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ロシアNIS調査月報2017年1月号特集◆ソ連解体から四半世紀 |
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特集◆ソ連解体から四半世紀を経たロシア・NIS |
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キーパーソンに訊く |
欧州にロシアとの共存以外の道はない |
調査レポート |
新生ロシア25年の社会経済を振り返る |
調査レポート |
天然ガスから見るウクライナ独立25年 |
調査レポート |
農業・食品産業から読み解くベラルーシ |
調査レポート |
カリモフ政権25年の軌跡とウズベキスタンの展望 |
調査レポート |
ガス輸出戦略を展開するトルクメニスタン |
調査レポート |
アゼルバイジャン:独立25年間の歩み |
調査レポート |
ジョージア:移りゆく世界情勢の中で |
調査レポート |
モルドバにおける腐敗対策の現状 |
講演録 |
キルギス共和国の最新の政治社会事情 |
ビジネス最前線 |
歴史豊かなアルメニアが最先端のIT立国を目指す |
データバンク |
ロシア・NIS諸国の政治・経済データ集 |
イベント・レポート |
第6回日本カザフスタン経済官民協議会 |
イベント・レポート |
タジキスタン投資プレゼンテーション ―経済の現状と有望プロジェクト― |
研究所長随想 |
ソ連邦解体の前夜(1) ―日ソ貿易外史(12)― |
ドーム・クニーギ |
アンドレス・カセカンプ著『バルト三国の歴史 ―エストニア・ラトヴィア・リトアニア 石器時代から現代まで』 |
業界トピックス |
2016年11月の動き |
通関統計 |
2016年1〜10月の輸出入通関実績 |
記者の「取写選択」 |
ロシアの暴言王 |
キーパーソンに訊く
欧州にロシアとの共存以外の道はない
『ディ・ツァイト』元共同発行人
テオ・ゾンマー
テオ・ゾンマー氏は、1958年からドイツの有力週刊紙『ディ・ツァイト』で健筆を振るい、後に編集長、共同発行人を務め、86歳の現在に至るも現役のジャーナリストであり、ドイツを代表する安全保障及び国際問題の専門家です。また、ゾンマー氏は、1974年から1982年まで、西ドイツの第5代連邦首相を務めたヘルムート・シュミット氏の盟友であり、シュミット氏が国防相であった際には、同省計画局長を務め、後に政府諮問委員会委員長も務めました。そして、シュミット氏が政界を引退し、『ディ・ツァイト』に移ってからは、長きにわたり共同発行人として、西ドイツのそして統一ドイツの言論界の第一線を共に担いました。
1991年12月にソ連が崩壊して四半世紀を数える今日、米ロ関係は冷え切り、欧州では、英国が国民投票で欧州連合(EU)離脱を決め、難民問題も絡み多くの国で右派政党が躍進し、ウクライナ東部では停戦合意が守られず戦火が絶えないという有様です。四半世紀前に多くの人が期待した平和な欧州、平和な世界は夢物語だったのでしょうか。ゾンマー氏には、西ドイツ時代のソ連との関係、現在の欧州とロシアとの関係、今後の国際関係のありようなど、幅広いテーマについて、縦横に語っていただきました。(岡田邦生)
調査レポート
新生ロシア25年の社会経済を振り返る
ロシアNIS経済研究所 副所長
高橋浩
ソ連解体から25年が過ぎた今、社会経済復興状況について振り返りたい。ロシアが中心であるが、一部の旧ソ連諸国、中東欧諸国にも触れることになる。1990年代、GDPがソ連時代の水準に回復したかどうかの議論が多くあったが、その後のロシアの高い成長のなかで、もはや必要ないものとなった感がある。しかし、本稿では25年を機に敢えてこの議論を蒸し返し、ロシアの現状の一端を明らかにしたい。
調査レポート
天然ガスから見るウクライナ独立25年
北海学園大学非常勤講師
北海道大学スラブ・ユーラシア研究センター共同研究員
藤森信吉
ソ連崩壊から今日に至るまで、天然ガスは、ウクライナ政治・経済・外交を規定する一大要因となっている。それは第1にウクライナがソ連内で最もガス化が進んだ地域だったからである。産業界、住民ともに天然ガス依存度が高く、その一方で、ウクライナのガス生産力は十分ではない。1970年代のピーク時には年600億立米以上を生産し輸出余剰すらあったが、すぐに生産量を減らしソ連末期には純ガス輸入国に転落していた。そのため、天然ガスはウクライナ最大の輸入品目であり続け、ロシアはウクライナ最大の貿易相手国にとどまり続けた。ガス価格は、安い公共料金を求める住民の政権支持率に影響し、産業界、特にウクライナ最大の輸出品として君臨した鉄鋼のコスト・収益に直結する。独立後のウクライナ政府は輸入ガス価格の上昇に脆弱であった。
調査レポート
農業・食品産業から読み解くベラルーシ
ロシアNIS経済研究所 調査部長
服部倫卓
ベラルーシはかつて「ソ連の組立工場」と称された製造業立国であり、筆者自身も当国をそのように紹介することが多い。しかし、ベラルーシの本質を読み解く鍵は、むしろ農業にあるとも言える。本稿では、農業と、それに付随して食品産業に着目することによって、ベラルーシという国のありようを考察してみたい。
調査レポート
カリモフ政権25年の軌跡とウズベキスタンの展望
ロシアNIS経済研究所 研究員
中馬瑞貴
2016年9月2日、独立以来、約25年に渡ってウズベキスタンを主導してきたイスラム・カリモフ大統領が脳出血で亡くなった。ソ連崩壊から25年、すなわち、新興独立国家にとって独立25周年という年に、ウズベキスタンは大きな転機を迎えた。本稿では、カリモフ大統領が率いてきたウズベキスタンの25年の軌跡を振り返るとともに、ようやく2代目大統領が決定したウズベキスタンの今後の展望について検討してみたい。
調査レポート
ガス輸出戦略を展開するトルクメニスタン
石油天然ガス・金属鉱物資源機構 調査部 主席研究員
本村眞澄
2015年10月、安倍総理は中央アジアを歴訪し、10月23日には、トルクメニスタンのアシガバッドを訪問し、ベルドイムハメドフ大統領と会談した。この訪問で合意した経済案件として、まず同国最大のGalkynyshガス田の開発フェーズ−3に向けて、三菱商事、千代田化工建設、双日、伊藤忠商事、日揮からなる日本コンソーシアムが準備を進めてきたガス処理プラント建設がある。総事業費1兆円の内、JBICやNEXIを通じて7,000億〜8,000億円の支援がなされる。このほか、住友商事は火力発電所建設を約400億円で受注し、三菱日立パワーシステムズが日本企業として初めてガスタービンを納入する。日本式の工学教育を生かしたトルクメニスタンでの人材育成のほか、運輸、物流分野でも協力することとなった。
日本の総理がトルクメニスタンを訪問するのは、今回が初めてである。従来の資源外交では日本の資源権益の取得などに重点が置かれるのが常であったが、トルクメニスタンは主にガスを産出する国であり、しかも内陸国であるからLNG輸出は考えられない。資源権益を目指しても、左程意味がなく、むしろ資源国自身が構想している戦略に相乗りしたプラント建設などの方が効果があると言える。
以下に、大産ガス国としてのトルクメニスタンの姿とその将来展望について見てみる。なお、石油に関しては、カスピ海側の南カスピ海盆地の東部に小規模な油田が分布するのみであり、生産量も少ないことから、紙数の関係で本編では除外した。
調査レポート
アゼルバイジャン:独立25年間の歩み
慶應義塾大学総合政策学部 教授
廣瀬陽子
旧ソ連を構成していたアゼルバイジャン共和国は、1991年12月26日のソ連解体に伴って独立を果たした(1989年10月5日に共和国主権宣言、1991年2月5日に国名をアゼルバイジャン・ソビエト社会主義共和国からアゼルバイジャン共和国へ変更、同年8月30日に共和国独立宣言)。アゼルバイジャンは、東西の文明の十字路に位置し、魅力的な文化と歴史を持つと同時に、石油・天然ガスも有していることから非常に戦略的意義の高い国でもある。それ故、歴史的に多くの国々に侵略されたり、干渉されたりしてきた。
本稿では、アゼルバイジャンの独立後25年間の歩みを概観する。
調査レポート
ジョージア:移りゆく世界情勢の中で
首都大学東京 都市教養学部 准教授
前田弘毅
ジョージア(グルジア)は1991年までソビエト連邦を構成する一共和国であった。北海道とほぼ同じ大きさのこの国が独立してほぼ四半世紀が経過した2014年、来日したマルグヴェラシュヴィリ大統領の要請に基づき、翌2015年、日本政府はこの国の日本語での呼称をグルジアからジョージアに変更した。ロシア語由来から英語由来の呼び名に変えたこの「改名」問題は、あらためてこの国の複雑な地政学的立ち位置を明らかにした。
ジョージアに居住するのはむろんグルジア人だけではない。国内ではアブハジア、南オセチアという分離派の支配する紛争地域(2008年の戦争後、ロシアが独立国家として承認)の他にも、アゼルバイジャン人、アルメニア人、グルジア人イスラーム教徒、チェチェン系住民など、様々なエスニック集団が居住している。グルジア人の強いナショナリズムは、こうした国内の流動的な状況の裏返しの面もあり、指導者には国家統合への微妙な舵取りが今後も要求され続けるだろう。様々な問題を抱えているジョージアであるが、本稿では、内政と外交面における最新情勢について概観してみたい。
調査レポート
モルドバにおける腐敗対策の現状
太陽コスモ法律事務所 弁護士
村上康聡
モルドバ共和国(モルドバ)は、ルーマニアとウクライナの間に位置する人口約291万人の国で、面積は九州よりやや小さい。モルドバは、欧州最貧国とされ、農業・食品加工業、ワイン以外の基幹産業がないことから、同国内に事務所を開設して事業を展開している日本企業はまだない。
筆者は、本年4月下旬、約1週間にわたりモルドバに滞在し、その間、国家反腐敗センター(National Anti-Corruption、「NAC」)の捜査官と面談した経験を有するので、本稿では、モルドバにおける腐敗対策の最新情報を提供したい。あわせて、訪問して見えてきたモルドバの国情についても若干言及する。
講演録
キルギス共和国の最新の政治社会事情
前駐キルギス共和国日本国特命全権大使
小池孝行
ロシアNIS貿易会では9月16日に、当会会議室において、「キルギス共和国の最新の政治社会事情」と題する会員企業向けの報告会を開催いたしました。在キルギス共和国日本国大使館で大使を務め、先般帰朝された小池孝行さんを講師にお招きし、キルギスタンの最新事情についてご報告いただいたものです。以下ではその要旨を掲載いたします。
ビジネス最前線
歴史豊かなアルメニアが最先端のIT立国を目指す
元日立専務、元ソニー専務
牧本次生さん
今回は半導体の技術革新を通じてノマド社会への道を先導した功績によって、2013年にアルメニア共和国大統領よりグローバルIT賞を授与された牧本次生様にインタビューしました。
牧本さんは、日立、ソニーで一貫して半導体の道を歩んでこられましたが、アルメニアでその功績を認められて現地を訪問されて以来、伝統的な歴史と最先端のIT産業という2つの魅力を持つアルメニアに魅せられ、2015年には『IT立国アルメニア:中東・コーカサスに輝くシリコンバレー』というご著書も出版されました。
インタビューでは授与式で訪れたアルメニアの最初の印象を含め、同国の魅力、IT産業の現状や今後の可能性などについてお話いただきました。(中馬瑞貴)
データバンク
ロシア・NIS諸国の政治・経済データ集
ソ連解体から四半世紀が経過した。ソ連解体は新興国家の誕生を意味する。本コーナーではロシア・NIS諸国の概要をデータ集として取りまとめてお届けする。
以下では、国ごとに、1.基本情報(人口や面積など)、2.政治情勢、3.経済状況、4.日本との関係、についてまとめている。1、2、3(2)については基本的に各国の統計機関や大統領府、議会など公式サイトで発表されているデータや情報に基づいている。一方、3(1)については情報開示の状況が国によって異なるため、まとまったデータの入手が可能な世界銀行(GDP)やCIS統計委員会(賃金)のデータに基づいている。ただし、これらの機関から情報が入手できない場合には、各国の統計機関のデータを取り上げるか、データなしとした。4については日本の外務省、財務省のデータに基づいて当会で作成した。
なお、下表では最新の2016年〜1〜9月の経済指標を示しているので、あわせてご参照いただきたい。
イベント・レポート
第6回日本カザフスタン経済官民協議会
2016年11月7日、東京のホテル・ニューオータニにて、ロシアNIS貿易会(ROTOBO)、日本カザフスタン経済委員会及び日本貿易振興機構(JETRO)が主催する第6回日本カザフスタン経済官民合同協議会が開催されました。
今回の協議会は、11月7〜9日のナザルバエフ・カザフスタン大統領の訪日の機会をとらえて開催されました。協議会には大統領の訪日に合わせて来日した約120名のカザフスタン政府及び企業代表と約240名の日本側の関係者が参加しました。本会議は、「日本・カザフスタン経済関係発展のための優先課題―新分野開拓への具体的アプローチ」をテーマに、全体会合では両国議長によるキーノートスピーチと両国企業・政府代表によるパネルディスカッションが行われ、それに続く分科会では、有望な投資分野や投資環境に関して互いの理解を深めるべく、日本・カザフスタン双方の官民代表者がプレゼンテーションを行いました。レセプションの前には、昨今経済関係が深まる日本とカザフスタンの企業および政府関係機関との間で文書交換式も行われました。
以下、第6回日本カザフスタン経済官民合同協議会の概要についてご報告致します。
(中馬瑞貴)
イベント・レポート
タジキスタン投資プレゼンテーション
―経済の現状と有望プロジェクト―
ロシアNIS貿易会では、2016年10月26日、タジキスタンを代表する大企業、タジキスタン・アルミニウム会社(TALCO)を筆頭とする同国企業代表団の訪日に合わせて、東京にて「タジキスタン投資プレゼンテーション」を開催した。以下では、日ごろ情報の少ないタジキスタンについて知るための有意義な機会となった投資プレゼンテーションの報告内容をお伝えする。(中馬瑞貴)
研究所長随想
ソ連邦解体の前夜(1)
―日ソ貿易外史(12)―
1987年8月ソ連向け大口径鋼管の商談でモスクワ出張中であった私に本社から電話があり、本日の人事委員会で貴殿をモスクワに派遣する人事が決定したので、出張から帰国次第、準備して速やかに任地へ赴任するようにとの指示があった。私は当時本社の鋼管輸出部次長で、モスクワには2度駐在経験があった。この人事の背景には、数週間前にモスクワ事務所の次席が、理由不明で帰国させられた事件があった。東京に駐在しているソ連通商代表部員などの国外退去とモスクワ駐在の日本商社員などの国外退去が、ほぼ同時に行われたのである。ソ連はゴルバチョフの時代になっていたが、この方面はなにも変わっていなかった。(遠藤寿一)
記者の「取写選択」
ロシアの暴言王
「犯罪と大量の移民をもたらすいいかげんな民主主義にみんな嫌気がさしてるぜ」。トランプ次期米大統領の発言ではない。ロシアの極右・自由民主党のジリノフスキー党首がかつて放った一言である。
世界中のポピュリスト政治家同様、ジリノフスキー氏もトランプ氏のファンらしい。大統領当選の祝電では「ヒラリーばあさんには休んでもらおう。ロシア人の大半はトランプ支持だ」と伝えたそうだ。(小熊宏尚)