ロシアNIS調査月報
2012年3月号
特集◆新時代を模索する
ロシア・NISの電力産業

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2月20日発行    

特集◆新時代を模索するロシア・NISの電力産業
調査レポート
壁に直面するロシアの電力改革
調査レポート
ウクライナの電力事情と新エネルギー
データバンク
数字で見るカザフスタンの電力産業
ミニ・レポート
ポスト・フクシマのロシア原子力産業の行方
ミニ・レポート
ベラルーシの対ロシア関係と原発建設
エネルギー産業の話題
ロシアの再生可能エネルギー最新事情

調査レポート
日ロ間コンテナ物流における港湾選択
ビジネス最前線
クールジャパンに呼応するロシアの感性
データバンク
2011年版ベラルーシ100大企業ランキング
研究所長随想
東日本大震災(3.11)から1年に想うこと
INSIDE RUSSIA
大統領候補プーチンの動き
ロシア極東羅針盤
極東にメガプロジェクトを誘致せよ;
ロシア首長ファイル
ヤロスラヴリ州ヴァフルコフ知事
自動車産業時評
回復軌道に乗ったロシアのトラック市場
ロジスティクス・ナビ
沿海地方港湾の動向-2012
ロシアビジネスQ&A
公的機関のロシアビジネス支援の概要
ドーム・クニーギ
ロシア語通訳協会『東京物語』
業界トピックス
2012年1月の動き
◆ブラゴヴェシチェンスク・黒河のロ中国境交易
通関統計
2011年1〜12月の通関実績(速報値)
2011年1〜12月の日ロ貿易(速報値)


壁に直面するロシアの電力改革
―2011年の動きを中心に―

ロシアNIS経済研究所 部長
坂口泉

はじめに
 2000年代前半から開始された統一電力システムの分割民営化を軸とするロシアの電力分野の構造改革は、2011年1月1日からの産業需要家向けの電力卸売料金の完全自由化によりひとつの区切りを迎える予定であったが、当該の完全自由化による電力小売料金の高騰を危惧するロシア政府が事実上の規制強化に踏み切ったため、「完全自由化」と称される措置はいびつな形で実施されることとなった。その結果、構造改革の先行きに不透明感が漂いはじめ、2015年以降にロシアの電力分野における設備投資額が激減するのではないか(いわゆる「2015年問題」)、との懸念の声が業界内で広がりつつある。
 以上の状況を踏まえ、本稿では、浮き彫りとなりつつある構造改革の問題点に留意しながら、2011年のロシアの電力分野を回顧する。具体的には、同年の電力需給状況の他に、年初からの電力小売料金の高騰に背景にある事情、電力料金をめぐる諸問題、電力分野における設備投資状況、業界再編の動き等をご紹介することとする。


ウクライナの電力事情と新エネルギー

ロシアNIS経済研究所 次長
服部倫卓

はじめに
 ウクライナはロシア・NIS諸国のなかで、ロシアに次ぐ規模を誇る電力産業国家である。NIS諸国は発電が火力・水力・原子力のいずれかに偏る傾向が強いが、ウクライナはその3つとも相当規模の発電能力を誇る国である。ただし、現状では原子力発電の比率が50%近くに達しており、ロシア・NIS諸国で最も原発依存度の高い国となっている。全般に発電所および電力関係施設の老朽化が進行しており、近代化および省エネ型の新技術導入が要請されている。また、太陽光、風力、地熱、バイオマスなどの代替エネルギーの開発も有望視されている。
 本稿では、火力を中心として主な事業主体を把握・整理することを軸に、ウクライナの電力産業を概観する。関連して、新エネルギー開発の問題にも触れる。


ミニレポート
ポスト・フクシマのロシア原子力産業の行方

 ロシアの場合、原子力発電部門には温室効果ガス排出量削減やエネルギー安全保障への寄与という役割の他に、ガスに偏重した電源構成からの脱却、あるいは、石油ガス分野に過度に依存した産業構造の多様化への寄与、といった同国固有の役割も課せられており、同国政府の原子力発電部門の発展にかける意気込みは他国にもまして強いものとなっていた。福島原発事故が起こった時点で、ロシア国内では、8〜9基の原子力発電ユニットの建設計画が動いていたし、国外では自国製原発の売り込みを積極的に行っていた。福島原発事故後、ロシアのこの原子力発電部門重視の方針がどのように変化するのか注目されたが、同国は何事もなかったが如く、従来の方針に沿った措置を淡々と実行に移した。(坂口泉)


ミニレポート
ベラルーシの対ロシア関係と原発建設

はじめに
 このほど、ベラルーシの民間シンクタンク「戦略研究所」の研究員で、同国を代表する政治評論家であるV.カルバレヴィチ氏に、ベラルーシ・ロシア関係の最新動向について寄稿していただいた。以下では、ベラルーシの原発建設問題や民営化の問題を中心に、このレポートを抜粋してお届けする。(編集部)


エネルギー産業の話題
ロシアの再生可能エネルギー最新事情

 東京電力の原発事故の後、ロシアでも再生可能エネルギーへの関心が高まっています。たとえば、エネルギー省は2011年秋に再生可能エネルギーの利用を促進するための措置案を発表し、風力発電と太陽光発電への割増の電力料金の適用、投資義務契約の枠内でのミニ水力発電所の建設、再生可能エネルギーの有効利用のために国庫から2020年までに800億ルーブルを拠出すること、などを提案しています。また、企業レベルでも、ルスギドロ、Inter RAOなどが再生可能エネルギーに強い関心を示しています。今回は、ロシアの再生可能エネルギー事情をご紹介します。(坂口泉)


日ロ間コンテナ物流における港湾選択
―欧州航路を中心として―

岡山大学 准教授
津守貴之

はじめに:問題の所在
 本稿の目的は、日ロ間コンテナ物流における港湾選択要因としての海上ルートの動向を検討するとともに港湾選択のヴァリエーションを整理することである。


ビジネス最前線
クールジャパンに呼応するロシアの感性

株研インターナショナル 経営企画室長
生島儀尊さん

はじめに
 「日本でアートビジネスの基盤を創り、文化・芸術が日常に溢れる社会を築きたい」(蕪木裕 社長)との思いから設立されたのが美研インターナショナルです。2010年秋にAKB48がモスクワでコンサートを開くなど、ロシアの若い世代のなかで日本のポップカルチャーが浸透しつつあるとの噂は耳にしていたのですが、ロシアで美術展やイベントを何度も主催されている同社の生島さんによると、ロシアはフランスにも匹敵する「クールジャパン」の受容国とのこと。文化芸術に対する感度の高い人々の多いロシアで、今後、いかに文化関連ビジネスを展開していくか。今年秋のポップカルチャーイベント第2弾を準備しているなか、これまでの実績と今後の課題についてお話を伺いました。(芳地隆之)


データバンク
2011年版ベラルーシ100大企業ランキング

はじめに
 小誌では2011年4月号において「NIS大企業総覧」と題する特集を組み、その一環として「ベラルーシ100大企業ランキング」という記事を掲載した。その際は、ベラルーシで発行されている経済週刊紙『ベラルーシ人と市場』に掲載された公開型株式会社の売上高ベスト100だった。しかし、残念ながら、『ベラルーシ人と市場』紙はその後、100大企業ランキングの掲載をしなくなってしまったようである。そこで今回は、ベラルーシの別の経済紙『エコノミーチェスカヤ・ガゼータ(経済新聞)』(2011年6月10日号、No.43)に掲載された資料を利用して、ベラルーシの最新の大企業ランキングをお届けしたい。


INSIDE RUSSIA
大統領候補プーチンの動き

はじめに
 本稿を執筆している時点で、3月4日のロシア大統領選挙の投票日まで、すでに1ヵ月を切っている。今回は、本命候補と目されているプーチン首相およびその陣営が、これまでのところ選挙に向けてどのような動きを見せているかを、まとめておきたい。(服部倫卓)


ロシア極東羅針盤
極東にメガプロジェクトを誘致せよ

 「APEC後はどうなるのか」。今年9月のAPECサミット後を心配する声がある。ある専門家は言う。「国からの公共投資がゼロになるわけではなく、それほどの打撃はない」。サミット後も堅調に推移できればいいが、関係者の間には開発を続ければどうにかなるとの空気がある。民間投資が低調な中で、過疎地の極東が頼るのは政府からの公共投資だ。国頼みの構造はサミット後も変わらない。(齋藤大輔)


ロシア首長ファイル
ヤロスラヴリ州ヴァフルコフ知事

はじめに
 ロシアの連邦大統領府は、2011年12月に行われた下院選挙で「統一ロシア」の得票率が低かった地域の首長を招集し、2012年3月の大統領選挙に向けて各地域の状況改善を求めた。同会合に召集された首長のうちアストラハン州とヴォルゴグラード州では首長が交代させられ、新しい知事が任命された。これらの地域の中でも、特に「統一ロシア」の得票率が国内最低となったのはヤロスラヴリ州であった。しかし、大統領選挙前に同州の現職知事が交代させられる可能性はないというのが専門家の見方であるようだ。建都1000周年を迎えた古都ヤロスラヴリ州は2007年12月の下院選挙で議員に当選したアナトリー・リスィツィンに代わって、当時ウラル連邦管区大統領副全権代表を務めており、ヤロスラヴリ生まれ、90年代にはリスィツィンの下で副知事や州議会議長を務めた経験を持つセルゲイ・ヴァフルコフが新しい州知事に就任し、4年が経過した。今回の選挙結果を受けてロシア国内で最も「民主的」な地域と揶揄されたヤロスラヴリ州を主導するヴァフルコフ知事について取り上げる。(中馬瑞貴)


自動車産業時評
回復軌道に乗ったロシアのトラック市場

 2008年秋の経済危機の後、ロシアのトラック市場は一時低迷していましたが、2010年春ごろから回復基調に転じました。そして、2011年に入ってからは回復のテンポが加速しています。今回は、ASMホールディング社発表の2011年1〜9月期の数字などを基に、順調な回復ぶりを示すロシアのトラック市場の状況をご紹介します。(坂口泉)


ロジスティクス・ナビ
沿海地方港湾の動向-2012

 2012年1月中旬、クリスマス休暇明けのロシア沿海地方を訪れ、ウラジオストク、ナホトカ、ハサン地区の主要港湾を視察しました。好調なロシア経済を背景に、各港が収益性の高い貨物を求めてビジネス拡大に勤しむ状況を報告します。(辻久子)