ロシアNIS調査月報
2011年7月号
特集◆北東アジア物流と
ロシア極東港湾
特集◆北東アジア物流とロシア極東港湾
調査レポート
北東アジアにおけるロシア極東港湾の位置
―コンテナ物流を中心に―
調査レポート
日ロ貿易を担うシベリア鉄道と極東港湾
―コンテナと完成車―
調査レポート
ロシア極東港湾の管理・経営構造
―沿海地方の港湾を中心に―
調査レポート
極東発展プログラムの2010年の実施概況
ビジネス最前線
旧来の港湾振興から地産地積の発想へ
ビジネス最前線
ユーラシアに生まれる新しい物流スタイル
ビジネス最前線
ロシア極東コンテナ航路活性化の鍵は何か
ロシア極東羅針盤
飛躍のチャンスを迎えたワニノ港
ロシアビジネスQ&A
◎ロシア横断トラック輸送の可能性

調査レポート
ロシア農業の干ばつ被害からの復興状況
INSIDE RUSSIA
メドヴェージェフとプーチンの主導権争い
ロシア首長ファイル
アムール州コジェミャコ知事
エネルギー産業の話題
2011年第1四半期のロシア石油ガス産業
自動車産業時評
2011年第1四半期のロシア乗用車市場
ロジスティクス・ナビ
2010年のウクライナ港湾活動実績
研究所長日誌
19世紀のペレストロイカ ―アレクサンドル2世の改革
業界トピックス
2011年5月の動き
◆M’s Planningのロシアビジネスは新展開へ
通関統計
2011年1〜4月の通関実績
日本の対ロシア月別輸出入通関実績
日本の対ロシア月別乗用車輸出動向


北東アジアにおけるロシア極東港湾の位置
―コンテナ物流を中心に―

岡山大学 准教授
津守貴之

はじめに:問題の所在
 本稿の目的は次の3点である。すなわち、@北東アジアにおけるロシア極東港湾の客観的位置を整理すること、Aそれを踏まえてロシア極東港湾の今後の発展戦略の方向と課題を考察すること、そしてこれら2点にもとづいて、B現在の日本の港湾政策、とりわけ「日本海側拠点港」政策の妥当性と現実性を検討すること、である。


日ロ貿易を担うシベリア鉄道と極東港湾
―コンテナと完成車―

環日本海経済研究所 名誉共同研究員
辻久子

はじめに
 日ロ間貿易品目でシベリア鉄道を利用して輸送されているものは多い。輸入では石炭、非鉄金属、木材のほぼ全量、輸出では一般機械、電気機器、化学品、自動車部品、完成車、などが部分的に鉄道輸送されている。本稿ではこれらの中でシベリア鉄道利用の拡大が期待できるコンテナ及び完成車(新車)を取り上げ、金融危機を挟んだ物流を振り返り、今後の発展のための課題を論じる。
 なお、ここで言うシベリア鉄道とは、モスクワ〜ウラジオストク間(9,288q)という狭義のシベリア鉄道本線に加えて、分岐する支線が構成する鉄道ネットワークを含める。


ロシア極東港湾の管理・経営構造
―沿海地方の港湾を中心に―

ロシアNIS経済研究所 次長
中居孝文

はじめに
 日本の港湾では港湾管理者が都道府県や市町村等の地方公共団体が大部分で、ターミナル運営も公共または公社型が多いのに対し、ロシアにおける港湾の管理・経営構造は、日本のそれとはかなり異なっている。そのため日本の港湾制度を基準にロシアの港湾をながめても、なかなか理解しにくい面がある。
 本稿は、こうしたロシアの港湾管理・経営の特徴を、沿海地方の港湾、とくにウラジオストク港、ナホトカ港、ヴォストーチヌィ港を事例としながら、@港湾の民営化プロセス、A港湾の国家管理、B港湾ターミナルの経営構造といった点から明らかにすることを目的とする。


極東発展プログラムの2010年の実施概況

ロシア科学アカデミー極東支部経済研究所
O.プロカパロ

 2010年、極東連邦管区の各連邦構成主体で実施中の「2013年までの極東ザバイカル地域経済社会発展連邦課題プログラム」(以下「極東ザバイカル発展プログラム」とする)に再び修正が加えられた。
 2010年の修正を受けて、極東ザバイカル発展プログラム(「アジア太平洋地域における国際協力センターとしてのウラジオストク市発展」サブプログラム(以下、ウラジオストク発展サブプログラムとする)を含む)の2008〜2013年の総事業費は、1兆386億ルーブルとなった。


ビジネス最前線
旧来の港湾振興から地産地積の発想へ

飯野港運梶@取締役 東京支店長
小塩博史さん

はじめに
 飯野港運は京都府舞鶴市に本社をもち、一般港湾運送業、港湾荷役事業、船舶代理店業、通関業など海運事業全般を手掛けています。同社は2002年より、舞鶴港や新潟港など日本各地の港とロシア・ナホトカを在来線(コンテナや自動車等に特化していない在来型の一般貨物船)で結ぶ定期貨物航路を飯野海運から継承し、小塩さんは東京事務所にてその責任者となりました。ソ連時代から海運業、港運業に携わってこられた小塩さんは、日ロ沿岸地域における物流の現在を長い歴史のなかに位置づけ、そのフレームワークが大きく変化していることを指摘し、沿岸貿易の新たな発展のための提言もなさっています。


ビジネス最前線
ユーラシアに生まれる新しい物流スタイル

潟ニコロジスティクス・ジャパン 代表取締役
水野博さん

はじめに
 ユニコロジスティクスはロシアCIS諸国などユーラシア大陸の内陸輸送を中心に独自の物流サービスを展開する韓国の企業です。同社の日本法人(ユニコロジスティクス・ジャパン)は2010年4月に設立され、初代代表取締役として水野さんが就任されました。ロシアCIS諸国向け輸送サービスの競合が最も厳しいといわれる韓国で業界をリードするユニコロジスティクス。同社のアイデアやノウハウを日本企業に提供する人物として、旧ソ連時代から長年、物流分野に携わってこられた水野さんはまさに打ってつけの方です。今回は現在の事業からユーラシアにおける新しい物流の可能性まで、幅広いお話を伺いました。


ビジネス最前線
ロシア極東コンテナ航路活性化の鍵は何か

トランスロシアエージェンシージャパン梶@理事
渥美光司さん

はじめに
 トランスロシアエージェンシージャパンは、日ロ間で唯一、定期コンテナやRORO船による船舶・集荷代理店業務を行っている日ロの合弁会社です。渥美さんは長くロシアと日本を結ぶ架け橋役として尽力されてきました。日本とロシア極東とのコンテナ航路の活性化のためには、シベリア鉄道の輸送がスムーズに行われることが不可欠ですが、渥美さんによれば、現状ではクリアすべき課題が少なくありません。とはいえ、ロシア極東における日本車の組立工場設立の計画が発表されるなど、日ロ航路に注目が集まりつつあるなか、トランスロシアエージェンシージャパンは将来の取扱量増加を見据え、サービスの強化に努めています。


ロシア極東羅針盤
飛躍のチャンスを迎えたワニノ港

 ハバロフスク地方の南東部沿岸、ウラジオストクから海路1,100qのところに位置する。周辺一帯は、深く湾が出入りするリアス式海岸で、天然の良港である。ワニノには商業港、石油港(トランスブンケル)、石炭港の3つの港がある。商業港と石油港はワニノ湾内にあり、石炭港はムチカ湾に位置する。ワニノ湾の隣には港湾特区のソフガワニ湾がある。サハリンのホルムスクと鉄道フェリーで結ばれており、大陸とサハリンを結ぶ唯一の物流窓口となっている。(齋藤大輔)


ロシアビジネスQ&A
ロシア横断トラック輸送の可能性

 昨年夏、プーチン首相が、開通直前のチタ・ハバロフスク間のアムール自動車道路2,000kmを自ら運転する自動車で走破したという話題がありました。アムール自動車高速道路が開通したことにより、ロシアは西のサンクトペテルブルグから東のウラジオストクまで自動車道路で結ばれました。このことは、欧州部ロシアへの輸送経路として、これまで主流だった船便やシベリア鉄道に、貨物自動車による輸送の可能性が生まれたことを意味します。今回はロシア横断トラック輸送の可能性についての質問にお答えします。(原真澄)


ロシア農業の干ばつ被害からの復興状況

ロシアNIS経済研究所 部長
坂口泉

はじめに
 沿ヴォルガ連邦管区等で深刻な干ばつ被害が生じた関係で2010年8月15日からロシアからの穀物の輸出が禁止され、世界市場に大きな影響を及ぼしたのは記憶に新しい(周知の通り、つい最近、プーチン首相は2011年7月からの輸出解禁の意向を表明した)。だが、干ばつ被害の影響を受けたのは穀物だけではなかった。ロシアの主要な農作物であるジャガイモ、砂糖用甜菜、ひまわりの種に代表される油料種子等も不作となり、ロシア政府は国内価格の高騰を抑制するために様々な措置を講じることとなった。さらに、畜産分野も飼料用穀物の不足と価格の高騰という逆風に立ち向かうことを余儀なくされた。
 本稿では、ロシアの農業分野が干ばつにより受けたダメージとそこからの復興のプロセス、ならびに、今後の展望について、穀物部門を中心に紹介する。


INSIDE RUSSIA
メドヴェージェフとプーチンの主導権争い

はじめに
 メドヴェージェフ大統領とプーチン首相。2012年の大統領選挙で、現体制を代表して戦うのはどちらなのか? どうやら、両者とも意欲は充分なようであり、それに向けたパフォーマンスに余念がない。今回は、直近のそれらの動きを整理しておく。(服部倫卓)


ロシア首長ファイル
アムール州コジェミャコ知事

はじめに
 今回は、ロシア極東に位置するアムール州の知事を紹介する。同州はこれまで取り上げた地域とは対照的に、ソ連崩壊後のロシア史上最も頻繁に知事の交代が起きている地域であり、約20年間で9人の知事が就任した。コレソフ前知事は就任期間最短知事の1人であり、わずか1年4ヵ月でその職を去った。彼の後任として知事を務めるのは二度目の知事就任となったオレグ・コジェミャコである。(中馬瑞貴)


エネルギー産業の話題
2011年第1四半期のロシア石油ガス産業

 今回は、ロシアの石油ガス専門誌『石油ガス垂直統合』(2011.8)および『石油と資本』(2011.5)に掲載されたロシアの石油ガス分野の最新の状況に関する記事、ならびに、石油とガスの生産量に関するデータをもとに、2011年第1四半期時点でのロシアの石油ガス分野の状況をご紹介します。(坂口泉)


自動車産業時評
2011年第1四半期のロシア乗用車市場

 2010年春にスクラップインセンティブが導入されて以降、ロシアでは乗用車の販売が回復し始めました。回復傾向は2011年に入ってからさらに顕著になっており、多くのメーカーが販売を大幅に伸ばしています。原発事故の影響が心配されましたが、日本車も第1四半期の時点では販売が非常に好調でした。今回は、日本の大震災および原発事故の影響などにも留意しつつ、2011年第1四半期時点のロシアの乗用車市場の状況をご紹介します。(坂口泉)


ロジスティクス・ナビ
2010年のウクライナ港湾活動実績

 今回は、ウクライナ港湾セクターの2010年の活動実績に関し、統計数値をとりまとめてご紹介いたします。データの出所は、ウクライナ統計国家委員会および『Ports of Ukraine Plus』誌です。景気回復にもかかわらず、ウクライナの海港の取扱貨物量は2010年に前年比5%あまりも低下していますが、その背景には何があったのでしょうか?(服部倫卓)