ロシアNIS調査月報2010年11月号特集◆ロシア自動車市場: |
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10月20日発行 |
特集◆ロシア自動車市場:地方の視点 |
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調査レポート |
危機脱出を模索するロシア自動車産業 ―地域別の動向と新たな政策展開 |
調査レポート |
悩める極東中古車ビジネス ―アクセルとブレーキの間で |
調査レポート |
沿ヴォルガ諸地域の自動車産業政策 ―サマラ・ニジェゴロド・タタルスタン |
ビジネス最前線 |
カルーガでの乗用車生産プロジェクト始動 |
ビジネス最前線 |
サハリンから見えてくるロシア自動車市場の将来 |
データバンク |
2010年上半期のロシア乗用車市場 |
調査レポート |
港湾別に見る対ロシア貿易の現状と傾向 |
調査レポート |
ベラルーシのロシア依存型経済 ―貿易・エネルギーを巡る関係 |
ミニレポート |
新医薬品法がロシア製薬業界にもたらす影響 |
データバンク |
2010年上半期の日本の対ロシア・NIS主要国貿易統計 |
データバンク |
2010年上半期のロシア・NIS諸国の経済統計 |
研究所長日誌 |
ポツダム会談から65年 |
クレムリン・ウォッチ |
ルシコフ市長解任 ―再選に向けメドヴェージェフが一歩前進 |
エネルギー産業の話題 |
バンコールが石油増産を牽引 |
ロシアビジネスQ&A |
◎ロシアの少子化対策に伴う商機 |
ドーム・クニーギ |
堀江典生編著『現代中央アジア・ロシア移民論』 |
業界トピックス
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2010年8-9月の動き ◆伏木海運ウラジオ事務所の県企業サポート |
通関統計 |
2010年1~8月の通関実績 日本の対ロシア月別輸出入通関実績 日本の対ロシア月別乗用車輸出動向 |
危機脱出を模索するロシア自動車産業
―地域別の動向と新たな政策展開―
ロシアNIS経済研究所
坂口泉
はじめに
1.サマラ州
2.タタルスタン共和国
3.ニジェゴロド州
4.カルーガ州
5.サンクトペテルブルグ市
6.その他の地域
7.政府の自動車産業保護・振興策
おわりに
はじめに
今春発表された「2020年までの自動車産業発展戦略」によれば、ロシアの自動車産業(乗用車部門)は外資が参加する2つの大工場と4~5の外国メーカーの大規模な現地工場を軸に発展していく、とされている。外資が参加する2つの大工場とは具体的には、ルノーが資本参加しているAvtoVAZ(ヴォルガ自動車工場)と、Sollersとフィアットの合弁工場のことを指している。この2つのプロジェクトはすでに始動しており、それぞれの拠点であるサマラ州とタタルスタン共和国では自動車産業クラスターを形成する動きが活発化している。また、外国自動車メーカーの現地工場が複数存在するサンクトペテルブルグやカルーガ周辺などでも同様の動きが観察されている。
以上の状況を踏まえ、本稿ではロシア自動車産業の現状を、地域別に整理して論じることにする。さらに、国内自動車産業の保護および振興の観点からロシア政府が導入を検討している2つの措置(新工業アセンブリー措置および新車の輸入関税の引き上げ措置)についても言及する。
悩める極東中古車ビジネス
―アクセルとブレーキの間で―
ロシアNIS経済研究所
齋藤大輔
はじめに
1.自動車市場の新風景
2.狭まる包囲網
おわりに
はじめに
満杯になった駐車場を眺めて、日本車の根強い人気を改めて思う。2010年夏、ウラジオストク。満車の保税倉庫を見ながら、ロシア極東の中古車ビジネスの復活を確信した。
ロシアが外国製自動車にかける関税を引き上げてから1年10ヵ月余り。日本製中古車の輸入拠点・ウラジオストクは活気を取り戻していた。世界不況も重なり、あきらめの空気が漂っていた昨年と違い、明るさと力強さがあった。ロシア向け中古車輸出は最盛期の4分の1の水準にまで回復した。「ラスピールィ」と呼ばれる車を分解して持ち込む新たな方法も生まれた。
一方、中古車を取り巻く環境は年々厳しさを増している。つい最近も、自動車登録の新たな国内基準の導入が日本製中古車の締め出しにつながるのではないかとの不安が広がった。ロシア政府は輸入車の関税を段階的に引き上げていく方針を明確にしている。
景気回復による販売増がアクセルなら規制話がブレーキ。悩める極東中古車ビジネスの最新事情を報告する。
沿ヴォルガ諸地域の自動車産業政策
―サマラ・ニジェゴロド・タタルスタン―
ロシア科学アカデミー世界経済国際関係研究所 主任研究員
V.シュヴィトコ
1.自動車産業政策における連邦と地域の役割分担
2.ロシア自動車産業と沿ヴォルガ地域
3.サマラ州
4.ニジェゴロド州
5.タタルスタン共和国
自動車部品製造やその他関連産業を含む自動車産業は、ロシアの連邦政府が、産業政策の一環として、積極的に支援している数少ない産業の一つである。発展促進措置は、連邦政府が占有する政策手段によって実施されているのは当然のことである。一方、地域行政府が地元の経済を刺激し、特定の事業または産業分野の発展を促進する手段を持ち合わせていないのか、あるいは連邦政府の産業政策の方針を受動的に受け入れるだけの役回りなのかと言えば、それは間違いである。業界の声を聞くと、事業の立地や発展を考えるに当たって各地域行政府・知事らの姿勢は重要な検討材料となっており、事業環境は地域によって質的にも異なっている模様である。具体的に何が最も重要な要因になっているかについては関係者の意見が分かれているものの、地方の行政府が設定する行政障壁(インフォーマルなものも含めて)の程度、「社会的責任」として当局が地元企業に負わせている負担の軽重が最も、大きな要因となっているように思わる。
ビジネス最前線
カルーガでの乗用車生産プロジェクト始動
LLC “PCMA Rus”Deputy General Director
今田正之さん
はじめに
外資系乗用車メーカーのロシア進出が相次ぐなかで、独自のアプローチをとったのが三菱自動車です。周知のように、三菱自動車はPSAプジョー・シトロエンと合弁企業を設立し、この合弁がカルーガに工場を建設しました。工場の竣工式は本年4月に挙行されていましたが、この9月にはいよいよ三菱ブランドのSUV「アウトランダー」のSKD生産が始まりました。
そこで、三菱自動車から合弁「LLC“PCMA Rus”」に派遣され、現地で三菱車生産の指揮をとっておられる今田さんに、インタビューを試みました(メールにてご回答)。今田さんは、ロシア組立事業推進室の室長を経て、この8月にカルーガに赴任されたばかりです。
ビジネス最前線
サハリンから見えてくるロシア自動車市場の将来
札幌ホンダグループ
管理本部 事業推進部
次長 後藤正弘さん
はじめに
2010年に入って、日本からのロシア極東向け中古車の輸出が回復傾向にあります。6~7月はロシアが輸出相手国のなかで再び1位になりました。日本の中古車の多くはウラジオストク港に荷揚げされますが、札幌ホンダグループはサハリンに注目。現在、ユジノサハリンスク市に駐在員事務所の開設を準備中です。なぜ進出先が大陸の都市ではなく、サハリンなのか? その理由を後藤さんから伺っていると、ビジネス環境や消費者嗜好の変化など、ロシア極東における自動車市場の将来が見えてきます。
港湾別に見る対ロシア貿易の現状と傾向
ロシアNIS経済研究所
中居孝文
はじめに
港湾別貿易統計の処理方法
日本の対ロシア貿易構造
港湾別の対ロ貿易動向
主要輸出品の港湾別シェア
主要輸入品の港湾別シェア
港湾別の対ロ貿易依存度
おわりに
はじめに
財務省公式サイトの「貿易統計」のウェブページでは、我が国の主要港湾(開港)に設置されている税関官署ごとの国別・品目別貿易統計が公表されている。
本稿の目的は、上記の統計を利用して、日ロ間の貿易貨物が日本のどの港を経由して行き来しているのかをできるだけ具体的に特定するとともに、そこに潜む一定のトレンドや特徴を浮き彫りにすることによって、日ロ間の貿易物流の一側面を明らかにすることにある。
ベラルーシのロシア依存型経済
―貿易・エネルギーを巡る関係―
在ベラルーシ共和国日本国大使館 専門調査員
半田美穂
1.はじめに
2.貿易にみる関係
3.エネルギー分野にみる関係
4.エネルギー供給の多極化の試み
5.結論にかえて
1.はじめに
ベラルーシ経済は、ロシアに大きく依存している。特に、エネルギー資源に乏しく輸入に頼るベラルーシにとって、エネルギー資源供給の問題は国の最重要課題の一つであるが、そのほぼ100%をロシアに依存している。また、ロシアから輸入した石油を加工して輸出する石油精製ビジネスは、これまで国の重要産業として機能してきた。ベラルーシは、ロシアから優遇条件で供給される安価なエネルギー資源によって、「ベラルーシ経済の奇跡」と呼ばれるほど長期にわたり連続して経済成長を遂げてきた。しかし、近年、ロシアは優遇条件によるエネルギー供給というベラルーシへの「補助金」を削減し始めている。その背景には、両国の政治的要因があり、ベラルーシとロシアの経済関係は、両国の政治関係に大きく左右されている。
本稿では、ベラルーシの貿易・エネルギー問題を中心に、ベラルーシ経済のロシアへの依存状況を概観し、ロシアとの関係からベラルーシ経済情勢を考察する。
新医薬品法がロシア製薬業界にもたらす影響
はじめに
2010年9月1日、ロシアの新連邦法「医薬品の運用について」(2010年4月12日付N61-FZ)が発効した。これまで、1998年に施行された連邦法「医薬品について」が改正を重ねながら運用されてきたが、同法は新連邦法の施行と同時に失効した。新連邦法はまだ施行されたばかりで、不明な点も多い。今後、関連法制が整備され、連邦法自体にも改正が加えられることになるだろう。とりあえず、現時点で分かる範囲で、新連邦法によってロシアの医薬品行政の何が変わったのか、概要を以下にまとめる。(山本靖子)
クレムリン・ウォッチ
ルシコフ市長解任
―再選に向けメドヴェージェフが一歩前進―
ロシアの内政は、次第に2012年の大統領選挙に焦点を合わせつつあります。ルシコフ・モスクワ市長の解任は、その文脈の中での大きな出来事でした。数ヶ月前から早期交替論が盛んになっていたのですが、当のルシコフは円満な退陣を拒否し続けただけでなく、直接選挙制への復帰を主張するなど、75歳を目前にしてなお続投の意欲満点でした。
地方首長をつぎつぎに更迭してきた連邦政権にとっても、エリツィン時代初期に政治家としての地歩を築いて以来18年間カリスマ知事として首都に君臨してきたこの人物を倒すことは容易ではないとみられていました。(月出皎司)
エネルギー産業の話題
バンコールが石油増産を牽引
2010年上半期のロシアの石油生産の数字を入手することができましたので、その数字をもとにロシアの石油分野の上流部門の現状をご紹介いたします。(坂口泉)
ロシアビジネスQ&A
ロシアの少子化対策に伴う商機
秋のロシアでは、結婚したばかりのカップルが、街のあちらこちらで記念撮影をする光景をよく目にします。もちろん休日の方がたくさんの新婚さんを見かけますが、平日でも結構たくさんのカップルを目にします。花で飾った白のストレッチ・リムジンに乗って、教会広場や丘の上の見晴らし台など結婚の記念写真には絶好の撮影スポットを練り歩きます。それもそのはず、ここ数年ロシアの婚姻数は年々5%~10%も増えていて、2009年には120万組のカップルが誕生したそうです。同じくよく目にするのは、ベビーカーに赤ちゃんを寝かせて散歩する若い夫婦の姿です。ロシアでは結婚ブームとベビーブームが起きているようです。その背景にはロシア政府の少子化対策による手厚い給付金制度もあるようです。
さて、今回はロシア政府の少子化対策の内容とビジネス可能性についての質問にお答えします。(原真澄)