ロシアNIS調査月報
2013年3月号
特集◆ロシアのパートナー地域を探せ

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2月20日発行    

特集◆ロシアのパートナー地域を探せ
調査レポート
拡大と変容を遂げるロシアの経済特区
調査レポート
五輪を控えたクラスノダル地方の経済
―ソチ後も見据えた投資誘致―
ビジネス最前線
ロシア極東向け金融の地歩を固める
データバンク
2011〜2012年版ロシア地域別投資環境ランキング
ミニ・レポート
カルーガ州経済の奇跡
ミニ・レポート
サンクトペテルブルグの魅力復活に向けて
ミニ・レポート
ニジニノヴゴロド訪問記
INSIDE RUSSIA
異色の全権代表とウラルの企業城下町
ロシア首長ファイル
ハバロフスク地方シュポルト知事
データバンク
ロシアの地域別生活水準ランキング
―浮かび上がる「幸福ベルト」―
データバンク
大気汚染の深刻なロシアの都市のリスト
出張・駐在の達人
地方ハブ空港の整備でロシア出張は変わるか?

調査レポート
ロシアの電力部門の混迷とビジネスチャンス
研究所長随想
幻に終わったチュメニ〜ナホトカ・パイプライン
ロシア極東羅針盤
動き出す石油化学プラント
日ロ異文化遭遇の日々
手続き地獄のロシアにも変化の兆し
エネルギー産業の話題
ロシアの再生可能エネルギー関連プロジェクト
自動車産業時評
2012年1〜9月のロシアのタイヤ市場
ロジスティクス・ナビ
沿海地方港湾の物流事情
ドーム・クニーギ
佐藤親賢著
『プーチンの思考 ―「強いロシア」への選択』
業界トピックス
2013年1月の動き
◆沿海地方・水産会社との協力の可能性
通関統計
2012年1〜12月の通関実績(速報値)
2012年1〜12月の日ロ貿易(速報値)


拡大と変容を遂げるロシアの経済特区

ロシアNIS経済研究所 次長
服部倫卓

はじめに
 ロシアNIS貿易会では、平成21年度(2009年度)にロシアの経済特区に関する調査事業を実施し、その成果として調査報告書を刊行した。また、『ロシアNIS調査月報』2010年3月号でも、経済特区に関する特集を組んでいる。
 その後、3年あまりが経過したが、工業生産特区が一定の成功を収める一方、その他の枠組みは総じて進捗していない印象が強い。他方、リーマンショック後の不況地域対策の一環として、ここ3年ほどで新たな特区の創設も相次いでいる。
 本稿では、ロシア経済特区の設立・稼働状況、特区の新規設立などの最新情報を、取りまとめてお届する。


五輪を控えたクラスノダル地方の経済
―ソチ後も見据えた投資誘致―

ロシアNIS経済研究所 研究員
中馬瑞貴

はじめに
 2012年9月にウラジオストクAPECを終えたロシアが次に世界的に注目されるのは、2014年に冬季オリンピック・パラリンピックが開催されるクラスノダル地方ソチ市になるだろう。すでにオリンピック施設の一部は完成し、2012年12月には日本選手も出場したフィギュアスケートの最終戦が行われた。これから外国人スポーツ選手や観光客が次々と訪れることが予想される。
 オリンピック施設や観光施設の投資・建設がひと段落するソチ市を横目に、他の都市や地方行政府はこの注目を糧にさらなる投資誘致を行おうとしている。オリンピックによって「ソチ」の名前は有名となった一方、クラスノダル地方と言ってもまだまだ知名度は低く、ロシアの地方進出に関心を強めている日本企業にとっても有望地域として関心が向けられることが少ない。
 筆者は2012年11月末に初めてクラスノダル地方およびソチ市を訪問した。地方行政府およびソチ市行政府と面談をさせていただいたが、いささか様子は異なる。本誌でクラスノダル地方を取り上げてからすでに約4年もの月日が流れており、同地方の経済・投資政策について最新の情報をお届けする。


ビジネス最前線
ロシア極東向け金融の地歩を固める

澤田ホールディングス
常務取締役 中井川俊一さん
取締役 三嶋義明さん

はじめに
 澤田ホールディングスがカムチャッカ地方に本社を置く銀行の株式を取得した、というニュースを聞いたロシア経済の専門家には、「どうして極東の金融機関に?」という疑問がわいたかもしれません。しかし、お2人の話を聞くと、同社がロシア極東に明るい未来を見ていることがわかります。少ない人口、小さな市場規模など、これまでマイナスとみなされていた特徴がプラスに転じるとの確信は、同社が買収したモンゴルの大手銀行でのご経験に基づいている面もあり、日本企業によるロシア進出の今後は日ロ両国の政治面での関係改善にかかっているとの言葉にも力強いものがありました。(芳地隆之)


データバンク
2011〜2012年版ロシア地域別投資環境ランキング

はじめに
 ロシアの経済週刊誌『エクスペルト』(2012. 12.17-23, No.50)が、毎年恒例のロシアの地域別投資環境ランキングの最新版(2011〜2012年版)を発表したので、この資料を抜粋して紹介する。


ミニ・レポート
カルーガ州経済の奇跡

はじめに
 モスクワおよびサンクトペテルブルグという別格の首都は別として、ロシアの地域の中で近年の経済発展が最も目覚ましいところを一つ挙げるとすれば、カルーガ州かもしれない。現に、最新の『ロシア・レポーター』誌(2013年1月24〜31日号、No.3)が、「カルーガ州経済の奇跡」についての特集を組んでいるほどである。そこで以下本稿では、『ロシア・レポーター』誌の特集の要旨を紹介することを中心に、カルーガ州経済の成功の秘訣を探ってみたい。(服部倫卓)


ミニ・レポート
サンクトペテルブルグの魅力復活に向けて

はじめに
 ロシア第二の都市サンクトペテルブルグは、経済・文化の中心で、プーチン大統領の出身地ということもあり、2000年に彼が初めて大統領に就任して以降、国内外の投資が盛んに行われてきた。ロシアのビジネス誌「エクスペルト」が毎年特集する地域別投資環境ランキングでも常に上位に位置づけられており、最新のデータでも最も高い評価である「最大限のポテンシャルと最小限のリスク地域(1A)」に位置づけられた。一方で連邦統計局のデータによると、2011年の外国直接投資額第4位、固定資本投資額第9位と少し落ち込み気味であるが、依然、投資先としてはロシア国内で最も有望な地域の一つである。
 2012年12月に筆者は約4年半ぶりにサンクトペテルブルグを訪れた。その際、現地の人から興味深い話を耳にした。2011年8月に知事が交代して以来、行政府の経済政策が変わり、投資誘致は失速しているように感じられるというのだ。このような意見を一人ではなく、何人かの専門家、知人が話してくれた。数字を見るとそれほど同市の経済や投資が落ち込んでいる様子はないが、住民の目には、現政権の投資誘致活動があまり積極的ではないと映っているようだ。
 そこで本稿ではサンクトペテルブルグ訪問の際の市行政府との面談の成果なども踏まえながら、サンクトペテルブルグの経済・投資環境の現状について紹介し、投資先としての同市の魅力を改めて考えてみたい。(中馬瑞貴)


ミニ・レポート
ニジニノヴゴロド訪問記

はじめに
 2012年11月、ロシアの産業調査の一環で沿ヴォルガ連邦管区ニジェゴロド州の州都、ニジニノヴゴロド市を訪問する機会を得た。ヴォルガ川とオカ川の合流点に13世紀に築かれたニジニノヴゴロドは、ディープ・ロシアを代表する古都であるとともに、自動車工場GAZ他、多くの大企業を擁する重工業都市の顔をもつ。他にも州内には製油所、化学プラント、冶金工場、製紙工場、さらには油脂コンビナートのような食品工場まで、多岐にわたる製造業が立地、ロシアにおける一大工業拠点を形成している。同州の地域総生産の約3割を製造業が占める。
 発達した工業基盤、モスクワから約440kmという立地の良さ(ロシアの基準では近い)等が評価され、ニジェゴロド州には既に多くの外国企業が進出しており、日本企業もその例外ではない。今後の展望を探るため、外資進出の実態、外資導入政策の現状と展望、優先投資分野等について情報を収集するべく関連機関を訪問した。(輪島実樹)


INSIDE RUSSIA
異色の全権代表とウラルの企業城下町

はじめに
 2012年にロシア大統領の座に復帰したV.プーチンは、ニジニタギルという街の工場職員をウラル連邦管区の大統領全権代表に任命するという、前代未聞の人事に踏み切った。本稿では、この話題を枕に、ウラルの企業城下町とプーチン体制について考えてみたい。(服部倫卓)


ロシア首長ファイル
ハバロフスク地方シュポルト知事

はじめに
 世界的に見て、モスクワ市の物価が高いということはすでに有名な話である。しかし、ロシアで最も市民生活にお金がかかる都市はハバロフスク市だということが連邦社会院の調査で明らかとなった。
 そのハバロフスクで2012年9月から「シュポルト解任!」のスローガンの下、住民の間で知事解任運動が広まっている。ハバロフスク地方の主要メディアであるAmurMediaのサイトでは知事解任に対する署名集めが進められている。
 一方、毎年、ビジネス誌「エクスペルト」で「地域別投資環境ランキング」を発表いる格付け会社「エクスペルトRA」は、金融危機後の2008年末から2010年半ばに任命された知事について、最も投資リスクを引き下げ、投資環境を改善した知事を格付けした。すると、第一位にヴャチェスラフ・シュポルト・ハバロフスク地方知事がランクインし他のである。同地方は2010年に83構成主体中66位であった投資リスクのランキングを2011年に44位、2012年には35位にまで引き上げた。投資環境の改善を達成したにもかかわらず、市民の支持を得ることができず解任の危機にあるシュポルト知事は一体どのような人物なのだろうか。(中馬瑞貴)


データバンク
ロシアの地域別生活水準ランキング
―浮かび上がる「幸福ベルト」―

はじめに
 2012年12月に、ロシア・ノーヴォスチ通信と『モスクワ・ニュース』紙が共同で、ロシアの地域ごとの生活水準ランキングというものを発表した。大変興味深い資料なので、以下ではこのランキングのさわりだけ紹介することにする。


データバンク
大気汚染の深刻なロシアの都市のリスト

はじめに
 中国の大気汚染が日本でも重大な懸念を引き起こしているが、もちろんロシアの大都市、工業都市も大気汚染の問題を抱えている。そこで、やや異色だが、大気汚染の特に深刻なロシアの都市のリストというものを紹介しよう。ロシア連邦天然資源・環境省は、「ロシア連邦の環境状況とその保護に関する国家報告書」というものを、毎年発行している。その最新版に掲載されている大気汚染が特に深刻な都市のリストを整理して、表にまとめてみた。
 むろん、このリスト入りは名誉なことではないが、環境ビジネスにとってはチャンスを意味するかもしれない。


出張・駐在の達人
地方ハブ空港の整備でロシア出張は変わるか?

  ロシアでは、地方から地方に移動する際にダイレクトな交通手段がなく、モスクワを経由することを迫られるケースが多い。その分、やはり移動は大変になるし、遅延等のリスクも高まり、思わぬトラブルに巻き込まれたりしかねない。しかし、そうした状況は、今後変化していく可能性が出てきた。最近のロシアでは、民間の大手資本が地方空港を買収して近代化する動きが進んでいる。その結果、モスクワに集中していたハブ機能が、地方のいくつかの拠点空港にシフトする可能性があるということだ。以下では、主に2012年8月20日付の『エクスペルト』誌に掲載された情報に依拠しながら、その動きをまとめてみたい。(服部倫卓)


ロシア電力部門の混迷とビジネスチャンス

ロシアNIS経済研究所 部長
坂口泉

はじめに
 2000年代半ばにチュバイス主導で開始された統一電力システムの分割民営化を軸とするロシアの電力分野の構造改革は今、大きな壁に遭遇している。チュバイスは、「統一電力システムという国営の巨大な独占企業を分割民営化することにより、電力分野において競争原理が機能し始め、電力料金の高騰という事態を回避しつつ投資を活性化し、老朽化したインフラの刷新を進めるという困難な課題の達成が可能になる」との説を唱えていたが、現実は彼の期待を裏切るものとなっている。気象条件が厳しい上に人口密度が低く、電力事業者にとって魅力的なエリアが限定されているロシアでは競争原理はほとんど機能せず、設備更新の推進は電力料金の高騰に直結した。このため、2011年春ごろから政府は電力料金を人為的に抑制する方針を示し始めたが、その結果、今度は電力会社による設備投資意欲が減退している。すなわち、「設備の更新を推進しようと思えば電力料金の高騰が不可避となり、電力料金を抑制しようとすれば設備の更新が進まない」という二律背反的状況が生じたのである。
 2012年もその状況からの出口は見えなかった。それどころか、政権内部で電力分野の再国有化の動きが強まるなど、混迷の度を増している。また、電力料金の先行きにも不透明感が漂っており、このままでは、電力インフラをめぐる状況がさらに深刻化する可能性も否定できない。
 以上の状況を踏まえ、本稿では、電力分野の構造改革が内包する二律背反性に留意しながら、2012年のロシアの電力分野を回顧する。具体的には、同年の電力需給状況の他に、電力料金をめぐる諸問題、電力分野における設備投資状況、業界再編の動き等をご紹介することとする。


ロシア極東羅針盤
動き出す石油化学プラント

 沿海地方のナホトカ郊外に石油化学プラントをつくるプロジェクトが動き出している。1月下旬に公聴会が開かれ、着工に向けた手続きが進んでいる。
 プロジェクトはパイプラインで太平洋沿岸まで輸送した東シベリア産原油を精製し、付加価値の高い石油化学品をアジア太平洋市場に供給するというもの。国営石油会社のロスネフチが推進している。
 建設場所は原油出荷拠点コジミノ港に近いヴォストーチヌィ港内の社有地。計画では、プラントは早ければ2017年に生産を開始する予定で、年間の生産量は1,000万tが見込まれており、日本企業の関心も高い。(齋藤大輔)


エネルギー産業の話題
ロシアの再生可能エネルギー関連プロジェクト

 ロシアは石油ガス資源に恵まれた国ですが、再生可能エネルギーへの関心も高く、エネルギー省は、現時点では1%未満にすぎない総発電量に占める再生可能エネルギーの割合を2020年までに4.5%にまで増やすことを目標に掲げています。
 事業性の確保を可能とする制度の整備が遅れており、先行きに不透明感が漂うのも事実なのですが、いくつかのプロジェクトがすでに動き始めています。今回は、それらのプロジェクトのうちのいくつかをご紹介いたします。(坂口泉)


自動車産業時評
2012年1〜9月のロシアのタイヤ市場

 自動車市場の回復と歩調をあわせるような形で、ロシアのタイヤ市場も2010年ごろから順調な回復ぶりを示していますが、今回は、2012年1〜9月期の同市場の概況と、いくつかの外資系タイヤメーカーの最新の動きをご紹介します。(坂口泉)


ロジスティクス・ナビ
沿海地方港湾の物流事情

 2013年1月下旬、ロシア沿海地方の主要港湾と関連機関を訪問しました。各港湾とも好調で設備投資計画も目白押しですが、将来の発展には課題もあります。日本との関係を軸に考察します。(辻久子)