ロシアNIS調査月報
2019年3月号
特集◆ロシア地域経済の
新潮流を読む
特集◆ロシア地域経済の新潮流を読む
調査レポート
第4期プーチン政権における地域の重要性
調査レポート
極東造船業は再生できるのか?
―ロシアのしたたかさとジレンマ―
ビジネス最前線
特産の牡丹を花好きのロシアへ
講演録
ロシアによる北極圏開発の現状と展望
エネルギー産業の話題
ロシア極東地方の電力事情
データバンク
2018年版ロシア地域別投資環境ランキング
ミニ・レポート
アカデムゴロドク2.0構想とシベリアでの産官学連携
ミニ・レポート
ウラジオストクへデジタル分野ミッションを派遣
地域クローズアップ
真価を発揮し始めた農業地域タンボフ州
中央アジア情報バザール
ウズベキスタンの地域経済

調査レポート
大口需要家に依存するロシア電力分野
データバンク
ロシアの地下資源の採掘量と予測
データバンク
2018年の日ロ貿易(速報値)
INSIDE RUSSIA
厳しい局面を迎えた日ロ交渉
ドーム・クニーギ
谷口洋和・A.マムマドフ著
『アゼルバイジャンが今、面白い理由』
ウクライナ情報交差点
2019ウクライナ大統領選とオリガルヒ
ロジスティクス・ナビ
ロシア港湾と鉄道-2018
産業・技術トレンド
制裁強化で新型旅客機が生産不能に
ロシアメディア最新事情
議員立法から見る今どきのロシア
デジタルITラボ
ロシアで普及するレストランフードデリバリー
ロシアと日本
・出会いの風景
スポーツジムもロシアと日本で大違い
ロシア音楽の世界
ムソルグスキー「展覧会の絵」
駐在員のロシア語
間違い電話
蹴球よもやま話
サッカー・中央アジア代表勢奮闘記
業界トピックス
2019年1月の動き
通関統計
2018年1〜12月の輸出入通関実績(速報値)
ユーラシア珍百景
上野で買えるタジキスタンの迷彩服
記者の「取写選択」
北方領土・もう一つの視線


調査レポート
第4期プーチン政権における地域の重要性

ロシアNIS経済研究所 研究員
中馬瑞貴

 2018年5月に発足した第4期プーチン政権は2018年5月7日付大統領令「2024年までのロシア連邦発展のための国家目標と戦略的課題(以下、「新5月大統領令」)」を国の最重要政策としている。様々な分野を網羅した包括的な文書であるが、この中に地域発展に特化した目標や課題はない。
 2000年代のロシアでは連邦制度改革や国家の法的・経済的一体性といった中央・地方関係に焦点を当てた対地域政策が国家の最重要課題であった。しかし、2008年以降、国家の重要課題は経済改革や社会問題が中心で、現在の第4期プーチン政権でも同様である。一方で、国の社会・経済発展における地域の重要性は必ずと言っていいほど指摘されている。加えて、極東・シベリア地域の発展、北カフカス地域の安定、クリミア半島の併合など、重点地域を巡る問題は常に政府の重要課題である。
 さらに、地域の社会・経済発展にとって重要な地域行政の責任者、すなわち、連邦構成主体の首長を取り巻く動きは目まぐるしく変化している(本稿では「地域=連邦構成主体」とする)。特に2018年に行われた統一地方選挙では予想外の展開が相次ぎ、地域行政に大きな変化を及ぼしている。
 そこで本稿では、第4期プーチン政権の地域情勢について政策的な視点および人事の視点から現状を概観する。なお、すでに『ロシアNIS調査月報』では2018年の首長選挙関連の記事を何度かお伝えしているので、重複する情報も含まれていることをご容赦いただきたい。


調査レポート
極東造船業は再生できるのか?
―ロシアのしたたかさとジレンマ―

ロシアNIS貿易会モスクワ事務所 所長
齋藤大輔

 ウラジオストクから車で2時間、4年前まで閉鎖都市だったボリショイカーメニは、薄霧の中にあった。人口は3.9万人足らずで、ウスリー湾に面した小さな港と軍の基地がある。
 そんな街を目指したのは、ズヴェズダという名の船舶修理工場を訪ねるためだった。
ここで新しい造船所をつくるプロジェクトが進んでいる。プーチン大統領の肝いりのプロジェクトで、私が訪問した1ヵ月半後の2018年9月、大統領が3年続けて現場を視察した。
 ロシアは造船業の復活に勤しむ。資源輸送の需要拡大や北極海航路の発展をにらんで、すでに船の建造を進めている。外資からのサポートを受けながら、設計・生産技術の導入にまず取り組み、そこでの作業を通じて技術を開発し、造船業の「国産化」を図る戦略だ。ズヴェズダ工場はその東の拠点との位置付けである。極東地域に大規模な造船工場ができるのは初めてである。工場は現在、タンカーの建造に取りかかっているほか、ドライドックなど新たな生産施設の建設を進めている。
 本稿はまず、極東で進む造船業復活プロジェクトについて取り上げる。続いて、プロジェクトの経緯や背景、ボリショイカーメニという街を紹介して、造船業復活を巡るロシアのしたたかさとジレンマについて考えてみる。


ビジネス最前線
特産の牡丹を花好きのロシアへ

JAしまねくにびき地区本部 営農指導課長 岩田政彦さん
島根県しまねブランド推進課 企画員 恩田一樹さん

 300年の歴史を誇る島根県松江市・八束町の牡丹(ぼたん)栽培。今年、ロシア向けの初輸出から丸10年を迎えます。実は2016年度から輸出が2シーズン中断し、関係者の努力で2018年秋に再開したところです。これまでの経緯や現状について、島根県農業協同組合(JAしまね)くにびき地区本部の岩田政彦・営農経済部営農指導課長、島根県しまねブランド推進課貿易促進支援室の恩田一樹企画員に伺いました。(吉村慎司)


講演録
ロシアによる北極圏開発の現状と展望

ロシア科学アカデミー欧州研究所 環境センター長 S.ロギンコ
ロシア連邦政府付属金融大学 第一副学長 K.シモノフ
国民経済予測研究所 運輸分析部長 Yu. シェルバニン

 ロシアNIS貿易会では、1月23日に都内で、25日に札幌で、産業協力・企業間交流セミナー「ロシアによる北極圏開発の現状と展望」を実施しました。今まさに注目されている、北極圏の環境及びロシアの政策方針・環境・油ガス田開発・運輸それぞれの分野に精通した専門家による報告を通じて、ロシアで進む北極圏開発の現状理解を進めることを主旨として開催しました。専門家としては、ロシア科学アカデミー・欧州研究所環境センター長のセルゲイ・ロギンコ氏、ロシア連邦付属金融大学第一副学長のコンスタンチン・シモノフ氏、国民経済予測研究所のユーリー・シェルバニン氏を招聘、それぞれ、北極圏の現状、北極圏での石油ガス開発計画、北極海航路の展望について詳細に報告をいただきました。いずれの専門家も実務への意識が高く、極めてプラクティカルに要点を押さえたプレゼンテーションを用意いただきました。都内でのセミナーには約70名、札幌でのセミナーには約20名強が聴衆として参加、かなり専門的な内容を含んでいたにもかかわらず、質疑応答時間では詳細な質問が絶えなかった他、セミナー終了後の名刺交換の時間には報告者それぞれに多数の人だかりができ、聴衆の本テーマに対する強い関心が窺えました。以下、産業協力・企業間交流セミナー「ロシアによる北極圏開発の現状と展望」の内容をご報告致します。


エネルギー産業の話題
ロシア極東地方の電力事情

 ロシアの電力系統は、大別して@欧州・ウラル・ゾーン(第1タリフ・ゾーンとも呼ばれる)、Aシベリア・ゾーン(第2タリフ・ゾーンとも呼ばれる)、B第1、第2タリフ・ゾーンと繋がっていない非タリフ・ゾーンの3つに大別されますが、極東地方の電力系統はBに分類されます。さらに、極東地方の電力系統は、送電線でつながっている5つの地域と、サハリン州、カムチャツカ州などのように他のエリアの電力系統から完全に孤立したゾーンとに大別されます。極東の電力事情は良好とは言い難く、老朽化したインフラの刷新や、完全孤立ゾーンの高い電力料金への対応が喫緊の課題となっています。今回は、ロシア政府がそれらの課題にどのように取り組んでいるのかを見ていきます。(坂口泉)


データバンク
2018年版ロシア地域別投資環境ランキング

 ロシアの情報機関「エクスペルト」は2018年12月、毎年恒例のロシア地域別投資環境ランキングの2018年最新版を発表した。以下では、この資料を抜粋して紹介する。


ミニ・レポート
アカデムゴロドク2.0構想とシベリアでの産官学連携

 ロシアでは2017年7月に国家プログラム「ロシア連邦のデジタル経済」が採択されて以降、通信インフラ投資、各種産業におけるデジタル技術の活用、人材育成、スマートシティ化の推進等、多方面で「デジタル経済」の浸透を図ろうとしている。ロシア政府に拠れば、2019年以降の数年間で2兆ルーブル相当の国家予算がその目的に投じられる予定であり、また連邦会議(ロシア上院)に拠れば、本年だけで関連法案が60以上審議される予定だという。
 このような中、モスクワのスコルコヴォを手本として、地方でも産官学の人材とプロジェクトを結集させるための試みが講じられている。タタルスタン共和国の「インノポリス」のように構成主体のイニシアチブで既に立ち上げられているものもあれば、これから新規設立、あるいは既存のインフラを更新して建造しようという試みも存在する。この後者について、注目を集めている試みの一つがシベリアはノヴォシビルスク州にある。学術都市アカデムゴロドクである。(長谷直哉)


ミニ・レポート
ウラジオストクへデジタル分野ミッションを派遣

 「アジア太平洋へのゲートウェイ化」を掲げ開発が進むウラジオストクでは、近年ハイテク分野における振興政策が次々に講じられており、域内スタートアップの増加・成長やテクノパーク開設など、その成果が目に見える形で現れつつある。一方我が国としても、2017年9月の第3回東方経済フォーラムにて日ロ両政府間で「デジタル経済に関する協力に係る共同声明」といった文書が交わされ、当分野での協力拡大が期待されている。
 そこで、ロシア極東の拠点都市ウラジオストクにおける「日ロデジタル協力」の可能性を探るべく、昨年の12月に日本のIT・デジタル分野に関するビジネス・ミッションを同地へ派遣した。本稿では、ミッション期間中に視察したコワーキングスペース「DOM」、および極東連邦大学内に新設された「テクノパーク・ルースキー(以下、英語通称の「RUtechpark」を使用)」の訪問概要についてレポートする。(大内悠)


地域クローズアップ
真価を発揮し始めた農業地域タンボフ州

 筆者はここ1年ほどの間に、10あまりのロシアの諸地域を訪問して現地調査を行う機会を持った。訪問した一連の地域の中から、本コーナーではタンボフ州について報告してみたい。タンボフ州を選んだ理由は、ずばり、当会の月報・速報において、これまで一度も取り上げたことのない地域だからである。本「地域クローズアップ」のコーナーを含め、タンボフ州を単体として扱った記事は、これまで一回もなかった。それだけ、今日のロシアの政治・経済体制の中では目立たない存在ということであろう。実際、タンボフ州は地味な農業地域であり、ロシア全体にその名の轟くような大企業があるわけではない。
 しかし、筆者は現地調査を行ってみて、小粒ながらも光るタンボフ州の個性を実感するとともに、農業および食品産業を中心に当地でも経済発展が進んでいる様子を確認することができた。むしろこれからの成長地域として注目されるタンボフ州の概要を、以下で語ってみることにする。(服部倫卓)


中央アジア情報バザール
ウズベキスタンの地域経済

 中央アジア随一の観光立国ウズベキスタン。サマルカンド、ブハラ、ヒヴァといった世界遺産を有するシルクロード古代オアシス都市の名前は国名・首都名以上に世界的に知名度が高いといっても過言ではない。中央アジア各国についてはまだまだ情報が少なく、足を運ぶ人も決して多くない日本でも、旅行会社の広告などを見るとウズベキスタンの地方都市を扱っているツアーは意外と多い。そのため、ウズベキスタンの地方=観光地というイメージが強いが、もちろん、地方には観光地として以外の魅力もある。そこで、本稿では、ウズベキスタンの地域の観光以外の特徴について紹介する。(中馬瑞貴)


調査レポート
大口需要家に依存するロシア電力分野

ロシアNIS経済研究所 嘱託研究員
坂口泉

 10年ほど前からロシアの電力分野では、投資義務契約と呼ばれる制度に基づいた発電インフラへの投資が活性化している。投資義務契約の具体的内容については本文で説明するが、簡単に言えば、そこでは、民間の大口需要家に割高な料金を適用しそこから得られる資金で設備投資を行うというスキームが採用されている。投資義務契約制度は火力発電所のみならず、原子力発電所、水力発電所、ならびに、再生可能エネルギー利用の発電所の新規建設の際にも適用されており、大口需要家に大きな負担を強いることになっている。また、送配電部門に目を転じれば「最後の1マイル」という制度(あるいはそれに類する制度)を通し送配電会社への支援が行われているが、この制度もまた、民間の大口需要家に割高な料金を適用しそこから得られる資金で設備投資を行うというスキームを基本としている。
 このような大口需要家に過度に依存した電力政策に関しては各方面から批判が出ているが、ロシア政府は、形を変えた上で投資義務契約制度や最後の1マイル制度を今後も継続させる意向を示しており、大口需要家が負担に耐えられなくなる可能性も出始めている。ロシアの電力分野では先の見えない不透明感が強まりつつあるといえよう。本稿では、大口需要家の負担増という問題を意識しながら、2018年のロシアの電力分野を回顧する。


データバンク
ロシアの地下資源の採掘量と予測

 2018年12月22日付ロシア政府指令で、「2035年までのロシア連邦の鉱物資源基盤発展戦略」が採択され、その付表の中でロシアにおける地下資源の採掘量の実績と当面の予想が示された。ロシアの統計資料では、石油、天然ガス、石炭、鉄鉱石については採掘量の実数が掲載されるが、それ以外の資源については伸び率くらいしか出ない。それが、今回の資料では、そうした品目の2007〜2017年の平均採掘量と、2024年までの予測が出ており、貴重なデータと思われるので、下表のとおり紹介する(戦略としては2035年までだが付表は2024年までとなっている)。


INSIDE RUSSIA
厳しい局面を迎えた日ロ交渉

 我が国の安倍晋三総理がロシアを訪問し、1月22日にモスクワのクレムリンにおいてプーチン大統領との首脳会談が開催された。この組み合わせによる首脳会談は、実に25回目となる。会談後、両首脳は揃って共同記者発表を行い、その発言振りは後掲の資料のとおりである。なお、記者との質疑応答は行われなかった。
 領土問題に関しては、ここに来てロシア側の非妥協的な姿勢がこれまで以上に浮き彫りとなっている。それに加え、ロシアのマスコミによる論調も、日本にとって厳しいものが目立つようになっている。(服部倫卓)


ウクライナ情報交差点
2019ウクライナ大統領選とオリガルヒ

 3月31日に投票が行われるウクライナ大統領選挙では、12月31日から2月4日までが候補者の届け出期間であり、実に92名が届け出を行った。そのうち、2月9日の期限までに中央選管が候補者として正式に登録したのは、44名であった。筆者が調べた限りでは、過去のウクライナ大統領選における候補者数は、2004年の24人が最多だったようである。2019年ウクライナ大統領選は、候補者の数が過去最多に膨れ上がったことになる。
 以下では、大統領選をめぐる概況と、ウクライナ政治への影響力が大きいとされるオリガルヒ(新興財閥の領袖)たちの動きを整理する。 (服部倫卓)


ロジスティクス・ナビ
ロシア港湾と鉄道-2018

 2018年にロシア港湾とロシア鉄道のインフラを利用した輸送の全体像について、速報値を基に概観します。なお詳細については公式統計を待って改めて紹介します。(辻久子)


産業・技術トレンド
制裁強化で新型旅客機が生産不能に

 ロシアの新型旅客機MC-21が、制裁により生産不能の状態に陥っている。MC-21は新製法の炭素繊維複合材製主翼を持つが、この素材が米国製であった。制裁により主翼を製造するアエロコンポジット社が制裁の対象になり、米国から素材の輸入ができなくなった。現在、MC-21は、就航に必要な型式証明を取得するため飛行試験を進めている。しかし、現状のままでは開発をやり遂げても、材料がないので量産に入ることができない。ロシアでは、対策を発表しているが、極めて困難が予想される。今回はMC-21の陥った苦境について述べる。(渡邊光太郎)


ロシアメディア最新事情
議員立法から見る今どきのロシア

 ロシアのニュースを読んでいて頻繁に目にするのが、「ある州の〇〇議員は〜について提案した」というお決まりのフレーズ。あくまでも提案しただけで、成立したわけではないのですが、ニュースになるのには、それだけの理由がありそうです。ぶっとんだ発想の政策もたくさんありますが、後で見てみると、ほぼボツになっています。最近見た中で印象に残ったものをご紹介します。(徳山あすか)


デジタルITラボ
ロシアで普及するレストランフードデリバリー

 近頃のロシアでは、地下鉄内や路上で黄色いコートに身を包み、同じく黄色いリュックサックを背負った若者を見かけることが多くなった。これは、フードデリバリーサービスを提供している「ヤンデックスエダー」の配達員だ。都市部を中心に、フードデリバリーのサービスが急拡大している。今回は、フードデリバリーを中心にロシアにおける「フードテック」(テクノロジーを使って飲食・食品産業にイノベーションを起こす企業群、またはその市場そのもの)について見ていこうと思う。(牧野寛)


ロシアと日本・出会いの風景
スポーツジムもロシアと日本で大違い

 今回も、個人的な関心の一つを、日ロ比較という観点から、本エッセイのテーマにしたい。ここ20年近く、コンスタントにスポーツクラブ(ジム)へ通っている。最初はモスクワで通い始め、2010年代の中ごろに日本へ移り住んだ(横浜市、その後東京都)際にも継続し、またロシアに戻った後にも同じチェーンのスポーツクラブに入り直した。そして今、またまた東京に住んでいるので、都内のある施設の会員になった。ちなみに、私は一応(?)東京都港区の区民であり、区立の公共スポーツセンターのメンバーになっている(施設は新しくて明るく開放的、その上安いと大変素晴らしい)。
 ロシアでは最近、様々なタイプのスポーツ施設が急増している。周知のとおり、かつての右肩上がりの経済成長とともにロシア人のライフスタイルも大きく変わりつつ(良くなりつつ)ある中で、「健康」がブームになった。そのポジティブな変化の担い手となったのが、若者たちだ。今、ロシアのスポーツ施設を覗いてみると、利用者の平均年齢が20代であることに気づく。 (D.ヴォロンツォフ)


ロシア音楽の世界
ムソルグスキー「展覧会の絵」

 2018年12月15日、ロシアの珠玉の名曲ばかりをオペラシティ・コンサートホールで聴いた。曲目は、リムスキー・コルサコフの交響組曲「シェエラザード」抜粋、ムソルグスキーの「展覧会の絵」全曲、グラズノフの「弦楽のための主題と変奏」、チャイコフスキーの「弦楽セレナーデ」の4曲。アンコールは、ラフマニノフの「ヴォカリーズ」とピアソラの「リベルタンゴ」の2曲。イタリアのヴィオッティ国際コンクールで優勝したヴァイオリンの名手、イリヤ・ヨーフがリーダーを務める弦楽合奏団であり、弦楽16名による編成によって、「展覧会の絵」のような大編成オーケストラの管弦楽曲をどう料理するか見ものであった。(ヒロ・ミヒャエル小倉)


駐在員のロシア語
間違い電話

 ロシアで生活していて、電話絡みで一番面喰ったこと − 目の前で自宅の電話が鳴ったので、受話器を取り、もしもしと答えた。すると、電話をかけてきたロシア人の中年とおぼしき女性から馴れ馴れしい調子で、いきなりКто это? (あんただれ?)と言われたときだ。これほど不意を突かれたことはない。(新井滋)


蹴球よもやま話
サッカー・中央アジア代表勢奮闘記

 2月1日、約1か月にわたりUAEで行われたアジア杯はカタールの優勝で幕を閉じた。準決勝でイランを降しファイナルに乗り込んだ日本代表であったが、次回W杯ホスト国を前にあえなく玉砕、2大会ぶりの栄冠を逃した。一方、今大会は出場国が従来の16か国から24か国へと拡大したこともあり、我らが(?)中央アジア勢からはトルクメニスタン、ウズベキスタン、キルギスと、過去最多の3か国が参戦した。さらに、3か国のうち前者2か国がなんと日本代表と同じグループFに組まれ、真剣勝負の国際大会でそれぞれ激突した。本稿ではそんな中央アジア勢の戦いの軌跡を振り返る。 (大内悠)


ユーラシア珍百景
上野で買えるタジキスタンの迷彩服

 個人的に、以前、御徒町に住んでいた頃には、上野界隈が定番の散歩コースだった。アメ横などは散々歩いたので、そこに米軍などから放出されたと思われる軍服を売る店があるのも知っていた。しかし、当方、平和を愛するチキン野郎ゆえ、ミリタリーグッズなどには本能的に嫌悪感を覚えてしまい、軍服の類には目もくれずに通り過ぎるのが常であった。しかし、先日用事があって上野を歩いていたところ、軍服屋の店頭に、ロシアの三色旗を表紙に掲げた「総合カタログ」というものが置かれているのが目に留まってしまった。ミリタリーものは嫌いだが、ロシアが絡んでいるとなれば、職業柄チェックしておかなければなるまい。そのように考え、初めて軍服屋に入店してみたのである。(服部倫卓)


記者の「取写選択」
北方領土・もう一つの視線

 「テレーザ(メイ英首相)が日本を訪問して以降、まさに日英同盟とも言えるような強固な関係を築き上げることができた」
 今年1月10日、ロンドンで行われた安倍首相の共同記者会見での発言が耳に引っかかった。(小熊宏尚)