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ロシアNIS調査月報2016年11月号特集◆第2回東方経済フォーラム |
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特集◆第2回東方経済フォーラムとロシア極東 |
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イベント・レポート |
第2回東方経済フォーラム開催 |
イベント・レポート |
日ロビジネスラウンドテーブル ―ロシア極東:日ロ協力の新段階― |
調査レポート |
ロシア極東政策の新展開 |
調査レポート |
ロシアのガス分野の構造変動 ―極東地方の動きを中心に― |
調査レポート |
ロシア極東の公共インフラ・サービス改革の動向 |
研究所長随想 |
内外政治に翻弄されてきた極東プロジェクト ―日ソ(日ロ)貿易外史(10)― |
地域クローズアップ |
ユーラシア大陸北東端のチュクチ自治管区 |
ビジネス最前線 |
音楽大国ロシアで浸透するジャパンブランド |
モスクワ便り |
欧州勢が掲げるロシアビジネスの課題(4) |
産業・技術トレンド |
ロシア最大のウラルの銅メーカー ―日本との協力の可能性― |
自動車産業時評 |
2016年上半期のロシアの商用車市場の状況 |
ロジスティクス・ナビ |
ロシア鉄道旅客の活性化に光 |
中央アジア情報バザール |
中央アジアと外資系カフェ・ファストフード |
データの迷い道 |
不透明なロシアの外国投資 |
駐在員のロシア語 |
ミーニンとポジャルスキー |
デジタルITラボ |
ロシアで物議を醸す「ヤロヴァヤ法」 |
シネマ見比べ隊!! |
外国文学作品映画化の狙い |
ドーム・クニーギ |
杉本侃編著『北東アジアのエネルギー安全保障』 |
業界トピックス |
2016年8−9月の動き |
通関統計 |
2016年1〜8月の輸出入通関実績 |
記者の「取写選択」 |
ロシアとパラリンピック |
イベント・レポート
第2回東方経済フォーラム開催
2016年9月2日〜3日、ロシア極東のウラジオストクにおいて第2回東方経済フォーラムが開催された。現在、ロシアでは、先進社会経済発展区(新型特区)やウラジオストク自由港など、極東発展省を中心とするロシア政府が極東開発政策を積極的に進めているが、東方経済フォーラムは、そうした極東政策やそれに関連するプロジェクトを広く紹介し、外国やロシア国内からの投資誘致を促進することを目的としている。
昨年に続いて第2回目となる今回のフォーラムには、外国の首脳として初めて、日本から安倍晋三総理大臣と韓国から朴槿恵(パク・クネ)大統領が参加し、プーチン大統領とともにプレナリー会合に出席したほか、フォーラム会場内で日ロ首脳会談及び韓ロ首脳会談をこなした。
今回は安倍総理の参加もあって、日本からは数多くのハイレベルの企業関係者が本フォーラムに参加した。本稿では、第2回東方経済フォーラムの開催概要を紹介する。資料として、フォーラムにおけるプーチン大統領および安倍首相による演説のテキストも掲載する。(中居孝文)
イベント・レポート
日ロビジネスラウンドテーブル
―ロシア極東:日ロ協力の新段階―
ロシアNIS貿易会は2016年9月2日、第2回東方経済フォーラムにおいて、日ロセッション「ビジネスラウンドテーブル『ロシア極東:日ロ協力の新段階』」を実業ロシアとともに開催した。
ラウンドテーブルでは昨年に引き続き、村山滋ロシアNIS貿易会会長と、レピク実業ロシア会長がモデレーターを務めた。プーチン政権の極東投資誘致政策が実際に投資を呼び込む実行の段階に入り、日本側から極東の産業振興・輸出基地化を含む8項目の協力プランがロシア側に提起される中で、ラウンドテーブルでは、日ロ協力の新しい形などについて、活発な議論を交わし合った。
今回は安倍総理がフォーラムに合わせてウラジオストクを訪問したこともあって、当会会員企業をはじめ、日ロ双方から官民合わせて約400名の参加があった。ロシア側からはマントゥロフ産業・商業大臣とガルシカ極東発展大臣の2閣僚が参加、日本との協力に対するロシア側の期待の大きさが伝わってきた。今回は各報告者の発言をほぼ全文掲載する。(長谷直哉)
調査レポート
ロシア極東政策の新展開
ロシアNIS経済研究所 次長
齋藤大輔
コムソモリスク、ナデジェヂンスキー、カンガラススィ、ゴルヌィヴォズドゥフと挙げていくと、ロシア通の人は共通項が新型特区(先進社会経済発展区)だと気づくだろう。2年前にスタートした新型特区制度は、日ロ関係の拡大に伴って日本でも急速に関心を集めるようになり、プーチン政権の極東開発の代名詞的な存在に成長した。入居企業の数は2016年9月現在84件に達している。
新型特区と並ぶ政策の柱であるウラジオストク自由港はどうか。特区以上に動きが早く、法律施行から1年足らずで、入居企業の数は100件近くまで増えた。査証取得簡素化や自由関税ゾーンの導入で不安はあるものの、「投資家ファースト」を掲げて課題に取り組んでいる。
1年前にこれほどの変化を予測できた人はいただろうか。ロシアは、驚くべきスピードと突破力で政策を推し進め、これまでの常識を覆してきた。それが向かう先は、土地無償提供事業や既得権の改革へと広がっている。
これまでも本誌の「調査レポート」や「ロシア極東羅針盤」というコーナーなどで取り上げてきた。入居手続きや税制優遇措置については紙幅の都合上、ここでは取り上げない。過去のレポート(参考文献)をご覧頂きたい。まずは極東政策の内容を紹介する。
調査レポート
ロシアのガス分野の構造変動
―極東地方の動きを中心に―
ロシアNIS経済研究所 嘱託研究員
坂口泉
ロシアのガス分野では今、様々な変化が生じている。たとえば、上流部門ではこれまでメタン(C1)の純度が極めて高く、それよりも分子量の大きい炭化水素(C2、C3、C4等)をほとんど含まないドライガスが専ら生産されていたが、分子量の大きい炭化水素を多く含むウェットガスの生産量が増加傾向にある。また、販売部門に目を転じれば、国内市場の勢力図が大きく変化しつつある他、輸出先を西方から東方にシフトしようとする政府主導の動きも目立ち始めている。さらに、LNG(液化天然ガス)の輸出を強化しようとする動きや、欧州向けのガス輸出ルートを変更しようとする動きも観察されている。
本稿では、それらの変化が何をもたらすのかという問題意識を根底に据えつつ、ロシアのガス分野の現状を分析する。その際、日本企業の関心が特に高いと判断される極東地方における輸出インフラ強化の動きにできるだけ多くの紙幅をさくよう心掛ける。
調査レポート
ロシア極東の公共インフラ・サービス改革の動向
ロシアNIS経済研究所 研究員
長谷直哉
ロシア極東では現在、新型特区(先進社会経済発展区)や自由港制度等の新しい投資優遇措置が整備され、運用が開始されているだけでなく、様々な製造業拠点の創設といった産業開発プロジェクト構想の実現に向けた動きが加速している。これを実現段階にまで進めるために、改めて注目を集めているのが公共インフラの改善である。ロシア極東では未だ十分に産業インフラが整備されているとは言えず、近年は道路、港湾、送電網、発電施設、上下水道などの新設・改修プロジェクトへの注力が連邦レベルだけでなく構成主体のレベルでも目立つ。本稿では、公共インフラ及びその改革をめぐるロシア極東の現状と課題を把握し、今後の展望及び問題点を分析する。
研究所長随想
内外政治に翻弄されてきた極東プロジェクト
―日ソ(日ロ)貿易外史(10)―
1991年末、ソビエト社会主義共和国連邦は、その劇的誕生から69年を経て音もなく崩壊した。ロシア共和国はソ連邦の継承者として、エリツィン大統領の下に海図なき航海に船出することになった。日本の宮澤首相は、1992年1月31日ニューヨークで開催された安保理首脳会合に出席中のエリツィン大統領と会談し、席上エリツィン大統領は9月に訪日したいと述べた。(遠藤寿一)
地域クローズアップ
ユーラシア大陸北東端のチュクチ自治管区
ユーラシア大陸の最北東端、ベーリング海峡を挟んで米国アラスカ州の対岸に位置するロシアのチュクチ自治管区は、連邦第7位の面積を誇りながら、人口はわずか5万人弱とネネツ自治管区に次いでロシアで2番目に少なく、人口密度が最も低い構成主体である。2010年の国勢調査の結果によると、ロシア人の人口は50%を切り、冠名民族(構成主体名の由来となっている民族)であるチュクチ人に加え、エスキモーやエヴェンキ人など、少数民族が伝統的な生活を営む光景も見られる地域である。
チュクチ自治管区は、日本ではもちろんのこと、ロシアでも知名度の低い地域であるが、世界的に有名な大富豪アブラモヴィチが知事に就任した2000年代には、ソ連時代から地域経済を支えてきた金産業の回復の兆しも相まって、広く注目を集めたこともある。
そこで本稿では、極東特集に合わせて、ユーラシア大陸の最北東端に位置するチュクチ自治管区について紹介する。(中馬瑞貴)
ビジネス最前線
音楽大国ロシアで浸透するジャパンブランド
YAMAHA MUSIC RUSSIA LLC 社長
大野二郎さん
音楽大国ロシアでは、当然ながら音楽に携わるアーティストや教師、学生も多く、また一般国民もクラシック音楽からオペラ、ポピュラ―ミュージックまで、たいへんな音楽好きで知られています。そうした意味で、楽器メーカーにとってロシアは世界でも指折りの市場と言えるでしょう。今回は、YAMAHA MUSIC RUSSIAの大野二郎社長に、世界有数の楽器メーカーであるヤマハのロシアにおける活動やロシアの楽器市場の現状についてお話を伺いました。(中居孝文)
モスクワ便り
欧州勢が掲げるロシアビジネスの課題(4)
通関・物流に関わる諸問題は、ロシアでビジネスを行う外国企業の大きな関心事である。ソ連崩壊後、ロシアでは、煩雑かつ時間のかかる手続き・検査、税関ポストによって異なる対応など、輸出入通関を巡るトラブルやクレームが絶えなかった。その後、徐々に改善しているものの、未だに問題点は少なくない。 今号では引き続き、欧州ビジネス協会(AEB)が発表した2015/16年版の「ポジション・ペーパー」の要旨をご紹介する。今回は、通関・運輸面で欧州企業が取り組んでいる主要な課題や論点を紹介することとしたい。(中居孝文)
産業・技術トレンド
ロシア最大のウラルの銅メーカー
―日本との協力の可能性―
ロシアは世界の銅採掘量の4%弱を生み出している準銅大国である。ロシアは金属精錬までの加工はできるため、ロシアで採掘される銅はロシアで精錬され、銅の精錬量においてもロシアは世界の4%のシェアを占める。そのロシアにおいて、最大の銅メーカーであるUMMC社を7月のビジネスミッションの際に訪問した。UMMC社は銅製造を中心とする企業であるが、銅の副産物であるレアメタル・貴金属の製造、石炭採掘、鉄鋼製造、鉛・亜鉛製造、機械製造、食品など、様々な事業を展開する。本稿ではUMMC社の銅精錬と付随するレアメタル事業の日本との協力の可能性について述べる。(渡邊光太郎)
自動車産業時評
2016年上半期のロシアの商用車市場の状況
ロシアの調査会社「ASMホールディング」より、2016年上半期のロシアの商用車(トラック、バス、小型商用車)の生産、販売、輸入に関するデータを入手することができましたので、今回は、それらのデータをもとに同期のロシアの商用車市場の状況をご紹介することにします。(坂口泉)
ロジスティクス・ナビ
ロシア鉄道旅客の活性化に光
低迷を続けるロシアの鉄道旅客市場にあって、欧州車両メーカーから輸入した最新鋭列車が快走しています。一部のモデルは国内での組み立てを開始しました。乗用車に続いて鉄道車両でも外国の先進技術が花開きます。(辻久子)
中央アジア情報バザール
中央アジアと外資系カフェ・ファストフード
ロシアと同様に経済の低迷が続く中央アジアについては、政治的な変動もあいまって、ネガティヴな話題が多い。そうした話題から目を背けてはいけないが、本稿では、せっかくなので少し明るい話題をお伝えしたい。昨今、カザフスタンを中心に、外資系ファストフードやカフェの中央アジア進出が相次いでいる。2015年12月、カザフスタンの第2の都市アルマトィに中央アジア初のスターバックスがオープンした。また、同じく中央アジア初となるマクドナルドも2016年3月、こちらは首都アスタナに1号店がオープンしたのである。(中馬瑞貴)
データの迷い道
不透明なロシアの外国投資
ロシアに外国投資は必要なのだろうか?また、経済に貢献しているのだろうか?図1は、ソ連解体後、1990年代からの外資の流入額、そして対外投資、つまり流出額の推移を示したものである。流入が流出を顕著に上回ったのは、2006〜2008年のわずか3年のことで、それ以外は額が少ないか、流出が流入を上回る年が目立つ。「資金がある」ということと「資金が使いやすい」あるいは「資金が必要なところに行く」ということは別物なので、それほど単純ではないのはもちろんである。たとえば、サハリンの石油ガス開発、カルーガ、ウリヤノフスクの自動車産業など、外資が地域経済に大きな影響を与え、貢献したことは事実である。しかし、外資統計全体をみた場合、ロシア経済全体に与えた重要度をはかるには、不透明なところが大きい。(高橋浩)
駐在員のロシア語
ミーニンとポジャルスキー
2015年から労働許可を取得しようとする外国人はロシア語、ロシア史、ロシア法律の基本からなる3科目の試験を受けなければならないことになった。(新井滋)
デジタルITラボ
ロシアで物議を醸す「ヤロヴァヤ法」
近頃、ロシアの新聞各誌のデジタルIT関連ニュースをチェックしていると見出し欄に「ヤロヴァヤ法」というキーワードが頻出する。その名のとおりロシア下院議員であるヤロヴァヤ氏が起草者であるこの法案だが、要は電話やメール等、ロシア国内すべての通信記録をデータとして保管し、テロ活動をはじめとする反社会勢力、過激派の監視および抑制に役立てようという主旨のものである。今回はこの法案の内容、およびプーチン大統領承認後の世論の動き、具体的な方策について、現時点での状況を簡単にまとめてみた。(大渡耕三)
シネマ見比べ隊!!
外国文学作品映画化の狙い
『ドン・キホーテ』VS『ハムレット』
ロシアの大きな都市ではあちこちの劇場で、毎晩のように芝居やオペラ、バレエ、コンサートの催しが楽しめる時節となっていますね。装飾豊かな内装や舞台、あのロシアの劇場の空間と空気感のなかで鑑賞する舞台の「特別感」を思い起こすだけでも切ないのですが、せっかくですので今回は、文芸古典もの、とりわけシェイクスピア作品の映画化に国際的な定評のあったグリゴーリー・コージンツェフ監督の文芸映画を2つご紹介したいのです。まずは、シェイクスピアではなく、16-17世紀スペインの作家ミゲル・デ・セルバンテスの古典的名著『ドン・キホーテ』を映画化した作品。(佐藤千登勢)
記者の「取写選択」
ロシアとパラリンピック
ロンドンからモスクワに2011年に転居した私は、ロンドンで普通に見られた車いすの人々が、モスクワでは寄付を求める傷痍軍人以外、目につかないことに気づいた。健常者さえ渡りきれない、青信号の時間が妙に短い横断歩道。地下通路の階段。段差だらけの歩道。障害者の外出をモスクワの街は想定していないのか―。(小熊宏尚)