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ロシアNIS調査月報2018年8月号特集◆ペテルブルグ国際経済 |
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特集◆ペテルブルグ国際経済フォーラムと日本 |
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イベント・レポート |
サンクトペテルブルグ国際経済フォーラム開催 |
イベント・レポート |
プレナリーセッションにおける日ロ首脳スピーチ |
イベント・レポート |
8項目プランをテーマに「日ロビジネス対話」開催 |
イベント・レポート |
ジャパンパビリオンにおいて日本の魅力を発信 |
資料 |
ロシア諸地域は日本に何を期待しているか? |
デジタルITラボ |
SPIEF2018のテクノロジー関連の動向 |
ロシアと日本・ 出会いの風景 |
日本人が戸惑うロシアのフォーラムの特徴 |
ロシアメディア最新事情 |
経済フォーラム取材の裏側 |
地域クローズアップ |
レニングラード州は北都の背後に控える重要地域 |
調査レポート |
豊作の中見えてきたロシア農業の課題 |
報告 |
ロシアNIS貿易会平成30年度定時総会報告 |
INSIDE RUSSIA |
新プーチン体制の布陣と政策路線 |
ウクライナ情報交差点 |
ウクライナ港湾統計の概観 |
中央アジア情報バザール |
中央アジア各国の第2の都市 |
エネルギー産業の話題 |
ロシアのガソリン市場と税制改革 |
自動車産業時評 |
ロシア電気自動車市場はまだ萌芽段階 |
ロジスティクス・ナビ |
シベリア鉄道フォーラム2018 |
産業・技術トレンド |
ロシアで日本のような自動車を作れるか |
蹴球よもやま話 |
サッカー・ロシア代表激闘の記録 |
シネマ見比べ隊!! |
トラウマと不安をめぐって |
駐在員のロシア語 |
ご清祥のお慶び |
業界トピックス |
2018年6月の動き |
通関統計 |
2018年1〜5月の輸出入通関実績 |
記者の「取写選択」 |
出稼ぎ労働者のW杯 |
イベント・レポート
サンクトペテルブルグ国際経済フォーラム開催
「信頼の経済を創造する」をテーマに、2018年5月24〜26日、ロシアのサンクトペテルブルグにおいて国際経済フォーラム(SPIEF)が開催された。
米国のトランプ政権が通商政策で保護主義的な姿勢を強め、同じくトランプ政権がイラン核合意からの離脱を表明し、フォーラム後には史上初の米朝首脳会談が開かれるという国際政治経済情勢が激しく動く中での開催となった。欧米との関係が悪化するロシアにとって、国際社会での孤立感を払拭する機会となった。
フォーラムには、ロシア、日本、フランスの3ヵ国の首脳が顔をそろえた。米国の保護主義的な姿勢に批判が集まり、自由貿易体制の堅持と多国間アプローチの重要性が指摘された。
日本とフランスはゲストカントリーとして、会場内にナショナルパビリオンを設置した。
昨年同様、日本からは数多くのハイレベルの企業関係者がフォーラムに参加した。当会は実業ロシアとともに日ロビジネス対話を開催した。安倍総理とプーチン大統領の両首脳が初めて参加した。
本稿では、フォーラムの結果とともに、日ロ首脳会談の概要を紹介する。
(齋藤大輔)
イベント・レポート
プレナリーセッションにおける日ロ首脳スピーチ
2018年のサンクトペテルブルグ国際経済フォーラムのプレナリーセッションでは、ブルームバーグ・ニュースのジョン・ミックルスウェイト編集主幹をモデレーターに迎え、「信頼の経済を創造する」をテーマに、ホスト国であるロシアのプーチン大統領、フランスのマクロン大統領、日本の安倍晋三首相、中国の王岐山国家副主席、国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事がパネリストとして発言を行った。以下では、そのうちロシアのプーチン大統領と日本の安倍首相の演説(全文)を紹介する。
イベント・レポート
8項目プランをテーマに「日ロビジネス対話」開催
2018年5月24日〜26日、第22回サンクトペテルブルグ国際経済フォーラム(略称SPIEF)がExpo Forum Convention and Exhibition Centreにて開催され、世界143カ国から1万7,000人がこれに参加した。日本からは安倍晋三首相が日本の総理大臣として初めてSPIEFに出席したほか、官民合わせて300名以上が参加した。今回のフォーラムでは、日本はフランスとともにゲストカントリーのステータスを与えられ、SPIEFの枠内でゲスト国行事として@ジャパンパビリオン(ブース内での約20件の各種セミナーを含む)、A日ロビジネス対話、B日ロ中小企業パネルディスカッション、C文化行事(AUN Jクラシックオーケストラのコンサート)等を開催した。
以下では、5月25日(金)に実施された「日ロビジネス対話」の概要について報告することにしたい。
(中居孝文)
イベント・レポート
ジャパンパビリオンにおいて日本の魅力を発信
今般SPIEFにて、日本は「ゲスト国」として参加したことから、経済協力の進展に向けた日本の姿勢を示すべく、当会は日本貿易振興機構(JETRO)との協力の下、会場内のパビリオンGスペースに300uのナショナルパビリオンを設け、日ロ双方が具体化に取り組んでいる、8項目の「協力プラン」の成果の紹介や、日本食・観光等の日本の魅力発信を目的とした多彩な映像展示を展開した。また、多彩な専門家をジャパンパビリオンへ講師として招き、日本が誇る生産性向上(カイゼン)、デジタル、科学技術・宇宙技術をテーマとしたセミナーの他、日本茶実演や訪日観光PRを積極的に実施した。その他、つくば市所在のサイバーダイン社製造の医療用ロボットスーツHALの展示も行われた。なお、SPIEFメインイベントである全体会合が開催された5月25日午前、安倍総理一行が現地会場入りし、ジャパンパビリオン視察を行った。一行の案内は当会の村山会長が行った。(長谷直哉)
資料
ロシア諸地域は日本に何を期待しているか?
サンクトペテルブルグ国際経済フォーラムの折りに、ロシアのタス通信が、ロシアの各地域は日本との協力に何を期待しているのかということを論じた記事が掲載された。ロシア側の雰囲気、論調の一端を知ることのできる興味深い資料なので、以下のとおり翻訳の上ご紹介する。
デジタルITラボ
SPIEF2018のテクノロジー関連の動向
5月24日から26日にかけて、筆者の住むサンクトペテルブルグにおいて、サンクトペテルブルグ国際経済フォーラム(英:SPIEF)が開催された。今年は、143ヵ国から総勢17,000人以上の経済関係者が参加し、150以上のビジネスプログラムが組まれた。筆者もジャパンパビリオンのスピーカーとして招待頂き、このヨーロッパ最大級の経済イベントに初めて参加することができた。今回はフォーラム内で気になった展示やブースについて、テクノロジー関連を中心に紹介していこうと思う。(牧野寛)
ロシアと日本・出会いの風景
日本人が戸惑うロシアのフォーラムの特徴
ロシア人はフォーラムが大好きだ。最近、全国的に数が少なくなり、しかもメインのフォーラム(サンクトペテルブルグ国際経済フォーラム=SPIEFおよび東方経済フォーラム=EEF)が政府から特別指定されたので、一応整理されつつあって、よかったと思うが、少し前までは、ロシア国内のどこの地域へ行っても「○○州国際フォーラム」という立派な看板を見かけた。多すぎだったと思う。
ロシア人は近年、「フォーラム」という言葉自体を好きになったが、ロシア人の私も、各種のフォーラムがこれほど盛んになったことの原因を探ってみたくなった。
(D.ヴォロンツォフ)
ロシアメディア最新事情
経済フォーラム取材の裏側
ここ1年以内で、サンクトペテルブルグ、ウラジオストク、ソチ、ヤルタと、ロシアの4大経済フォーラムを取材した経験から、裏側の色々なエピソードについてご紹介します。(徳山あすか)
地域クローズアップ
レニングラード州は北都の背後に控える重要地域
フィンランドやエストニアと陸路で直接的に国境を接し、ロシアにとっての「西欧への窓」となるバルト海に面した港をいくつも有するレニングラード州からは、欧州を主要相手国とした貿易や資源輸出が行われている。2017年11月には「連邦構成主体の輸出地域リーダー」に選ばれた。伝統的に様々な産業分野、特に製造業が盛んなレニングラード州の経済発展は進んでおり、多くの外資系企業が進出している。こうした地理的、経済的利点を生かして発展を続けるレニングラード州の経済がここ数年、特に好調な成長を示していることは注目に値する。
そこで本稿では、サンクトペテルブルグの陰に隠れがちであるが、好調な経済発展によって国内外の注目が高まりつつあるレニングラード州にスポットを当ててみることにする。
(中馬瑞貴)
調査レポート
豊作の中見えてきたロシア農業の課題
ロシアNIS経済研究所 嘱託研究員
坂口泉
農業分野はロシアで今最も勢いのある産業のひとつである。中でも穀物部門の最近の充実ぶりには目を見張るものがある。20年ぐらい前までロシアは穀物の純輸入国で、その輸入動向が穀物の国際価格に影響を及ぼすといわれていたものが、この10年ほどの間に世界最大級の輸出国となり、その輸出動向が国際市場に影響を及ぼすようになっている。さらに、かつては生産量が安定せず不作の年も目立ったものが、最近は記録的な豊作続きで、4年連続で生産量が1億tの大台を突破した。さらに、2018年も前年ほどの豊作にはならないものの1億t以上の水準を維持する可能性が高いとみられている。
また、畜産部門も急激な成長を続けており、鶏と豚に関しては自給率が100%近くに達している。さらに、牛に関しても生産量は伸び悩んでいるものの、品質の向上が著しく、値段の高さを気にしなければ、かつては想像すらできなかった「ロシア産の美味しい高級牛肉」を普通に食することができるようになっている。その他、栽培技術の向上に伴い野菜の生産量も安定してきており、一部には、生産量が国内消費量を上回るケースも出てきている。
ただ、そのような見かけ上の好調さとは裏腹に、ロシアの農業分野ではある問題が年々深刻となっている。それは、穀物や野菜の生産量の伸びに近代的貯蔵設備の整備のテンポが追いつかず、豊作になればなるほど貯蔵段階でのロス率が高くなるという問題である。たとえば、2017年は穀物が大豊作であった他、野菜の中では人参などが豊作であったが、近代的な貯蔵設備が不足しているためロス率が例年より高くなってしまった。そして、一部の野菜では生産量が消費量を上回っているのに、ロス率が高いため季節外に相当量を輸入することを余儀なくされるという事態が生じた。ロシアの農業分野が今後もその勢いを保つには、貯蔵設備をはじめとする関連インフラの整備により大きな関心を向けることが必要だといえよう。
本稿では貯蔵設備の不足という問題に留意しながら、生産は好調であったものの「豊作貧乏」の傾向も見受けられた2017年の農業分野の状況を振り返る。
報告
ロシアNIS貿易会平成30年度定時総会報告
一般社団法人ロシアNIS貿易会は東京の如水会館にて、6月11日に平成30年度定時総会を開催いたしました。定時総会では「平成29年度事業報告」、「公益目的支出計画実施報告書」の報告、第1号議案「平成29年度計算書類等」、第2号議案「役員選任の件」の承認がなされました。
以下では定時総会において報告された平成29年度事業報告の内容を掲載するとともに、定時総会における来賓の南亮経済産業省通商政策局欧州課長(兼ロシア・中央アジア・コーカサス室長)のご挨拶、また村山会長の挨拶を掲載いたします。
INSIDE RUSSIA
新プーチン体制の布陣と政策路線
4期目のプーチン政権が、どのような布陣で、いかなる政策課題に挑戦しようとしているのかは、だいぶ明確になってきた。そうした中、6月14日の閣議で、メドヴェージェフ首相は2つの大きな政策方針を示した。第1に、付加価値税の税率を、現行の18%から、20%へと引き上げること。第2に、年金制度を、受給開始年齢を引き上げる方向で改革することである。(服部倫卓)
ウクライナ情報交差点
ウクライナ港湾統計の概観
ウクライナ・インフラ省港湾管理公社がとりまとめている同国のウクライナの港湾(海港)における取扱貨物量を、一覧表にまとめた。2012〜2017年の港湾貨物量につき、貨物のカテゴリー別、港湾別、貨物の種類別の内訳を示し、この間の変動を跡付けている。(服部倫卓)
中央アジア情報バザール
中央アジア各国の第2の都市
ロシア第2の都市サンクトペテルブルグで開催されたフォーラムの特集にちなんで、本稿では中央アジア各国の「第2の都市」を紹介する。(中馬瑞貴)
エネルギー産業の話題
ロシアのガソリン市場と税制改革
2018年の年初よりロシアではガソリン価格が高騰しており、各地で抗議行動が起こっているようですが、価格の上昇テンポが今後加速する危険性が生じつつあります。現在、財務省を中心として石油分野の税制改革に関する協議が行われているのですが、ガソリン価格の高騰につながりかねない改革案が採択される公算が高まっているのです。今回は、ロシアのガソリン市場の現状を紹介した後に、現在検討されている税制改革の骨子とそれがガソリン市場に及ぼす影響に言及します。(坂口泉)
自動車産業時評
ロシア電気自動車市場はまだ萌芽段階
インフラが未整備なこともあり、ロシアでは電気自動車はまだ珍しい存在となっていますが、モスクワ市をはじめとするロシアの大都市部では、電気バスを導入する動きが加速しています。政府も電気自動車の普及に力を注ぐ意向を示しており、税制上の特典の供与も検討されています。本稿では、ロシアの電気自動車市場の状況の他、政府がやはりその普及に強い意欲を示しているガス自動車をめぐる状況についても若干言及します。(坂口泉)
ロジスティクス・ナビ
シベリア鉄道フォーラム2018
5月31日、東京の在日ロシア連邦通商代表部で、第4回シベリア横断鉄道調整評議会(CCTT)ビジネス・フォーラムが開催されました。当日の報告の中から、日本のシベリア鉄道利用に関連する情報を紹介します。(辻久子)
産業・技術トレンド
ロシアで日本のような自動車を作れるか
実は、ロシアでも改善活動は流行で、「トヨタの道」なる本を読んでいる製造業社長によく会う。ロシアでもカイゼン、TPM、TPS、5S等の、生産性や品質を向上させるための活動や考え方が広まりつつあるようだ。一方、ロシアの製造業は、航空宇宙産業や素材産業の極一部など、例外的に優秀な企業もあるものの、大半の企業はプリミティブな状態に留まる。自動車産業はロシアの製造業の中でも、もっとも要カイゼンな分野である。果たして、日本の方法を取り入れることで、ロシアは日本のような自動車作りができるだろうか。(渡邊光太郎)
蹴球よもやま話
サッカー・ロシア代表激闘の記録
サッカー・ロシア代表の戦いに、これだけ激しく魂を揺さぶられることになるとは。「出場国中、FIFAランキングが最下位」とか、「史上最弱の開催国」などと揶揄され、国民の関心や期待も低かったロシア代表が、ベスト8にまで食い込むとは、本当に嬉しい驚きだ。クロアチアにPK戦で敗れた翌日、モスクワで開催された集会には、2.4万人のサポーターが代表をねぎらうために集結したという。開催国チームとしてのノルマは、十二分に果たしたと言えよう。(服部倫卓)
シネマ見比べ隊!!
トラウマと不安をめぐって
『孤独な声』VS『ファザー、サン』
夏休みになると課題図書を読んで読書感想文を書くというのが宿題でした。今でも、暑い夏には敢えて古典文学を文庫で読み直そうという書店側からのキャンペーンが、春のパン祭りのごとくいつのまにか展開されておりますね。そんな夏には、人の精神面での揺らぎや歪みを描き、自身を問い直すのを強いてくるような映画作品がよく似合うのではないかと思います。これ以上、背筋がゾッとするような怖いことはないですし、夏の暑さや西日の差し込む窓、陽光の眩しさは文学の主人公たちに殺意を芽生えさせることさえあるのですから。そんな夏に見ていただきたいのがアレクサンドル・ソクーロフの謎めいた心理描写が映像の歪みや妖美を通して綴られる作品です。このたびは、その中でも父と息子の物語という共通のテーマでも結ばれる『孤独な声』と『ファザー、サン』を紹介したいのです。(佐藤千登勢)
駐在員のロシア語
ご清祥のお慶び
「時下ますますご清祥のこととお慶び申し上げます」という常套句は、日本のビジネスレターでよく使われる。「清祥」というのは「相手が健康で幸福に暮らしていることを喜ぶ意に用いる語」だがロシア語ではどうなるか?(新井滋)
記者の「取写選択」
出稼ぎ労働者のW杯
「サッカー・ワールドカップの勝者は、第一に大会運営者だ」。チジョフ駐EUロシア大使は6月初めの記者会見でこう述べ、世界最大のスポーツイベントの縁の下の力持ちをたたえた。
縁の下のさらに下には労働者、特に大会会場などのインフラ建設や清掃など肉体労働に当たる人々がいる。ピカピカの競技場は国内外からの出稼ぎ労働者なしに存在しなかったが、エリート層から彼らへの感謝の言葉を聞いたことはない。
(小熊宏尚)