ロシアNIS調査月報
2019年6月号
特集◆転換点に差し掛かる
NIS諸国
 
特集◆転換点に差し掛かるNIS諸国
調査レポート
2018年のロシア・NIS諸国の経済トレンド
調査レポート
2018年のNIS諸国の乗用車市場
調査レポート
カザフスタンのナザルバエフ「院政」
―旧ソ連諸国における権力継承の新モデル?―
調査レポート
2019ウクライナ大統領選挙の顛末
―異例の政権交代はなぜ起きたのか―
データバンク
2018年の日本の対NIS諸国貿易統計
エネルギー産業の話題
2018年のカザフスタンの石油ガス産業
ドーム・クニーギ
服部・原田(編著)『ウクライナを知るための65章』

INSIDE RUSSIA
第4期プーチン政権下の政策進捗状況
ロシア極東羅針盤
動き出すシベリア・バム鉄道の輸送力再拡張
ロジスティクス・ナビ
成長続くロシア極東港湾
産業・技術トレンド
2018年ロシアの旅客機生産
ロシアメディア最新事情
強いロシア女性は婚活方法も大胆
デジタルITラボ
加速する日ロ・ベンチャー市場の経済交流
ロシアと日本・
出会いの風景
日本人をロシア料理店に連れていく
ロシア音楽の世界
チャイコフスキー第5交響曲! 「運命」?
駐在員のロシア語
マーケティング(2)
シネマ見比べ隊!!
ソ連とロシアの世相
業界トピックス
2019年4月の動き
通関統計
2019年1〜3月の輸出入通関実績
おいしい生活
キルギスの白はちみつ
記者の「取写選択」
モスクワへ飛んだ日本のイルカ


調査レポート
2018年のロシア・NIS諸国の経済トレンド

ロシアNIS経済研究所

 本誌では毎年6月号において、前年のロシア・NIS諸国の経済実績を踏まえつつ、各国の最新の経済動向について論評するという企画をお届けしている。本年も2018年のデータがほぼ出揃ったので、早速それを試みたい(『ロシアNIS経済速報』2019年4月15日および4月25日号より再録)。なお、モンゴルは一般的にはNISの範疇に入らないが、モンゴルも本レポートの対象に加えている。執筆は当会ロシアNIS経済研究所のスタッフによるものであるが、ロシアについては北海道大学スラブ・ユーラシア研究センターの田畑伸一郎教授に特にご寄稿いただいた。


調査レポート
2018年のNIS諸国の乗用車市場

ロシアNIS経済研究所 嘱託研究員
坂口泉

 本稿では、NIS諸国のうちウクライナ、ベラルーシ、カザフスタン、ウズベキスタンの4カ国を取り上げ、それぞれの乗用車市場の現状と今後の見通しを紹介するが、ウクライナに関しては新車市場の質的変化と「ヨーロッパナンバー」と呼ばれている中古車群の存在に着目しながらその状況を紹介したい。また、ベラルーシとカザフスタンに関しては新車のブランド別、モデル別の販売と自動車生産の動向などに留意しながら、その現状と今後の展望を紹介する。そして、ウズベキスタンに関しては、自動車生産の動向と市場の変化の兆候に焦点を当てながら、その現状を紹介する。


調査レポート
カザフスタンのナザルバエフ「院政」
―旧ソ連諸国における権力継承の新モデル?―

北海道大学スラブ・ユーラシア研究センター 教授
宇山智彦

 2019年3月19日、カザフスタンのヌルスルタン・ナザルバエフ大統領は辞任を表明した。カザフスタンがまだソ連の中の共和国だった1989年6月からカザフスタン共産党第一書記、1990年4月から大統領としてこの国を指導してきた政治家の辞任は、大きなニュースとなった。しかしこの日のテレビ演説は、彼が辞任しても引退はしないことを明瞭に示すものだった。


調査レポート
2019ウクライナ大統領選挙の顛末
―異例の政権交代はなぜ起きたのか―

ロシアNIS経済研究所 副所長
服部倫卓

 ウクライナ大統領選挙は、2019年3月31日に第1回投票が実施され、新人でコメディアンのV.ゼレンスキーが30.2%を、現職大統領のP.ポロシェンコが16.0%を得票し、この2人が決選投票に進出。そして、4月21日の決選投票では、ゼレンスキーが73.2%を得票し、当選を果たした。ゼレンスキーは近日中に正式に大統領に就任し、5年間の任期をスタートさせることになっている。本稿では、選挙の過程と概要を整理し、コメディアンが現職大統領を相手に地滑り的勝利を収めるという波乱がなぜ起きたのかを考察する。


データバンク
2018年の日本の対NIS諸国貿易統計

 恒例により、日本財務省発表の貿易統計にもとづいて、2018年の日本とNIS諸国との貿易に関し、データをとりまとめて紹介する。日本とロシアの貿易については、すでに5月号に掲載済みである。なお、日本とNISとの貿易に加え、モンゴルとの貿易データも取り上げてる。


エネルギー産業の話題
2018年のカザフスタンの石油ガス産業

 今回は、ロシアの石油ガス専門誌の『石油ガス垂直統合』と『石油と資本』の各号に掲載された情報をベースに、カザフスタンの石油ガス分野の現状をご紹介します。(坂口泉)


INSIDE RUSSIA
第4期プーチン政権下の政策進捗状況

 ロシアで2018年5月7日に第4期プーチン政権が発足してから、1年が経過した。この間ロシアでは、プーチン大統領が就任日当日に発令した「5月大統領令」にもとづき、12本の「ナショナルプロジェクト」(およびそれと同等の位置付けであるインフラ計画)が策定され、政策が推進されている。これについては、前号の本コーナーで報告したとおりである。
 さて、5月大統領令およびナショナルプロジェクトと一体の政策として、ここに来てロシア政府が強調するようになっているのが、「国家目標」と称するものである。(服部倫卓)


ロシア極東羅針盤
動き出すシベリア・バム鉄道の輸送力再拡張

 ロシア鉄道はバム鉄道とシベリア鉄道東部区間の輸送力再拡張(第2フェーズ)の検討を始めた。バム鉄道の本格的な電化と複線化に着手、列車本数を大幅に増強するほか、シベリア鉄道は一段のスピードアップと輸送の効率化を図る。(齋藤大輔)


ロジスティクス・ナビ
成長続くロシア極東港湾

 2018年のロシア極東港湾の動向について分析します。同水域はロシアと東アジア諸国との貿易のゲートウェーであり、日ロ経済交流の重要な結節点です。(辻久子)


産業・技術トレンド
2018年ロシアの旅客機生産

 例年にならい、Vzlyot誌に掲載された生産数に基づき、2018年のロシアの旅客機生産についてまとめる。2018年は、スホーイスーパージェット(以下SSJ)が、City Jetで運行とりやめになったことや、MC-21が制裁のあおりを受けて生産不能に追い込まれるなど、ロシアの航空産業にとっては衝撃的な出来事が多かった。この状況を乗り切れるかどうかが正念場という感じである。(渡邊光太郎)


ロシアメディア最新事情
強いロシア女性は婚活方法も大胆

 日本でもネットやアプリを通じた結婚が当たり前になるなど出会いの形式が多様化していますが、そこへいくとロシア人の恋愛観、パートナーとの出会い方はもっと幅広いと思います。最近はモスクワを中心にお見合いパーティーも増えており、コミュニケーションに長けたロシア人には向いていそうです。基本的に感情的な人たちなので、5回結婚してもびっくりされないし、子連れ再婚のハードルも低いです。しかし、そんなロシアでさえも最近、変わった婚活法が注目され、ある女性がメディアの注目を集めています。(徳山あすか)


デジタルITラボ
加速する日ロ・ベンチャー市場の経済交流

 2019年に入り、日ロのベンチャー産業における経済交流が活発化している。2018年の1年間でもこの分野で非常に多くのイベントが開催されているが、今年に入り、より具体的なケースが散見されるようになってきた。今回は改めて日ロのベンチャー産業における協力の軌跡、そして今後の展望について、お伝えできればと思う。(牧野寛)


ロシアと日本・出会いの風景
日本人をロシア料理店に連れていく

 この間、東京のとあるレストランに日本人の友達数名を連れていってあげて、とても楽しいひと時を過ごした。だが、当然ながら、日本のロシア料理店に行く回数よりロシア本国の方で日本のお客さんや友人などと食事する機会の方が数えきれない程多い。日本人の口に合う料理や合わない料理を把握し選別するには多少時間がかかったが、もう今となってはほとんど失敗することはなく、毎回皆さんに満足いただけるチョイスをできている。(D.ヴォロンツォフ)


ロシア音楽の世界
チャイコフスキー第5交響曲! 「運命」?

 交響曲なるもの、その魅力に嵌まってしまい病み付きになっている音楽ファンも多いのだが、一般には難解でとっつきにくいものらしい。自然、イメージ、心情、物語などを表現しているとされる「標題音楽」というジャンルが存在するが、交響曲はそれに対立する「絶対音楽」なる少々難しそうなジャンルなのだ。交響曲は、ストーリー、描写性などが基本的に無いとされていて、演奏時間も30分、1時間を超えるものもいくつもあり、演歌・ポップスに比べると何倍も長いので、飽きる、親しみ難い、敷居高い、と言われることがしばしばあった。よって、レコード会社は売上げを伸ばすためには、副題を付けられるものなら、なるべく付けた上でLP、CDを発売したいとの業務上の背景があった。(ヒロ・ミヒャエル小倉)


駐在員のロシア語
マーケティング(2)

 本稿の2017年7月号に続いてマーケティング関連用語を紹介する。(新井滋)


シネマ見比べ隊!!
ソ連とロシアの世相
『動くな、死ね、甦れ!』VS『ラブレス』

 このたびは、ソ連社会と現代ロシア、大きく隔たった時代の世相を「子供」をキーワードに描き出した驚嘆すべき2つの作品をご紹介します。それぞれに時代が違う一方、それよりも、人生の価値観の変化、他者との関係性の変容、自身や他者を尊重する重さの違いなど、驚くべき差異の諸相に隔世の感を禁じ得ないのですが、それぞれの潔いタイトルにも衝撃を受けると同時にその思い切ったタイトルへの期待を凌駕する圧倒的な表現で、強い印象を残す作品です。(佐藤千登勢)


おいしい生活
キルギスの白はちみつ

 今回はキルギスの白はちみつをご紹介。一般に知られている透明な琥珀色のはちみつとは異なり、白はちみつは文字通り蜜が白く、トルコアイスのようにとろ?りとした感触が特徴的。蜜が白い理由は、特定の花だけを蜜源にし、不純物を徹底的に排除することで作られるからとのこと。キルギスは近年白はちみつを含むはちみつ製品の海外展開に力を入れており、国際的なはちみつ品評会で金賞を受賞するなど世界の評価も高い。(大内悠)


記者の「取写選択」
モスクワへ飛んだ日本のイルカ

 水面を泳ぐ2頭のイルカと、その上に片足ずつ乗せて立つ男が波しぶきとともにジャンプ。欧州最大規模を誇るモスクワの水族館、モスクワリウムのショーの一場面だ。イルカショーは日本にもあるが、サーカスや演劇の要素を加えた水のステージはロシアならでは。イルカの後はベルーガ(シロイルカ)やシャチも登場。子供たちの歓声が一段と高まった。(小熊宏尚)