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ロシアNIS調査月報2017年3月号特集◆ロシア・NISの |
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特集◆ロシア・NISの基幹産業の現実に迫る |
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調査レポート |
政策変更に翻弄されるロシア電力分野 ―2016年の動きを中心に― |
調査レポート |
ロシアの欧州向けガス供給をめぐる過程・現状・展望 |
ビジネス最前線 |
ロシアでの自動車部品現地生産支援 |
講演録 |
カスピ海産油国のエネルギー戦略 ―外的環境変化への対応と日本との協力の可能性― |
データバンク |
データで見るロシア・ウクライナの鉄鋼業 ―世界的な供給過剰の中で― |
データバンク |
2016年版ロシア大企業ランキング |
エネルギー産業の話題 |
ロシアの石油「税制マヌーバ」をめぐる論争 |
INSIDE RUSSIA |
ロシア・ベラルーシ対立の背景にある経済利害 |
調査レポート |
ウズベキスタンにおける腐敗防止規制の現況 |
研究所長随想 |
米ロの対立に「過去からの風が吹く」 |
データバンク |
2016年の日ロ貿易(速報) |
連載レポート |
ロシアにおける税務紛争の概要(2) |
モスクワ便り |
ロシアの外国投資諮問評議会の活動 |
ロシア極東羅針盤 |
北方4島での共同経済活動 |
地域クローズアップ |
経済多角化を目指すノヴォシビルスク州 |
自動車産業時評 |
2016年1〜9月のロシア商用車市場 |
ロジスティクス・ナビ |
ロシア物流の実績2016 |
データの迷い道 |
多民族国家ロシアの片隅で |
蹴球よもやま話 |
UEFAレポートに見るロシア・NISのサッカークラブ |
中央アジア情報バザール |
独立25年の旧ソ連諸国の経済成長比較 |
駐在員のロシア語 |
投資話 |
シネマ見比べ隊!! |
家族のなかの孤独 |
業界トピックス |
2017年1月の動き |
通関統計 |
2016年1〜12月の輸出入通関実績(速報値) |
記者の「取写選択」 |
大統領の大記者会見 |
調査レポート
政策変更に翻弄されるロシア電力分野
―2016年の動きを中心に―
ロシアNIS経済研究所 嘱託研究員
坂口泉
石油生産量の急激な伸びと油価の上昇という追い風を受けロシア経済は2000年代に入り回復に転じたが、その関係で電力需要も伸び始め、次第に電力不足を懸念する声が高まっていった。そのような状況の中、2005年春に電力インフラの老朽化を主因とする大停電がモスクワで勃発し、ロシア政府は電力インフラの刷新と増強に真剣に取り組み始めた。発電部門では、投資義務契約と呼ばれる設備投資の回収を保証するシステムに基づく新発電ユニットの建設が積極的に行われるようになった。また、送配電部門でもRABタリフという設備投資回収分を考慮した料金体系を取り入れ設備更新が積極的に行われるようになった。その結果、ある程度インフラをめぐる状況は改善されたが、投資義務契約もRABタリフも投資回収分を考慮した高い料金設定を前提としているため、電力料金がロシア政府の想定を上回るテンポで上昇するという弊害を生んだ。そのような状況を見たロシア政府は方針を一変させ、2013〜2014年以降は、投資促進よりも電力料金の抑制を重視するようになっている。そのことは当然ながら、電力事業の利益率の低下や投資意欲の減退につながっており、様々な問題を生みつつある。
本稿では、政府の政策変更が電力分野にもたらした影響の他、苦戦を強いられている電力会社の現状、日本で注目を集めつつある極東地方の電力事情、再生可能エネルギーをめぐる状況などにも注目しながら、2016年のロシアの電力分野を回顧する。
調査レポート
ロシアの欧州向けガス供給をめぐる過程・現状・展望
ロシアNIS経済研究所 研究員
長谷直哉
ウクライナ情勢とそれを背景とする対ロ経済制裁の影響により、ロシアとEUの間では険悪な関係が続いており、例えばロシアからのエネルギー供給をめぐっては、2015年2月に欧州委員会が打ち出した「エネルギー同盟」戦略案を受け、欧州議会は同12月に関連する決議を採択、ロシアを「信頼に足らないパートナー」と評することさえあった。しかし、2016年、こうした政治状況と裏腹にロシアから欧州諸国(トルコ含む)への天然ガス輸出量は過去最高の年間1,793億立米を記録した。2015年と比較して約12.5%の伸びである。トルコ向け輸出量は前年割れであったので、伸びに貢献したのはEU諸国の消費ということになる。なお、EU内で最大の需要家であるドイツの輸入量は498億立米とこちらも前年を10%以上上回る規模であった。
しかも、昨年10月には5年間にわたり争われてきたガスプロムのEU競争法違反に係る訴訟(中東欧諸国において同社が優越的地位を乱用しているとの疑義)が和解を迎え、ガスプロムはOPALパイプライン(独北東部沿岸でノルドストリームに接続し、ドイツ・チェコ国境までガスを輸送)を輸送能力の半分までしか活用が認められていなかったが、欧州委員会は80〜90%までの活用を許可した。ただし、この措置については、欧州委員会の決定に不満を持ったポーランド国営ガス大手PGNiGが執行の差し止め請求を欧州裁判所に持ち込み、昨12月末に同裁判所がその訴えを受理した、という状況にあり、短期的にはまだ不透明感があることは事実である。しかし、欧州ガス市場におけるガスプロムの影響拡大を牽制し続けてきた欧州委員会が今回このような判断を下したということは重視すべきであろう。なぜなら、欧州委員会は天然ガス取引をめぐる市場ルールの形成をめぐって、実に20年近くもロシア政府、そしてガスプロムと駆け引きを続けてきたのである。本稿ではこの駆け引きを振り返りつつ、欧州向けガス供給をめぐる今後のロシア・EU関係について展望を示したい。
ビジネス最前線
ロシアでの自動車部品現地生産支援
日立ハイテクノロジーズロシア有限会社
社長 亀卦川健さん
鞄立ハイテクノロジーズは商社である日製産業と、日立製作所の計測器グループ・半導体製造装置グループが統合し2001年に誕生した会社です。メーカー機能・商社機能を活かしてグローバルに事業を展開しており、ロシアでは日系企業の現地生産支援、機械の部品や設備の調達支援、ロシア産品の輸出などのビジネスを展開しています。
今回は、日立ハイテクノロジーズロシア有限会社社長の亀卦川さんに、ロシアにおける日系自動車部品メーカーの現地生産支援を中心に、ロシア企業とのパートナーシップ構築をどのように進められたか、ロシアにおける自動車部品市場の見通しなどについてお話を伺いました。(渡邊光太郎)
講演録
カスピ海産油国のエネルギー戦略
―外的環境変化への対応と日本との協力の可能性―
D.サトパエフ A.アブドゥラエフ M.オスパノフ T.ジュヴァルィ
2017年1月20日、カザフスタンとアゼルバイジャンから専門家を招聘し、両国のエネルギー戦略の展望についてセミナーを開催した。
カザフスタンとアゼルバイジャンは日本企業が石油開発に直接参入している世界的に珍しい資源国である。両国の石油・ガス産業を取り巻く環境には、石油価格の長期低迷、主要貿易相手国であるロシア・中国経済の退潮、潜在的競合国であるイランに対する経済制裁解除、中国による一帯一路政策の推進など、様々な変化が生じている。米国の政権交代、イスラム過激派の台頭による中東情勢の流動化など、政治的ファクターの影響も、特に新規輸送路の開拓においては大きな影響を及ぼす。というのもユーラシアの深奥に位置する両国から市場に原油を搬出するには、常に周辺国との利害調整が必要となるためである。
こうした現状認識に基づき、今回のセミナーでは両国の石油産業自体よりむしろ、それを取り巻く環境、すなわち両国の内政、外交、国際関係、外国投資環境、産業政策等に焦点を当てた報告が行われた。日本では圧倒的に不足している両国の最新情報を知る貴重な機会となった掲題セミナーについて、以下、概要をご紹介する。
データバンク
データで見るロシア・ウクライナの鉄鋼業
―世界的な供給過剰の中で―
本レポートでは、世界的な鉄鋼生産・輸出国であるロシアとウクライナに着目し、鉄鋼業の最新データを図表にまとめてお届けするとともに、若干のデータ解説も試みる。(服部倫卓)
データバンク
2016年版ロシア大企業ランキング
ロシアの経済週刊誌『エクスペルト』(2016年10月24〜30日号、No.43)に、毎年恒例のロシア大企業ランキングが掲載されている。大企業ランキングには、今号の特集テーマであるロシアの基幹産業を代表する企業が多数登場するので、今回は特集の一環として、ランキングを抜粋して紹介する。なお、本レポートは「2016年版ロシア大企業ランキング」と銘打っているが、2015年の売上高にもとづく2016年発表のランキングという意味なので、ご注意願いたい。
エネルギー産業の話題
ロシアの石油「税制マヌーバ」をめぐる論争
ロシア政府は2014年に、「ナロゴヴィ・マニョーヴル(налоговый маневр)」と称する石油部門の税制改革を打ち出し、現在それが実施段階にあります。直訳すると「税制マヌーバ」であり、単に税率を改定するといったことだけでなく、税制をテコに石油産業の構造改革を遂げようとする意図が込められているからこそ、「計略」や「作戦」を意味するマヌーバという言葉が用いられているのだと思われます。本稿では、ロシアの税制マヌーバの基本点を解説し、その政治経済学的な含意を探ることにします。(服部倫卓)
INSIDE RUSSIA
ロシア・ベラルーシ対立の背景にある経済利害
2016年12月26日にロシアのサンクトペテルブルグで、ロシアなど5ヵ国から成るユーラシア経済連合の首脳会合が開かれた。サミットの目玉は、ユーラシア共通の新たな関税法典の調印セレモニーだった。しかし、ベラルーシのルカシェンコ大統領はこの重要会合をボイコットした。2月初頭現在、ベラルーシはいまだに関税法典に署名していない。その後、ロシアとベラルーシの対立が激化しており、2月3日にはルカシェンコ大統領が、ユーラシア経済連合が創設されてから、不平等な価格・条件により、ベラルーシは150億ドルもの損失を被ったと発言する一幕もあった。
このように、ロシア・ベラルーシ関係は険悪化しているものの、ロシア・ウクライナ関係のような地政学的な対立ではないことには注意すべきだろう。ベラルーシがロシアに反発しているのには、切実な経済的理由がある。具体的には、ロシアからの石油・ガスの輸入と、自国の自動車産業の保護という、2つの問題である。
(服部倫卓)
調査レポート
ウズベキスタンにおける腐敗防止規制の現況
太陽コスモ法律事務所 弁護士
村上康聡
ウズベキスタンは、国連加盟国の中で極めて腐敗度の高い国である。
Transparency Internationalが実施している腐敗認識指数によると、ウズベキスタンは、2014年は175ヵ国中166位、2015年は167ヵ国中153位、2016年は176ヵ国中156位であって、中央アジア諸国の中では最も腐敗度の高いことが示されている。ウズベキスタンは国連腐敗防止条約を批准しているものの、OECD外国公務員贈賄防止条約は締結していない。
そうした中で、日本企業の日本交通技術株式会社が、JICAのODA事業であるウズベキスタン鉄道公社が所管する鉄道電化事業に関するコンサルタント契約の締結、履行等について同公社の者らから賄賂を要求され、2012年8月下旬頃から約1年間にわたり、合計約57万7,000米ドル(約5,477万円相当)を贈賄する事件が発生した。この事件は、会社が日本の検察官に自首したことを契機に発覚し、裁判権の競合する日本で不正競争防止法違反により捜査処理され、最終的には、会社及び元役員らが日本の裁判所で有罪判決を受け、処罰された。
このようなことも影響してか、ウズベキスタンは、2015年8月20日に刑法と行政責任法をいずれも改正して、腐敗規制について大幅に変更し、その内容も厳しいものとした。
本稿は、ウズベキスタンにおける腐敗防止規制の主要なものである刑法と行政責任法についての最新情報を紹介するものである。
研究所長随想
米ロの対立に「過去からの風が吹く」
1990年代の末期になると、世界各地で「21世紀はどんな世紀になるのか」という議論が盛んになり、「文明の衝突」とか「民主主義の終りの始まり」と言った類の本が、市民にも読まれるようになり、職場や家庭でも話題になるようになっていた。
米ロの対立に「過去からの風が吹く」。当時は、新興国の急激な成長と、人口減少が続く先進工業国の衰退で、選手交代が必然となるという漠然としたことしか思いつかなかった。しかし2016年に入ると、6月の英国の国民投票は「EUからの離脱」を選択し、その手続きに入っていった。11月には米国大統領選挙で予想を覆して共和党トランプ候補が当選するというアクシデントが起こった。
「世界が迷走する」懸念が現実となって、不安が倍加して世界を駆け巡ることになる。(遠藤寿一)
連載レポート
ロシアにおける税務紛争の概要(2)
実地調査対象選択の指針は、2007年5月30日付連邦租税局令第MM-3-06/333@号「実地調査制度のコンセプトの承認について」(以下、「実地調査制度コンセプト)とする)に定められ、納税者に自主的に確認するよう推奨されている。連邦租税局サイトにも掲載されている。例えば、以下のような事項が脱税スキームの兆候として、調査対象の選定において考慮される。(松嶋希会)
モスクワ便り
ロシアの外国投資諮問評議会の活動
ロシアで活動する外国企業が、ロシア政府に対して問題を訴える公的な場としては、ロシア産業家企業家連盟(RSPP)の国際協力投資評議会(ICCI)や産業商業省主催の新産業投資戦略評議会などいくつか存在するが、なかでも最も有力なプラットフォームと考えられているのが、ロシア首相が主催する「外国投資諮問評議会」である。今回は、この外国投資諮問評議会の活動概要を紹介したい。(中居孝文)
ロシア極東羅針盤
北方4島での共同経済活動
2016年12月の日ロ首脳会談で、北方4島での共同経済活動について、4島を対象とした特別な制度を設ける交渉を始めることで合意した。
「特別な制度」とは何なのか。まだ具体的なイメージは明確ではない。制度設計は今後の協議に委ねられているからだ。ただポイントとして重要なのは、この制度が日本とロシアの2国間でつくられるということである。そして国際約束としてつくるとしていることである。国際約束といっても、それが政府間協定なのか条約なのか、これからの協議次第である。日ロのいずれの法令にも基づかない形とすることで、両国の法的立場を損なわない制度が念頭にある。漠然としたイメージでいうと、経済特区のような形をイメージしているのかもしれない。難しい問題を解決するためにはまず、北方領土に住んでいるロシア人に日本と協力することでいいことがあるんだと実感してもらう、共存共栄を実感してもらうことが念頭にあるのだろう。(齋藤大輔)
地域クローズアップ
経済多角化を目指すノヴォシビルスク州
ノヴォシビルスク州は、モスクワ、サンクトペテルブルグに次ぐ、ロシアの「市」として第3位の人口を誇るノヴォシビルスク市を擁する地域である。同市にはシベリア連邦管区の本部が設けられ、「シベリアの首都」とも称される。なお、市内人口は約156万人と大きいが、州全体では約275万人であり、クラスノヤルスク地方やイルクーツク州と同規模となる。つくば研究都市のモデルともなった学術研究拠点「アカデムゴロドク」があることで知られている地域であり、38の科学アカデミー支部や研究機関、設計研究所が開発・研究に従事し、また大学など50を超える教育機関が集積し、13万人近くの学生が様々な教育プログラムを享受している。しかし、同州の経済状況や産業については日本ではほとんど知られていないと言っていいだろう。
そこで、本稿では、報道及び各種研究資料に加え、州政府や同州投資発展エージェンシーから提供を受けた資料を参考に、同州の経済・投資概況、投資案件などを紹介したい。(長谷直哉)
自動車産業時評
2016年1〜9月のロシア商用車市場
ロシアの調査会社「ASMホールディング」より、2016年1〜9月期のロシアの商用車(トラック、バス、小型商用車)の生産、販売、輸入に関するデータを入手することができましたので、今回は、それらのデータをもとに同期のロシアの商用車市場の状況をご紹介することにします。(坂口泉)
ロジスティクス・ナビ
ロシア物流の実績2016
油価低迷、長引く経済制裁などの逆風下で不況に苦しんできたロシア経済ですが、2016年後半になって経済は底を打ったと見られます。物流の分野ではどうだったのでしょうか。港湾、鉄道物流の速報値を基に振り返ります。(辻久子)
データの迷い道
多民族国家ロシアの片隅で
ロシアは多民族国家である。ソ連が存在した時代、15の共和国があり、ロシア人の割合は半分程度を占めていたが、ソ連解体で新生ロシアが誕生し、ロシア色が非常に強まり、約8割がロシア人となった。
今回は、メジャーな民族の話ではなくマイナーな話が中心である。ロシアの民族の数はどの程度あるのだろうか。2010年の国勢調査の民族構成をみると、146民族を数えることができるが、そのうち21民族について下位の民族グループがあり、亜民族と言う表現があり、48となっている。ちなみに、ロシア人にも2つ亜民族が存在する。ひとつは、有名なコサック、もうひとつは筆者も全く知らなかったポモールである。亜民族も単純に加えると194ということになる。ロシアの民族の数は約150、あるいは約200ということで一応、間違いはないのだろう。(高橋浩)
蹴球よもやま話
UEFAレポートに見るロシア・NISのサッカークラブ
欧州サッカー連盟(UEFA)は今般、UEFA加盟54ヵ国のサッカークラブの2015年度の実績を総括したレポートを発表した(The European Club Footballing Landscape: Club Licensing Benchmarking Report: Financial Year 2015)。以下ではその中から、ロシア・NIS諸国のサッカー事情にかかわりのある点を抜粋して紹介する。(服部倫卓)
中央アジア情報バザール
独立25年の旧ソ連諸国の経済成長比較
カザフスタンの専門誌『エクスペルト・カザフスタン』が2016年12月5日No.23号で同国の独立から25年の経済、政治、対外政策等について総括する記事を掲載した。その中の経済について言及している部分で、世界銀行のデータに基づき、旧ソ連諸国のGDP、経済成長率の変化などを比較したデータが示されており、なかなか興味深い。そこで、本稿では同記事で紹介されたデータを簡単な解説とともにご紹介したい。
なお、同誌では世界銀行のデータに基づいてグラフが作成されているが、具体的な数値が記載されていない。したがって、グラフの作成にあたって、改めて世界銀行のデータを確認したところ、一部のデータについて確認が取れなかったこともあり、グラフは独自に作成したため、記事とは若干異なる点にご注意いただきたい。(中馬瑞貴)
駐在員のロシア語
投資話
ロシアに駐在する日本人は、日本で支払われる国内給(円建て)のほかに現地でルーブル建ての給与をもらっているはずだ。円・ルーブルの割合は会社によって違うだろうが、かなりの額が現地会社からルーブルで支払われているに違いない。最も手堅い人は ルーブル口座に給与が振り込まれるやすぐに米ドルに替え、更にそれだけでは安心できなので、月に1度のペースで日本に送金する 。一方、無頓着な人は普通口座に溜まっていくルーブルをそのままにし、帰任直前に米ドルに替えて日本に送金する。 そんななかでロシアにいることを利用し、部分的にでもお金を投資に回す人もいるのではなかろうか。その人のフィナンシャルリテラシー やリスク許容度というか、慎重なのか、逆に大胆か、向こう見ずかで入り方もいろいろである。まさに十人十色だからだ。(新井滋)
シネマ見比べ隊!!
家族のなかの孤独
『ヴェラの祈り』VS『エレナの惑い』
今年も微かな春の香りと、チューリップや黄色のミモザの花がそちこちに売られ、《国際婦人デー》の訪れが感じられる時節となりました。そんな時にこそ鑑賞したいのが、女性を神秘の存在と崇め、その心理の内奥を謎めいたままに描出する新たな女性映画の新境地を開いたアンドレイ・ズビャギンツェフの2つの作品です。ズビャギンツェフと言えば、『父、帰る』(Возвращение)で父親という謎の存在、父殺しのテーマを静謐にして質感ある映像にまとめ、2004年、デビュー作にしてヴェネツィア国際映画祭・金獅子賞をあっさり受賞してしまった天才と言ってよい監督ですが、プレッシャーとは無縁のようで、いっそう、作家性を堅固なものとしつつ、このたびご紹介する2つの作品と、そしてやはり、国際的に高い評価を受けゴールデン・グローブ賞やカンヌ国際映画祭で受賞した問題作『裁かれるは善人のみ』(Левиафан/2014)をコンスタントに世に送り出しております。このような天才と同時代に生きつつ彼の作品を鑑ることができるのは僥倖という他ありません。
話題は、女性映画でした。まずは、『ヴェラの祈り』からご紹介しましょう。(佐藤千登勢)
記者の「取写選択」
大統領の大記者会見
年末のロシア名物といえば街角のヨールカ、映画「運命の皮肉」、バレエ「くるみ割り人形」、そしてプーチン大統領が内外の1000人もの記者を招いて行う大規模な記者会見である。国家元首に自由に質問でき、長い時は4時間半以上続く質疑応答は、世界中でロシアにしかない。というより、プーチン氏にしかできないだろう。彼が大統領に復帰した2012年以降、12月開催が恒例になった。(小熊宏尚)