ロシアNIS調査月報2016年1月号特集◆中央アジアと日本の |
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特集◆中央アジアと日本の経済関係の新展開 |
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INTRODUCTON |
中央アジアの最新の政治・経済状況 |
資料 |
安倍首相の中央アジア・モンゴル歴訪の記録 |
イベント・レポート |
日本・カザフスタン・ビジネスフォーラム |
イベント・レポート |
日本・ウズベキスタン・ビジネスフォーラム |
イベント・レポート |
日本・トルクメニスタン・ビジネスフォーラム |
ビジネス最前線 |
水処理膜技術でカザフスタンの水資源の有効活用を |
キーパーソンに訊く |
地域の安定に重要な役割を果たすタジキスタン |
データバンク |
2015年1〜9月の日本・中央アジア貿易統計 |
中央アジア情報バザール |
カザフスタンの地域クローズアップ |
イベント・レポート |
キルギスとタジキスタンの食品加工産業 ―企業プレゼンテーション報告― |
エネルギー産業の話題 |
ウズベキスタンと外資系石油ガス会社 |
自動車産業時評 |
2015年1〜9月期のカザフスタン乗用車市場 |
地域クローズアップ |
中央アジア交流の歴史的拠点オレンブルグ州 |
ビジネス最前線 |
多様化するロシアのレジャーを支える YAMAHAブランド |
資料 |
日本・ウクライナ投資促進保護協定 |
研究所長随想 |
チャイコフスキーの交響曲4・5・6番 |
INSIDE RUSSIA |
険悪化するロシア・トルコ関係 |
モスクワ便り |
ロシア産業家企業家連盟の国際活動 |
ロシア極東羅針盤 |
ウラジオストク経済特区の挑戦 |
ウクライナ情報交差点 |
一向に上向かないウクライナ乗用車市場 |
産業・技術トレンド |
ロケットは作れても自動車を作れないロシア人 |
ロジスティクス・ナビ |
中欧大陸横断鉄道の展開 |
デジタルITラボ |
ロシアのデジタル音楽市場 ―ロシア人とデジタルコンテンツ(2) |
シネマ見比べ隊!! |
めくるめく鏡の展開 |
蹴球よもやま話 |
ロシアのドーピング問題とサッカーへの影響 |
業界トピックス |
2015年11月の動き ロシア・NISで広まるナベルの卵選別包装装置 |
通関統計 |
2015年1〜10月の輸出入通関実績 |
記者の「取写選択」 |
スターリングラードの兵士たち |
INTRODUCTON
中央アジアの最新の政治・経済状況
ロシアNIS経済研究所 研究員
中馬瑞貴
最後の訪問国カザフスタンのナザルバエフ大学で安倍総理は、今回の中央アジア歴訪を総括する政策スピーチを行い、中央アジアの人材育成やインフラ整備などに総額3兆円規模の支援を約束し、官民を挙げて中央アジア諸国の発展に協力していく意向を語ったことから、今後の中央アジア諸国との関係強化に向けた動きは注目に値する。
こうした動きを受けて本誌は中央アジア特集を展開する。冒頭の本稿では特集全体の導入編として、中央アジアの最新の政治・経済状況を概観し、各国が抱える課題と今後の展望について考察する。また、中央アジアとの関係において無視することができない、ロシアおよび中国の中央アジアへの接近・関係強化にも触れ、中央アジアとロシアや中国の関係から、日本と中央アジアの関係の可能性の展望を試みる。
資料
安倍首相の中央アジア・モンゴル歴訪の記録
2015年10月22〜28日、安倍普三首相は、トルクメニスタン、タジキスタン、ウズベキスタン、キルギス、カザフスタンの中央アジア5カ国とモンゴルを歴訪した。本コーナーでは、外務省の発表等に基づき、安倍首相の中央アジア・モンゴル歴訪の概要とその成果についてまとめる。中央アジア諸国の掲載順は首相が訪問した順番であり、最後に補足としてモンゴルを掲載する。
なお、トルクメニスタン、ウズベキスタン、カザフスタンでは、首相の訪問に合わせて、当会などが主催したビジネスフォーラムが開催されたので、別途掲載記事を参照していただきたい。
イベント・レポート
日本・カザフスタン・ビジネスフォーラム
2015年10月27日、カザフスタンの首都アスタナ市のリクソスホテルにて、日本カザフスタン経済委員会(事務局:ロシアNIS貿易会=ROTOBO)及び日本貿易振興機構(JETRO)が主催する日本・カザフスタン・ビジネスフォーラム「互恵的パートナーシップ構築のための新たな提案」が、カザフスタン共和国投資・発展省外国投資委員会及び同輸出・投資国家庁「カズネクスインベスト」の協力を得て開催されました。
フォーラムでは、中央アジア5ヵ国を歴訪中であった安倍総理に加え、ナザルバエフ・カザフスタン大統領が出席し、両首脳による開会挨拶が行われた他、安倍総理およびマシモフ・カザフスタン首相立会いの下で文書交換式も実施されました。本会議では、投資環境や有望な投資分野に関して互いの理解を深めるべく、日本・カザフスタン双方の官民代表者がプレゼンテーションを行いました。また、会場前では日本企業およびそのカザフスタン側パートナーによる展示会が行われ、活況を得ました。なお、フォーラムには当会会員企業をはじめ、日本とカザフスタン双方から官民合わせて約400名の関係者が参加しました。
以下、日本・カザフスタン・ビジネスフォーラムの概要についてご報告致します。(長谷直哉)
イベント・レポート
日本・ウズベキスタン・ビジネスフォーラム
安倍総理の中央アジアにおける3番目の訪問国、ウズベキスタンの首都タシケント市で、2015年10月25日(日)、日本・ウズベキスタン・ビジネスフォーラム:「日本・ウズベキスタン経済関係発展の新たな展望」が開催されました。主催は日本ウズベキスタン経済委員会(事務局:ロシアNIS貿易会=ROTOBO)と日本貿易振興機構(JETRO)、ウズベキスタン共和国対外経済関係・投資・貿易省、ウズ・インフォ・インベストの協力を得て開催した。 日本、ウズベキスタン双方のビジネス関係者、政府関係者、学術交流団体など約300名が会場となったインターナショナルホテル・タシケントのアムールチムールホールを埋め尽くしました。
安倍総理とカリモフ・ウズベキスタン大統領の来賓挨拶で始まったフォーラムでは、ウズベキスタンの経済状況と新たな経済政策および優先的投資プロジェクトについての報告が行われ、日本企業によるウズベキスタンの経済発展に対するこれまでの活動実績の報告とインフラ、医療、イノベーションなどの分野における新たな提案がなされました。また、数々のビジネス案件の文書が署名され、両国の経済協力関係が一層拡大、発展することを期待させるフォーラムとなりました。
以下では、日本・ウズベキスタン・ビジネスフォーラムの概要について報告致します。(原真澄)
イベント・レポート
日本・トルクメニスタン・ビジネスフォーラム
安倍総理の中央アジア歴訪最初の訪問国となったトルクメニスタンの首都アシガバット市において、2015年10月23日、日本トルクメニスタン経済委員会(事務局:ロシアNIS貿易会=ROTOBO)と(独)日本貿易振興機構(JETRO)の共催で、日本・トルクメニスタン・ビジネスフォーラム「日本・トルクメニスタン経済関係の新たな展望」が開催されました。
第1部「資源利用の高度化」、第2部「社会インフラ整備分野における協力」というテーマで日本とトルクメニスタン双方合わせて20の報告が行われたフォーラムには、両国の官民代表約250名が参加しました。また、フォーラムの最後には安倍総理とベルディムハメドフ・トルクメニスタン大統領が出席し、これまでの両国間の投資・ビジネス関係の成果を高く評価するとともに、今後の新たな協力分野の可能性について期待を表明しました。
以下、日本トルクメニスタン・ビジネスフォーラムの概要についてご報告致します。(中馬瑞貴)
ビジネス最前線
水処理膜技術でカザフスタンの水資源の有効活用を
三菱レイヨン
アクア・ソリューション技術統括室アクアグループ 担当部長
下野達観さん
今回は三菱レイヨン株式会社(以後、三菱レイヨン)アクア・ソリューション技術統括室アクアグループの下野達観さんのお話をご紹介します。下野さんは、2014年11月にカザフスタンを訪問して以来、数回にわたってカザフスタンへ足を運び、水処理膜分野での事業の実現に向けて交渉を進めています。インタビューでは三菱レイヨンのカザフスタンとの関係の現状や今後の可能性の他に、実際に訪問してみたカザフスタンの印象や国民性などについても言及していただきました。(中馬瑞貴)
キーパーソンに訊く
地域の安定に重要な役割を果たすタジキスタン
駐日タジキスタン共和国特命全権大使
H. ザリフィ
本号では、ザリフィ駐日タジキスタン共和国特命全権大使のインタビューをお届けします。ザリフィ大使は、本年9月1日に着任されたばかりですが、これまで駐米大使や外務大臣等の要職を歴任され、タジキスタンの外交活動において、重要な役割を果たしてこられた方です。ザリフィ大使には、安倍首相の中央アジア歴訪の後にお話を伺いましたが、タジキスタンと隣国アフガニスタンとの関係、また、タジキスタンが地域の安定に果たす役割について興味深いお話を聞かせていただきました。さらに、タジキスタンの主要産業の現状を伺いつつ、大使が期待される今後の日本との経済関係のありようについても、お話しをいただきました。(岡田邦生)
データバンク
2015年1〜9月の日本・中央アジア貿易統計
当会では、日本財務省発表の貿易統計にもとづいて、日本とロシア・NIS諸国との貿易統計を定期的に紹介しているが、今回は中央アジア特集に合わせて、2015年1〜9月の日本と中央アジア5ヵ国の貿易統計を掲載する。
中央アジア情報バザール
カザフスタンの地域クローズアップ
旧ソ連諸国の中でロシアに次ぐ面積を誇る中央アジアのカザフスタンは、14の州および州と同等の地位を持つ首都のアスタナ市ならびに旧首都のアルマトィ市の16地域から構成されている。カザフスタンと言えば、石油、ガス、金属など、資源が豊富で中央アジアや旧ソ連諸国の中では著しい経済発展を実現している一方、その発展は資源に依拠しており、製造業の発展とインフラおよびロジスティクスの整備が今後の経済発展の課題と考えられている。こうしたカザフスタンの一般的な特徴は16地域すべてに共通するわけではなく、地域ごとに人口、面積はもちろんのこと、地理的、経済的、社会的、政治的条件やリソースが異なり、地域ごとに特徴を持つ。そこで今回はカザフスタンの諸地域について紹介する。まずはカザフスタン西部カスピ海沿岸のアティラウ州、続いてロシアに近い北部のパヴロダル州、広大なカザフスタンの中心に位置するカラガンダ州、南部の大都市シムケントを含む南カザフスタン州を取り上げることにしたい。(中馬瑞貴)
イベント・レポート
キルギスとタジキスタンの食品加工産業
―企業プレゼンテーション報告―
2015年10月14日、ロシアNIS貿易会の会議室において、キルギスならびにタジキスタンの食料加工企業グループがビジネスプレゼンテーションを開催した。本稿ではその概要をご紹介する。 当会では、10月13〜20日の日程で、キルギスよりバルカッド社、サビタクノワ社、エコス・インターナショナル社の3社、タジキスタンよりマコーリ社とタジスナック社の2社の食品加工企業5社を招聘、日本企業とのビジネスマッチング支援事業を行った。そしてその事業の一環として、本プレゼンテーションが開催された。(鳴沢政志)
エネルギー産業の話題
ウズベキスタンと外資系石油ガス会社
今回は、ロシアの石油ガス専門誌の『石油と資本』の2015年10月号、ならびに、『石油ガス垂直統合』誌の2015年第17-18号に掲載された情報をベースに、ウズベキスタンの石油ガス分野における外資の動きをご紹介します。(坂口泉)
自動車産業時評
2015年1〜9月期のカザフスタン乗用車市場
カザフスタン自動車ビジネス協会が2015年1〜9月期のカザフスタンの乗用車(小型商用車を含む)の販売の数字を発表しましたので、今回はその数字を参考としなからが、同期のカザフスタンの乗用車市場の状況をご紹介します。(坂口泉)
地域クローズアップ
中央アジア交流の歴史的拠点オレンブルグ州
ロシアは約7,500kmの陸の国境をカザフスタンと共有している。したがって、沿ヴォルガ、ウラル、シベリアの南部一帯にはカザフスタンと国境を接する地域がいくつも存在する。中でも、最長の国境(1,876km)を接するオレンブルグ州は歴史的にもカザフスタン、さらに中央アジアとの関係も深い。州都のオレンブルグ市は、帝政ロシア時代の中央アジア進出の拠点となる要塞が建設され、ほんの数年ではあるが、カザフスタンの首都だったこともある。
そこで本稿では、中央アジア特集にちなんで、地理的、歴史的に中央アジアとの関係の深いロシアの地方を代表するオレンブルグ州の概要を紹介する。(中馬瑞貴)
ビジネス最前線
多様化するロシアのレジャーを支えるYAMAHAブランド
YAMAHA MOTOR CIS LLC
社長 河野俊哉さん
ロシア人は、釣りやハンティングなど自然の中で楽しんだり、遊んだりすることが大好きな人たちです。こうしたレジャーに欠かせないのが、ボートやスノーモービル、水上バイクにモーターサイクルといった商品です。そして、自然を愛するロシアの人々にとても人気があり、また高く信頼されているのがYAMAHAブランドです。今回は、本業以外に、モスクワ・ジャパンクラブの理事も務めるなど多忙な日々を過ごすYAMAHA MOTOR CIS LLCの河野俊哉社長にお話しを伺いました。(中居孝文)
資料
日本・ウクライナ投資促進保護協定
2015年2月5日、日本とウクライナの両政府間で、「投資の促進及び保護に関する日本国とウクライナとの間の協定」が署名された。この協定は、締約国間における投資の保護・促進を図るため、一方の締約国の投資家(企業等)が他方の締約国において投資を行う際の投資活動と投資財産への待遇(投資参入後の内国民待遇及び最恵国待遇、公正・衡平待遇、契約遵守義務、特定措置の履行要求(技術移転の要求等)の禁止、送金の自由、収用の際の補償の条件、紛争の解決手続等)について定めたもの。そして、2015年11月26日、同協定は発効した。以下では、この投資保護協定のテキストを掲載する。
研究所長日誌
チャイコフスキーの交響曲4・5・6番
ロシア文化フェステイバルは、2015年に10年目の節目を迎えた。5月20日開幕式に出席のため来日したナルィシキン・ロシア連邦国家院議長(ロシア組織委員会委員長)は「第10回ロシア文化フェステイバルin Japan」が日本とロシアを結ぶ「日露和親条約」締結160周年にも当たっていることを強調し、文化交流の意義を訥々と述べた。
これまで「ロシア文化フェステイバルin Japan」には、日本の47都道府県から1,200万人以上の観客が参加した事実も公表し、日本国民がロシア文化に高い関心を示していることを評価した。私はこの事業に、日本組織委員会メンバーの一員として参加してきた。(遠藤寿一)
INSIDE RUSSIA
険悪化するロシア・トルコ関係
前回の本コーナーでは「トルコストリームを取り巻く政治経済力学」と題する記事をお届けした。ロシアとトルコは、経済面では互恵的な関係にあるものの、政治面では深刻な対立要因が少なくないこと、そして天然ガスパイプライン計画「トルコストリーム」は地政学的なリスクに翻弄されがちな「筋の悪い」プロジェクトであることなどを指摘した。
その後、そうした不安が的中する形になってしまった。広く報じられているように、11月24日にトルコ・シリア国境付近で、ロシア空軍の戦闘爆撃機がトルコ軍に撃墜されるという事件が発生したものである。ロシア・トルコ関係は一気に険悪化し、ロシアがトルコへの制裁措置を決定する事態となっている。行きがかり上、本コーナーでは今月もロシア・トルコ関係を取り上げざるをえないだろう。以下では、経済面に絞って両国関係の基本点を整理し、また制裁の動きにつきまとめる。(服部倫卓)
モスクワ便り
ロシア産業家企業家連盟の国際活動
ロシア産業家企業家連盟(略称RSPP)は、ロシアの4大経済団体(RSPP、実業ロシア、オポーラ・ロシア、ロシア商工会議所)のひとつで、大企業を主たる会員としている組織である。当会を含む日本関係者とも何かとお付き合いのある組織であり、今回は、国際活動を中心とした同連盟の機能と役割についてご紹介することとしたい。(中居孝文)
ロシア極東羅針盤
ウラジオストク経済特区の挑戦
新型特区やウラジオストク自由港への注目と比べると、ウラジオストクの経済特区は隅に追いやられた印象だ。プーチン政権が次々と打ち出してくる新しい極東政策が特区をどこかへと追いやってしまった。
ウラジオストクに連邦政府の経済発展省が管轄する従来型の経済特区があることを知らない人すらいる。たとえ知っていても、稼働していないと杓子定規に決めつけている。
9月の東方経済フォーラムで、マツダとソラーズは特区にエンジン工場を建設する検討に入ることでロシア政府と合意し、覚書を締結した。
しかし、メインのスポットライトも、フォーラムのテーマも、新型特区やウラジオストク自由港にあてられた。誰もそのことに疑問を持たなかった。だからこそ、どうなっているのかと思い、経済特区を訪ねてみた。(齋藤大輔)
ウクライナ情報交差点
一向に上向かないウクライナ乗用車市場
Ukrautopromの情報によれば、ウクライナにおける乗用車(新車)の月別販売台数は、下図のように推移している。2015年の下半期こそ前年に近い販売台数を記録した月もあるものの、全体としては低迷を脱していない。2015年1〜11月の累計は41,127台で、前年同期比54.0%減だった。(服部倫卓)
産業・技術トレンド
ロケットは作れても自動車を作れないロシア人
ロシア製品と言えば残念ながら時代遅れの低品質というステレオタイプが存在する。特に車はレベルの低いものの代表とされてきた。近年、外資系完成車メーカーがロシアに進出して海外ブランドの自動車がロシアでも製造されるようになったが、部品の大半が外国製という状態で、ソ連崩壊後四半世紀が経った今でもロシアの自動車産業への評価は高くない。しかし、一方でロシアは宇宙開発分野では世界トップレベルであり、実績では圧倒的に日本の先を行く。そもそも、世界に先駆けて宇宙分野を切り開いたのはロシアである。普通に考えれば、自動車の約300倍のスピードを出し、規模も大きいロケットの方が、自動車よりもはるかに高度な工業製品のはずである。そのようなロケットを作れるロシアで、なぜ自動車産業がこのような状況なのかというのは、昔から言われてきた疑問である。今回は、なぜ、ロシア人はロケットが作れても優れた車を作れないのかについて検討する。(渡邊光太郎)
ロジスティクス・ナビ
中欧大陸横断鉄道の展開
中国が掲げる「一帯一路」戦略を追い風に、中央アジアを経由して中国と欧州と結ぶ大陸横断貨物鉄道が活気を帯びています。中国各地から欧州に向けて走り始めたブロックトレインの経済的意味合いを考えます。(辻久子)
デジタルITラボ
ロシアのデジタル音楽市場
ロシア人とデジタルコンテンツ(2)
2015年に国際レコード産業連盟(IFPI)が発表した統計によると、2014年のロシアの音楽市場規模は7,280万ドルと、前年比15.9%の拡大を見せた。2014年の全世界市場規模が150億ドルを記録するなか、ロシアは世界第23位の音楽市場となっている。(大渡耕三)
シネマ見比べ隊!!
めくるめく鏡の展開
『ローラーとバイオリン』VS『鏡』
ロシアの厳しい冬は、サンタクロースのような長く白い髭を蓄えたДед мороз(マロース爺さん/厳寒爺さん)と黄金に輝く三つ編みの愛くるしい孫娘Снегурочка(雪娘)に象徴され、擬人化されています。厳しい寒さを少しでも緩和し、親しみさえ感じつつ、乗り越えようとするロシアの人々の知恵がそこには感じられますね。しかし実際、その身を切られるような寒さも心地よさに変わるほど、ときにロシアの冬は幻想的な美しさを湛えることがあります。窓を彩る氷紋や、羽根のように軽い雪、その雪が陽光を反射するさまは奇跡のような美しさで、夢幻の世界に導かれるようだったりするのです。
さて、幻想や反射というイメージからいささか強引ではありますが、このたびの見比べたい映画の視点は「鏡」のイメージです。鏡は、文学や絵画でもさまざまなかたちで使われる伝統的なモチーフにして媒体ですが、映画においてもそれは例外ではありません。これまで、映画作品における鏡や鏡像のテーマを論じた研究も厚い層をなしています。
そして、ロシア(ソ連)映画において鏡を巧みに用いてわたしたちを魅了してきた監督といえば、かのアンドレイ・タルコフスキーが想起されます。このたびは、タルコフスキーのモスクワ映画大学卒業制作作品『ローラーとバイオリン』(1960)と自伝的要素の強い『鏡』(1974)とを見比べてみたいのです。(佐藤千登勢)
蹴球よもやま話
ロシアのドーピング問題とサッカーへの影響
またまた残念至極なことが起きてしまった。広く報じられているとおり、11月9日、世界アンチドーピング機構(WADA)の第三者委員会が、ロシアの陸上競技界で組織的なドーピングが行われていることを認定した上で、2016年のオリンピックも含めた陸上競技にロシアを出場させないよう勧告するという大事件が起きた。本コーナーの関心から言うと、問題はこれがサッカーに波及するか、特に2018年のFIFAワールドカップに響くかということである。結論から言えば、現在のところ、直接の影響は生じていないようだ。(服部倫卓)
記者の「取写選択」
スターリングラードの兵士たち
緑の大地にモスグリーンのヘルメットが9列縦隊で並んでいた。ヘルメットをかぶっているのは、兵士の墓だ。ロシア・ヴォルゴグラード郊外ロッソシカ村の戦没者墓地は、第2次大戦・独ソ戦で最大の激戦となったスターリングラード攻防戦の舞台の一角。70年ほど前に何が起きたのか、墓は語りかける。(小熊宏尚)