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ロシアNIS調査月報2017年12月号特集◆医療・医薬品産業 |
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特集◆医療・医薬品産業へのアプローチ |
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調査レポート |
ロシアの医療制度と日ロ経済協力 ―民営化と医療ツーリズム― |
調査レポート |
停滞が続くロシアの医薬品市場 ―2016年の動きを中心に― |
調査レポート |
ユーラシア経済連合の共同医薬品市場 |
ビジネス最前線 |
中央アジア初の日本式整形リハビリ・クリニック |
デジタルITラボ |
期待の集まるロシア遠隔医療 |
データバンク |
ロシアの医薬品関連特許取得ランキング |
地域クローズアップ |
長寿地域イングーシ共和国 |
調査レポート |
ロシアのWTO加盟後5年間の総括 |
INSIDE RUSSIA |
ロシア機械産業の4重点部門の輸出戦略 |
ロシア極東羅針盤 |
共同経済活動のゆくえ |
エネルギー産業の話題 |
西シベリアで活動する主要石油会社 |
自動車産業時評 |
2017年上半期のロシア中古車市場 |
ロジスティクス・ナビ |
日・ロ間定期航路の動向 |
産業・技術トレンド |
ロシアの航空産業国産化の実情 |
ロシアメディア最新事情 |
ロシアのマスコミの特徴とは? |
ロシアと日本・ 出会いの風景 |
舞鶴で開いてみた歴史の1ページ |
シネマ見比べ隊!! |
大晦日に観る家族シネマ |
中央アジア情報バザール |
キルギス大統領選挙の結果 |
ウクライナ情報交差点 |
ウクライナの年金改革 |
駐在員のロシア語 |
コンピュータ用語 |
蹴球よもやま話 |
NIS諸国はワールドカップ予選で全滅 |
データバンク |
2017年1〜9月の日ロ貿易 |
業界トピックス |
2017年10月の動き |
通関統計 |
2017年1〜9月の輸出入通関実績 |
記者の「取写選択」 |
カラシニコフの憂鬱 |
調査レポート
ロシアの医療制度と日ロ経済協力
―民営化と医療ツーリズム―
神戸国際大学経済学部 准教授
松本かおり
2016年5月に日本政府が提案した8項目の経済プランが、同年12月の日ロ首脳会談(山口県長門市)で合意され、新たな時代の日ロ経済協力が開始された。この経済協力のトップ項目が天然資源開発ではなく、医療、健康寿命の伸長であったことには、これまでの経済協力とは異なる新しい視点として注目が集まっている。ソ連崩壊後のロシアでは、経済成長率などを優先したIMFによる緊縮政策によって多くのロシア人が死に至ったことから、経済政策は経済成長率などの指標の向上が目的ではなく、国民の生活向上のためのものであることを忘れてはならないという教訓が残された。OECDのデータによれば、ロシア人の平均寿命は2015年に女性が76.7歳、男性が65.9歳であり、ソ連崩壊直後の1994年に記録した71.7歳、57.6歳からは回復したとはいえ、現在もそれぞれ日本より女性が10.4歳、男性が14.9歳短い。
今回の日本による医療分野への経済協力は先端技術の分野にとどまらず、リハビリ、緩和ケア、小児医療、予防医療といった分野についても言及されていることから、ロシア国民に対して広く還元されうる協力として非常に期待ができる。そこで本稿では、日本企業が参入するロシアの医療制度の特徴について概観したうえで、今後日本の医療業界がどのようにロシア人の健康寿命の伸長に貢献することができるかを考察するため、主に民営化と医療ツーリズムの現状について報告する。
調査レポート
停滞が続くロシアの医薬品市場
―2016年の動きを中心に―
ロシアNIS経済研究所 嘱託研究員
坂口泉
油価の高騰と石油生産量の増加という追い風を受け2000年代に入りロシア経済は急成長を見せ始めたが、それに歩調を合わせるような形でロシアの医薬品市場も2000年代半ば頃から急激に拡大し始めた。しかし、油価の低下傾向が見え始めた2014年からドル建ておよび数量ベースの市場規模は縮小に転じており、2016年もドル建ての市場規模は前年を下回った。
景気が安定した関係で2017年に入り状況は改善されてきているが、まだ本格的な回復を確信できるまでには至っていない。本稿では、市場の停滞の背景に存在する事情や、国が強引に推し進めようとしている医薬品の輸入代替の動きに着目しながら、ロシア医薬品市場の現状を見ていきたい。
調査レポート
ユーラシア経済連合の共同医薬品市場
ロシアNIS経済研究所 副所長
服部倫卓
ロシアをはじめとする旧ソ連諸国にとって、医薬品産業は、きわめてユニークな二面性を帯びている。一方では、同諸国の医薬品産業は現状では弱体で、医薬品の貿易は圧倒的な輸入超過となっている。しかし他方では、医薬品産業はロシア等で現在焦点となっている輸入代替および経済イノベーション化政策においては、中心的な位置を占めている。また、2015年に創設され、現在5ヵ国(ロシア、ベラルーシ、カザフスタン、キルギス、アルメニア)で形成されているユーラシア経済連合では、医薬品市場の統合が焦点となっている。このように、現状では強力でないにもかかわらず、産業政策上のプライオリティは高いというのが、ロシアおよび周辺諸国の医薬品産業の特徴である。
以下本稿では、まず第1節において、ユーラシア経済連合の共同医薬品市場形成の動きについて整理する。その際に、国家規制の強い医薬品の分野においては、関税障壁もさることながら、非関税障壁、とりわけ国および経済圏ごとに異なるGMP(Good Manufacturing Practice、適正製造基準)の役割が大きいことから、それに焦点をあてる。第2節においては、ロシアの医薬品産業と貿易の動向を、ユーラシア統合とのかかわりに留意しながら、概観する。第3節においては、ユーラシア統合のパートナーとなるベラルーシの事情を取り上げる。第4節で、簡単に総括を行う。
ビジネス最前線
中央アジア初の日本式整形リハビリ・クリニック
潟Wャパン メディカル&ヘルス 代表取締役
伊礼英樹さん
今回は、カザフスタンで医療ビジネスに取り組まれている株式会社ジャパン メディカル&ヘルスの伊礼英樹代表取締役から、同社が運営する整形外科クリニックの設立経緯などについてお話を伺いましたのでご紹介します。同社は、カザフスタン・アルマティにて、国立メディカルカレッジなど医療教育機関と協力し、日本の医療機器やサービスを紹介するセミナーなどの実施を通じて現地医療関係者との関係を構築し、本年アルマティで整形外科クリニック開業に至りました。今回はこのクリニック設立経緯に関してインタビューを行いました。(長谷直哉)
デジタルITラボ
期待の集まるロシア遠隔医療
7月30日、遠隔医療についての法案改正にプーチン大統領が正式に署名した。これにより、医師は遠隔診療で「診断」を下すことはできない(コンサルテーションは可能)、患者は、政府が管理する一元管理システムへの登録が必要など、ロシアの遠隔医療については明確な規制がかかることになった。(牧野寛)
データバンク
ロシアの医薬品関連特許取得ランキング
ロシアの経済週刊誌『エクスペルト』(2017年5月29〜6月4日号、No.22)に、ロシアの医薬品特許取得数の企業別ランキングが掲載された。ランキングには今号の特集テーマである製薬分野を代表する国内・国外企業が多数登場するので、今回は特集の一環としてこれをご紹介する。
地域クローズアップ
長寿地域イングーシ共和国
ロシアで平均寿命第1位を誇る地域がイングーシ共和国だ。以前、本連載でもお伝えした通り、北カフカス連邦管区はロシアの中で最も経済状況が芳しくない地域であるが、特にイングーシはその中で最も経済発展の遅れた構成主体と言っても過言ではない。しかし、平均寿命で見ると80.05歳(男性76.51歳、女性83.02歳、2015年)と、ロシアの構成主体の中で唯一、平均寿命が80歳に到達している長寿地域である。経済やビジネスでは脚光を浴びることのないイングーシ共和国だが、長寿の秘訣はどこにあるのか、一体どのような地域なのだろうか。(中馬瑞貴)
調査レポート
ロシアのWTO加盟後5年間の総括
みずほ総合研究所梶@調査本部 欧米調査部
上席主任エコノミスト 金野雄五
2012年8月22日にロシアがWTO(世界貿易機関)に加盟してから5年が経過したことを受け、本稿では、ロシアのWTO加盟後5年間の総括を行う。まず、加盟交渉において主要な争点となった問題を中心に、ロシアの加盟時の約束と、その加盟後の履行状況を概観する(第1節)。次に、ロシア政府がWTOに加盟することで得られると期待していたメリットと、その実現状況について検討する(第2節)。そして最後に、ロシア政府が近年取り組みを強めている産業政策とWTO協定との関係性について、簡単な考察を行う(第3節)。
結論を先取りして言えば、第1に、ロシアのWTO加盟後5年間において、部分的な約束違反は生じているものの、全体として見れば加盟時の約束は概ね履行されていると見なされる。第2に、WTOに加盟することで得られると期待されていたメリットは、アンチダンピング措置と対内直接投資について見る限り、ロシアは享受できているとは言い難い。第3に、ロシア政府が取り組みを強めている産業政策は、これまでのところWTO協定違反とはならない範囲に留まっているとみられる。
INSIDE RUSSIA
ロシア機械産業の4重点部門の輸出戦略
現プーチン体制で重視されているロシアの経済政策路線の一つに、「非資源輸出」の拡大がある。今回は、非資源輸出の中でもロシア当局がとりわけ重要視している自動車、農業機械、鉄道機器、民間航空機という4つの機械産業部門の輸出戦略について報告する。(服部倫卓)
ロシア極東羅針盤
共同経済活動のゆくえ
9月7日、ロシア極東のウラジオストクで開かれた「東方経済フォーラム」にあわせ、安倍首相とプーチン大統領の首脳会談が行われ、北方4島での共同経済活動で優先的に取り組む事業について、@海産物の養殖、A温室野菜の栽培、B島の特性に応じたツアーの開発、C風力発電の導入、Dゴミの削減対策の5つに絞り込むことで合意した。(齋藤大輔)
エネルギー産業の話題
西シベリアで活動する主要石油会社
日本では東シベリアやサハリンの石油の方に注目が集まりがちですが、今でも西シベリアがロシア最大の産油地域となっています。ただ、資源の枯渇に伴い同地方の石油生産量が年々減少しているのも否定し難い事実で、2005年時点で70%を超えていたロシアの石油生産量に占める同地方のシェアは今や60%弱にまで下落しています。資源の枯渇という条件下で西シベリアの成熟した鉱床の減産幅を縮小させることは、ロシアの石油分野にとって、東シベリア等の新鉱床の開発促進と同じ程度の重要性を有しています。本稿では、西シベリアで活動する大手石油会社がどのような形でその課題に取り組んでいるかをご紹介します。(坂口泉)
自動車産業時評
2017年上半期のロシア中古車市場
ロシアの調査会社「Autostat」より、2017年上半期のロシアの中古車市場の状況に関する情報を入手できましたので、今回は、市場の概況の他に、中古車のブランド・モデル別販売状況、ならびに、地域別販売状況等についてご紹介したいと思います。(坂口泉)
ロジスティクス・ナビ
日・ロ間定期航路の動向
日本港湾とロシア極東港湾を定期的に繋ぐ航路として、国内主要港を巡るロシア極東コンテナ航路と、境港を国内ベースとするDBSクルーズフェリーが活動しています。両定期航路の現状を紹介します。(辻久子)
産業・技術トレンド
ロシアの航空産業国産化の実情
ロシアではスホーイスーパージェット(以下、SSJ)やMC-21を開発してきた。SSJの量産は月産2〜3機で続いており、ロシアにおける旅客機生産は復活した。しかし、機体はロシア製だが電子機器などの装備品や生産設備の海外への依存度は高い。もっとも、航空産業は国際的分業が一般的であり、また、ロシアの航空産業は一定の技術力や競争力があるため、ロシアの航空産業が海外に大きく依存しているからといって、国際的水準に比べロシアの航空産業のレベルが低いことを意味するわけではない。とはいえ、ルーブルの価値が下がってからは、輸入部品はコスト悪化要因であり、比較的競争力のある産業である航空産業を輸出産業にしたいという意図もあり、航空産業でも国産化の動きは活発である。(渡邊光太郎)
ロシアメディア最新事情
ロシアのマスコミの特徴とは?
読者の皆さま、はじめまして。本コラムでは、ロシアメディアの様々な話題を取り上げていきたいと思います。日本企業のロシア展開がさらに進めば、ロシアの記者と深い関係を築きたい、というニーズも増えてくるかもしれません。また、ロシアのPR会社や広告会社を利用する際に、様々な媒体の特性を知っておくことはプラスになるのではないでしょうか。このコラムで、ロシアメディアの全体像を把握するお手伝いができれば幸いです。(徳山あすか)
ロシアと日本・出会いの風景
舞鶴で開いてみた歴史の1ページ
桜が満開だった4月のある日に、京都府舞鶴市に観光で行った。朝に舞鶴港の前のホテルを出て車で舞鶴湾海岸道路を北東におよそ10km走り、舞鶴クレインブリッジの前の丘の上に立つ舞鶴引揚記念館という観光施設を訪問した。(D.ヴォロンツォフ)
シネマ見比べ隊!!
大晦日に観る家族シネマ
『森は生きている』VS『リーザと十二月の神々』
幼少の頃、『マルーシカと十二の月』というスロバキア民話の日本語訳の絵本で知ったこの物語ですが、これをソ連のサミュイル・マルシャークが児童向け戯曲『森は生きている(十二の月)』として翻案し、さらに芝居やアニメーション映画としてビジュアル的にも多くの子供たちに強い影響を与え、愛される作品となったようです。今となっては古色蒼然とした寒色系の色を背景に描かれる『森は生きている』ですが、その小鳥のさえずり飛ぶ躍動感、炎、雪、人々の身振りの流麗な動きなど、芸術的ともいえる自然の描写には、児童向けのアニメといえども引き込まれてしまいます。一方、『リーザと十二月の神々』はマルシャークの戯曲『森は生きている』を基にリメイクした現代版の実写映画です。このたびはこの2作品を見比べてみましょう。(佐藤千登勢)
中央アジア情報バザール
キルギス大統領選挙の結果
2017年10月15日、キルギスで大統領選挙が行われた。キルギスでは2010年に起きた政変後に憲法が改正され、中央アジアで唯一、議院内閣制を採用している国家である。議院内閣制と言えば英国や日本が代表的だが、キルギスは少し事情が異なる。というのも、キルギスでは議会の中の多数派や連立が首相を選ぶという制度を採用しているが、国家元首を務めるのは、首相ではなく、国民の直接選挙で選ばれる大統領だ。(中馬瑞貴)
ウクライナ情報交差点
ウクライナの年金改革
ウクライナでこのほど、年金改革法が成立した。年金改革法は、10月3日にウクライナ最高会議が可決し、9日に大統領が署名、10日に官報に掲載され、(いくつかの特記事項を除き)翌11日に発効した。ただし、支給額の引き上げは、10月1日に遡り実施された。今回は、この年金改革について報告する。(服部倫卓)
駐在員のロシア語
コンピュータ用語
いまや仕事の必需品といえば、パソコンないしタブレットPC、スマホ、そしてインターネット 環境だ。タイムスリップして30年前のモスクワ駐在員事務所をのぞくと、そこにあるのは、数台のワープロとテレックス。たった1回線しかない国際電話にファクスをつないでいたのだが、通信料が高すぎて滅多なことでは使えなかった。それから5年ほどたった頃から、各自にPCが与えられ、インターネットを経由した電子メールで通信ができるようになった。そして、10年後(今から15年前)には ERP Systemといわれる統合型経営ソフトウエアパッケージを含む物流、経理、労務管理、果ては会議室の予約まで自分の席からできるようになっている。(新井滋)
蹴球よもやま話
NIS諸国はワールドカップ予選で全滅
2018年FIFAワールドカップ(W杯)ロシア大会の出場を目指す各大陸の予選は、ほぼ幕を閉じつつある。きわめて残念なことながら、私どもロシアNIS貿易会の事業対象国では、開催国のロシアこそ予選免除で出場できるものの、それ以外の国々の代表チームはことごとくヨーロッパおよびアジアの予選で敗退し、彼らにとって身近なはずのロシア大会への出場を逃した。(服部倫卓)
記者の「取写選択」
カラシニコフの憂鬱
ソ連・ロシアが生んだ世界で最も有名なブランドといえば、何といってもカラシニコフ自動小銃だろう。1947年のAK47開発後、派生品も含め約20カ国で製造され、約50カ国の軍が制式採用した。ソ連がアジアやアフリカの植民地の独立闘争を支援したこともあり、この銃は「第三世界の反抗の象徴」にして、「人類史上、最も多くの人を殺した武器」に。1億丁が世界にあふれたともいわれる。(小熊宏尚)