語り尽くせない。ここではさしあたり、上掲の統計集に掲載されているウクライナ経済特区における投資動向に関するデータを紹介し、若干の注釈も加えることで、錯綜した状況を理解する一助としたい。
ミニレポート
ベラルーシの経済特区
はじめに
経済特区は「欧州最後の独裁国家」といわれるベラルーシにもある。外国から投資を呼び込むために設けられたが、市場経済化の遅れから、これといった企業の進出もなく、国内経済に占める役割は少ない。ルカシェンコ政権の姿勢をみると、外国からの投資をそれほど必要としていない節もある。筆者は2006年6月〜2008年5月にかけて在ベラルーシ日本国大使館に専門調査員として赴任し、現地でベラルーシの政治・経済動向をフォローしてきた。本稿ではベラルーシの経済特区と投資環境について報告する。(齋藤大輔)
ミニレポート
ウズベキスタンのナヴォイ特区
はじめに
2008年12月2日、ウズベキスタン共和国大統領令UP-4059号「ナヴォイ自由工業経済区の設立」により、ナヴォイ州に同国初となる経済特区の設立が決定し、現在建設が進められている。
ナヴォイ州はウズベキスタン中心部に位置し、人口83万人、石油・天然ガス・金属等の天然資源を産出し、ナヴォイ金属採掘精錬コンビナート、化学薬品製造のナヴォイアゾト、建材製造のキジルクムセメント、ナヴォイ火力発電所等の企業を有する。また、近隣市場へ繋がる鉄道や道路が通り、観光地として有名なブハラ、サマルカンドも近い。
その資源や地理的優位性を生かし、政府は同特区を工業・輸送ロジスティクス・イノベーション・文化観光のハブとする計画で、そのシナジー効果に大きな期待をかけている。(片岡久美子)
経済危機後のロシア電力セクターの動向
ロシアNIS経済研究所 次長
坂口泉
はじめに
1.電力分野の全般的状況
2.主要な電力会社の現状
おわりに
はじめに
ロシアでは統一電力システムの分割民営化を軸とする電力分野の構造改革が実施され、21の大規模発電会社(OGK、TGK、ルスギドロ)、FSK(連邦送電会社)、MRSK(地域間配電会社)等の新会社が誕生した。そして、それらの会社は大規模発電会社の株式の売却により得られた資金を主要な原資とし、積極的な設備投資を開始した。2008年秋のリーマンショックの影響を受け設備投資のテンポは鈍化しているが、今後も「2020年までの電源開発マスタープラン」(以下、マスタープラン)の修正版をベースに設備投資が継続されることになっており、そこには大きな商機が存在する。
ただ、各電力会社により設備投資意欲に温度差があるのも事実で、実際のビジネスにつなげるためには、それぞれの電力会社の動向をできるだけ的確に把握する必要がある。
以上のような状況を踏まえ、本稿では、まずロシアの電力分野の全般的状況を紹介した後に、設備投資をめぐる動きを中心に主要な大規模発電会社の現状を紹介する。
イベント・レポート
第8回日本トルクメニスタン経済合同会議の開催
はじめに
2009年12月16日に東京において、「第8回日本トルクメニスタン経済合同会議」が開催されました。
日本トルクメニスタン経済委員会とトルクメニスタン日本経済委員会が共催し、経済委員会の事務局を置く私どもロシアNIS貿易会が協力いたしました。これまで、日本トルクメニスタン経済合同会議は、過去7回、日本とアシガバードで交互に、定期的に行われてきましたが、今回の第8回合同会議は、ベルディムハメドフ・トルクメニスタン大統領の初来日に合わせての開催となりました。
以下では、主に、本合同会議における報告についてご紹介いたします。
(佐藤隆保)
ビジネス最前線
ロシアの断熱・緩衝材市場の可能性
株本昭さん
はじめに
古河電工と大塚化学が出資するドイツの化学加工会社、トロセレン社は2009年7月にモスクワ州クリン市に新工場を立ち上げ、現在、本格的な稼動の準備に入っています。そのロシア工場を欧州からオペレートするのがトロセレンCEO(最高経営責任者)の株本さん。ロシアの大平野に新工場を建設することが決まってから完成するまでのご苦労、今後のロシア市場のもつ高い可能性、また改善すべき問題点など、一時帰国中のお忙しいなか、古河電工本社にてお話をしていただきました。
ビジネス最前線
北東アジア国境貿易の道案内人
吉田豊さん
はじめに
たった1年じゃもったいない――留学先だった延吉市でビジネスの機会を探していた吉田さんは、持ち前の行動力とオープンな人柄で、朝鮮族の友人たちという貴重な人脈を生かし、いまでは中国、ロシア、北朝鮮の国境をまたいだ貿易に携わっています。将来の北東アジアの縮図のような、日本にとっては近くて、遠い地で、様々なモノやサービスの交流を探る吉田さんのお話には、貴重な情報がたくさん詰まっています。
データバンク
2009年版ロシア小売チェーン・ランキング
はじめに
ロシアの『リテール・ニュース』誌の2009年10月号に、2009年版のロシア小売チェーン・ランキングが掲載されているので、これを紹介する。
同資料では、100位までの企業がランキングされている。2008年の売上高にもとづく2009年発表のランキングという意味なので、ご注意願いたい。1つの会社が複数のチェーンを展開している場合には、合計値が掲載されている。表には、過去3年間の順位、チェーン名、取扱品目、2008年の売上高、店舗数、売り場面積、ウェブサイトが掲載されている。うち、ウェブサイトは小誌独自で調べ、判明した範囲内で付したものである。
クレムリン・ウォッチ
方向が定まらないロシアの産業近代化路線
世界的な経済危機が回復の兆しを見せるなかで、ロシアでも最悪の事態は避けられたという安堵感が広がっているようです。原油価格のUターンで財政予備金が底をつく心配も一応消え、年金や公務員給与などの給付水準を何とか維持出来たおかげで、社会不安の広がりを防ぐことができ、プーチン首相が現地に出向いて苦情を処理してみせるというおなじみの芝居も、このところ必要性が減っているようです。
大統領と政府は、危機脱出後のロシア経済の情況へと関心の重点を移して来ました。エネルギーに強く依存する貿易構造・産業構造を高度化する必要性は、プーチン大統領時代から言われ続けてきたことですが、これまでの成果はほぼゼロ。今回の世界経済危機を機会にこの問題と今度こそ本格的に取り組む必要性は、大統領、首相はじめ政権全体の共通の認識になったようにみえました。90年代初以来技術的、経営的な後進性を深めてきたロシアの製造業を復興させ、近代化させることが中心的な課題です。(月出皎司)
エネルギー産業の話題
もとの鞘に戻ったルスネフチ
ルスネフチは、グツェリエフという実業家が2002年秋に設立したロシアの大手石油会社ですが、2007年夏にバーザヴィ・エレメントの総帥のデリパスカに65億ドル(うち35億ドルはルスネフチの債務の返済に投下された)で身売りされました。この取引についてはロシア政府の許可が最後まで下りなかったものの、ルスネフチの実質的経営権は一時デリパスカに移っていました。しかし、2009年秋ごろからグツェリエフがルスネフチを買い戻すのではとの噂が出始め、2010年1月になりそれが現実のものとなりました。グツェリエフはつい最近まで国際指名手配されており、ホドルコフスキーと同じような運命を辿るとみられていた人物ですが、これで晴れて表舞台に復帰したと考えていいでしょう。今回は、グツェリエフの凋落から今回の劇的な復活に至るまでの経緯を振り返ってみることにいたします。(坂口泉)
自動車産業時評
2009年1〜9月のロシアのトラック市場
ロシアの自動車専門調査機関「アフトビジネス」から2009年1〜9月期のトラック市場の動向に関する情報を入手することができたので、今回はその概要をご紹介いたします。(坂口泉)
ロシアビジネスQ&A
ロシア関連セミナーの開催ノウハウ
近年、地方において、自治体、経済団体、銀行、国際交流団体等の主催により、ロシアの地方とのセミナーが活発に開催されています。
セミナーで扱われるテーマは、2012年のAPEC首脳会合に向けて開発が進められているウラジオストクを中心とした極東ロシア地域へのビジネス参入やロシアの環境問題解決に向けたビジネスの可能性などが多いようです。
そこで今回はロシアとの地域間経済交流セミナーを円滑に、そして効果的に開催するかにはどうすればよいかという質問を取り上げます。(原真澄)